「嘘……」
「こいつはヤバイな」
ユスティーツァは俺たち全員を見て笑い続ける。それほど俺たちの表情が愉快だったのか。だがこちらとしては全然愉快じゃない。絶望的状況だ。
なんとかフルパワーで倒したのに。衛宮たちが万全な状態ならまだ勝ち目はあったかもしれない。だが衛宮たちも満身創痍。あの英雄王も苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「さあ、どのように食ろうてやろうか」
「真琴!まだ行けるか?」
「あーもう!!やれるだけやってやる!」
俺の超マハトマ人と衛宮のリミゼロモード。並みのサーヴァント…がどれくらいか分からないがなんとか対応できる俺たちの持てる全ての力を解放した状態。
まあ俺は中にいるメンバーをほとんど無くし、衛宮は恐らく魔力はスッカラカンだろう。
「行くぞ衛宮!」「行くぞ真琴!」
同時に駆け出しユスティーツァに攻撃を叩き込む。バゼットさん仕込みの格闘術。衛宮は多分アーチャーから教わったか。
攻撃は全て決まった。しかしユスティーツァの表情に変わりなし。寧ろ奴の笑顔が更に深いものになる。つまり嫌な笑顔だ。
「ほれ、手が止まっておるぞ?」
「チッ、これならどうだ!!」
女相手ならジャックの宝具が効果的なはずだ。避ける気がないなら確実に叩き込んでやる!
「
「
宝具を発動。倒せなくても多少はダメージが入るはずだ。衛宮の8連撃の後に俺がナイフですれ違いざまに切り刻む。さすがにユスティーツァにもダメージが通ったようだ。なら次の一撃を、
「うむ、悪くない。だが」
「ガハッ!?」「ぐっ!?」
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宝具を発動しユスティーツァにダメージを与えられた。それは事実だ。しかしそれ以上の攻撃を真琴と士郎に叩き込んでいるのも事実だ。つまり士郎は8連撃の時に、真琴はすれ違いざまに既に攻撃を受けていたのだ。
士郎は胸に、真琴は両肩にそれぞれナイフで切られたのだ。
「マスター!!」
「シロウ!!」
「安心せい、殺してはおらん。殺しては質の良い肉と魔力が食らえない故な」
「タチの悪い性悪女め!」
セイバー、アーチャー、ギルガメッシュ、フェイカーが同時にユスティーツァに攻撃を仕掛ける。その隙に凛とイリヤが真琴と士郎を回収した。
セイバーとギルガメッシュ。トップクラスのサーヴァントが2騎。これだけでも普通の敵ならあっという間に殲滅させられるだろう。
更にセイバーは円卓の騎士の力と聖剣を文字通り体と1つにしている。ギルガメッシュは慢心を捨て乖離剣で対応している。
アーチャーとフェイカーも他のサーヴァントにも引けを取らない。アーチャーはアルジュナの力を中心に他のアーチャーの力を使うことも可能だ。更に本来のナーサリー・ライムとしての宝具も使える。フェイカーは無数に投影した武器で様々な状況に対応できる。神造兵器などは投影出来ないがギルガメッシュと同等の物量戦が可能だ。
これほどのサーヴァントが4騎。しかしそれでもユスティーツァには余裕があった。体の元になっているアサシンの宝具で常に高速移動、高速攻撃が可能になり、ユスティーツァ自身の膨大な魔力量で攻撃力をプラスする。故にユスティーツァには彼らと対峙しても余裕があり、尚且つそれ相応の力を持っているのだ。
「行くぞセイバー!!」
「はい!!」
さっきまで敵対していたとはいえセイバーにとってフェイカーは未来のマスター。フェイカーにとってセイバーは過去のサーヴァント。タイミングや息の合わせ方などはバッチリだった。
セイバーとフェイカーの連撃をユスティーツァはナイフで捌いていく。
「元は我もアーチャーだ。援護ぐらいはしてやる。タイミングを合わせろよ弓兵」
「分かってるわよ英雄王!」
終末剣エンキと宝物、アーチャーの援護射撃がユスティーツァに襲いかかる。数の暴力とはこのことだ。
しかしそれもユスティーツァの力で強力なレールガンと化したサブマシンガンで撃ち落とされていく。その間にもセイバーとフェイカーの連撃をナイフで捌いている。
「もう種切れか?では終幕だ」
次の瞬間、
「ぐあっ!」
「なに!?」
「バカな!?」
「うあっ!」
次々と突き飛ばされるサーヴァントたち。凛とイリヤも感じ取った。今のは宝具だと。
「
「あれ、アサシンの倍以上のスピードよ!?それこそ光も超えてる!!」
「なによそれ!デタラメにも程があるわ!!」
ユスティーツァはナイフについた血を舐めとる。するとユスティーツァのキズが次々と治っていく。
その行為に戦々恐々とするマスターとサーヴァント。
しかしそれがチャンスと踏み込んだ男が一人。
「!?狩野真琴!!」
ジャックのナイフですれ違いざまに頚動脈を狙う真琴。しかし彼の体は既にボロボロ。碌に当たることも出来ず、逆に反撃を食らい吹っ飛ばされる。
「バカの一つ覚えが。その手は通用しないと文字通りその身に刻んだというのに」
「………その油断が命取りだ」
「油断?これは余裕と言うものだ」
「言ったそばからまた油断………バカは死ななきゃ治らない!!」
1発の銃声。それはユスティーツァの左肩を貫いた。
「まさか……アサシンの起源弾!」
「狩野君、もしかしてアレを狙って?」
「流石真琴だ……ぐうっ」
「コラ士郎、無理したらダメよ」
真琴はユスティーツァとすれ違いざまに頚動脈を狙ったと同時にアサシンのコンテンダーも狙ったのだ。どちらか一方の目的が達成できればユスティーツァに確実にダメージを与えられる。しかしどちらも失敗すれば最悪死んでいた。まさに一か八かの勝負だった。
そして真琴はその勝負に勝ち、ユスティーツァに隙を生み出すことができた。
「今しかない!!」
更にその隙を活かすためにフェイカーが魔力を働かせる。固有結界の準備だ。そしてそれの発動にさほど時間はかからなかった。
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「なっ、固有結界だと!?」
「ようやく貴様に墓標を作ることができた。ここからは一対一だ」
「違うわよ。一対三よ」
「私たちもいるんだから」
「………帰れと言っても帰らないだろうな」
「ていうかあんたが私たち追い出さないとダメなんじゃない」
「………やれやれ、死なないでくれよ二人とも」
「あら、それはナイトのお仕事でしょ?」
「ふっ、仰せのままに」
剣の丘で最凶の敵と対峙するのは一人のサーヴァントと二人のマスター。
錬鉄のサーヴァント、フェイカー。
紅い魔術師、遠坂凛。
白銀の魔術師、イリヤスフィール。
「今度は絶対に最後まで戦うんだから」
「自分のサーヴァントの後始末は、マスターがしないとね!」
「ところで凛。ひとつ尋ねるが」
「なによアーチャー」
「別に、アレを倒してしまっても……構わんのだろう?」
最近るろ剣を見て今回の真琴とユスティーツァのやり取りを入れました。後悔はしてない!
次回はバトルなし。主に士郎と真琴の会話とサーヴァントの会話になります。