アーチャーとアサシンの戦いは激しさを増すばかりだった。更にセイバーまで参加するんだからもう大変。教会周辺の木々が粉々になっていく。
「アーチャー!」
「かしこまり!」
セイバーの攻撃をアサシンは飛んで避けるが、そこにヒットしたのはアーチャーの一撃。更にそこへ叩き込まれるもう一人のアーチャーの攻撃。サーヴァントが四体揃うと、ここまで激しい戦いになるのか。
「グッ・・・・ドウヤラ狂化モ切レテきたらしい」
「アサシン!」
「このまま決めましょう!」
「分かったわ、お姉さんにお任せ!」「私に任せてもらおう」
相変わらず二人のアーチャーは仲が悪いようだ。
「・・・・風よ、荒れ狂え!!
「「あ!!」」
そんな二人をよそにセイバーは宝具を発動させる。吹き荒れる暴風の一撃。その中で一瞬光が見えた。
「・・・・まったく。そんなに風を吹き荒らしたら、」
森の中で次々と爆発が起きる。アサシンの罠か何かか?そうだとしたらアサシンはここまで予想していた?
「なっ!おのれ!!」
「悪いが、これが僕の殺り方だ」
爆発に紛れてアサシンが姿を消す。サーヴァントたちが辺りを見渡すが姿が見えない。だが撤退した様子ではない。
「何処にいった!姿を見せろアサシン!」
「アサシンは元々姿を見せずに『マスターを殺す』ために動くんだ。叫んだところでアサシンは・・・・そうか!」
サーヴァントが全員こちらを見る。そうか『マスターを殺す』サーヴァント。それがアサシン。だったら、
「衛宮、遠坂!」「狩野君、衛宮君!」「遠坂、真琴!」「「「伏せろ!!」」」
俺たちマスターは全員気づいたみたいだ。全員が伏せた瞬間、地面に弾が刺さった。何処からかアサシンが狙っていた。サーヴァントたちは一瞬でそれが『彼処から』放たれたことを理解し、アサシンを倒すため全員がそこへ向かう。
残ったのはマスター四人だけだった。
「追うわよ衛宮君!」
「あ、ああ!」
「あら、行かせると思った?」
追う衛宮と遠坂だが、アサシンのマスターの攻撃が遮る。マスターの回りには銀色の鳥が二匹。
「でしょうね。こうなることぐらい分かってたわよ」
「じゃあこの後の結末も分かるわよね」
「当然!私の圧勝よ!」
まさに一触即発。首を突っ込んだらこっちまで巻き込まれそうだな。でも衛宮がなんだかおいてけぼりになってるぞ!?
「遠坂!ここは俺に任せて、衛宮とサーヴァントを追え!」
そしてつい首を突っ込んでしまう。ああもう、俺のバカ!でもジャンヌの力があれば。
(ジャンヌ!頼む力を貸してくれ)
《ジャンヌ殿なら寝ていますが・・・・》
(HAHAHAHA!オウマイガッ!!)
「そう?じゃ頼むわね。こっちも無駄な出費は抑えたいし。行くわよ衛宮君」
「大丈夫なのか真琴?やっぱり俺たちも残って」
「だだだだだ大丈夫だ!!もももも問題ない!」
言ってしまったものは仕方ない。とりあえず限界ギリギリまで逃げ続けるか。
衛宮と遠坂は『終わったら迎えにいく』なんて言いながら走っていったが、お前らが迎えに来る前にあの世から迎えが来そうだ。
「大丈夫?足が震えてるよ?」
「ふん!余計なお世話だ。ガキンチョ相手にどうするか考えてただけだ」
「へぇ、優しいんだね」
「そ、そりゃあ俺だって人間だし?小さい子には優しくするっていうか?」
「でもそういう人から死んでいくんだよ?」
俺の真横を通り抜けるモノ。それはさっきまでの鳥の形をしていたもの。しかし今、それへ鳥ではなく、剣の形をしていた。
(あれ?詰んだ?)
《大丈夫ですか我が主!このディルムッドの宝具を!》
しかし希望はまだある。俺の右手に握られている赤い槍。これが俺の武器か・・・・でもねディルムッド君。
「これ近接武器じゃん」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アサシンは教会の屋根からマスターたちを狙っていた。しかし攻撃は交わされ、サーヴァントによる反撃を許してしまう結果になってしまった。
(やっぱり、宝具で殺したほうが早かったか)
アサシンの宝具は『大勢の人間を瞬間的に暗殺する』という宝具。それを応用すればこの場からの離脱も出来るだろう。だがマスターは逃げる気はないようだ。現に今もアーチャーのマスターと戦闘している。
(今は赤いアーチャーがいない。マスターを連れて撤退するなら今のうちか・・・・)
アサシンがそう考えているうちにもセイバーとアーチャーの攻撃は勢いを増していく。何故アーチャーのサーヴァントが二体いるのか不思議だったが、今のアサシンにそれを考える余地はない。
(仕方ない。やるか・・・・)
「たあっ!!」
「はい、そこ!!」
動きを止めたアサシン目掛けて、セイバーの剣とアーチャーの拳が迫る。その中、アサシンは小さく呟く。
「
それはアサシンの切り札。生前これで何度も窮地を切り抜けてきた『逃げるため』の切り札。しかし今は、サーヴァントである今は違う。マスターを勝利へ導くため、他のサーヴァントを倒すための切り札。それがアサシンの宝具。
「なっ!何処へ行った!」
「クロノス・ローズ・・・・まさか宝具!?」
「正解だ」
気づくとアサシンの姿が目の前に、そして瞬きをした瞬間にはその姿は無かった。
「僕の宝具は」
今度はセイバーの隣。
「誰も着いてこられない」
更にアーチャーの後ろ。
「『迅速に殺す』ための宝具」
次々と姿を現しては消え。
「それが
遂にはその姿が無数に存在するように見える。
「ちょ!多すぎないこれ?」
「高速で動いて分身しているように見せている。アサシンの機動力なら可能な宝具です」
「流石セイバーだ。なら、僕の勝ちなのも分かるね」
無数のアサシンは一斉にセイバーとアーチャーへと攻撃を開始する。応戦しようとするが本物のアサシンは一体のみ。どれが本物か分からず、次々とダメージが蓄積されていく。
そしてそれを・・・センタービルから眺める影が一つ
◇
「ほう。あれがアサシンの宝具か」
センタービルから戦っている様子を眺めるアーチャー。彼は本来のアーチャーの戦い方で戦闘に加わろうとしている。しかし彼が放つのは一撃のみ。最大限までに魔力を高めた一撃のみだ。
「さて、頃合いか」
とある剣を『投影』する。それは螺旋状の剣。真名を
(凛。今からそこへ宝具を叩き込む。巻き込まれるから離れていろ)
(はあっ?ちょ、待ちなさいよ!)
しかしアーチャーは待てなかった。あの男だけは、ここで消しておかなくてはならない。たとえそれが、彼の八つ当たりだとしても。
そして彼は唱える。自分に言い聞かせるように。
「
そしてアーチャーは矢を放った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ディルムッドの宝具『
「くそっ!これじゃジリ貧だ!」
「もう終わり?なら、ここで死になさい」
本当に終わった。そう思った瞬間、マスターの姿が消えた。
「・・・・え?」
驚きのあまり間抜けな声が出てしまった。いや、それにしても一体何が・・・・
「マスター!!」
「あ、アーチャー。そっちは終わっ「ちょっと失礼!!」え??」
アーチャーが突然走ってきたと思ったら、俺を担いで更にスピードを上げる。よくみると衛宮はセイバーと遠坂の手を引いて逃げている。おいおい、まさか隕石でも降ってくるのか?
「不味い・・・マスター!伏せて!!」
「え?おぶっ!!」
急に地面に投げ飛ばされる。その事でアーチャーに文句を言おうとした瞬間、
巨大な爆発が起きた。
最早それは教科書で見るような爆発そのものだった。爆風で吹き飛びそうになるがアーチャーが俺の手を掴んでくれて助かった。
辺り一面は火の海と化している。まさしく地獄絵だ。
「一体いまのは」
「恐らく赤いアーチャーの宝具でしょうね。アサシン、途中でマスター連れて逃げたのよ」
だから途中でいなくなったのか。アサシンのスピードならここから離脱するのは簡単なことだろう。しかしあんなに破壊力がある宝具なんて、町中で使ったら被害がとてつもないことになるぞ!?
「シロウ!シロウ!!」「衛宮君?しっかりしなさい衛宮君!」
「どうした遠坂!」
「衛宮君、私たちを庇って」
衛宮に意識がない。しかも傷口から血が出ている。怪我じたいは大丈夫そうだが、とりあえず手当ては早めの方がいい。俺達は衛宮を家に連れて帰ることにした。
こうして、聖杯戦争の初日は引き分けで終わった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ありがとアサシン。私としたことがあんな魔力の塊を感知できないなんて」
「無理もない。どうやら久々に夢中になっていたみたいだけど?」
「ええ。驚いたわ。あの宝具、『本物』よ。ただの魔術師が宝具を使うなんて聞いたことがないわ」
「そうか。僕もそれは聞いたことがない。アーチャーが二体いるのも気になるし。どうやらこの聖杯戦争には裏がありそうだ。どうするマスター。アーチャーのマスターを殺すかい?」
「そうね、ここで消すのはまだ勿体無いわ。まだ暫くは置いておくべきね」
「そうか。それじゃあ行こうか」
「ええ、次は負けないわシロウ。このイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが、直々に殺して上げる」
■
「ほう、どうやらもう戦っているらしいな桜」
「そうだねライダー。私たちも戦わなくちゃいけない。ライダーは大丈夫?」
「準備は出来ている。あとは桜。お前次第だ」
■
「スゲーな!アーチャーが二人だってよ!」
「アーチャー・・・・いや、そいつらじゃない」
「なんだ?まだ捜してるのか?本格的に捜すならロンドン位に飛んでこいよ」
「たわけ。今の時代、奴が生きていると思うか?死んでいるに決まっている。だからこそ聖杯で呼ぶんだ」
「その執念さ、最早『アヴェンジャー』じゃなくて『リベンジャー』だな!」
「ふん。奴を殺すのにクラスなど関係ない。私にとってはこの真名こそ忌々しい!」
「ハハハッ。まあ、気長に行こうぜアヴェンジャー」
■
「おう、どうやらアーチャークラスに二体目がいるみたいだな」
「アーチャーに二体目?それはおかしい。聖杯戦争でそんなことは」
「ああ、『ありえない』な。でもまあ生きてりゃそんなこともあるだろ」
「そうですか・・・・それじゃあ、いつ、仕掛けますか?」
「早くて明日がいいな・・・・無理でも明後日だ。あの二人目のアーチャー。中々に面白いぜ」
そして戦いは二日目へと流れていく。
やはりアーチャーはカラドボルグを叩き込む。これは避けられない運命?
因みに既にランサーとは戦闘しています。
クロノス・ローズの使い方も少し違います。まあGOみたいな使い方も出来ますが。
次回は・・・・どうなる?