Fate/Arie night   作:無限の槍製

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FGOではイリヤを当てた全国のお兄ちゃんや爺さんがキャッキャウフフしている一方で、こっちはシリアス?です。


復讐者は殺人鬼となりて

「あれ?」

 

今日の朝ごはんは久しぶりにトーストでもしようと思ったのにパンがない。仕方なく結局ご飯になる。でもパンが全部なくなるなんて。こんなことする犯人は、

 

「セイバー」

 

「どうかしましたかシロウ」

 

庭で竹刀で素振りしていたセイバーに聞いてみる。しかしセイバーは知らないという。嘘をついているようにも見えないし。となると・・・・

 

「おーい遠坂ー」

 

「・・・・」

 

「は、入るぞ?」

 

遠坂の部屋に声をかける。返事はない。大丈夫、一応は声をかけたんだ。怒られても問題ない。

 

「ってまだ寝てたのか」

 

「・・・・ん、ふあぁ~~~眠い、眠い、眠い。ていうかもうね「いや起きろよ」

 

遠坂を起こし朝食の準備に取りかかる。そしていつもご飯の時間になるとセイバーが台所にやって来て、

 

「今日の朝ごはんはなんですか?」

 

と聞いてくる。そして俺が朝ごはんの内容を答えるとセイバーは食器を並べてくれる。俺の仕事がへって少し助かる。

 

「ふあぁ。おはよう衛宮君、セイバー」

 

「おはようございますリン。食事が出来てますよ」

 

「あ、なあ遠坂。パン知らないか?全部無くなってて」

 

「パン?ああそれね。今日のために必要だからもらったわ」

 

「「今日のため?」」

 

「そうよ。衛宮君、セイバー。今日は出かけるわよ!」

 

 

「あんまり遅くならないようにね」

 

藤ねえに言われる。多分一番遅くなるのは藤ねえなんだろうけど。藤ねえはデートとか言ってるし。どうせ一番遅くなる。

 

「で、どこ行くんだ」

 

「適当に新都をブラブラするのよ。あ、バス来た」

 

バスに乗り込み、揺られること20分。到着したのは新都のショッピングモール。俺は特にプランがないので全て遠坂に任せっきりになってしまう。でもまあ遠坂が計画したのだから、遠坂に任せよう。

 

 

「あらセイバー。メガネ似合うのね!」

 

「そうですかリン。私はなんだか、邪魔ですね」

 

「オシャレでかける人もいるのよ」

 

「リンも似合ってますよ。私より可愛らしい」

 

「ありがとセイバー。衛宮君にはこれかしらね?」

 

「・・・・・・・・色物メガネか」

 

メガネショップでいろんなメガネをかける遠坂とセイバー。うん、二人とも似合ってるな。

 

「セイバーにはこのコートもいいわね。セイバーはどっちがいい?」

 

「そうですね・・・・この白いコートがいいです」

 

「確かに、セイバーは白が似合うしね。衛宮君もそう思うでしょ?」

 

「ああ、そうだな」

 

服屋でセイバーを着せ替え人形の如く服を着せ替えていく遠坂。セイバーも嫌がってはいないそうだ。あれ?着せ替え人形?神代の魔女?うっ・・・・頭が。

 

「ほっ!」

 

遠坂三本目のホームラン。

 

「せいっ!」

 

俺二本目のホームラン。

 

「やあっ!」「せいっ!」「はあっ!」

 

セイバー十本目の空振り。それになんだか腕がプルプル震えてる。

 

「くっ、自分の武器でないだけでここまで使いにくいとは」

 

「ね、ねえセイバー?向こうでサッカー出来るからそっち行きましょ?」

 

「そ、そうだぞセイバー。たかがバッテングだ。誰にだって打てないときはある。俺も最初は打てなかったし」

 

「いえ、私は、負けません!!」

 

この後無茶苦茶バッテングした。

 

 

「セイバーが負けず嫌いとは」

 

「スミマセン。つい我を忘れました」

 

公園にてベンチに座り休む俺と遠坂。セイバーはあの後驚くほどに上達し片手でホームランを出すほどだった。そしてそこにたどり着くまでにいくつものボールを犠牲にした。

 

「まあいいわ。ご飯にしましょ」

 

遠坂が昼食を出してくる。中身はサンドイッチ。成る程な。だからパンがなかったのか。セイバーの目が輝いている。

 

「い、頂いてもよろしいのですかリン!」

 

「ええ食べなさいセイバ「ではいただきます」早いわねこの子は」

 

「悪いな遠坂。昼食まで用意してくれて」

 

「いいのよこれぐらい」

 

サンドイッチを一つ食べる。うんおいしい。遠坂は中華が多いけどこういうのも作れるんだな。

 

「・・・・ねえ衛宮君、楽しんでる?」

 

「え?どうした遠坂」

 

「だって士郎ったら、いろんなところ連れていっても素っ気ない返事しかしないもの。そんなので楽しいの?」

 

「そんなことない。俺だって楽しんでるぞ」

 

確かに聖杯戦争真っ只中でこうして遊びに出掛けているのは俺達ぐらいだ。確かに昼間から戦いはないけど、それでも警戒はしなくてはいけない。

 

「どうせ聖杯戦争のことでも考えてるんでしょ。それで自分達が狙われてるんじゃないかって?大丈夫よ衛宮君。アーチャーが守ってくれてるもの」

 

「ええ、アーチャーなら任せられます」

 

「・・・・・・・・」

 

二人はアーチャーを信用しているみたいだけど、俺は中々信用できない。なんか自分を見ているみたいで。

 

その後も色々と店をまわり午後4時。時間も時間なので帰ることにした。少しずつ春になっているとはいえ冬は暗くなるのが早い。藤ねえを心配させないためにも早く帰らないとな。

 

「・・・・今日はありがとな遠坂」

 

「なんか言った衛宮君?」

 

「いや、なんでもない」

こうして楽しい時間は過ぎていった。そして、

 

 

バスが走ること数分。違和感はすぐにやって来た。

 

「!?これは」

 

深山町と新都を繋ぐ冬木大橋が異様な空気に包まれていた。しかもバスは橋の途中で止まり、乗客はおろか運転手までもが姿を消していた。

 

「間違いなくサーヴァントね」

 

「そのようだな凛。やれやれ着いてきて正解だった」

 

「何処にいるか分かりますかアーチャー」

 

「ああ、目の前にな」

 

俺達の目の前にはアヴェンジャーと男。恐らくアヴェンジャーのマスターだろう。

 

「俺に会うのは初めてか?自己紹介しとくが俺の名はクリーザ。アヴェンジャーのマスターだ」

 

クリーザはタバコを吸いながらこっちに歩いてくる。俺も遠坂も警戒は解かない。しかしクリーザは警戒を全然していない。その表情は余裕そのものだ。

 

「この結界は貴方ね」

 

「おう、神代の魔女を参考にしたんだ。今回聖杯戦争に参加しようとしたマスターをぶっ殺して、それからそいつの持ってた触媒を加工して・・・・まあ割合だ」

 

「案外適当なのね。それだと」

 

クリーザとアヴェンジャーの死角から赤い矢が飛んでくる。そしてアーチャーの手には黒い弓。

 

「あっという間に死ぬわよ!」

 

「かもな。アヴェンジャー」

 

「自分の命が一つ減っても問題ないだろうが」

 

しかしアヴェンジャーとクリーザは気づいていた。アヴェンジャーは手にしたナイフで赤い矢を弾く。弾いた矢は地面に突き刺さり、地面が破ぜる。間違いなく共闘しないと勝てない。それは俺達四人が同時に感じ取ったことだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それからのセイバーとアーチャーの行動は早かった。すぐにアヴェンジャーの懐に入り込むと連続で攻撃を叩き込んでいく。いくらアヴェンジャーが強力なサーヴァントとはいえ三騎士の内二人を相手にしているため、少しキツそうだ。

 

「アーチャー!援護を頼みます!」

 

「やれやれ、君はいつもこうだ」

 

セイバーが前衛、アーチャーが後衛で攻撃を再開する。アーチャーの弓からは数十のホーミングアローが放たれる。アヴェンジャーはそれら全てを交わし、撃ち落とす。しかし隙は出来てしまう。そしてその一瞬の隙を突かれセイバーに攻撃を許してしまう。

 

「はあっ!」

 

「ぐっ(やはり最優のサーヴァントは伊達ではないか)」

 

「そこっ!」

 

セイバーに足払いをされ体制を崩す。すかさずセイバーは追撃を仕掛けるがアヴェンジャーのナイフに阻まれる。しかし倒れゆく体は元には戻せず、アヴェンジャーはセイバーに地面に叩き付けられる形に倒れこんだ。

 

「どけセイバー!」

 

そこを狙うアーチャー。標的が止まっている今がチャンスだろう。さっきの倍の数矢を打ち込んでいく。

 

「あらあら、またやられてんのかアヴェンジャー?」

 

「あら、あんた自分のサーヴァントがやられてるのになにもしないの?」

 

「まあな。俺はサーヴァントには勝てない。だからと言ってテメェらマスターを殺すのもなんかなぁ」

 

「とか言ってるけどな、俺の目には『早く殺したい』って願望が見えてるぜ」

 

「ハハハハハ。正解だ」

 

そしてマスター同士の戦いも始まる。しかしマスター同士の戦いはワンサイドゲームだった。それほどにまでクリーザは強かったのだ。

 

確かに士郎と凛には部が悪い。士郎はいまだ投影が安定せず、クリーザの手刀とぶつかるだけで砕けてしまう。凛も自身の得意とする宝石魔術の宝石を持ち合わせていないため、ほとんどをガンドで対抗しなくてはいけない。

 

「ぐはっ!」「きゃ!」

 

「おいおいこれだけか?まだアーチャーのマスターの小僧の方が強かったぞ?」

 

「アーチャーのマスター?・・・・真琴か!?」

 

「ああ、なかなか面白かったぜ?アサシンを潰したらあの小僧も殺してやるよ」

 

「なん・・・・だと・・・・」

 

「心配するな。向こうに逝くのが早いか遅いかだけだ」

 

クリーザは凛の頭を掴むと、

 

「やめろ・・・・やめろォォ!!!」

 

地面に叩きつけた。ピクリとも動かない凛。まだ微かに呼吸があることに気づいたクリーザはもう一度地面に叩きつけようとする。しかし、

 

「その汚い手を離せ」

 

アーチャーがクリーザの腕を切り凛を救出した。今だセイバーとアヴェンジャーが戦闘しているなか、アーチャーは自分のマスターの身を優先したのだ。しかしこれがセイバーにとって致命傷になった。

 

セイバーは焦っていた。自分のマスターが殺されそうなときに自分は今だサーヴァントを倒せていない。そしてその焦りで、

 

風王鉄槌(ストライク・エア)!!」

 

宝具を発動する。しかし焦っているセイバーの宝具はアヴェンジャーにとって最高のエサだった。

 

「その焦りが、お前の敗因だ」

 

アヴェンジャーはセイバーに拳銃を向ける。迫る風の鉄槌に怯むことなく、宝具を発動する。

 

復讐者は殺人鬼となりて(ジャック・ザ・リッパー)

 

 

彼女の家族は一人の殺人鬼に殺された。かの有名な殺人鬼。そうジャック・ザ・リッパーだ。

彼女は激しく悲しんだ。しかし周りの人間はこう言った。

 

『あの殺人鬼なら仕方ない。運がなかったんだ』

 

と。彼女はそれに疑問と怒りを覚えた。そして彼女は復讐者となった。

 

それから彼女はジャックを探し続けた。そして見つけた。ジャックを。しかし奴は既に捕まっていた。当然ながら死刑だった。彼女の復讐はそこで終わった。そう彼女自身も思っていた。

 

でもジャックはまた現れた。今度は彼女の友人の家族が殺された。彼女は友人の悲しむ姿を見て決心した。

 

『私が・・・・殺された皆の復讐者になろう』

 

と。それから彼女は2代目ジャックを捜した。そして見つけた。初代よりも雑な殺し方が仇となったのだ。そして彼女は2代目ジャックを殺した。友人の家族と同じ殺し方で。

 

ジャックが死んだ後、彼女はジャックの心臓にナイフを突き立てた。死体の側に手紙を添えて。手紙には、

 

『我が名はジャック・ザ・リッパー。復讐者なり』

 

と書いて。それは当然話題となった。それと同時に複数のジャック・ザ・リッパーを名乗る者が現れた。恐らく彼女に対する挑戦の意味で。そしてそんな理由で殺された者、そして残された者の為に、彼女はジャックの名で復讐を続けた。

 

被害者と同じ殺し方、そして心臓にナイフを突き立てて。

 

 

セイバーの風の鉄槌はアヴェンジャーの放った風の鉄槌に相殺された。戸惑うセイバー。そしてこれが最大のミスだった。ここで戸惑うことなく次の行動に移れていれば、

 

「終わりだセイバー」

 

セイバーは、

 

「・・・・!」

 

脱落することはなかっただろう。

 

セイバーの鎧を突き破り、アヴェンジャーのナイフが心臓を突き刺す。それと同時にセイバーの口から血が吐き出される。目が虚ろになっていき焦点があっていない。ナイフが抜かれるとセイバーは大量の血を流しながら倒れていく。

 

「セイバー!!」

 

「シ・・・・・・・ロ・・・・ウ」

 

そして・・・・セイバーは消滅した。

 

「・・・・・・・・この野郎!!ぶっ殺してやる!!」

 

士郎は武器を投影しながらアヴェンジャーに挑む。しかし所詮は人間。あっという間に武器は砕かれ、ボロボロになってしまう。

 

「・・・・・・」

 

「こ・・・の・・野・・・・ろ」

 

士郎はそこに倒れた。アヴェンジャーは士郎の頭に銃口を押し当てる。そして引き金を、

 

「この!!」

 

「!?アーチャー!!」

 

凛を抱えたアーチャーに阻まれる。そのまま士郎を抱えると川に飛び込んだ。アヴェンジャーは橋の上から探すが川は流れが早く見つからない。

 

「いやーまさかセイバーを倒すとはな」

 

「奴は焦りすぎた。まるで私が初めて殺したジャックみたいに」

 

そして結界が消えると同時に、アヴェンジャーとクリーザの姿も消え失せた。




セイバーが最初の脱落者。これは最初の方から決めてました。しかしこれは『ありえない』聖杯戦争だぞ?忘れるなよ?

アヴェンジャーの真名は『復讐者ジャック・ザ・リッパー』というもの。
宝具は『同じ殺し方』=『同じ宝具』で宝具を相殺するもの。だからゲイ・ボルクもフルンディングも相殺できたのです。しかしバビロンは数が多いので出来ない。つまり『1発』の宝具しか相殺出来ない。

次回は・・・・予定決めてねぇ!

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