一度ショップを出て、次の目的地へと向かう俺たち。そこに待っていた人物は――。
「こっちだ吹雪」
そう言った人物。それは遊戯王GXではサイバー流でおなじみの丸藤亮だった。
この世界での俺との関係は良いお兄さんと弟分といったところだ。
「やあ、亮。待たせたね」
「構わない。ショップ大会はどうだった?」
「うん。明日香の優勝だよ。ただ、創君はデッキ構築の途中ということで出場しなかったんだ」
「ほう……。デッキが完成したらこの俺が相手になってやろう」
「いや、最初の相手は僕だ。先ほど約束したからね」
「そうか。じゃあ、吹雪と戦って、再調整したものと相手しよう」
「はい。よろしくお願いしますね、亮さん」
どうやら、記憶通りこの俺はこの二人から弟のように慕われているみたいだ。
それに、亮さんの弟である丸藤翔と俺は仲がいいらしい。実際に会っていないから記憶の中でしかないが、実際に会えばまたしても自然にコミュニケーションを取るだろう。最初に吹雪さんと明日香と会った時だってそうだったのだから。
さて、こうやって亮さんに会った理由はただ一つ。吹雪さんと亮さんの二人は今度の大きな大会の為のデッキ調整を行ったらしく、こうやってデッキのバランスを調べるために戦うらしい。
この二人の実力はデュエルアカデミア中等部の中でも一位、二位を争う実力で、こうやってよく二人で対戦しながらデッキ調整するという話だ。
デュエルも盛んに行われている大きな公園へとやって来た俺たち四人。吹雪さんと亮さんはデュエルディスクを構え、デュエルの準備を進める。俺と明日香は見学だ。
「じゃあ、いくよ、亮」
「ああ、来い!」
『決闘!!』
丸藤亮:LP4000
天上院吹雪:LP4000
さて、二人のデュエルが始まった。
吹雪さんは真紅眼デッキで亮さんはサイバーデッキだ。この二つのテーマは非常に強力なテーマではあるが、コンセプトはまるで違う。
吹雪さんの真紅眼デッキは『レッドアイズ』を出し続けることで継続的な火力を出すことができる安定性があるのが強み。
対して亮さんのサイバーデッキは、《パワー・ボンド》を使ったハイパワーデッキ。一撃必殺の攻撃によって相手を仕留めるデッキタイプである。ただし、失敗したときのデメリットは少々キツイものがあるのが弱点か。
「俺のターン。ドロー! サイバー・ラーバァを攻撃表示で召喚し、ターン終了だ」
《サイバー・ラーバァ》
効果モンスター
星1/光属性/機械族/攻 400/守 600
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、このターン戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから「サイバー・ラーバァ」1体を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
小さい機械竜がそこに現れた。それはまるでサイバー・ドラゴンの幼生のような姿をしている。
まずは亮さんの一ターン目。安定の滑り出しだ。まずは防御に専念して必要なパーツを集め、準備が整ったところで一撃必殺にすべてをかけるそのプレイングスタイルは、まるで獲物を見つけた野獣の様だ。チャンスをうかがい、隙あらば仕留めにかかる。気を抜けば、そのままやられてしまうだろう。
「僕のターンだ。さっそく行くとしよう。
《
効果モンスター
星1/闇属性/ドラゴン族/攻 0/守 0
「伝説の黒石」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードをリリースして発動できる。
デッキからレベル7以下の「レッドアイズ」モンスター1体を特殊召喚する。
(2):このカードが墓地に存在する場合、
自分の墓地のレベル7以下の「レッドアイズ」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターをデッキに戻し、墓地のこのカードを手札に加える。
赤く輝く黒く丸い石が現れる。それはまるで卵のようだ。
そして、吹雪さんは宣言する。
「このカードを生贄にささげることで、
現れたのは紅い瞳を持つ黒き竜。
少し前まで10万円を超えるようなレートをしているカードであったが、最近様々なサポートカードと共に再録。少々値段が落ち着いてきたのだが、それでも相当なレアカードであることには変わりない。
サポートカードは持っているのに肝心の《
「バトルだ。レッドアイズでサイバー・ラーバァを攻撃。ダーク・メガ・フレア!」
「いいだろう。だが、サイバー・ラーバァの効果により、戦闘ダメージはゼロだ。そして、デッキからサイバー・ラーバァを同じく攻撃表示で特殊召喚する」
デッキから再び《サイバー・ラーバァ》が現れる。これによって、時間稼ぎ兼デッキの圧縮を行うのだ。それによって勝つために必要なカードを呼び込みやすくする。亮さんらしい堅実な戦いだ。
対する吹雪さんはさっそく切り札であるレッドアイズを出してきた。レッドアイズはバーンダメージカードなどのサポートカードが豊富で、速攻を仕掛けやすい。
さぁ、亮さんはどうやって吹雪さんの猛攻を防ぐのだろう?
「僕はカードを一枚セット。これでターンエンドだ」
丸藤亮 LP4000 手札5枚
場 《サイバー・ラーバァ》
魔法・罠 なし
天上院吹雪 LP4000 手札4枚
場 《
魔法・罠 なし
セット 1枚
一巡目が終了し、吹雪さんはド派手にレッドアイズを召喚。対して亮さんは静かな滑り出し。
だが、これは嵐の前の静けさのようにも感じられる。
俺と明日香の二人はこの二人のデュエルがどのような展開に転ぶのか、期待しつつ黙り込んで静かに見守っている。
「俺のターンだ。サイバー・ドラゴン・コアを攻撃表示で召喚」
《サイバー・ドラゴン・コア》
効果モンスター
星2/光属性/機械族/攻 400/守1500
このカードが召喚に成功した時、デッキから「サイバー」または「サイバネティック」と名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加える。
また、相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキから「サイバー・ドラゴン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
「サイバー・ドラゴン・コア」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
このカードのカード名は、フィールド上・墓地に存在する限り「サイバー・ドラゴン」として扱う。
「コアの効果で《サイバー》か《サイバネティック》のカードをデッキから手札に加える。俺はサイバネティック・フュージョン・サポートを手札に加える」
「サイバーの融合サポートカードか……!」
「その通りだ吹雪。だが、このカードはすぐには使わない。使うのはこのカードだ」
亮さんが手札からカードを一枚デュエルディスクに挿した。そのカードとは――。
「魔法カード、エヴォリューション・バースト!」
《エヴォリューション・バースト》
通常魔法
自分フィールド上に「サイバー・ドラゴン」が存在する場合に発動できる。
相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
このカードを発動するターン、「サイバー・ドラゴン」は攻撃できない。
「このカードは自分のフィールド上に《サイバー・ドラゴン》が存在しなければ使えないが――」
「サイバー・ドラゴン・コアはフィールド上と墓地では《サイバー・ドラゴン》扱いになる。だから発動できたというわけだよね」
「さすが、俺が使うカードに関してはよく知っているな」
「そりゃあ何回手合わせしたか分からないくらいだからね」
「ふふ……さあ、破壊するカードはソイツだ。
サイバー・ドラゴン・コアの口から激しい閃光と共に光線は発射される。
それはレッドアイズを貫き、爆発。
フィールド上からレッドアイズの姿が消えてしまった。
「さすがだよ亮。速攻でレッドアイズを召喚しても、ダメージを与えることなく破壊されてしまった」
「だが、まだまだこれからだろう?」
「その通り! さぁ、次の行動は?」
「もちろん、攻撃可能なモンスターで攻撃だ。いけ、サイバー・ラーバァ」
「くぅ……」
天上院吹雪LP4000→3600
サイバー・ラーバァの尻尾にある黄金に輝く棘により刺された吹雪さんは攻撃力400分のダメージを受けた。
ただ、これでは低攻撃力のモンスターを棒立ちにさせてしまっている。
きっと吹雪さんは次のターンにレッドアイズのモンスターを再び召喚するに違いない。このままでは大ダメージを受けてしまうが……。
「俺はカードを二枚セットし、ターンエンドだ」
守りの札はしっかりと持っていたらしい。
さすがはデュエルアカデミア中等部において最強の名を持っているデュエリスト。
抜かりない。
「僕のターンだ。ドロー」
その引いたカードを見た瞬間、吹雪さんは微笑んだ。
そして、どのような行動を取るのか考えること約五秒。吹雪さんは宣言した。
「墓地の
「もう一度レッドアイズを召喚するつもりか?」
「いや、このカードを発動するよ。デッキから
《レッドアイズ・インサイト》
通常魔法
「レッドアイズ・インサイト」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):手札・デッキから「レッドアイズ」モンスター1体を墓地へ送って発動できる。
デッキから「レッドアイズ・インサイト」以外の「レッドアイズ」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
「亮、こんな言葉を知っているかい?」
「なんだ?」
「青き竜は勝利をもたらす――」
「しかし赤き竜がもたらすのは勝利にあらず、可能性なり」
「知っていたんだね、亮」
かの
ブルーアイズは攻撃力3000で、レッドアイズは攻撃力2400――どう頑張ってもレッドアイズの敗北だ。だが、それは様々な可能性を用いることで覆すことが可能なんだ。
「
《
通常魔法
「真紅眼融合」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はこのカードの効果以外ではモンスターを召喚・特殊召喚できない。
(1):自分の手札・デッキ・フィールドから、
融合モンスターカードによって決められている融合素材モンスターを墓地へ送り、「レッドアイズ」モンスターを融合素材とするその融合モンスター1体を融合デッキから融合召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターのカード名は「真紅眼の黒竜」として扱う。
「なるほど、可能性か」
「そう。僕はデッキから
隕石のように燃え上がるその身は、全てを焦がす灼熱。
攻撃力3500の強力な
「バトルだ。メテオ・ブラック・ドラゴンで攻撃、メテオ・ダイブ!」
メテオ・ブラック・ドラゴンが空高く飛び上がり、隕石のように降り注ぐ。
この攻撃が通れば亮さんは3100の大ダメージを受けてしまう。
「この瞬間、トラップ発動。アタック・リフレクター・ユニット!」
「なに!?」
「フィールド上の《サイバー・ドラゴン》を生贄にささげることで、サイバー・バリア・ドラゴンにバージョンアップさせる。俺は《サイバー・ドラゴン》扱いのサイバー・ドラゴン・コアを生贄に、サイバー・バリア・ドラゴンを攻撃表示で特殊召喚!」
《サイバー・バリア・ドラゴン》
効果モンスター
星6/光属性/機械族/攻 800/守2800
このカードは通常召喚できない。
このカードは「アタック・リフレクター・ユニット」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードが攻撃表示の場合、1ターンに1度だけ相手モンスター1体の攻撃を無効にする。
「サイバー・バリア・ドラゴンの効果を発動。一ターンに一度、相手モンスターの攻撃を無効にする」
サイバー・バリア・ドラゴンが展開する光のバリアによってメテオ・ブラック・ドラゴンの攻撃が受け止められてしまった。
吹雪さんの場には攻撃可能なモンスターが存在しない。
これじゃサイバー・バリア・ドラゴンの破壊ができない……!
「くっ……だが、守ってばかりじゃ僕には勝てないよ亮。リバースカードを一枚セットし、ターンエンドだ」
攻撃力3500の《メテオ・ブラック・ドラゴン》……見た目からして圧巻だ。
対して亮さんに場には攻撃力400のサイバー・ラーバァと攻撃力800のサイバー・バリア・ドラゴン。
攻撃力の差は歴然だ。
しかしこれから亮さんのターン。何か仕掛ける気なのがヒシヒシと伝わってくる。あの三枚の手札の中に、逆転のカードが眠っているというのか?
丸藤亮 LP4000 手札3枚
場 《サイバー・ラーバァ》《サイバー・バリア・ドラゴン》
魔法・罠 なし
セット 2枚
天上院吹雪 LP3600 手札4枚
場 《メテオ・ブラック・ドラゴン》《
魔法・罠 なし
セット 1枚
具体的にどのような変更を行ったのかというと、吹雪のデッキをThe_アトモスフィアデッキからアニメ同様レッドアイズデッキに変更しました。