「久しぶりだな」
「久しぶりって・・・・俺はもう会わないって思ってたぞ」
「そうか?俺は会うと思ったけどな」
女性はそう言うと俺にコンビニ袋を渡してきた。中にはアイスが三つ。全部ストロベリーだ。俺はチョコがよかったんだけど。
「そういえば自己紹介してませんよね?この人は両儀式。このアパートの住人です」
「両儀式・・・・俺は狩野真琴です。助けてもらってありがとな」
「助けたのはオレじゃない。まあそいつは追々な」
俺はベッドから降りようとするが体中を痛みが走る。そうとうやられたな。
「道端で倒れてたお前たちをあのバカは連れて帰ってきたんだ。そんなの救急車を呼べば早いのにな」
「私はまだ大丈夫かもしれませんが真琴君は恐らく死んでいました。それを見越して治療を施してくれたのでしょう?」
「へえ、オレが治療したって分かるんだ?」
「ええ、彼はあまり手先が器用ではなさそうなので」
「いいや、案外わからないぜ?幹也はやるときはやるからな」
いつの間にか話についていけなくなる。それにしてもよく生きてたな俺。ぶっちゃけ死ぬかと思ったけど。
あのサーヴァントは『玉藻の前』と『女王メイヴ』だろうな。まああの狐尻尾の真名は怪しいところだけどな。
それに今頃だけどランサーの真名は『クー・フーリン』だな。ケルトの英雄『クランの猛犬』。宝具から分かったことだけど・・・・どのみち対抗策がないな。
「んで、どうすんだお前」
「うえ?」
「うえ?じゃないだろ。今からするのか?しないのか?」
「あーーえーーと(何の話してたんだ?全然わかんないけど)・・・・する」
「そうか、それじゃあ加減はしないぜ」
そういうとバゼットさんと式さんは部屋を出ていった。これから何をするんだ?
◇
「まあここなら誰にも迷惑はかけないだろ」
「大丈夫ですか真琴君。本当ならベッドで休んでおくべきですよ?」
「心配するなら俺をベッドに縛るんだったな。あんたも大丈夫って思ったから止めなかったんだろ?」
「まあそうですが」
いまだに理解できない俺をよそに式さんはナイフを取り出す。え?ナイフ?ナンデェ!?
「で、どっちから?なんなら同時でもいいぜ?」
「そうですね。まずは私から「俺からやる」真琴君!?」
「別にいいだろ?(何するか分からないから)さっさと終わらせよう」
「へえ、案外元気だな。手当が効いたか?」
「多分な」
式さんはナイフ持ってるから俺もジャックにナイフを借りる。その瞬間式さんの目が輝いた気がしたけど気のせいだろう。
「じゃ・・・・始めるか」
いきなり飛び出してくる式さん。なるほど殺る気か。マジで殺る気か・・・・あれ?こんな話してたの?
「うわっ!?」
「(!今のを止めたのか?こいつ案外やるな)こいつはどうだ?」
「チッ!だあっ!」
ナイフ同士がぶつかり合う。確実に急所を狙ってくる式さん。それに対してギリギリナイフを止める俺。俺も戦闘慣れしてきたと思ったが、この人はその遥か上を行く。まるでいくつもの死線を潜り抜けた歴戦の戦士、みたいな?
「そこだっ!」
「ッ!やるじゃん」
「ぐはっ!」
やるじゃんとか言いながら思いっきり蹴りを叩き込んでくる式さん。メチャクチャ痛いんですけど。
(カモンッ!誰かいないか?)
《それなら私の槍とジャック殿のナイフを合体させれば!》
《すらっがーらんすだよ!》
「(よし決まりだな!)ジャックさん!ディルムッドさん!切れのいいやつ、頼みます!」
槍とナイフが合体して青い槍になる。光を越えて闇を切れそうな槍だな。
「スラッガーランス・・・・どっかの光の戦士が使いそうだな」
「・・・・分かるのか?」
「前に鮮花・・・・オレの知り合いがそんな本読んでた」
「・・・・いい友達になれそうだ!」
スラッガーランスで式さんを攻撃する。リーチ分もあって有利にことを進められる。式さんの表情から余裕が消える。そのかわり本気の顔になる。って不味いなこれ。
「直死・・・・」
式さんの瞳が青く光る。綺麗な色だ。でもビームとかでないよな?
「殺られる前にやる!」
スラッガーランスのレバーを三回動かす。槍に魔力がためられていく。これなら一発ぐらい!!
「死が・・・・オレの前に立つなよ?」
「トライデントスラッシュ!!」
スラッガーランスの超連撃。それを紙一重で交わしていく式さん。そしてスラッガーランスに一振り、ナイフを振り下ろす。それを受け止めると同時にスラッガーランスがへし折れる。
「お、折れたあ!!」
「ほら、隙だらけだぜ」
再び腹部を蹴られて吹っ飛ばされる。ヤバイ血が逆流してきた。吐きそう。
「苦しいなら今のうちに吐いとけよ」
「はっ、可愛い女の子の前で吐けるかよ」
「可愛い?バゼットのことか?」
「いやバゼットさんはどっちかというと美人で」
「真琴君?それは私が歳をとっていると?」
「いやいやそんなことないですよ?まあ可愛いのは式さんだけど」
「鉄拳制裁!!」
「へぼあっ!!」
バゼットさんにぶん殴られる。俺、怪我人なのに。
◇
式さんとバゼットさんはどうやら『組手』の話をしていたらしい。それで俺まで巻き込まれたと。普通大怪我してるのに誘うか?いや怪我ならバゼットさんもしてるな。
その後の『
それから式さんの彼氏の黒桐幹也さんと四人でご飯を食べて、俺たちはアパートを後にした。
◇
「何が『暫く休むから探さないで』だ。ここにいたら嫌でも見つかるだろ」
「それでも無視するのがいい男よ?」
バゼットさんの家の屋根にアーチャーはいた。お行儀よく体育座りで。パンツ見えてるぞ。
「どうしたんだアーチャー?」
「別に。暫く休むだけよ」
「ほんとにか?」
「・・・・・・・・ええ、そうよ」
嘘だな。こういうのはよく見抜けてしまう。
「負けて悔しいんだろ」
「マスターは悔しいくないの?」
「・・・・どうだろうな。生まれてこの方負けたことはあまりなくてな。人生の勝負という勝負、あまり負けてない」
「何て言いながら、今日のはボロ負けじゃない」
確かにな。今までのアサシン、ランサー、アヴェンジャーは引き分けか勝ちで終わったからな。でも今回は完全に負けた。
「分からないのよ。今までは勝つビジョンが見えてたけど、今回は全然見えない。あんなの初めてよ」
「そんなこといったら俺だって見えてない。俺はサーヴァントじゃないからアーチャーほどの力はだせないし、誰かに頼らないと戦えないんだ」
「・・・・お互い、全然見えてないわね」
「だな・・・・」
二人の間を沈黙が流れる。再び口を開いたのはアーチャーだった。
「だからこその『アーチャー』なのかもね」
「は?」
「ほらアーチャーって『弓』と『矢』がないと戦えないでしょ?私とマスターは弓と矢。どちらかだけだとダメなの。互いがいないと戦えないのよ」
なんてね、と言いながらアーチャーは顔を背ける。耳が赤いなこのアーチャー。
「いい言葉じゃないかアーチャー。青臭いぐらいが丁度いい台詞だ」
「やめてよ恥ずかしい・・・・」
「要は二人三脚だろ?どっちかが見えてないならもう一人が見る。二人とも見えてないなら・・・・」
「諦める?」
「ネバー・セイ・ネバーだ。『出来ないなんて言わないで』。どっちかが見えるまで互いに支え続ける」
「気長ね」
「それぐらいが丁度いいだろ?
あれ?なんか語ってるな俺。でもアーチャーが元気になったならそれでいいけど。今回の相手は二人とも勝つビジョンが見えていない。なら見えるまで待たないとな。
「真琴君!ランサーが何か食べたいと言っているので牛丼食べに行きましょう!」
「だからなんで牛丼!?」
下でバゼットさんが叫んでいる。腹が減るのが早いねあの人は。
「んじゃあ行くか
「OK
こうして再び進み始める。さあ弓矢コンビで反撃開始だ。
なんか無理矢理感が凄いぞ真琴。
次回はイリヤ桜陣営!