東條創 LP300 手札4枚
場 《E・HERO The_シャイニング》
魔法・罠 《フュージョン・ゲート》
セット 1枚
丸藤亮 LP2700 手札3枚
場 《サイバー・ドラゴン》
魔法・罠 《サイバー・ネットワーク》
セット なし
「創……ここまで俺の勝ち筋を断ち切ってくるとはな。このターンまでに、何度も勝てる盤面が出来上がる目前だった。だが、創のプレイングと引きの強さでそれを覆してきた。賞賛に値するぞ」
亮さんが、引いたカードを見て、だが……と言葉を区切る。
「それでも、俺のサイバー流は俺の望んだ通りの流れになるようだ。まずは、墓地のヴォルカニック・バレットの効果を発動。デッキより、同名カードを手札に加える」
丸藤亮:LP2700→2200
これで亮さんの手札は5枚。でも、その内2枚は効果により手札に加えた《ヴォルカニック・バレット》だ。このタイミングで更にデッキを圧縮するということは……まさか引いたカードは――。
「これが俺を勝利に導くカード。天使の施しだ」
《強欲な壺》に続いてここで《天使の施し》だと!? しかも《ヴォルカニック・バレット》を捨てれば、実質3ドローのカードに化けることになる。
凶悪すぎる。
これで亮さんの手札はまったく新しい5枚の手札を手に入れることになる。
つまり、必死に潰してきた亮さんの勝ち筋がさらに増えてしまった。
「3枚ドローし、手札のヴォルカニック・バレット2枚を捨てる。ふ……創、この攻撃はどうかわす?」
「え?」
「サイバー流における切り札の一つ、サイバー・エルタニン。このモンスターはフィールドと墓地の光属性の機械族モンスターを全て除外することで召喚される」
「……ッ!?」
言葉が出なかった。
亮さんの墓地には確か……デュエルディスクを操作して亮さんの墓地を確認すると、《サイバー・ドラゴン》が3枚、《サイバー・ドラゴン・コア》が2枚、《サイバー・ドラゴン・ツヴァイ》、《サイバー・ドラゴン・ドライ》、《プロト・サイバー・ドラゴン》、《サイバー・レーザー・ドラゴン》、《サイバー・ヴァリー》の合計10体もの対象モンスターが存在していた。
「サイバー・エルタニンの攻守は除外したモンスターの数の500倍になる。つまり――」
「攻撃力、守備力、ともに5000……だって……?」
《サイバー・エルタニン》攻撃力5000
「さらに、エルタニンの召喚が成功した瞬間――エルタニン以外のフィールド上のモンスター全てを墓地に送る。知っていると思うが、敵味方問わずにだ」
巨大な竜の頭が、俺を睨みつけてくる。その周辺には小さな機械龍の頭が浮遊しており、それらの口から青白い光が発光していた。
凄まじい重圧感。そして熱を感じる。
「消えろThe_シャイニング。コンスティレイション・シージュ」
「ぐぅぅぅうううううう!!」
エルタニンの周りに浮遊している機械龍の頭から放たれたエネルギーが俺のフィールドを襲う。その衝撃が俺の身体まで伝わってきた。心臓が破裂するんじゃないかと思うくらいの揺れを感じる。これが……亮さんの本気……!!
「E・HERO The_シャイニングが墓地に行ったことにより、除外されているエアーマンとスパークマンを手札に加える」
「だが、この攻撃で終わりだ創! サイバー・エルタニンの攻撃。ドラコニス・アセンション!!」
次に開かれたのは中央の巨大な竜の頭の顎。
そこからは先ほどと比べ物にならないほどの強い光。すべてを吹き飛ばす力の権化が、俺を襲おうとしている。
あれをくらったら死んじまうと、そう錯覚するほどの輝きを放つ。
だから俺は慌ててデュエルディスクを操作した。
「り、リバースカード、オープン!! 和睦の使者。このターン、俺が受ける全ての戦闘ダメージはゼロになる」
「これも防いだか!!」
《サイバー・エルタニン》から放たれた巨大なエネルギーが、俺の目の前で霧散して消えていく。
さすがに焦ったぞ……ソリッドビジョンシステムマジでパネェっすわ。
おっかねぇったらありゃしない。これを開発した海馬コーポレーションどんな感性してるんだよ。さすがはかの伝説のデュエリスト海馬瀬人さんが開発しただけのことはある。
「あ、あぶなかったぁ……」
「和睦の使者。古くから存在する罠カードであり、フリーチェーンであるがゆえに魔法・罠破壊のカードでは対処できない防御カードの代名詞。創の命を繋げる一枚か」
亮さんの言うとおり、フリーチェーンの罠カードは《サイクロン》のような破壊カードに対してチェーンすることで、それを無駄な一手にさせることができる。《強制脱出装置》もそうだが、フリーチェーンはどんな状況下でも発動でき、時にはアドバンテージを生み出すことが出来る強力なカードだと思っている。
ただし、基本的にはディス・アドバンテージカードだということが弱点だが。
「このカードだから、何らかの効果で破壊されていたとしてもチェーンでこのターンは凌ぐことができたんです。だから、次の俺のターンは約束されたものだった」
「なるほどな。俺もフリーチェーンカードの勉強をもっとしなくてはならないな。俺はカードを3枚伏せて、ターン終了だ」
東條創 LP300 手札6枚
場 なし
魔法・罠 《フュージョン・ゲート》
セット なし
丸藤亮 LP2200 手札1枚
場 《サイバー・エルタニン》
魔法・罠 《サイバー・ネットワーク》
セット 3枚
亮さんのターンが終わってみれば攻撃力5000の《サイバー・エルタニン》と伏せカードが3枚追加されている。
何なんだよあの引きは。サイバー流ってのは、やっぱり望んだ流れを導くってのか?
あの冬休み中の吹雪さんとのデュエルもそうだったけど、追い詰められた状況からの都合の良い引きは頭を抱えるしかない。
だが……頭を抱えて終わる俺じゃない!!
「俺のターン!」
今ドローしたこのカードは……最近出てきたHEROのサポートカード。
この状況では、発動条件が整っている。これを今発動せずにいつ発動する!?
「マジックカード、HEROの遺産。墓地にある融合HEROを2体デッキに戻し、3枚ドローする。俺は墓地に存在するThe_シャイニング2体をデッキに戻す」
「なに!? 創も、ここに来て強力な手札増強カードだと!?」
このドローで、俺の手札は9枚に増える。
これだけの手札があれば――この状況を打破することが出来る。
「行きますよ、ドロー!!」
引いたカードは……。
その3枚のカードと、元々あった6枚のカードを見て、俺はどのような展開が出来るのか、頭の中でシュミレートする。攻撃力5000のエルタニンを除去しながら、勝利に導くための動き。
サイバー・ネットワークを破壊した瞬間、除外されたサイバーモンスターが増殖される。
なら、伏せカードのみを破壊するために展開してからエアーマンで破壊するか?
いや……亮さんの伏せカードは3枚。エアーマンで全て破壊するには先に3体のHEROを並べる必要がある。それは可能だが……そうすれば攻撃力1800のエアーマンが棒立ちになる。
破壊効果にチェーンされ、何らかの方法でターンを渡すことになればエアーマンの戦闘破壊で負けになる可能性がある。
俺のライフはたった300なんだ。下級モンスターを最後に立ったままにするわけにはいかない。
そしてやっかいなのは召喚反応系のトラップだ。
召喚反応系の罠といえば何だ? 《激流葬》か《奈落の落とし穴》、あとは《神の宣告》といったそもそもを無効にするカードが考えられる。
サイバー・ネットワークがあるから《激流葬》の線は薄いか?
《奈落の落とし穴》ならその後も展開できるから問題ないけど……。
待てよ……バブルマンの攻撃力は800だから《奈落の落とし穴》の効果対象外。
仮に亮さんの伏せカードの1枚が《奈落の落とし穴》だとしても、この召喚は通る。
手札には《死者蘇生》だろ?
――よし、これなら……これなら何とかなるかもしれない。
「俺はバブルマンを召喚」
「…………」
よし、この召喚は通った。
次はこのカードで――。
「次に死者蘇生を発動して、墓地よりシャドー・ミストを特殊召喚。この特殊召喚が成功したとき、デッキよりチェンジの速攻魔法を手札に加える。マスク・チェンジを手札に」
召喚無効系もないのか?
いや、《マスク・チェンジ》に対して発動する気かもしれないから油断できない。
クッソ、こんなにも一手一手が緊張することがあったかよ……。
「マスク・チェンジを発動。場のバブルマンで変身召喚! 現れろ、M・HERO アシッド!!」
召喚も――通った!!
ならばアシッドの効果で《サイバー・ネットワーク》ごと吹き飛ばして、《E・HERO アブソルートZero》を絡めて特殊召喚したモンスターも消すだけだ。
これが俺の作戦。
あえてアシッドの効果で全てを破壊し、そのあとアシッド素材でアブソルートZeroを召喚。さらにアブソルートZeroを融合素材にすることで場から離れさせ、《サイバー・ネットワーク》の効果で出てきたモンスター全てを消し飛ばす。
こうすれば――亮さんの場をガラ空きにすることができる!!
「アシッドの効果! 特殊召喚に成功したとき、相手フィールド上の魔法・罠のカードを全て破壊する!!」
「なるほど、そう来たか。だが、そいつを通すわけにはいかない! トラップ発動」
「なに!?」
「ブレイクスルー・スキル。相手フィールド上のモンスター1体の効果を無効にする。無効にするのはもちろんM・HERO アシッドだ」
まさか……効果を無効にする罠だったとは。
でも亮さんはアシッドが出た瞬間に、これを通したら負けるのだと悟ったのだろう。
伏せカードは亮さんの生命線。それが全て失うことになれば、俺に好き放題に展開させてしまう未来が見えたに違いない。
それにしても、《ブレイクスルー・スキル》は予想外のカードだった。
でも、これでリバースカードは残り2枚。
召喚無効系がないことが分かった今……やることは一つ。
全力全開で展開することだけッ!!
「……こうなってしまってはしょうがない。亮さん、卒業模範デュエルにふさわしい、俺の全力を見てください」
「分かった。全力で来い、創!!」
「はい! まずは一手目! アシッドと手札のワイルドマンをフュージョン・ゲートの効果で融合。現れろ、極寒のHERO アブソルートZero!」
とにかく、このカードで攻撃力5000の《サイバー・エルタニン》を攻略する!
「そして二手目! アブソルートZeroと手札のスパークマンをゲートで融合。強く輝け! E・HERO The_シャイニング!」
「ッ!? そうか、アブソルートZeroの効果により――」
「その通り。砕け散れ、サイバー・エルタニン!!」
ガチガチに氷漬けになった《サイバー・エルタニン》がボロボロと崩れ去り、フィールドから消滅した。
これで亮さんのフィールドが空いた。攻撃力5000だろうが、効果で破壊しちまえば関係ないんだよ!
「三手目! 手札のサンダー・ドラゴンの効果を発動する。デッキから同名カードを2枚まで手札に加える」
亮さんが驚いた顔をしたぞ。
そりゃそうか、《サンダー・ドラゴン》のカードなんて、使ってる人なんてあまりいないからな。だが、俺のデッキにおいては重要な融合素材カードなんだぜ。
「光属性のモンスターを増やした……ということは」
「その通りです。四手目! 場のシャドー・ミストとサンダー・ドラゴンをゲートの効果で融合する。さらに強く輝け! E・HERO The_シャイニング!!」
これでは終わらない。
残り2枚の伏せカードも発動する素振りを見せない。ここまでやって発動しないということは、完全に召喚反応系の罠である可能性が消えた。
何もできないというならやれるところまでやらせてもらう。
これは卒業模範デュエルなんだ。恥のないデュエルを、そして悔いのないデュエルをしなくちゃならないんだから!
「まだまだ続きますよ。五手目! 手札のサンダー・ドラゴンとエアーマンで融合を行う。もっとだ、もっと! もっと輝けぇぇぇえええ!! E・HERO The_シャイニングを融合召喚ッ!!」
「The_シャイニングの攻撃力は除外されているE・HERO1体につき300ポイント攻撃力を上げる……創はいったい何体のE・HEROを除外した……?」
「俺が除外しているE・HEROはワイルドマン、アブソルートZero、スパークマン、シャドー・ミスト、エアーマンの5体! よってThe_シャイニングの攻撃力は――」
《E・HERO The_シャイニング》攻撃力2600→4100
《E・HERO The_シャイニング》攻撃力2600→4100
《E・HERO The_シャイニング》攻撃力2600→4100
「攻撃力4100が、3体……だと……?」
これが俺の全力です。
この圧倒的な攻撃力を持ってして、あなたを超えてみせる。
さぁ、くらってもらいます。俺がここまで積み上げた、経験、知識、努力――そのすべてを!!
「行きますよ――これが全力全開の攻撃だッ!!」