プロローグ
あたしには前世の記憶がある。
いや、突然何を言ってるんだと思うだろうけど、ホントの事だからしょうがないよね?
最初はあたしだって夢だと思っていたんだよ。だけど少しずつ思い出していく記憶はとてもリアルで、夢ではあり得ないほどに鮮烈だった。
それに前世のあたしはちょっと「特殊な力」を持っていて、生まれ変わった今も前世ほどじゃないけど、その力を使う事が出来た。
これはもう疑う方が無理ってものだよね。
だから、あたしは決して電波じゃないし、厨二病を患っているわけでもないの。
ほら、試しに力を見せてあげる。
上を向けて突き出したあたしの手のひらに巨大な火の玉が現れる。
あたしはそれをポイッと放り投げる。
ゴオオオオオオッ!!!!
あたしが目標にした巨木が燃え上がる。
それはもうボウボウと勢いよく燃えてアッという間に跡形もなく燃やし尽くしてしまった。
「今のはメラゾーマじゃないわ……メラよ」
あははははっ、なんだか前世で暴れていた頃を思い出す。
燃え盛る炎に響き渡る悲鳴と怒声。
人々はあたしに恐怖し、怯え、逃げ惑い、隠れる事しかできない。
あたしは世界を蹂躙し、最強の龍でさえあたしを恐れた。
あたしは最強だった。なんでも出来ると思ってた。
だから、あたしは世界を救おうと思った。
あたし達、魔族の世界を。
でも結局は負けちゃった……人間の勇者って奴にね。
つまり最強だったあたしが他人の為に戦い始めて、戦い続けて、そして…人生を無駄にしてしまった。
本当なら若くて楽しい時期に、わざわざお爺ちゃんになってまで頑張ったっていうのにだよ!
だから生まれ変わったあたしはもう他人の為には戦わないって決めたの。
自分の為だけに戦って、人生を楽しんでやる。
目指せっ、酒池肉林!ってね。
でも残念なのは前世は男だったのに、今は女の子なんだよね。
いくら人生を楽しむといっても、流石に男を侍らす気にはならないの。
とはいっても体が女の子だから、美女を見てもムラムラしないんだよね。
こんな事なら前世で思う存分、女遊びをしておけば良かった。
たぶん恋愛を楽しむことは出来ないかもだけど、それ以外は思う存分に楽しんでやろうと思う。
かつての力が完全とは言えなくても、ある程度は使えるんだからこの世界でなら無双出来るはずだもんね。
まあ、何はともあれ第二の人生は謳歌してやるぞー!
おっと、自己紹介がまだだったわね。
あたしの名前は“高町 なのは”。
前世では“大魔王”と呼ばれていたわ。
これからよろしくね。
だから期待しないでって言ったよね!?