アーチャーとアーチャーが出会うとき、新たなクラスが?
「・・・・・とりあえず、お茶」
「わ、ありがとー!マスターなのにゴメンね?」
今現在、もうすぐ日付が変わる頃。俺とアーチャーは机を挟んで座っていた。
アーチャーは白い半袖の服を見にまとっている。髪は水色で瞳は赤・・・・・あれ?これどっかで・・・
「マスターは聖杯戦争について、どれくらい知っているのかしら」
「え?えーと、とりあえず『聖杯をめぐって争うバトルロワイヤル』だろ?」
「ええ簡単に言うとそうよ。でもね、聖杯戦争にも細かいルールがあるの。例えば『戦うのはだいたい夜』だったりね」
「なんで夜なんだ?」
「あのねマスター。昼間っからドンパチやっていたら、ニュースで取り上げられて、一瞬で私達はテロリストよ?それに昼間のほうが人が多いから被害者が増えるのよ」
なるほど。しかしアーチャーは『だいたい夜』と言っていた。つまり、
「だいたい夜なんだから、昼間から仕掛けてくる奴もいるんじゃないか?」
「でしょうね。まあその時は魔術の秘匿に関わるから、いろんな組織が動くでしょうね。教会とか協会とか宇宙警備隊とか?」
「サーヴァントはウル○ラマンに勝てるのか?」
絶対無理ね、とお茶を一気に飲み干すアーチャー。いい飲みっぷりだ。
「さて、教会に報告に行きますか?」
「え?なんで?」
「ゲームに参加するって言われてなくて、いざ飛び入り参加されたら、イラッてきますよね?それと同じです」
「???」
そう言うとアーチャーは外へ出た。俺も慌てて外へ出る。今日は月が綺麗だ。
「マスター。足ありますか?」
「足?この足じゃないよな・・・悪いけどバイクとかは」
《あるぜ大将!俺っちの『ゴールデンベアー号』がな!》
また変なのが出てきた。あきらかにジャンヌとは別の声。どちらかというとヤンキーっぽい声だ。
(誰だお前?)
《坂田金時。分かりやすくいうと『金太郎』ですよ》
(また出た!今度は誰だ!?)
《申し遅れました。私はディルムッド・オディナ。フィオナ騎士団が一番槍でございます》
《まあとりあえずドライブと洒落こもうぜ!大将!!》
すると目の前に一台のバイクが姿を現す。これがゴールデンなんちゃら号か・・・・・けっこうイカスな。
「なんだあるじゃない!それにしても一瞬で『投影』するなんてスゴいじゃない!」
「いや俺じゃなくて金太郎が「さあ行くわよ。後ろに乗って!」・・・・・聞いてねぇ」
仕方なくアーチャーの後ろに乗り込む。こういうのは男の俺が運転したほうが格好がつくのだが、事故が恐ろしい。
「運転できるのかアーチャー?」
「いいえ!さっぱり!!勘とノリで行くわ!」
大丈夫かこの脳筋アーチャー・・・・・
バイクは凄まじい音を出しながら新都へ向かう。行き先は教会だ・・・・・
◇
「はいとうちゃーく!」
わずか10分で到着した。思いの外安全運転なのは驚いた。いや速度制限丁度で走っていた。
「何やってんだこの人?」
教会の敷地前の門に黄色い雨合羽を着た女性が立っている。こちらを一瞥すると更に警戒の色を強くする。
「お留守番ってとこね。彼女もサーヴァントよ」
「え?サーヴァント!?」
「そういう貴女もサーヴァントですね」
「ええ。アーチャーよ」
「サーヴァント、セイバーです」
意外と好印象?いやそれはない。これから殺しあう仲なのに、仲良しこよしなんて出来ない。
「まちたまえ。『アーチャー』は私だ」
セイバーの近くに姿を現したのは赤い・・・なんだろ。とりあえず高身長の男だ。肌は日焼けかな?
「・・・・・マスター。先に中に行きなさい」
「お前は?」
「教会なんてつまんないじゃないですか」
アーチャーが行こうって言ったのに。言い出しっぺが来ないのなら俺一人でいくしかない。仕方なくアーチャーを置いて一人でいく。いや一人じゃないな。
《なんなんだよ大将!おもいっきり安全運転じゃんかよ!いや違反しろって訳じゃねえけどよー!》
《ならいいではないか。それに文句ならあのサーヴァントに言いなさい。主に言っても無駄ですよ》
《ちょっとうるさいんだけど!静かにしなさいよ、焼き殺されたいの!?》
《わ、わりぃ》《む、すまん》
《あんたもなんか言いなさいよチキン。元はと言えば貴方のせいよ?》
(そこで俺に振るか?)
《私は事実を言ったまでよ》
俺の頭のなかでは絶賛口喧嘩の真っ最中だ。金太郎とディルムッドをジャンヌが一蹴する。もうそろそろ俺の頭もパンクしそうだ。
(中で話すときは静かにしてろよ!)
《ええ、静かにしてるわ。『私は』ね》
(あとの二人も静かにしてろよ)
《おう、まかせな!》《了解した》
今後の生活が不安になる。教会の扉を開けようとすると、向こうから開いてくれる。開けたのは衛宮と遠坂?
「なんでお前ら」
「え、真琴?なんでここに?」「あら狩野君じゃない。まさか貴方もマスターなの?」
「同時に喋るな。まあ俺もマスターだ」
右手の令呪を二人に見せる。すると衛宮は驚き、遠坂は「なるほど、やっぱりね」と小さく呟いた。
「これから、一応の報告?みたいなのをしてくる」
「そう。なら気を付けなさい。ここの神父は性格悪いから」
そういうと遠坂はスタスタと歩いていった。いやズカズカかな?取り合えず学校で見せるような優雅さはなかった。
「俺は聖杯戦争を止めるために戦う。真琴は・・・聖杯が欲しいのか?」
「いや、よくわからない。まあいまいちパッとしないからだと思うけどな。でも、出来れば平和に過ごしたいよ」
「そうか。それじゃあ俺は行く。また明日な」
そうだ。聖杯戦争が始まったからといって、学校が休みになる筈がない。もうそろそろ日付も変わっただろう。早く帰って寝ないと。
教会の扉を開く。思い音が教会内へ響き渡る。中には一人の男。あれがこの教会の神父か。
「ほう、今日は客人が多いな」
その神父の瞳は、深い闇のようだった。
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「どちらがアーチャーに見えます!」「どちらがアーチャーに見えるかね!」
外へ出ると遠坂がアーチャーと自称アーチャーに詰め寄られている。あれが真琴のサーヴァントなのだろう。でもアーチャー?
「なあセイバー。聖杯戦争で同じクラスのサーヴァントが召喚されることってあるのか?」
「私はそのような事例は聞いたことがありません。恐らくどちらかが嘘をついていることになる。シロウはどちらがアーチャーに見えますか?」
「どっちかって言われたら、そら二人ともアーチャーに見えない」
「「ええ!?」」
「そらそんな格好してたら分かんない。弓でもあったら分かりやすいけど」
そう言った瞬間二人は弓を手元に呼び出す。アーチャーのは黒い洋弓。自称アーチャーのは巨大な弓だ。恐らく自称アーチャーの身長くらいはある。
「でもこうなるとどっちもアーチャーに見えるわね」
「いっそのこと的当てでもやったらどうだ?」
「良いわね、やりなさいよ的当て」
いきなりの無茶ぶりにたじろく二人のアーチャー。すまん俺のせいだな。
しかし二人のアーチャーは気が変わったように弓を構える。アーチャーは和弓の撃ち方で、自称アーチャーは地面に弓を突き刺して固定する。両手撃ちなのか?いやそれより弓というものの使い方が微妙に間違っている。
「ちょ!何処に撃ってるのよ!」
二人のアーチャーは真っ直ぐに矢を放つ。放った先には何もない。これでは勝負にならないはずなのだが、
「ふーん。アサシンの気配遮断に気づいたんだ」
その矢を弾くように金属音が響く。そこにはさっきまではいなかったはずの男と少女がいた。
「また来たのね?今度は逃がさないぞ♪」
「あまり私を見くびらないほうがいい。しかし・・・アサシンときたか」
二人のアーチャーは休むことなく矢を放ち続ける。それを全てナイフで落としていくアサシン。これが聖杯戦争。そしてそこに加わる一陣の風。
「シロウ、下がって!」
セイバーが俺の前に立った瞬間、暴風が吹き荒れる。その右手にはうっすらと風が『握られている』。そのまま跳躍。一瞬でアサシンの目の前に降り立ち右手を振るう。
「はあっ!」
「!!やるな」
セイバーの一撃一撃を全てナイフで防いでいく。家で戦ったランサー程ではないが、アサシンもやはり『英霊』だ。しかし所詮はナイフ。次第にセイバーが有利になってくる。
「たあっ!」
「ぐっ!」
「何をやってるのアサシン!貴方の戦い方で殺りなさい!」
「言ってくれるねマスター。相手は『騎士王』様だよ?僕のトラップに引っ掛かるとは思えないね」
「なっ!何故・・・・・騎士王と言った」
「僕は覚えている。生前は君と一言も話したことがないことも」
「!!そんな!まさか貴方は・・・切つ」
セイバーが何かを言おうとした瞬間、アサシンのマスターから大量の魔力が放出される。少女の顔には赤い模様が浮かび上がっている。
「勝ちなさいアサシン。この私に勝利を!」
少女の魔力がアサシンに注がれる。アサシンの気配が変わっていく。『暗く鋭い気配』は『全てを壊す暴風』へと変わっていく。
「嘘、そんなことが、『クラスチェンジ』ができるっていうの!?」
「違うわリン。これはクラスチェンジじゃなくて、クラスの重ねがけ。つまりこのサーヴァントは『バーサークアサシン』ってこと。こんな秘術は遠坂には出来ないでしょうね」
二人がそんな会話をしている間にもアサシンは赤いオーラを纏っていく。その目も赤く染まっていき、
「ぐっ!があああッッッ!!」
「これ、不味いやつね」
「怖じ気ついたのか?」
「マスターが心配だから。ほら、お姉さん心配性でしょ?」
「はぁ。勝手にしたまえ」
「ありがとね~」
自称アーチャーは教会のほうへと跳躍する。多分真琴を助けに行ったのだろう。
「ふむ、戦力が少し減ったが。凛、どうするつもりかね」
「どうするもこうするも、向こうは逃がしてはくれなさそうよ」
既にアサシンとセイバーは戦闘を再開している。さっきまでの力の差は感じられない。アサシンの攻撃は荒々しさがあるが、それでもアサシンの時の鋭さもある。
「ぐあっ!」
「セイバー!」
アーチャーの援護射撃も全てサブマシンガンで相殺していく。正直勝機が見えない。遠坂もどうするか考えている。
(くそっ!俺は何も出来ないのか!)
そんなとき、
「衛宮!遠坂!伏せろ!!」
「「え??」」
「いけ!アーチャー!」
「かしこまり!」
自称アーチャーの一撃は最早弓矢というよりも、レーザーか何かだった。それはアサシンに直撃し、吹き飛ばした。
俺には、真琴があの時の『親父』のように見えた。
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アーチャーがいきなり飛び込んできたときは驚いた。だけど外で暴れているならこの物音にも理解できた。
「いけ!アーチャー!」
「かしこまり!」
アーチャーは弓を地面に突き刺して固定し、そこから両手で弦を引っ張って放つものだった。しかし弓がこんなにでかくていいのか?
「ジャストミート!やりましたマスター!」
「まだ倒してないだろ!」
アサシンはまだ立ち上がってこっちに向かってくる。アーチャーは弓を引っこ抜き、接近戦を仕掛ける。
巨大な弓とナイフがぶつかり合う。アーチャーは巨大な弓を振り回すが隙が大きすぎる。案の定アサシンに弓を吹っ飛ばされる。
「ありゃりゃ」
「・・・オワリダ!」
アサシンのナイフがアーチャーの首筋目掛けて迫る。しかしそれが届くことはなかった。
「ほりゃ!!」
「フグッ!!ゴアッ!」
アーチャーのボディブローがアサシンに炸裂する。そのあとも何度も何度も拳を叩き込んでいく。アーチャーは徒手空拳の使いでもあるのか。ん?やっぱりこれって・・・・・
「さあ、覚悟しなさい。お姉さん、今回は見逃さないわ」
ここからアーチャーとアサシンの本気の戦いが始まった。
次回はアサシンとの決着。でもその決着は皆が知っているような感じに。
あ、あとアサシンの宝具もでるよ!