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「―――。」
福山市。そこは日本有数の霊脈地として、その筋の人間からは多少知られた有名な土地である。これほどの霊脈地は日本に五つとなく、数えれば四つと非常に少数だ。ソレは、手段次第では根源に届きうる程の歪み。無論、そんな土地は他の魔術師から見れば美味しい餌場でしかない。しかし、ここ数百年でのこの土地を狙ってやってくる
そして、土地を狙ってくる者達が少ないのもこの一家が理由となる。
「―――なんで、この街に帰ってきてるの・・・。いや、元々この街に潜伏していたとも考え取れる。10年間、」
少女が今眺めているのはただの
「ブラハム・レコッツ―――。」
少女が現在眺めている
「Pare. ―――E caso a proliferação.」
少女の腕から烏はズルりと流動的に落下した。黒い液体となり再び形作る。その数はまさに異様といえよう。先ほどまでこの黒い
「―――フ、」
◇ □
7月28日
「あーーーー。」
と、情けない声を漏らす吸血鬼。その姿勢は完全にだらけきったものとなっていた。
ソファにもたれ掛かり全身を
「あーー、暇だぁ~。やる事もなければ話し相手もいない。今世紀最大で暇な一時だね。まぁ、僕の場合一人で喋ってても充分尺は取れるし、問題無いって言ったら問題ないんだけど。こうも一人で待ち続けるだけって言うのはどこか神経を剃り切らす物があるよね。」
そんな独り言を淡々と呟く。信じられない事にこの男は今、この家の主人が外出中であるため留守番の仕事を承っている最中なのだ。
大きな
「暇だ。」
本日何回目かと、思わず言いたくなるの発言。飽きを通り越して呆れる他ない。と、その時―――
プルルルルルルルルルルル
「ふぁっ?!」
固定電話から流れ出る着信音に驚き、ふんぞり返っていたソファから文字通り飛び上がった。
「電話・・・?―――誰だよ!びっくりしたじゃないか!」
理不尽な逆上。ズシズシと歩みを重くして電話の設置されてある棚台に向かおうとしたが方向転換。よく見ると食卓の上に子機が投げてあった。
手に取り、応答のボタンを強く押す。
「もしもし、ミナミです。ただいま留守にしております!」
そう吐き捨て電話を切ってしまった。