どうやら昨日の夜中から大吹雪のようだったらしい。外一面は銀世界と化していた。こんな日は外で遊ぶのが一番だけど・・・・
「あ~ここから出たくない~」
「そんなこと言ってないでシャキッとしなさい」
「そんなこと言いながらシエルだって炬燵に体埋めて。ちょっと邪魔なんだけど」
「ふん、大人二人が情けないわね。ここは子供の私に譲りなさい、よ!!」
「ちょっと蹴らないでよイリヤ!」
「痛たたた!どこ蹴ってるんですか!」
引っ張り出してきた炬燵に入る三人の女性。
一人はイリヤさん。アサシンのマスターだ。いつもは大人びているのに、ここぞというときには子供の特権を使ってくる。
もう一人はアルクェイドさん。昨日知り合った女性だ。キノコ狩りに山に来ていたらしい。でも彼処には変なキノコしかないと思う。
更に増えたのはシエルさん。なんでも冬木に仕事で来ているらしい。アルクェイドさんもその手伝いに来ているとか。
「まったく。一人で行動するなとは言いませんがそれにも限度があります。何故キノコ狩りなんですか!?」
「えーいいじゃんキノコ。なんか食べたくなったのよ」
「でも彼処変なキノコしかないわよ?」
「え!?食べなくてよかった~。あ、でも昨日のシエルのカレーにいれちゃった・・・・」
「どうりでお腹が痛いはずですよ・・・・」
なんとも微笑ましい場面。でも私は・・・・
「あの・・・・そろそろ冷えてきたんですけど。炬燵に入れてもらえないでしょうか?」
「「「あ・・・・」」」
どうやら本気で忘れ去られていたようです。
◇
昨日アルクェイドさんと出会ったあと、
「私はシエル・・・・って人の仕事の手伝いでこの冬木に来てるの。今は勝手に自由行動中」
「勝手に動いていいんですか?」
「多分ダメかな。さっき連絡あったし。じーぴーえすで位置情報送ったからそのうち来ると思うけど・・・・取り込み中だった?」
「ああ現在取り込「いいえ問題ないわ」イリヤ!」
「いいじゃないアサシン。きっとそのシエルって人の仕事と、私たちの目的は多分一緒だから」
「え?どういうこと?貴女もシエルと同じ?」
「はあ、巻き込むのが上手いねイリヤは」
こんな会話が私とライダーを置いて繰り広げられていた。そしてシエルさんが到着したあとも何やら難しい話をしていた。というか参加させてもらえなかった。
イリヤさんにはただ『サーヴァントは任せたわよ』とだけ。いまだに私だけ話の輪に入れていない。ついでに炬燵にも入れていない。あげくの果てにはライダーと一緒に買い出しに出された。
「もう、少しぐらい話してくれてもいいのに」
「相手が普通の人間のマスターなら良かったのだがな。なにせ相手は化け物だ。桜には相手をさせたくないのだろう」
「化け物?」
「桜はしらないか。まあ話しておく。アヴェンジャーのマスターは死徒と呼ばれる、まあ簡単に言えば吸血鬼、そう認識しておけ」
そんなのが存在するんだ。でもまあライダーみたいな存在もいるのだから不思議に思う必要もないのかな?
「俺の存在していた時代にも死徒という存在が囁かれていた。だが前よりはその存在も薄れているようでな。こうして見たのは二回目だ」
「一回目は?」
「俺が死神・・・・魔進チェイサーとして戦ったはじめての相手だ。さほど苦戦もしなかったが」
「じゃあ勝てるの!?」
「それはわからん。昔の死徒とは戦ったことないからな」
ライダーは私にヘルメットを渡してきた。今から家に帰る。きっと三人とも寝転がってぐうたらしてるんだろうな。
「桜、少しよるところがある。構わないか?」
「え?いいけど」
ライダーはそのままバイクを走らせた。その先は町外れの森だった。
◇
「はいはーい。あれ間桐、とライダー」
「あれ狩野先輩?どうしてここに」
「おおかた同棲中か?」
「間違いじゃないけど、同盟関係って言ってほしいな」
洋館にたどり着いたらそこには狩野先輩がいた。彼がアーチャーのマスターとライダーから聞いている。特に驚かないけど、
「どうかしましたか真琴君。な!?何故ライダーがここに!」
「そんなに驚くなよバゼットさん」
「お前たちに話があってきた」
そう言うとライダーは勝手に上がり込んだ。靴は脱ごうよ・・・・
「はいブラックジャーック!」
「だぁーーまたバースト!?」
部屋のなかではアーチャーとランサーがブラックジャックで遊んでいた。同盟中とは言え敵同士なのにここまで仲がいいとは。
「はいカードは片付けてください」
「おいおい負け越してるからってなあ!」「そうそうとカードを片付けるのは」「「大人げないぞ!」」
「だそうですが?」
「ごはん抜きです」
「別にぃ~ご飯食べなくてもサーヴァントは大丈夫だしぃ?」
「そうでしたね。ではホットドックでも食べますか?」
「調子のってスミマセン」
なんかコントを見ているみたい。
「話をしていいか?」
「「「「どうぞどうぞ」」」」
「では単刀直入に言う。クリーザを倒すのに協力してほしい」
「クリーザを」「倒すのに」「協力して」「ほしい?」
「クリーザの配下には強力なサーヴァントがあと五騎いる。それらを倒すのに協力してもらいたい。どうだろうか」
「俺はいいぜ。あの狐尻尾にリベンジしなくちゃな」
「私もマスターと同じ」
「我々も負けてますからね。名誉挽回といきますか」
「だな。野郎は俺が潰す」
アーチャー、ランサー陣営は賛成のようだ。これでこちらはライダー、アサシン、アーチャー、ランサー陣営。更にアルクェイドさんにシエルさんがいる。これで先輩と姉さんがいれば。
「これで、アヴェンジャー陣営以外が仲間というわけだな」
「え?先輩たちがまだ」
「そこは昨日のうちに声をかけておいた。二つ返事だったぞ」
いつの間に。いやそういえばライダー、夕方ごろいなかったけど・・・・
◇
洋館をあとにして家に帰る。案の定三人は炬燵でゴロゴロしていた。外とは段違いの温さだ。
「もうゴロゴロしてないでご飯の準備ぐらい手伝ってくださいよ」
「そうですね。少しぐらいなら手伝えます。ほら二人も動いてください」
「「ガンバレー」」
しかしイリヤさんとアルクェイドさんは動かない。炬燵に入っている二人の顔はフニャフニャしている。つまり幸せそうな顔。
「まあやりますかシエルさん」
「そうですね。で、メニューはカレーですか?」
「や・り・ま・す・か?」
「・・・・はい手伝います」
◇
今度はおやつが食べたいとのことで商店街まで足を運んでいた。
「これぐらいあれば・・・・足りるかな?」
「なにやってンだよ桜」
「あ、兄さん?」
丁度公園に差し掛かったところで兄さんと出会う。そういえば今日は朝から見ていなかった。
「兄さんこそどうしたんですか?」
「バカと一緒の空間にいたくないだけだよ」
多分あの三人だろうな・・・・
「またバカみたいに買ったな」
「これぐらいないと足りませんよ」
「だろうな・・・・あんまり無理するなよ桜」
途端に兄さんの口から出たのは私に対する心配の言葉だった。とても珍しい。だからまた雪が降ってきたのだろうか?
「なに驚いた顔してんだよ。僕だって心配ぐらいするさ。お前の兄貴なんだから」
顔は不機嫌そうだ。でもそれでも心配してくれている。なんとなくうれしい。兄さんに心配してもらったのはいつぶりだろう。
「聖杯戦争は大変だろ?なんなら僕が変わってもいい。いや変われ。僕だって叶えたい夢があるんだよ!」
「ふふっ、ありがとうございます兄さん。でも一度やり始めたことは最後までやりとげないと」
「はあ、相変わらずめんどくせえなあお前は。いいよ。なら最後までやりとげろよ。少しは手伝ってやるから」
気持ち悪いぐらい優しい兄さん。でも間違いなくこの人は私の兄だ。間桐慎二だ。たまにはこんな日も悪くないかな。
そして私は一歩踏み出す。
でもその足取りは止まる。
理由はすぐには分からなかった。
そして分かった。
お腹が痛い。お腹を触ると手が赤くなっている。
喉をナニか熱いものが込み上げてくる。間違いない。血だ。
「兄・・・・さん?」
「手伝ってやるよ。お前がさっさと死ぬように」
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「・・・・なあ」
「どうしたのマスター。今すんごくイライラしてるんだけど」
「それは多分ここにいるやつ全員だから安心しろ」
俺達四人はテレビの前で怒りをためていた。理由は簡単。間桐桜が何者かに襲われて重傷らしい。襲ったのは分かっていない。でも俺達には分かる。
「ねえ、これって」
「一人ずつ、確実に、ですか」
「気に入らねえな。こういうのも戦法ってわかるんだが、どうも気に入らねえ」
「もう場所は分かってるんでしょバゼットさん」
「ええ、新都のホテルです。勿論」「今から殴り込みだ。もう誰もやらせねえ」
俺達は静かに雪が降る外へと出た。そこから向かうのは一ヶ所。今度こそ倒す。
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「衛宮君、まさか一人でいくつもり?」
「止めても無駄だぞ」
「バカね。誰も止めないわよ。私が言いたいのは、私も連れていけってこと」
遠坂と外へ出る。そこにはアーチャーがオープンカーに乗って待っていた。
「はあ、まったく。私は運転できないぞ?」
「だからって私たちに運転させるの?それこそ一発で捕まるわ。ある程度大人に見えるあんたに運転させるのよ」
「やれやれ。どうなっても知らんが・・・・それでもいいなら乗るがいい」
「よし・・・・いくぞ!」
アーチャーの運転のもと、俺達は新都に向かった。桜の敵を取りに。
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「クリーザの場所が分かりました。新都のホテルです」
「桜をこんな目にあわせて。ただじゃおかないんだから!」
「桜はイリヤとアサシン、ライダーに任せておきましょう。私たちは私たちの仕事を」
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「ほら出来たよ。こいつで完成だ」
「ほう、流石といったところか。妹が魔法使いなら姉も化け物か」
「誉め言葉かい?だがまあ英霊の腕を作ることになるとはね。いい経験をさせてもらった」
「ではな、代金は冬木教会に頼むぞ」
「おや?案外ケチなんだな英雄王」
「あまり詮索するなよ蒼崎橙子。禁句を言われたくなければな」
「言われたところで、お前をぶち殺すから問題ないさ」
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「さて、もうすぐか。アヴェンジャーはここに残れ。あとは潰してこい。さあ楽しい愉しい祭りの始まりだ」
桜がやられた?おのれクソ若布!
次回から中盤戦の山場になります!!