HERO使いが行くGX世界   作:加藤あきら

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第16話『敵の勝ち筋を絶て!』(修正版)

「俺の……ターン」

 

 《フュージョン・ゲート》……!

 来た。ならばやるしかない。ここは攻めるときだ!

 

「フュージョン・ゲートを発動!」

 

「ついに来たか、創の切り札が!」

 

「はい! まずはエアーマンを召喚。サーチ効果を使い、スパークマンを手札に加える」

 

 風属性のHEROと光属性のHEROで生まれる融合HEROは二種類ある。

 この状況だと、どちらを出しても旨みがある。

 でも、のんびりしている暇もないし、俺のライフも残り少ない。

 できるだけ残りライフを削られないように攻撃力の高い方を出すのみ。

 

「エアーマンとスパークマンを、フュージョン・ゲートの効果で融合! 来い、俺のエースモンスター! E・HERO The_シャイニングを召喚だ!!」

 

「The_シャイニングは除外されているHERO1体につき300ポイント攻撃力が上昇する。つまり攻撃力は3200か!!」

 

「そうです。これで余裕を持ってサイバー・レーザー・ドラゴンを倒せる。The_シャイニングでサイバー・レーザー・ドラゴンを攻撃。オプティカル・ストーム!!」

 

 

丸藤亮:LP4000→3200

 

 

 The_シャイニングが放つ強い光によって《サイバー・レーザー・ドラゴン》が粉々に砕け散る。これで攻撃力の高いモンスターを無条件で破壊されることはなくなった。

 だが、俺の出来ることはここまで。

 あとは守りを固めることしか出来ない。

 

「俺はリバースカードをセット。ターンを終了する」

 

「攻撃力3200は確かに数値としては高い方だ。だが、俺のサイバー流はそれだけでは倒せん! いくぞ、ドロー!!」

 

 いったい亮さんは何を引いたんだ?

 

「まずはスタンバイフェイズ時、未来融合の効果により俺は起爆獣ヴァルカノンを選択する。このモンスターの融合素材である機械族のサイバー・ドラゴン・ドライと、炎族のヴォルカニック・バレットを墓地に送る」

 

 《ヴォルカニック・バレット》……!

 亮さん、サイバー系のモンスターだけでなく、サブウェポンとして《起爆獣ヴァルカノン》まで採用しているのか。確かに、ヴァルカノンの除去からのバーンダメージは一気に勝負をつけるのにもってこいの性能。

 ならヴァルカノンの召喚を許してはいけない。

 だけどどうする?

 俺の手札には……対処できるカードはない。

 

「そしてメインフェイズ。サイバー・リペア・プラントを発動。サイバー・ドラゴン・コアを手札に加え、そのまま召喚する。コアの効果によりデッキからサイバー・ネットワークを手札に加える」

 

 次は《サイバー・ネットワーク》か。

 あのカードはスタンバイフェイズになるたびにデッキの光属性・機械族のモンスターを除外し、3回目のスタンバイフェイズになった瞬間――除外されている光属性の機械族モンスターを可能な限り特殊召喚するパワーカードだ。

 あのカードもかなり危険だぞ……。

 

「次に墓地へ送られたヴォルカニック・バレットの効果を発動。500のライフを払い、デッキから同名カードを手札に加える」

 

 

丸藤亮:LP3200→2700

 

 

 デッキの圧縮。キーカードを引きやすくするための初歩的なテクニックだ。

 初歩的だが……効果は絶大。おそらく亮さんは少しでもあのカードを引きやすくしているんだ。このゲームを終わらせる、究極の魔法カードを。

 

「デッキの圧縮をしたところでこのカードを発動しよう。強欲な壺」

 

 クソッ、強力なドローソースを握っていたのか亮さんは。

 これで亮さんの手札は6枚に増えてしまった。だが、そのうち一枚は《ヴォルカニック・バレット》だから実質手札は5枚のようなもの。しかしながらそれでも潤沢であることは変わりない。

 

「これは良いカードを引いたぞ」

 

 その言葉に俺は顔を引きつらせた。

 もしかして、一気にゲームエンドに持っていくようなカードなのか?

 俺は気が付けば右手を強く握り締め、奥歯も強くかみ締めていた。

 

「装備魔法、魔界の足枷。このカードを創のThe_シャイニングに装備する」

 

 俺のシャイニングの脚にニヤリとあくどい表情した黒い巨大な鉄球が鎖によって繋がれた。宙に浮遊していたThe_シャイニングの足は地に落ち、身動きが取れなくなってしまう。

 これはいったい……?

 

「やはり、このカードはあまり使われないカードゆえに創でも知らなかったか。魔界の足枷は装備モンスターの攻撃力、守備力の数値を100にし、スタンバイフェイズ毎に装備モンスターのコントローラーは500のダメージを受ける」

 

 なるほど、戦闘の補助だけでなく、《機械複製術》とのコンボカードにもなるというわけか。そのコンボが決まればサイバー・ドラゴンが3体並び、サイバー・エンド・ドラゴンに繋げられる。

 いや、関心している場合じゃない。

 こんな簡単にThe_シャイニングが攻略されるとは……これで攻撃力2100のサイバー・ドラゴンでも戦闘破壊が可能……!

 

「いくぞ、サイバー・ドラゴンでThe_シャイニングを攻撃。エヴォリューション・バースト!」

 

 機械龍の口から、青白い光が吐き出されようとしている。

 この攻撃……タダで受けるわけにはいかないんだ!

 俺のThe_シャイニングの攻撃力は100になってしまっているから……この攻撃を受ければ敗北しちまう。

 

「俺は、こんな負け方をするわけにはいかないんだ!! トラップ発動、ガード・ブロック。戦闘ダメージを0にし、カードを1枚ドローする!」

 

「キャントリップの罠カードか。防御と同時に手札を補充するとは……創のデッキでは重要な補助カードだな」

 

「はい。でも残念ながらこのカード効果ではThe_シャイニングの戦闘破壊は免れないが、この状況では好都合です。墓地に送られたことにより効果が発動し、除外されているE・HEROを2体まで手札に戻すことが出来る。俺はエアーマンとスパークマンを手札に戻す」

 

「これがフュージョン・ゲートとThe_シャイニングのシナジーか。フュージョン・ゲートの一見デメリットにも思える除外効果によりThe_シャイニングの攻撃力を上げ、たとえやられても除外されているE・HEROを手札に戻して次に繋げる。実に強力な戦術だな」

 

 亮さんの言う通り、俺自身もこのシナジーは非常に強力だと思ってる。

 これによって希望を繋ぐことが出来るんだから!

 

「そして、俺にはまだ攻撃可能なモンスターが残っている。いけ、サイバー・ドラゴン・コア。創にダイレクトアタック!」

 

東條創:LP700→300

 

 ぐ……だが、致命的な一撃ではない。ライフポイントが700だろうが300だろうが、ここからはおそらく、一撃で消し飛ぶような展開が待っていると思う。

 より気を引き締めなくては!

 

「さぁ、これからが本番だ。カードを2枚伏せて、ターン終了だ」

 

 

東條創 LP300 手札6枚

場 なし

魔法・罠 《フュージョン・ゲート》

セット なし

 

丸藤亮 LP2700 手札3枚

場 《サイバー・ドラゴン》《サイバー・ドラゴン・コア》

魔法・罠 《未来融合‐フューチャー・フュージョン》

セット 2枚

 

 

「ドロー! ……来た」

 

 これで窮地は脱した。

 俺の命が1ターン増えたようなものだ。

 

「俺の引いたカードはサイクロン。これで未来融合のカードを破壊する」

 

「ほう……中々の引きだな。これで次の俺のターンでヴァルカノンが召喚されなくなった。また一つ、俺の勝ち筋が潰されたというわけか」

 

「亮さんには悪いですけど、これも勝負なんで。遠慮なんてせず、全力で、潰しに行く勢いで、俺はあなたに挑みます」

 

「なら見せてみろ。まずはこの布陣を攻略してみるんだ」

 

「言われなくとも!」

 

 とは言ってもあの伏せカード2枚をどうにかする術はもうない。

 《サイクロン》を負け筋潰すために使ったのだから仕方がないだろうさ。

 でも、ここで守りに入る余裕がないのも確か。

 落ち着け、一枚はおそらくさっき手札に加えた《サイバー・ネットワーク》だろう。もう一枚の伏せカードが攻撃反応系でも、召喚反応系でも、この手札ならリカバリーが可能。

 よし、行くしかない!!

 

「エアーマンを召喚! サーチ効果を選択し、バブルマンを手札に加える」

 

「…………」

 

 亮さんは黙ったまま俺の一手一手を真剣に見つめている。

 何もないなら続けさせてもらいます。

 

「エアーマンと手札のスパークマンを、ゲートの効果を使って融合します。再び輝け! E・HERO The_シャイニング!! 攻撃力は3200!!」

 

 そして亮さんの場には攻撃力400の《サイバー・ドラゴン・コア》が存在している。攻撃力3200のThe_シャイニングで攻撃すればその差2800のダメージで俺の勝利だ。

 あくまで、通れば……だが。

 

「The_シャイニングで、サイバー・ドラゴン・コアに攻撃だ。砕け散れ! オプティカル・ストーム!!」

 

 凄まじい閃光により、サイバー・ドラゴン・コアが砕け散り消滅し、そのダメージが亮さんへと襲い掛かるその瞬間――亮さんの場の伏せカードが開いた。

 

「ダメージ計算時にトラップを発動。パワー・ウォール。ダメージが0になるように、500ダメージにつき1枚のカードをデッキの上から墓地に送る」

 

 

《パワー・ウォール》

通常罠

(1):相手モンスターの攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けるダメージ計算時に発動できる。

その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージが0になるように500ダメージにつき1枚、自分のデッキの上からカードを墓地へ送る。

 

 

 墓地を肥やすカード……!

 もしかして、亮さんの手札にはあのカードがあるというのか!?

 

「俺が受けるダメージは2800ポイント。つまり、6枚のカードを墓地に送る」

 

 ソリッドビジョンによって映し出された六枚のカードによってダメージが遮断され、亮さんに届くことはなかった。

 その六枚の中には、《サイバー・ドラゴン》と《サイバー・ドラゴン・ツヴァイ》、《プロト・サイバー・ドラゴン》に《サイバー・ラーバァ》の4枚のモンスターカードが確認できた。

 

「残念だったな創。中々の攻撃だったが、今日の俺は実に調子がいい。そう簡単に敗北するようなダメージを与えられると思うな」

 

 やはり、このターンで勝負をつけることが出来なかった。

 サイバー・ドラゴン・コアという攻撃力の低いモンスターを棒立ちにしている状態で、何の防御手段がないってこと自体が考えにくい。

 この結果は当然のものだと言っても良い。

 

「俺はカードを1枚セットし、ターンエンドです」

 

「そのエンドフェイズ終了時、トラップ発動。サイバー・ネットワーク」

 

「俺はこのまま、何もすることなく亮さんにターンを渡します」

 

 大丈夫だ……と思う。

 亮さんの手札は3枚だが……でもその内1枚はさっき効果で手札に加えた《ヴォルカニック・バレット》だし、《サイバー・ネットワーク》も三回目のスタンバイフェイズを迎えなければ展開できない。

 だが亮さんの余裕な表情を見るに、おそらくあのカードがすでに手札にあるんだ。

 これだけ墓地肥やしを執拗に行ってきたんだ。絶対に手札にあるはず……!

 

 

東條創 LP300 手札4枚

場 《E・HERO The_シャイニング》

魔法・罠 《フュージョン・ゲート》

セット 1枚

 

丸藤亮 LP2700 手札3枚

場 《サイバー・ドラゴン》

魔法・罠 《サイバー・ネットワーク》

セット なし


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