スマホも無事復活し、生活も徐々に安定してきました。
まだまだ色々やる事が多く、あまり頻繁に投稿できないと思いますが、また読んでみてください。
それでは、プリズマ☆シロウ、再開です。
【士郎視点】
「あ、お帰りなさ……ええっ!?」
帰宅した俺達を出迎えたセラが、俺達を見て驚きの声を上げた。当然だ。俺は顔面蒼白でフラフラになっているし、ずっと留守にしていたアイリさんが同行しているし。でも、一番の理由は……
「こ、これは一体どういう事ですか!? イリヤさんが二人!?」
「えっと、それは……」
「……は、初めまして……私、イリヤの従妹で、クロエ・フォン・アインツベルンです……」
「は、初耳なのですが!?」
こういう事である。そう、俺の背中に隠れてくっついているイリヤにそっくりな女の子、『クロ』の姿を見て、セラは驚愕で固まってしまったのだった。まあ、セラの気持ちも分かるんだけどな。
「細かい事は気にしないの。今日から、このクロちゃんも家族として、この家で一緒に暮らす事になったから。そういう事でヨロシクね♪」
「なっ……そんな馬鹿な……」
「えっと、俺からも頼むよ、セラ」
「うっ、それは……と言いますかシロウ、私としては貴方の顔色についても聞きたいのですが。何ですかその今にも倒れてしまいそうな状態は? 今すぐ病院に行きましょう、今すぐに!」
「ま、まあまあ、セラ。落ち着いて」
「……」
もう大混乱のセラさんだった。色んな事が一気に起こりすぎて訳が分からなくなってるんだろう。俺とイリヤは何とかセラを宥めようとし、クロは所在なさげに俯き、アイリさんだけは平常運転。
こうして衛宮家の新しい日常は、騒がしくも温かく始まっていくのだった。結局、クロは消えなかった。クロの願いを小聖杯が叶えたのかどうか、俺には分からない。だけど、これだけは言える。
クロは俺達の新しい家族になった。こうして存在して、一緒に暮らせる。それでいいじゃないか。クロがいる新しい日常。それは、俺達全員の願いなのだから。奇跡の理由なんて、どうでもいい。
美遊から聞いたクロの言葉。イリヤと存在を奪い合っているというものを思い出しながら、クロがいる光景を眺める。そして、その後に俺も聞いたもう一つの言葉。『与えられた日常は一つ』。
なあ、クロ。こうすれば良かったんだよ。与えられた日常が一つだなんて、誰が決めたんだよ? 新しい日常を、こうして作ってしまえばいい。イリヤとクロ。『二つの日常』を作れば良かった。
奪い合う必要なんてない。共有だってしなくていい。だって、クロはクロなんだから。イリヤとは違う、一人の人間なんだから。戸惑いながらも、少し嬉しそうにしているクロを見てそう思う。
イリヤもクロも、嬉しそうだ。アイリさんも、いつもより幸せそうだ。セラだって、何だかんだで楽しそう。セラの後ろから現れたリズは、言うまでもない。大切な俺の家族。全員、楽しそうだ。
だったら、俺だって幸せだ。頑張った甲斐があったってものだ。この光景を見られるなら、俺はどんな事だってやってみせる。どんな敵とも戦ってやる。もしもクロを消そうとする奴がいたら……
その時は容赦しない。俺は、ポケットの中に手を入れてある物を握りしめながらそう思った。なあアーチャー、その時はまた力を貸してくれ。赤い背中を思い描きながら、俺はそう思うのだった。
…………………………………………………
【ピピピピピピピピピピピピピピ!】
「……う~ん……」
翌朝、けたたましい音によって深い眠りから浮上する。昨日の怪我の影響で気絶するように眠り、まだ頭がすっきりしない。とりあえず、この目覚ましの音を止めようと思って、手を伸ばした。
「……ん?」
すると、妙に温かく、柔らかい感触が顔と腕に伝わってきた。目覚ましに伸ばした手は、どうやら目的を果たしてくれたらしく、音は止まったのだが、その奇妙な感触に閉じていた目を開いた。
「……ん……」
「……」
あれ? 何だこれ。俺の目の前に誰かいる。丁度添い寝をするみたいな感じで、俺の隣で寝ていたらしい。なるほど。さっきの感触は、これが理由か……って、何を呑気に納得してるんだよ、俺!
俺は即座に覚醒し、体を起こした。何故なら、目覚ましに伸ばしていた俺の腕が、その人物の足の間に入ってしまっていたからだ。そして、顔はその子の腹の辺りに密着していた。しかも下着姿。
さっきの感触の理由を完全に把握すると、その構図はとんでもない事になっていた。こんな場面を人に見られたら、言い訳できない。そこで俺は、改めてその人物が誰なのかを確認して驚愕する。
「イリッ!?」
そこにいた妹の姿に、その名前を叫ぼうとしたその時、背後の部屋の入り口が勢い良く開かれた。バタン! という大きな音に振り返ると、そこには鬼の形相を浮かべた妹、イリヤの姿があった。
「……ヤじゃない! って事はこれはクロか!」
「んに~……おはようお兄ちゃん……」
俺の頭が大混乱する中、寝ていた人物が目を覚ました。そして、眠そうに目を擦りながらそんな事を言ってくる。そう、隣で寝ていたのは、昨日から正式な衛宮家の一員になった、クロだった。
「く、クロ……お、お前っ……!」
「ていうかお兄ちゃんって、寝てる時に抱き癖があるのね。おかげで、ちょっと苦しかった♪」
混乱する頭で、何とかクロに注意をしようとしたら、クロがとんでもない事を言い出した。クロは恥ずかしそうに顔を赤らめながら悩ましげに体を揺らし、それを聞いたイリヤの圧力が倍増する。
「なっ、何を言い出すんだクロ!? ち、違う。違うぞイリヤ! これは、クロが勝手に……」
無駄だと分かってるが、俺は必死にイリヤに弁明する。僅かな可能性でも、諦めてはいけない!
「……ふっ……ふっ……フケツッ!」
「ぐあああ!」
やっぱり、駄目だったか……俺は、イリヤの渾身の平手打ちを食らってしまうのだった。バチーンという盛大な音が、朝の衛宮邸に響き渡った……
…………………………………………………
「……はあ……」
「どうしたのだ、衛宮? 疲れているな」
「……一成か……いや、ちょっとな……」
朝の一件を思い出して深いため息をついていた俺に、一成が声を掛けてきた。だけど、詳しくそれを語る事はできない。何故なら、俺の社会的地位が危ないから。そう考えて、泣きたくなった。
色々、ショックな事がありすぎた。今朝の一件を脳内で言葉にしてみると、改めてそのやばさが実感できた。妹と添い寝をして、それを目撃したもう一人の妹にフケツと怒鳴られてビンタされた。
「……くっ……」
「お、おい衛宮。本当に大丈夫か? どうして急に頭を抱えて机に突っ伏した? 何があった?」
「な、何でもない。大丈夫だ。ちょっと、軽く死にたくなっただけだから、気にしないでくれ」
「そ、そうか。なら良かっ……良くないだろ!」
一成とそんな漫才じみたやり取りをしていると、教室に遠坂とルヴィアが入ってきた。二人は俺の方を見て呆れたような表情を浮かべた後、真面目な表情になった。そして、俺を手招きしてくる。
「悪いな一成。ちょっと呼ばれたから」
「またあの二人か……最近多いな」
「まあ、ちょっとな。また後で話そう」
「うむ」
一成にそう告げて、遠坂達の所に向かう。そしていつものように人目がない屋上を目指した。最近はこれが定番になってきている。魔術関連の事を話し合う時は、いつもこの屋上を利用していた。
「さて、衛宮くん。何の用かは言わなくて良いと思うから単刀直入に聞くわね。クロは大丈夫?」
「ああ。今の所は、消える気配はないよ」
屋上に着くなり人払いの魔術を発動して、遠坂がそう聞いてきた。その質問の真意は何となく分かったが、俺は明るい口調でこう答えた。俺の答えを聞いた遠坂とルヴィアは、呆れた表情になる。
「そういう意味ではないのですけど。まあ、
やっぱりな。遠坂達は、クロがまた敵にならないかを心配しているんだろう。だけど俺は、そんな事にはならないと信じているし、そんな事にはさせない。だから敢えてとぼけたフリをしたんだ。
そんな俺の考えを二人は正確に理解したらしく、呆れながらも笑った。そしてそんな俺にその話をしても無意味だと思ったんだろう。ルヴィアが、話題を変えるようにして、そう聞いてきた。
「凄く楽しそうにしてるよ。クロだけじゃなくてイリヤもな。今朝、ちょっといさかいがあって、どっちが姉かで揉めてるけど。まあ、深刻な喧嘩じゃないし、見てて微笑ましいから良いけど」
「……色んな意味で幸せそうね」
「やれやれですわ」
俺が現在のイリヤとクロの様子を話すと、遠坂達は真剣に悩むのも馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの表情を浮かべた。まあ確かに、まるっきり子供の喧嘩だからな。二人の気持ちは、良く分かるよ。
きっと、真面目に警戒していた自分達の苦労も知らずに呑気に喧嘩しているイリヤ達に呆れているんだろう。俺への呆れもあるんだろうけど。でもクロの事は、これくらいで丁度良いんだと思う。
「魔術の事とか、色々あるんだろうけどさ。俺もそれは分かってるつもりだ。でも、俺にとってクロはそんなに大袈裟な存在じゃないんだ。悩む必要もない。クロは、俺の妹だ。それで十分だよ」
「……はあ。つくづく、シスコンよね」
「ですわね。ここまでくると逆に感心しますわ」
「二人が、俺やイリヤの事を心配してくれてるのは分かってる。でも、今回のあれは、ただの家族喧嘩なんだよ。魔術のせいでちょっと問題が複雑になったり、事態が大きくなったりしたけど」
「「……」」
「だからさ。クロの事は、俺に任せてくれ。もう二度と、あんな事はさせないからさ。頼むよ」
俺は、二人に頭を下げる。二人の事情も、立場も分かっている。クロの事は、この二人にとっても放っておけない問題だっていう事も。ランサーのクラスカードは、未だにクロの中にあるんだ。
二人は、それも回収しなければならない。でも、クロはそれがないと存在する事ができない。この問題を解決する方法は、まだ見つかっていない。俺が言っている事はきっと無茶な要求だろう。
でも。それでも、クロはもう俺の妹なんだ。なら俺はクロを守ってやらなければならない。二人はしばらく無言で俺を見ていたが、やがて深いため息をついた。恐る恐る顔を上げてみると……
「本当にどこまでシスコンなのよ? まったく、この状況で衛宮くんに、ランサーのカードを回収するなんて言ったら、まるで私達が血も涙もない悪魔みたいじゃないの。冗談じゃないわよ」
「あ~ら、貴女には、ピッタリ当てはまっているのではなくて?
「うっさい! ほんっとアンタはムカつくわね」
「ふっ、事実を言っただけですわ」
「なんですって!」
「やりますかお猿さん!」
「上等よ! 今日こそ決着着けてやるわ!」
「ま、まあまあ二人とも。落ち着けって」
あれ? どうしてこうなった? まあ、この二人らしいと言えばらしいけど。いつの間にか、クロの話題から何故か喧嘩を始めた二人を、何とか宥める。いつの間にか、俺も慣れたものである。
「ん、んんっ! とにかく、クロを問答無用で消したりしないから安心しなさい。私達の方でも、クロを消さずにランサーのカードを回収する方法がないかどうか調べてみるから。それでいい?」
「ああ。ありがとう遠坂、ルヴィア」
良かった。この二人が、話の通じる相手で。正直無茶な要求だろうと思っていたからな。二人への感謝を込めて、俺は微笑んだ。すると、二人は顔を赤くして挙動不審な様子になった。なんでさ。
「べ、別にこれくらいどうって事ないわよ」
「そ、そうですわ。お礼を言われる事では……」
「いや、言わせてくれ。あと、俺にできる事があったら遠慮なく言ってくれ。何でもやるからさ」
「そうね。そうさせて貰うわ」
こうして、クロの事は取り敢えずの決着を得た。まだ問題が解決した訳じゃないが、希望はある。クロが存在してる事がもう奇跡なんだ。だったらもう一つくらいの奇跡は起こせるんじゃないか?
俺はそう思う。だって、皆が望んでるんだから。
「まあ、クロの事はこれで良いとして……」
「ん?」
「貴方の事ですわ、
「俺の事? 何だよ」
クロの話題に決着が着いたと思ったら、急に二人は真剣な表情になって俺を見てきた。心当たりがない俺は、そんな二人の様子に首を傾げる。二人は、どうやら俺の顔色を確認しているようだ。
「……衛宮くん、貴方体調は大丈夫なの?」
「ん? どうしたんだ、急に」
「いいから答えてくださいまし」
「えっと……まあ、見ての通り大丈夫だけど?」
「「……」」
どうしたんだ、二人共? 訳が分からない質問を真剣な表情でしてくる二人に、俺はますます困惑する。俺の言葉を聞いた二人は、そのままの表情で俺の様子を観察してくる。しかも、無言で。
「昨日の様子とは、全然違うじゃない。昨日は、今にも倒れそうな様子だったのに。ちゃんと病院に行った? って、行ける訳ないわよね。だって時間的に不可能だもの。今だって朝早いし……」
「大袈裟だ。ちょっと血を流しすぎただけだし、それに二人が魔術で治療してくれたじゃないか」
何を言い出すかと思えば、そんな事か。俺は二人の大袈裟な心配に、軽く笑って返した。だけど、二人の表情はまったく晴れなかった。その雰囲気に俺も段々と飲まれてしまい、笑みも崩れた。
「な、何だよ二人共? どうかしたのか?」
「……前に、一度言ったでしょ? 私達は治癒の魔術はそんなに得意じゃないって。だから……」
「貴方の回復力は少し異常なんですの。それに、失った血を取り戻す魔術は使っていませんわ」
「私達がやったのは、あくまでも応急処置にしか過ぎないのよ。止血して、傷口を塞いだ程度よ」
「……」
真剣な表情のまま、二人は語っていく。今の俺の状態が普通ではないという事を。そういえば確か以前、同じような事をルビーにも言われたっけ。俺はその時、あまり深くは気にしなかった。
遠坂達の魔術による治療が良かったんだろうと。だけど、二人はそんな俺の考えを否定する。自分達の治癒魔術は、そんなに万能ではないと。本人達にそう言われてしまうと、俺は何も言えない。
「もしかしたら、アーチャーのクラスカードが、貴方の体に何らかの影響を与えているのかも」
「だとすれば、貴方の状態も、このまま放置しておく訳にもいかなくなりますわ。一度、徹底的に貴方の体を調査する必要があるかもしれません。ですから、それを伝えておきたかったんですの」
「……そうか……」
遠坂達の言葉に、俺は自分で納得していた。あの日初めてアーチャーのカードを使った時、自分の体が決定的に変わってしまったという感じは自覚していた。後悔はしていないと言えるけど……
少しだけ不安な気持ちになりながら、俺は自分の右手を見下ろした。見た目的には、以前と何も変わらないように見える。だけど、体の中の見えない部分、そこはもう以前の俺とは違うのかもな。
「何にせよ、クラスカードの事はまだまだ謎な部分が多すぎるのよ。だから、衛宮くんもこの問題については軽く考えないでね? 何か異常を感じたらすぐに私達に相談して頂戴。力になるから」
「貴方だけではなく、クロの安全にも関わってくるのですから、くれぐれもお願いしますわね」
「そうだな……分かったよ」
そう言われてしまうとこう答えるしかない。確かに、クロもカードが関わっているという部分では同じだ。俺だけの問題じゃないんだ。そう考えると、俺としても何があるか知っておかないとな。
「本当に、何から何まですまないな、二人共」
「わ、分かればいいのよ、分かれば……」
この時の俺は、まだ知らなかった。この俺にも、イリヤのように秘められた物があるという事を。平凡で、特別でもなんでもないと思っていた自分に、幾つもの運命が存在しているという事を。
この時の俺は、まだ知らなかったのだった……
…………………………………………………
「さてと……二人の姉論争はどうなったのかな。えっと、ただいま。イリヤ、クロ。どう……」
あっという間に時間は過ぎ、学校が終わり、部活も終えた俺は、いつものように帰宅した。玄関の扉を開き、朝の一件がどうなったのかを確認しようと声を掛けようとした。すると、そこには……
「こ、これ、姉的行動じゃない! ズルい、さりげなく姉ポイントを稼ごうとするなんてー!」
「はあ!? 訳が分からない事を言うんじゃないわよ。大体、アンタ今日はいつにも増して行動が訳分からないわよ。本当に、頭大丈夫? 今からでも、病院に行った方が良いんじゃないの?」
「なっ、なによーっ!」
「……なった……って、本当に何をやっているんだイリヤは? 一体学校で何があったんだ……」
リビングに足を踏み入れると、そこにはイリヤとクロが同じソファーに座りながら、仲が良いんだか悪いんだか分からない喧嘩をしていた。二人は帰宅した俺に気付いて、同時に振り向いた。
「あ、お兄ちゃん♪ お帰りなさい」
「あ、こらクローっ! またお兄ちゃんに必要以上にくっついてーっ! 離れなさい今すぐに!」
「あはは、嫌よーっ!」
「こ、こら二人共。喧嘩はやめろって」
そして再び始まる、最早日常になりつつあるやり取り。クロが嬉しそうに俺に抱き着いて、それを見たイリヤが、鬼のような形相になってクロを引き剥がそうとして、クロは楽しそうに笑う。
そして俺は、そんな二人の妹達の喧嘩を宥めようとして間に入る。きっとこれからも続いていく、いや、続けていきたい新たな日常。これから何が待ち受けているかは分からないが、守りたい。
二人の妹達の様子を眺めながら、俺は改めてそう思うのだった。この愛しい妹達の二つの日常を。
現在、契約解除されてしまった事で、データが移せなかったFGO等のゲームを必死に進めています。
それもあって、中々連載再開できませんでした……
BBイベント、第一章クリアしないと遊べない……
まだオケアノスなので、できそうにありませんね。
エミヤのモーションとか、変わったんですね~。
カッコいい。リセマラでエミヤゲットしましたし。
しかし、星5サーヴァントは一人もいない……
1%って、鬼畜過ぎる……キアラサーヴァント化とか、色々と面白そうな展開になってきてるのにーっ!
まあ、ゲームの愚痴はこれくらいにして、そろそろこの作品の話をしていきましょうかね。
士郎の秘密とか設定とか、明かしたいけど明かせない。
色々と主人公らしい設定とか考えてあるのに……
ジレンマですね。いつか書く時をお楽しみに。
それでは、感想待ってます。