そして今回は日常編最後です!
「……ん」
目を覚ますといつもの寝ぼけ顔はなかった。どうりで寒いわけだ。あいつ無駄に体温高いからいい湯たんぽだったのに。私の許可なく起きるなんて許せないわね。
「うぅ……寒い」
2月11日。建国記念の日。この日本では国民の祝日だ。それでも真琴が通う学校は今は訳あって休校中だ。
そんなお休み真っ只中だというのに。ずっと私の湯たんぽとして活躍できるというのに。
「おはようジャンヌ」
「ねえ真琴は?」
「真琴なら朝早くから出かけたぞ?なんでも今日は夜まで帰ってこないってさ」
朝ごはんを食べながら衛宮士郎の話を聞く。どうやら学校に向かったらしい。休校中だというのに何をやっているのかあのバカは。
仕方ないから私がガツンと言ってやろう。何を?後から考えればいい。
「なあジャンヌも手伝ってくれよ。今日のパーティーの準備」
「パーティー?祝日だからってパーティーするの?バカじゃないの?」
「でも祝日だからじゃないよ。今日は真琴の誕生日なんだ」
「は?」
知らない、聞いてない、初耳だ。あのバカは今日が誕生日らしい。勿論復讐の魔女である私には関係のない話だ。むしろパーティは妨害するのが魔女の役目だろう。
それと同時に複雑な気持ちも存在するが……
「ジャンヌはプレゼント買ったのか?」
「ぷれぜんと?」
「誕生日なんだし当然だろ?真琴ならなんでも喜ぶと思うぞ」
「あんたは何をあげるのよ」
「変身ベルト。真琴そういうの好きだからさ」
一人で変身ごっこする真琴を想像する。あのバカなら違和感があんまりない。一人で『お借りしまーす!!』とか言ってそう。
でもプレゼントというのは面白いかも。変なもの押し付けてあいつの嫌な顔を見るのも面白そうだ。
「今ならまだ学校にいるかもな、って……もう出かけたのか」
◇
「真琴?ああ、マコッチなら今出てったよ」
「はあ?」
学校についてまずグラウンドに向かった。そこには走ったり、跳んだり、槍を投げたりと運動をしている学生がいた。恐らく陸上部とかいう組織だろう。校舎もだいぶ直っている。だからグラウンドで部活ができるのだろう。
「てか、真琴は何をしに来たわけ?」
「マコッチはあたしが誘ったんだ。今日ぐらいは顔をだせってさ。そしたら嫌味言いながら来てくれたよ!……まあ練習には参加してくれなかったケドさ」
「真琴がどこに行ったかわかる?」
「んんーーあいつに言いふらすなって言われてるんだ。てかお姉さんマコッチの知り合い?」
「知り合いって言えば知り合いね。身内よ」
「なんだそうなんだ。どうりで雰囲気が似てるわけだ!でもこの前のレッドの兄ちゃんとも雰囲気似てるしなぁ」
レッドの兄ちゃん?赤いやつといえばあのアーチャーが思い浮かぶ。
「まあ身内ならいいか!マコッチならデートに行ったよ、って姉ちゃん大丈夫か!?顔色悪いぞ!?」
◇
まさかあそこまでバスが難しい乗り物だったなんて。おかげで帰りの分のお金がなくなったわ。
「たしか……いた!」
銅像の前に真琴がいた。いつも通りの革ジャンにジーパン。妙に様になっているのが悔しい。あいつ中々カッコいいし。
そんな真琴に近づく一人の女。黒髪のボーイッシュでクールな雰囲気を醸し出している。彼女も中々可愛い。
そしてそんな二人は……似合っている。
「ふーん。狩野君も隅に置けないわね。まさか隣のクラスの朝田さんと付き合ってるなんて」
「!?あ、あんたか遠坂凛」
突然声を掛けてきたのは遠坂凛だった。手に荷物を持っているから多分真琴のプレゼントだと思う。
「貴女もプレゼントを買いに来たの?」
「ち、違うわよ!誰があんなバカのために!」
「ふーんどうかしらね〜。貴女狩野君と一緒に寝ているみたいじゃない」
「な!?そ、それはあいつが無駄にあったかいから湯たんぽがわりに使ってやってるからよ!」
意地悪に質問してくる遠坂凛。違うのに。
「それでどうするの?」
「どうするって……なにを?」
「狩野君の後、つけるんでしょ〜?」
またしても意地悪に聞いてくる遠坂。どうやらこいつの中ではもう決定していることらしい。
「しょ、しょうがないわね!あんたが後をつけるなら、私も手伝うわ」
「まったく素直じゃないんだから。それじゃ決まりね」
こうして真琴の追跡が始まった。
◇
真琴たちはまず喫茶店に入っていった。お洒落な喫茶店だ。私たちも入っていくと、まず目についたのはガングロハゲマスターだった。よくあんな厳つい姿で喫茶店のマスターなんかするわね。
「この席ならバレないし話も聴けるわね」
「本当に大丈夫なの?」
「問題ないわ、多分」
心配しか残らない。こいつの最大の欠点は『大事な場面でのうっかり』だ。それが一番心配だ。
真琴と朝田とかいう奴の会話はいたって普通だった。勉強の話、家族の話、最近の出来事、3日後の花火大会の話などなど。正直つまらない。
「これがデートなの……つまらないわね」
「そう言わないのジャンヌ。まだ始まったばかりよ」
喫茶店で30分過ごした後、真琴たちは雑貨屋さん、ガンショップ、などなど。映画館では『そーどあーと・おふらいん』を見にいったようだが、どうも甘ったるい予感がしたのでそこは遠坂に任せて私はプレゼントを買いに行くことにした。
「何をあげたら面白いかしら」
「おう、何やってんだジャンヌ」
振り返るとランサーがそこにいた。こいつも無駄に着こなしているからなんか悔しい。
「別に。ただブラブラしてただけよ」
「そうかい。あんたのことだからあの小僧に何か買うと思っていたんだがな」
「はあ?そんなわけないでしょバカじゃないの?死んじゃえば?てか死ね!自分の槍に貫かれて自害しろ!!」
「なんか俺だけ酷い言われようじゃね!?」
こうしてランサーを言葉の暴力で倒した後に私は気づいてしまった。
そういえばお金なかった。
◇
その後も特に進展なしで終了した真琴のデート。彼女と別れた後真琴は自分の家に戻っていった。
遠坂はそこまで追うつもりはないと衛宮の家に戻った。そういえば今日は衛宮の家でパーティーだ。なのに真琴は自分の家に戻った。つまり真琴はパーティーを知らない?
「まったくしょうがないわね」
呼び鈴を鳴らす。しかし反応がない。もう一度鳴らす。やっぱり反応がない。
「勝手にお邪魔するわよ。って暗っ!」
電気がついていなかった。まだ外は少し明るいというのに。まるでテレビで見た廃病院だ。
「あそこだけ電気が付いてる」
そんなホラーハウスの一室だけ明かりがついていた。中を覗くとそこは書斎のような場所だった。そこでパラパラとページをめくる音がする。
(何を読んでるのかしら)
真琴はこちらに気づいていない。よく目を凝らすと真琴が持っているのはアルバムだった。写真が何枚か見える。しかし距離が距離で全然見えない。
(真琴の子供の頃か……少し気になるわね)
真琴はアルバムをしまうとこちらに歩いてくる。このままでは鉢合わせだ。急いでリビングに入り込む。真琴はそのまま外に出ていったようだ。
「はぁ…危なかった」
私も帰ろう。しかし私の足は書斎へと歩を進めていた。私は書斎に入るとアルバムを手に取る。本当はこんなことダメなのに。いやいいのよ。私は魔女なんだから。むしろ相手の嫌がることをしないと。
「あれ。真琴の小さい頃の写真しかない」
最後の写真は恐らく小学生の頃の写真だろう。両親と一緒に入学式の看板の前でピースする真琴。今と違いかなり女の子のような顔をしている。中性的というのだろう。
「どうせならこのまま大きくなればよかったのに……って何を言ってるのよ私は」
真琴の写真は小学生の時で終わっている。まずそれ以降に写真がない。これ以外にもアルバムもない。でもこれでプレゼントは決まった。
◇
夜になって真琴の誕生日パーティーが始まった。真琴はサプライズパーティーに驚いていた。『あれ?今日俺の誕生日だっけ?』みたいなクソ鈍感展開がないだけ評価は高いわね。
そしてプレゼントを渡す時間になった。
衛宮は変身ベルト。
遠坂は誠と描かれたTシャツ。
セイバーは狼のぬいぐるみ。
イリヤは黒いマフラー。
アーチャーは『不思議の国のアリス』の小説。
アサシンは時計。
藤村センセーは虎のストラップがついた竹刀。
バゼットは黒いグローブ。
ランサーは色違いのアロハシャツ。
そして私は、
「これよ!はいチーズ!!」
真琴とのツーショット。あんな幼いころの写真で終わらせてたまるもんですか。こいつの人生はまだまだこれからなんだから。もっと
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そんなパーティーをおこなっている最中、冬木教会では、
「ほう、あえて本気か英雄王。この時期に上半身裸とか寒くないの?」
「貴様にはエアが一番効果があろう。エアは対界宝具だからな。世界である貴様には天敵と言える。あと無茶苦茶寒い」
「気を抜くなよギルガメッシュ。私も本気を出そう」
「立ちはだかるか神父。お前の相手は私だ」
白ずくめの男=世界。原初の姿に戻ったギルガメッシュ。カソックを脱ぎ10年以来の本気になる言峰。黒いコートを脱ぎ白シャツに黒ベストの姿になったアヴェンジャー。
世界は竜殺しの剣を二本構え、
ギルガメッシュは乖離剣を構える。
言峰の拳はアヴェンジャーに向けられ、
アヴェンジャーは通販で買い、改造したトンプソン・コンテンダーを言峰に向ける。
そして、今四人が激突する。
アヴェンジャーがコンテンダーを買ったのはa〇〇zonです。関係ないね!
次回から最終決戦に向けて進んでいきます!今年中に終わるのか?終わらないのか?そんなこと俺が知るか(暴走)!!
とにかく次回はセイバーVSギルガメッシュのレース対決です。