朝の四時ぐらい。ぶっちゃけ寝たりない。だが朝からガタガタゴトゴト音がしていたら目が覚めるだろ?
「何やってんだ?二人はまだ帰ってきてないし」
二人とは俺の両親のことだ。現在旅行ナウだ。帰ってくるのは今日だが、こんなにも早くから帰ってくるわけがない。となると犯人は一人だけ。
「アーチャーか・・・・」
台所を覗くとアーチャーが何か作っている。しかもかなり慌ただしい。料理スキルは0のようだ。俺も人のこと言えないけど!!
「大丈夫かアーチャー?」
「あ、おはようございますマスター。こっちは大丈夫だから二度寝でもなんなりと」
いやこの時間から二度寝したら何時に起きるか分かったもんじゃない。仕方なく学校の用意をするために部屋に戻る。
昨日は衛宮を届けたあとすぐに家に戻った。衛宮は途中で目が覚めたから大丈夫だと思う。それに遠坂もいるから大丈夫だろ。朝になれば間桐も来るしな。あそこまで女子がいたらハーレムもいいとこだな!!
「あ、これ・・・・」
机の上に置かれた一枚の紙。そこには『最強アーチャー』なんて書かれている。そういえばここに書いたこと全てアーチャーに当てはまってるんだよな。
弓がデカイ。
矢を何発も同時に放てる。
矢じゃないものも放てる。
弓で近接格闘。
最早弓を使わず徒手空拳で戦う。
必殺技がライダーキック。
水色の髪でショートの貧乳。あと赤目
この項目が全て当てはまるなんてスゲー偶然だ。いやもしかしたら俺のアーチャーはマスター好みにカスタマイズみたいなことができるのか?思い立った俺は項目を追加する。
服装がメイド服
一番分かりやすく服装について書き込む。これでアーチャーの服がメイド服になっていたら確定だ。もし変わってなくても問題ない・・・・うん、問題ないよ。
もう一度台所を覗く。そこには『いつもの白い服装』のアーチャーが弁当にご飯を詰め込んでいた。かわりは無いようだ・・・・・・・・残念!
「弁当まで作ってくれてありがとな・・・・」
「?何やら元気がないけど」
「ふっ、夢は夢だけにしておくよ」
「???」
◇
「え?アーチャー学校に来るの?」
「え?そこで驚く?サーヴァントなんだから、マスターの守護をするのは当然よ?」
朝ごはんの途中でアーチャーが切り出してきた。いやそうかもしれないけどさ。どうすんの?いろいろあるだろ。
「大丈夫だろ。学校は夜まで続かねぇし、それに遠坂や衛宮がいるんだ。何も心配は」
「勘違いしてない?衛宮君や遠坂さんは『友達』と言っても聖杯戦争では『敵同士』なの。まあ同盟を組めば暫くは大丈夫でしょうけど」
同盟か・・・・確かに昨日の戦闘からみて、セイバーと赤いアーチャーのコンビはかなり強敵だ。それが敵になるとかなりヤバイ。いや待てよ・・・・
「まてまてまて!俺は聖杯戦争に参加はするけど、積極的に戦いには行かないからな!神父にもそう言った」
「あら?マスター案外戦いは嫌いかしら?」
「好き嫌いの問題じゃない。こんなバカげた儀式がこれで五回目なんだろ?それこそ衛宮の『聖杯戦争を止める』って目的もあながち間違いじゃない」
「まあそこはマスターに従うけど。聖杯には興味ないの?なんでも願いが叶うのよ?」
「そんなのない。大体は努力でなんとかなる」
「努力家なのね」
アーチャーはパクパクとご飯を食べると立ち上がりリビングを出ていった。機嫌を損ねたか?でも俺は決めたんだ。『聖杯戦争を止めて、聖杯をぶっ壊す』って。
◇
いつもよりかなり早く学校に着く。生徒はかなり少ない。そこで見かけた一人の生徒。
「あ、狩野先輩。おはようございます」
間桐桜。弓道部の次期部長で、衛宮の家に通っている。今日は朝練らしく、弓道部の服装だ。
「ああ、間桐か。衛宮は大丈夫か?」
「え?先輩なにかあったんですか?」
「(話してないのか)いや何でもない」
まったく無茶する奴だ。まあ間桐みたいな奴が聖杯戦争に関わることを衛宮は嫌うだろうし。当然ちゃ当然だな。
「よう狩野!今日は早いじゃないか」
「む、ワカメ!」
「朝っぱらから失礼だなお前!」
次に声をかけてきたのはワカ・・間桐慎二だ。間桐という名字で分かるように桜の兄だ。でもたいして似てないよな。主に髪型。
「まあいいよ。で、なんでこんなに早いんだよお前」
「早く来たらダメなのか?それこそ失礼だぞ」
「別に。ただお前がいるから、遅刻したんじゃないか焦っただけだよ」
「遅刻ってな、俺が遅刻の常習犯みたいなこと言うなよ!」
「実際そうだろ!!」
まあいいだろう。遅刻なんて一週間に四回しかしない。なんら問題はないだろ。
それから少したち、衛宮が教室に入ってくる。
「お、衛宮。怪我は大丈夫か?」
「ああ、なんか傷治ってた」
「!?!??」
何だか分からないが無事ならいいけど。いやでも凄いな。魔術を使ったのだろうか?それこそ、どんな怪我でも治す物があるのかもな。いや衛宮の家の土蔵ならありそうだな・・・・
「とりあえず無茶するなよ?遠坂や間桐が心配するからな」
「そうだな。藤ねえも心配性だからな。気を付けるよ」
しかし衛宮のそんな決意をよそに、藤村先生は元気よく教室に入ってくるのであった。
◇
昼休み
「ねえ狩野君」
「どうした遠坂」
たったそれだけの会話。でも遠坂の顔を見れば何となくわかる。聖杯戦争のことに関してだろう。
遠坂に連れてこられたのは屋上。昼休みなのに珍しく生徒が誰一人いない。
「貴方魔術に関して何ができるの?」
「いきなりだな。えっと、家が魔術の家系なのは知ってるけど、俺自身魔術に関してはサッパリ」
「そう。それじゃあ、あの時持ってた槍は何かしら?まさかその辺の木の棒なんて言うんじゃないでしょうね」
拷問みたいだ。でも『ディルムッドの宝具』なんて言っても遠坂は信じそうにないし・・・・
「悪い。企業秘密だ」
「そう。なら狩野君。最後に提案よ。私と同盟を組まない?」
◇
放課後。結局昼休みの間に同盟に関して答えが出せなかった。やはりここは組むべきか。それともアーチャーの意見を聞くべきか。
アーチャー×2。遠坂と同盟を組めばそこら辺のサーヴァント位は簡単に倒せるだろう。昨日のアサシンとの戦いの時を思い出せば分かる。
「わっかんね。やっぱアーチャーに話すか」
何やら上の階がドタバタしているが、何をしてるんだ?
《どうやら上の階で、あの時の二人が戦ってるみたいね》
(あの二人?衛宮と遠坂か?てかあの時起きてたなら手伝えよ!!)
《仕方ないでしょ、眠たかったんだから・・・ほら、サーヴァント来たわよ》
教室を出て廊下を見る。廊下には二人。スーツの女と青いタイツの男。女は何か筒状の物を持っている。男の方は赤い槍。間違いなくあの男が『ランサー』だ。
「おう、テメェが二人目のアーチャーのマスターか」
「だったらどうする?」
「テメェには用はねぇ。アーチャーをだしな」
「悪いな。今日は連れてきてない。また今度にしてくれ」
「そうか。まあ嘘は良くねえよ、なあ!!」
ランサーが一気に駆け出し、槍をこちらに向けている。普通の人間には交わせない。だからと言って俺にも交わせるものじゃない。槍が俺の心臓を抉ろうとしたとき、
「確かに、嘘は良くないけどね。マスターは『霊体化』を知らないから」
ランサーの槍を間一髪、アーチャーが『矢』で弾いた。さっきまでいなかったのにいつの間に来たんだ?
しかしその疑問は、アーチャーの服装を見てからは頭のなかになかった。
「テメェ本当にアーチャーか?メイド服の英霊なんざ、聞いたこたぁねえけど」
「当然よ。私は貴方が絶対に知らない存在。そして貴方を冥土に送る者よ」
今現在、アーチャーの服装はいつもの白い服ではなく、『メイド服』だった。
アーチャーはカスタマイズが可能だった?そんなバナナ!
次回はアーチャーVSランサー、そして赤アーチャーVSライダーも?ライダーの方は分かりません。