今回は聖杯グランプリ!!
「ん……あー寝ちまってたか」
目を覚ますと布団、ではなく居間だった。机の上は散らかっており他の皆んなも寝ている。どういうわけかサーヴァントはいないが。いやアーチャーはいるな。
「げ、もう11時かよ。ほら起きろお前ら」
て言っても起きるこいつらじゃないよな。仕方ない、家に戻ろう。今ならお婆ちゃんもいるはずだ。昨日はいなかったけど、いるよな?
「おや真琴君。ふぁあ〜〜あ、何処か行くのですか」
「おはようバゼットさん。自分の家に戻るんだよ。多分お婆ちゃんいるから」
「お婆ちゃんに何か用があるのですか?」
「聖杯戦争についてね」
俺の部屋にあった第三次聖杯戦争の日記について何か知っていることがあるはずだ。このありえない聖杯戦争を止めるためのヒントとかな。
「では私も行きます。私も聞きたいことがありますし。恐らく答えを知っているはずです」
「?まあいいけど」
◇
「ただいまー」「お邪魔します」
「あらお帰り真琴ちゃん。そちらのベッピンさんは?」
「あ、真琴君の……仕事仲間のバゼット・フラガ・マクレミッツです」
「あらマクレミッツさんの娘さん?どうりで似てるわね〜」
「バゼットさんの家族に会ったことあるのお婆ちゃん?」
「旅をしてたころにね。ささ上がりなさい」
久しぶりに俺を出迎えてくれたお婆ちゃんは何も変わっていなかった。いつも通りのマイペースなお婆ちゃん。でも一人旅は程々にしてほしい。
「それで今日はどうしたんだい?もしかして付き合ってる報告かい?」
「違うってお婆ちゃん。これについて聞きたくて」
俺はお婆ちゃんに第三次聖杯戦争の日記を見せる。お婆ちゃんの表情は変わらない。いつもの優しそうな顔だ。
「どこにあったんだい?」
「俺の部屋。タンスの裏にあった」
「あ〜そういえば、そんなところにしまった記憶が……」
「それで、これを書いたのは誰なんだ?」
「私だよ」
「お婆ちゃん!?」
「まさか聖杯戦争に参加していたのですか!?」
まさかまさかの第三次聖杯戦争でのランサーのマスターはお婆ちゃんだった。いやいやマジかよ。俺の部屋にあったから少なくとも俺の家系の誰かだとは思いっていたが。
「懐かしいね〜。あの頃は私もランサーもよく暴れてたからねぇ」
「カルナってやっぱり強いのか?」
「カルナ!?あの大英雄カルナですか!?」
「おやまあ、真名まで知ってるなんて真琴ちゃんは物知りだねぇ。どうやって知ったんだい?」
まあここまできたら教えるしかないよな。俺はお婆ちゃんに令呪を見せた。お婆ちゃんはそれを見ても表情は変えなかった。
「真名なら俺のサーヴァント、アーチャーに聞いた」
「そうかい、真琴ちゃんは聖杯戦争に。これで5回目かい?」
「はい。今現在行われているのは第五次聖杯戦争です」
「4回目からまだ10年しか経ってないんじゃないかい?」
「ええ、第四次聖杯戦争からまだ10年しか経っていません」
「それは大変だねぇ」
それでもお婆ちゃんは顔色ひとつ変えなかった。
「それで聞きたいのはなんだい真琴ちゃん」
「聞きたいのはこの聖杯戦争で何が起きたのか。特に最後の時に」
あの日記には最後の事が書かれていなかった。切り取られた痕跡もないし、お婆ちゃんが書いたならサボったわけでもないだろう。多分他に理由があるからだ。
「第三次聖杯戦争はアインツベルンが終わらせたんだよ。最終日にランサー、アーチャー、アイドルの3騎は今の海浜公園があった場所で激突したんだ。でも突然光が落ちて私たちは同時に負けたんだよ」
「真琴君、これって」
「ムーンセルか…」
多分アインツベルンがムーンセルを使って3騎のサーヴァントを撃破したんだ。そしてその副作用で新都と深山町が入れ替わった。聖杯は多分ムーンセルの余波で壊れたんだろう。
「それで第三次聖杯戦争は終わりだよ。お婆ちゃんは聖杯を取れなかったんだよ」
「お婆ちゃんは聖杯に何を願おうとしたんだ?」
「うーん…その時はもうちょっと裕福になりたいとか、あと第二次世界大戦がおきませんように、とかかな」
「そうですね。第三次聖杯戦争後に第二次世界大戦が始まった。ナチスやユグドミレニア、帝国陸軍が聖杯を奪取しようとしたと噂もあります」
「そうだったんだ。詳しいんだなバゼットさん」
「これでも協会の人間ですから。ある程度は知っています。ですがわからない事もありますが」
「わからないこと?」
「ええ、聖杯の『泥』についてです」
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「さあセイバー!我とレースしろ!」
「お断りします、帰ってください、目障りです、消えてください、早く英霊の座に戻ってください、警察呼びますよカリバァーーー!!!!」
「うおお!??」
ギリギリ白刃どりでセイバーの聖剣を掴む。もう少し遅かったら玄関が血の海と化していただろう。
「別にタダというわけではない。我に勝てたら江戸前屋の商品全て買ってやろう!これでどうだ!!」
「いいでしょう、やります」
「それでいいのかセイバー……」
「シロウ、これは私に対する挑戦状です。レースに勝ってギルガメッシュの財宝を全て売り捌けばこの家にもイリヤスフィールの城に負けないぐらいの調理施設が手に入ります。それでも余るぐらいすよ?」
「よしやろうセイバー!」
◇
というわけで始まった冬木聖杯グランプリ!!この冬木のスピード自慢がそれぞれの野望のために街を駆け抜ける!
第1コース、セイバー&衛宮士郎!
マシンは……『ドゥン・スタリオン・バイク!!』
「行くぞドゥン・スタリオン!トランスフォーム!」
「変形したぁ!?てかバイク!?」
「時代の最先端を行くのが我がドゥン・スタリオンです」
第2コース、ギルガメッシュ!
マシンは……『ギルギルマシーン!!』
「たわけ、我のギルギルマシーンに勝てると思っているのか?」
第3コース、遠坂凛!
マシンは……『MAMAチャリ!!』
「ちょっと!ママチャリでどうやって勝てってのよ!!」
第4コース、アサシン&イリヤ!
マシンは……『ラブラブオープンカー!!』
「行くわよアサシン!狙うのは優勝よ!」
「オープンカーか…悪くないか」
(マスターはいないのね……なんか残念)
第5コース、ジャンヌ!
マシンは……『ライオン号!!』
「ライオン号ってお金入れなきゃ走らないのか……てかあれ遊園地のやつだよな」
「シロウ、あれ欲しいです」
「なんでこんなマシンなのよ……」
さあ各選手スタート位置についた!
そして今スタートの合図が………今鳴った!!
先頭に躍り出たのは……ギルガメッシュのギルギルマシーンだ!!
「早いな英雄王、流石勝負を仕掛けてきただけはあるか」
「ハハハハハッ、鈍いぞ雑種ども!我など後ろを見ながら走れるわハハハハハハ、ヘアッ!?」
そしていきなりコースアウト!!更に壁に激突して大破したぁ!!
「ギルガメッシュが死んだ!!」
「やったねシロウ!!」
「心配しろぉ!!………我泣きそう」
◇
今現在トップを走っているのは……セイバー、士郎ペアだ!それに続くようにアサシン、イリヤペア!その遥か後方に遠坂凛のMAMAチャリ、更に後方にジャンヌのライオン号だ!
「アーチャー、君なら撃ち落とせるだろ?コースアウトさせるんだ」
「仕方ないわね。さあセイバー覚悟しなさい!」
「シロウ狙われています!」
「て言ってもセイバーにしがみつかないと死んじゃう!!」
「そうですね。ドゥン・スタリオン!トランスフォーム!」
おおっと!?ドゥン・スタリオンが変形してサイドカーになった!!そこに士郎を乗せて、なるほどこれで迎撃するわけだ!
「
「げえぇ螺旋剣!?」
「オレ程じゃないけど、な!!」
「「「うぎゃああああ!!!」」」
士郎の矢がアサシンチームを吹き飛ばした!これはセイバーチームの一人勝ちか!?
「そんなわけないでしょうがぁ!!」
「リン!?」
「自転車だからこそできる近道か!!」
「ふふん、別にコースじゃないコースを走っても構わんのでしょ?」
ここにきて凛がトップに躍り出た!!しかしバイクには勝てなかった!
「なんでよ!?少しぐらいトップを味あわせなさいよ!!」
◇
さあレースも後半戦。ギルガメッシュもマシンを修復してレースに再び舞い戻ってきている。アサシンチームは近くにあった自転車で再び挑んでいる!宝具まで使っているぞ!
あ、ジャンヌはお察しです。
「このまま何事もなければいいのですが」
「!!セイバー、アレは」
「な、通行止め!?」
おおっと目の前に通行止めの看板だ!!目の前では工事の最中だ!しかしここを通らなければトップでゴールできない!迂回すればギルガメッシュに負けてしまうぞ!
「どうするセイバー?」
「仕方ありません。工事の人の邪魔をするわけにはいきません。迂回します」
ここでセイバーチーム迂回して別ルートで進み始めた!そしてギルガメッシュは迷わず直進したぞ!
「こんなものは強行突破だあ!!ハハハハハッ!痛っ!おい何をする!バカやめろ!コンクリートの塊を投げてくるな!すごく痛い!わかった、わかった謝るから!謝るからバイクにセメントつけないでぇ!!!」
「金ピカの断末魔が……」
「汚い断末魔ね」
「イリヤは厳しいね」
◇
さあレースも終盤戦!あとは長ーーーーーーーい直線だけだ!
トップは変わらずセイバーチーム!それを追いかけるのは薄汚れたギルガメッシュ!さらに宝石魔力でブーストをかけた凛!それに並行しているのはアサシンチームだ!
「この勝負、もらった!!」
「油断するなよセイバー」
「負けんぞ……絶対絶対絶対絶対負けんぞぉ!!」
「サーヴァントと張り合うなんて…凄いわねリン」
「色々とおかしいな」
(なんだろ、凄く嫌な予感がする)
「ハァ……ハァ………ま、負けない、わよ…」
全力セイバーに追いついてきたギルガメッシュ!
それを追いかける自転車たち!
もう必死なセイバー!
そしてここであいつが帰ってキタァ!!
「ハハハハハッ!真琴の英雄であるこの私!他の奴らと連絡とれるの忘れてたわ!!」
ゴールデンベアー号を駆るのはジャンヌだ!ものすごいスピードで全員を追い抜いたぞ!!
「これが私の宝具!『
『ダッセェ………』
おおっとジャンヌ以外の気持ちが一緒になったぞ!?そして一気に全員がスピードを上げる!!
「勝つのは!」「俺たちだ!」
「おのれブリキング!!」
「いっけぇ!!」「うおおおおっ!!!」
(何か、禍々しい魔力が近づいてる?)
「負けるくぁあああ!!!!」
「死に損ないめ!全員くたばってなさいよ!!」
全員横一線!そして最初にゴールテープを切ったのは………
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「こいつぁ」
散歩中に見つけた洋館。知っている。確かライダーのマスターの家だ。それにしてもこんな嫌な空気が漂ってたか?
「入ってみるか」
霊体化して内部に潜入する。中は薄暗くあまりよく見えない。アーチャーならよく見えるんだろうが……
「血生臭え。何があったんだ?」
「ぐっ……ランサーか?」
「ライダー!?どうしたオメェ!」
「蟲に……マキリのバケモノに…気をつけろ」
「マキリのバケモノ?」
しかし考える暇もなく、突如奥の扉が壊される。中から飛ばされてきたのはアヴェンジャー。対峙しているのは……老人か?
「手伝えランサー!あのバケモノはライダーを使ってサーヴァントを召喚しようとしている!」
「はあっ!?どういうこったそれ!!」
「フム、虫が二匹か……これは良いな」
老人は不敵に笑うと背後から大量の蟲を飛ばしてきた。見るもおぞましい大量のバケモノ。一匹一匹が明確な殺意を持っている。
「チッ!ライダーを連れて退避するぞ!」
「それが得策だろうな」
蟲をアンサズで燃やしながら屋敷を脱出する。まだ昼間だからか蟲は屋敷の外から出てこなかった。
「なんなんだあいつは!」
「間桐臓硯。マキリのバケモノだ」
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「聖杯の泥、ねぇ」
「何かご存知なのですか?」
「前の聖杯戦争が終わった後にマキリのクソジジイが何か言ってたね。欠片と泥があれば充分って」
「欠片と泥?それで何ができるんだ?」
「欠片は恐らく聖杯の欠片。なんでも前回は粉々に
「てかそのジジイって誰なんだよ」
「間桐臓硯……それがマキリのクソジジイさ」
臓硯がまさかの登場。ずっと出てなかったからね。
真琴のお婆ちゃんは第三次聖杯戦争の時は16歳という設定ですので、今は90ぐらいです。我ながら無茶な設定にしたな……
聖杯グランプリの勝者は皆さんのご想像にお任せします。あそこまでいくと誰が勝ってもおかしくないので。
次回は
何故ギルガメッシュがセイバーにレースを挑んだのか?
バゼットさんの秘密
そして脱落者アリなお話になります。