Fate/Arie night   作:無限の槍製

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前回と比べてかなり短くなった。許してくれ。
というわけでバゼット、ランサーvsメイヴ、クー・フーリン・オルタ!


俺と私の一番の英雄

ショッピングモール『ヴェルデ』

 

今現在ここは戦場と化している。食品売り場ではバゼットとメイヴが。地下の駐車場ではランサーとクー・フーリン・オルタが戦闘している。

 

食品売り場

 

バゼットとメイヴの戦闘はメイヴが優勢に見えた。実際バゼットはメイヴの鞭に翻弄されている。どこから来るかわからない変則的な動きに障害物が多いこの食品売り場ではバゼットにとって不利なステージだった。

 

「アハハハ!ほらほらもっと鳴きなさい!!」

 

(不味い、このままでは。この状況をなんとかしないと)

 

「もう終わりなの?いいえ終わらせないわ。もっとよ!」

 

バゼットに考える隙も与えないメイヴ。鞭はバゼットの左腕に巻きつき離さない。そしてそのままパン売り場に投げ飛ばされる。

 

「このままでは…このっ!」

 

「何よ死に損ない!」

 

それでもバゼットは立ち上がりメイヴに拳を振るう。メイヴ自身もそれに対応するがいくつかは当たってしまう。それがメイヴにとって致命的なミスになる。

 

「そこっ!!」

 

「いたっ!なにするの、よ!」

 

「甘いっ!」

 

メイヴの攻撃を交わし、なお拳を叩き込み続ける。メイヴは一撃一撃確実にバゼットにダメージを与えるに対して、バゼットはメイヴに隙に連続で攻撃を叩き込みまた隙を見つけるまで必死に耐える。

 

実はこのやり取り、もう10回目なのである。

 

「くっ!このやり取り、もうやめにしない?」

 

「自慢ではありませんが、私普通の人間なのでサーヴァント相手にこのような戦法しかできないんですよ」

 

「頭から血を流しながら殴って来るのが普通の人間なら、こんな提案しないわよ!!」

 

そう、バゼットはメイヴの攻撃をほとんど食らっているために全身へのダメージが凄まじいものになっている。頭からは血を流し、左腕の骨はヒビが入っている。更に全身の力をフルに活用した攻撃をしているために全身の筋肉が悲鳴を上げていた。

 

「そう、もう限界でしょ?ツライんでしょ?だから楽にしてあげる」

 

「やれるなら、やってみてくださいよ!!」

 

バゼットは硬化のルーンを両足にも発動させてメイヴに突進する。更に両手のグローブに炎のルーンを刻む。燃える拳がメイヴを襲う。

 

「アンサズ…クーちゃんも得意だったっけ」

 

「せいやっ!!」

 

「だからこそ」

 

炎のパンチを交わすと同時にバゼットの左腕に鞭を強く巻きつける。ミシミシと厭な音をたてる。

 

「ぐっ、うああっ!」

 

「勝手にクーちゃんの特技をとらないでっ!!」

 

そしてそのまま何度も地面にバゼットを叩きつける。何度も何度も。初めのうちはバゼットも叩きつけられる度になんとか振り解こうと抵抗した。しかしそのうちバゼットは抵抗をやめた。そしてグシャっという音を聞きメイヴは叩きつけるのをやめた。

 

「なんだ…クーちゃんのマスターなんだからもう少し頑丈と思っていたのに」

 

虚ろな目を開いたまま倒れたバゼット。その手には落ちていたチーズが握られていた。

 

 

地下駐車場

 

「ハア…ハア…クソッ!野郎なんてモンまとってやがる」

 

ランサーは車の陰に身を潜めていた。彼自身右腕を負傷していた。更にオルタとでは相性が悪かった。ランサーとオルタの宝具は共に『ゲイ・ボルク』。能力は『因果逆転の呪い』。しかし呪い同士の衝突はさらなる矛盾を発生させる。つまり宝具では勝負は決しない。

 

しかしオルタにはもう一つ宝具が存在した。それはとある海に存在した海獣。魔槍の素材となった化け物の鎧。その名も『噛み砕く死牙の獣(クリード・コインヘン)』。魔槍を捨てることで発動できるオルタの宝具。

 

「あーーあんな宝具があるなんてな。ありゃスカサハ師匠でもキツイかもな」

 

一台一台車を破壊して回るオルタ。魔槍を自ら封じている今がチャンス、なのだが。クリード・コインヘンは自身の攻撃力、防御力、素早さ、魔力など全ての機能が大幅にパワーアップしている。負傷している今、のこのこ姿を現せば宝具を放つ前に殺される。

 

「でもまあ、あれを倒したら師匠を超えるってことか?」

 

それでもこの男、諦めが悪いのである。

 

「しかし左で投げられるか?一応投げられるには投げられるが、ほとんど右で投げてたからな」

 

右腕は負傷していて左腕ではあまり投げたことがない。万策尽きたかと思ったとき、ランサーの脳裏にとある日の出来事が蘇る。それは影の国で修行を始めてスカサハから槍をもらったときだ。

 

 

『馬鹿者。槍を力任せに投げるな』

 

『んなこと言ったってよ。現に今までこのやり方で倒してきたんだ。今更直せるかよ』

 

『そうか。ならば直す必要はあるまい。別に新しい投げ方を覚えれば良い』

 

『新しい投げ方?』

 

『ゲイ・ボルクも無敵ではない。いずれはその槍も砕かれよう。だからこそ因果逆転の呪いに頼らない、普通の投げ方を教える』

 

『普通の投げ方って…俺のは普通じゃねえってのかよ?』

 

『まあ聞け。槍は普通に投げてもいずれは地面に落ちる。心臓目掛けて投げたはいいが、心臓に刺さらず地面に落ちたでは示しがつかんだろ?』

 

『じゃあどおするってんだよ?』

 

『槍を少し高めに投げろ。そうだな…これくらいの距離なら左肩を狙え。そうすれば槍は心臓に刺さる』

 

『マジかよ…本当に刺さりやがった。てか練習用の人形が粉々に』

 

『万物は全て重力に引き寄せられる。槍も同じだ。少し高めに投げれば槍は重力に引き寄せられ、丁度心臓に突き刺さる。だがまあこれの調節が難しくてな。高すぎても低すぎても、右や左にずれてもダメだ。それに距離やその時の風の流れ……とまあやることが多くて結局は力任せになる』

 

『いやダメじゃねえか!!』

 

 

「んなこと言ってたな。結局殆ど力任せになっちまったが」

 

もうすぐオルタがやってくる。

 

「まあこの際小細工は無しだ。おもいっきり投げてくるか」

 

そしてランサーは車の陰から姿を現した。それを確認したオルタはランサーに迫る。

 

「ひい、ふう、みい……よし」

 

ランサーは槍を構える。崩壊覚悟で右腕で投げるつもりだ。この右腕が潰れるか、自身が潰れるか。このままだとこの二択だ。

 

オルタはランサーの槍に警戒したのか更に速度を上げる。もうすぐランサーにオルタの爪が迫る。時間にしておよそ10秒。

 

既にカウントダウンは始まっている。ランサーはその腕に力を込めて、

 

「この一撃……手向けと受け取れ」

 

槍を投げる。槍は一直線にオルタへと進んでいく。このままいけば確実にオルタの心臓を抉るだろう。しかしオルタは気づいていた。これはただの投擲であると。魔力もまとわせず、因果逆転の呪いも発動していない槍。だが交わすには距離が近すぎる。これは防ぐしかない。そのままオルタは左腕で心臓の位置をガードした。

 

しかしこれまではランサーの思惑通りだった。

 

槍は左腕を貫通したが心臓までは届いていない。ランサーの槍は届かなかったのだ。最後の後押しがない限り。

 

「そおらっ、ここからだ!!」

 

ランサーの飛び蹴りが槍を押し出し胸に深く突き刺さる。そしてランサーはここで真名を解放する。

 

蹴り穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)!!」

 

槍はオルタの心臓をズタズタに破壊した。しかしそれでもオルタは止まらない。生前の戦果から会得した『戦闘続行』のスキルが発動したのだ。

 

「チッ!我ながら鬱陶しいぜ!」

 

槍を引き抜き首を撥ねようとする。がオルタはそれを爪で防ぐ。さっきまでの勢いはないがそれでも確実に防いでくる。

 

「(心臓を破壊したのに……我ながらスゲェもんだ)でもなあ!」

 

「!!」

 

「師匠の技を信じなくて、テメェの未熟な技を信じてどおするってんだよぉ!!!」

 

オルタを蹴り上げる。そのままランサーも跳躍。そして最後の一撃を放つ。狙いは必中、穿つは心臓。

 

突き穿つ疾風の蒼き槍(ゲイ・ボルク・アルスター)!!!」

 

魔槍はオルタの心臓をもう一度貫いき、そのまま地面に縫い合わせた。更に地面から無数の棘がオルタをズタズタにしていく。その様子を見てランサーが一言、

 

「わりい、やっぱ今の宝具の名前なしだわ」

 

と言った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

どこか遠くから大きな魔力を感じた。このショッピングモールの外から。多分宝具と宝具のぶつかり合いのような。あ、そうだ。この魔力の感じは……真琴君ですね。成る程……彼はまだ諦めていませんか。

 

なら私も……立ち上がりましょう。

 

「なんで……あんた死んだでしょ…」

 

「切り札は死ぬときに使うものです」

 

「まさか……蘇生のルーン!?」

 

「ご名答!!」

 

手に持っていたチーズをメイヴに投げる。メイヴは心底嫌そうな顔をしてそれを避ける。ですがこちらにはまだ大量のチーズがあります。それに気づいたのか更に嫌そうな顔をしたあと、怒りの表情になった。

 

「わかっていてやってるでしょ」

 

「それも正解です」

 

「……もう一回死ねぇ!!」

 

メイヴは鞭を振り回しながらこちらへ走ってくる。辺りを更に滅茶苦茶にしているところを見ると、相当怒っているようですね。それでも冷静さを忘れない辺り、流石クー・フーリンを倒しただけあります。

 

「はぁー………ふぅー……」

 

呼吸を整える。蘇生のルーンはただ蘇るだけで傷は治してくれない。つまり満身創痍なのは変わらない。どのみち打てるのはあと一回が限界です。

 

「終わりよ!バゼット!!」

 

「いいえ、まだ終わりません!!」

 

攻撃の一瞬の隙間を見つける。迷わずそこへ左ストレートを叩き込む。がメイヴの鞭でそれは防がれる。まあいいです。所詮左はフェイク。本命は、

 

「右ストレートなんでしょ!!」

 

「その通りです!!」

 

メイヴは鞭を捨てておもいっきり振りかぶる。このままいけばクロスカウンター、つまり相打ちになってしまう。

 

「うおおおおおおっ!!!」

 

「たああああああっ!!!」

 

互いのストレートが交差する。

 

私のストレートはメイヴの頰に命中し、

 

メイヴのストレートは私には届かなかった。

 

「とおりやぁあああ!!!!」

 

そこから全身の力を振り絞り殴り飛ばす。そのままメイヴはチーズの山に突っ込んでいきました。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「たくっ、しぶといにも程があるだろ」

 

「……それ、美味いのか?」

 

「美味くはねえよ。まず食いもんじゃねえ。形は変わったが葉巻だよ」

 

「なるほどな……お前は俺の技を未熟って言ったな」

 

「言ったな」

 

「いつまでもあの人の技を使っても仕方ないだろ。いずれは自分の技を持たなきゃいけない。それなのにお前は未だにその槍に頼っている。貰い物でしか戦えないお前も未熟だと思うが?」

 

「……まあ確かにな。ハッキリ言って未だに自分自身の技を持ってねぇ俺からしたら、お前の技を未熟っていう資格もねえ。

でもな、師匠から教わったこの技をしっかりと後の世に刻み込んでおく必要もあると思うんだ。まあただの言い訳に過ぎねえが」

 

「……お前にとってその技はなんだ」

 

「……師を忘れないための……絆か?」

 

「ではお前にとっての師とはなんだ?」

 

「んなもん分かってんだろ」

 

 

「ここまで…やるとは……想定外だったわ」

 

「もう動けませんが、ね」

 

「はあ、貴女が羨ましいわ」

 

「???私がですか?」

 

「だってクーちゃんのマスターなんでしょ?つまりずっと、いつでも、どこでも、クーちゃんといられるわけでしょ?羨ましくないわけないじゃない!!」

 

「そうですか?私の彼へのイメージは3日で崩れましたが」

 

「それでもクーちゃんをサーヴァントとして従わせてるのは何故?やっぱりクーちゃんが好きだから?」

 

「どちらかというと『愛』というより『友』としては好きですね。まあ昔から彼の本を読んでいたからなんですけど。今回の聖杯戦争だって、彼と共に戦いたいから呼んだのです。それに」

 

「それに……なによ」

 

 

「スカサハは俺の一番の英雄だよ」

 

「クー・フーリンは私の一番の英雄ですから」

 

 

メイヴ、オルタの消滅を確認した両者はすぐに合流した。

 

「お互い派手にやられましたね」

 

「ここまでとは思わなかった。ああ格好つかねえ」

 

「ですね……」

 

そしてお互い地面に倒れる。しかし二人の顔には笑顔があった。

 

赤枝の騎士は決して負けない。そう、彼らがこうして笑っていられる間は。




ランサー陣営もなんとか勝利。しかしデパートの被害はとんでもないけど。もう少し戦闘描写を長くできればよかったんですけど、スミマセン許してほしいです。

次回は士郎vsセイバー・オルタ!

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