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「創!」
扉を開ければ、見慣れたキレイな金色の長髪をなびかせる少女が一人。
先ほど実の兄と壮絶なデュエルを見せつけてきた彼女は新しいデッキを作り、それを使いこなした強者であるのは間違いない。
あぁ、俺は明日香のようにデュエルできるのかな?
「なーに緊張してんのよ!」
「バッフッ!?」
背中をどーんと叩いてくる明日香。
あまり痛くはないけど、それでも心臓まで衝撃が響き渡った気がした。
「別に勝ち負けは関係ない勝負なんだから、恥のないデュエルができればそれでいい……それくらいの気持ちでいた方がいいわよ」
「……おう。でも、それでも、勝ちたい気持ちは変わらないぞ」
「ふふ、そうね。創はそれくらいの方がいいかもね。さ、行ってきなさい。亮さんが待ってるわよ」
中央のステージ上には、すでに亮さんの姿があった。
メラメラと燃えるようなオーラを纏っていると、そう感じた。
俺は一段一段、しっかりと踏みしめながら、ステージへの短い階段を上がった。
「お待たせしてしまいすみません、亮さん」
「いいや、問題ない。創が一番良いコンディションでこの場に立ってくれる方が大事だ」
「そうですか。なら問題ありません。コンディションなら……おそらく今が一番です」
委員長、藤原、万丈目……そして明日香。
お前らが背中を押してくれたおかげで、落ち着いた気持ちでこの場に立てる。
さぁ、始まるぞ……亮さんとの知識と、技術と、力のぶつかり合いが。
「じゃあ始めようか創。まずは、お互いのデッキを――」
「カットアンドシャッフル!!」
亮さんのサイバー流デッキ。
機械族モンスターによる大火力デッキだ。
一撃必殺の瞬間火力は俺のデッキの比じゃない。
気をつけなければ……一瞬でやられる!!
「よし。では、デュエルを始めようか」
「えぇ、最高のデュエルにしましょう」
お互いに向き合う。
ついに始まってしまう。
『デュエル開始ィィィ!!』
先生の宣言が響き渡った。
『デュエル!!』
先攻は……俺か。
サイバー相手に先攻はありがたいのかちょっと微妙だな。
でも先攻でぶん回されるのも困るから、これはこれで何とかするしかない!!
東條創:LP4000
丸藤亮:LP4000
「俺のターン!」
まずはいつも通り、下準備から始める!
「エマージェンシーコール発動。デッキからE・HERO一体を手札に加える。持ってくるのはE・HERO ブレイズマンだ」
《E・HERO ブレイズマン》
効果モンスター
星4/炎属性/戦士族/攻1200/守1800
「E・HERO ブレイズマン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから「融合」1枚を手札に加える。
(2):自分メインフェイズに発動できる。
デッキから「E・HERO ブレイズマン」以外の「E・HERO」モンスター1体を墓地へ送る。
このカードはターン終了時まで、この効果で墓地へ送ったモンスターと同じ属性・攻撃力・守備力になる。
この効果の発動後、ターン終了時まで自分は融合モンスターしか特殊召喚できない。
「コイツを召喚し、効果を発動。デッキからE・HEROモンスター1体を墓地へ送り、そのモンスターの攻守と属性に変化させる。俺が墓地に送るのはシャドー・ミストだ」
「なるほど。シャドー・ミストは墓地に送られることで効力を発揮するモンスター。たしか、墓地に送られたときの効果はHEROをサーチする効果だったな」
「その通りです。俺がサーチするのはE・HERO エアーマン」
強力な下級HEROのエアーマン。
デッキの潤滑剤的存在のエアーマンを手札に加えることから始まると言っても過言ではない。E・HEROデッキを作る際は、このカードだけは外せない一枚だろう。
さて、これだけで終わるのは心もとない。
「俺はリバースカードをセットして、ターン終了です」
そして亮さんのターンが始まる。
さぁ、どっからでもかかって来い! どんな手で来たって、最善手で返してやる!
「俺のターン! 俺はサイバー・ドラゴン・コアを召喚」
《サイバー・ドラゴン・コア》
効果モンスター
星2/光属性/機械族/攻 400/守1500
このカードが召喚に成功した時、デッキから「サイバー」または「サイバネティック」と名のついた魔法・罠カード1枚を手札に加える。
また、相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、墓地のこのカードを除外して発動できる。
デッキから「サイバー・ドラゴン」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。
「サイバー・ドラゴン・コア」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
このカードのカード名は、フィールド上・墓地に存在する限り「サイバー・ドラゴン」として扱う。
「コアの召喚が成功したことにより、デッキからサイバー・リペア・プラントを手札に加える」
あのカードは『サイバー』デッキの万能サーチカード。
やっぱり、コアの効果で持ってこれること自体が強い。サーチ効果からのサーチカードを手札に加える。偶然ではなく、必然の動きになるこの動き……本当に油断したら一瞬で負けちまう!
「いくぞ、創。心して受け止めろ。機械複製術を発動!」
「ぐぅ……!?」
《機械複製術》
通常魔法
(1):自分フィールドの攻撃力500以下の機械族モンスター1体を対象として発動できる。
デッキからその表側表示モンスターの同名モンスターを2体まで特殊召喚する。
「サイバー・ドラゴン・コアの攻撃力は400。つまり、このカードの対象にできる。そして、コアはフィールド上ではサイバー・ドラゴンとして扱う。この意味……創は分かるか?」
「デッキから現れるのは、コアではなく、サイバー・ドラゴンだということ……!」
「正解だ。デッキから現れろ、2体のサイバー・ドラゴン!!」
《サイバー・ドラゴン》攻撃力2100
「いくぞ。サイバー・ドラゴンでブレイズマンに攻撃。エヴォリューション・バースト」
「この攻撃宣言に対しトラップ発動! 次元幽閉。攻撃モンスターを除外する」
「甘いぞ創。手札から速攻魔法、フォトン・ジェネレーター・ユニットを発動。攻撃宣言したサイバー・ドラゴンと、サイバー・ドラゴン扱いのコアを生贄に捧げる」
「サクリファイス・エスケープ……」
これは……マズイ。
洒落にならないくらい、亮さんは全力で俺をぶっ潰すつもりだ。
伏せカードがなければこれで終わっていたってことかよ。
「そして、この魔法効果によりサイバー・レーザー・ドラゴンにバージョンアップさせる。現れろ、サイバー・レーザー・ドラゴン!」
《サイバー・レーザー・ドラゴン》
効果モンスター
星7/光属性/機械族/攻2400/守1800
このカードは通常召喚できない。
このカードは「フォトン・ジェネレーター・ユニット」の効果でのみ特殊召喚する事ができる。
このカードの攻撃力以上の攻撃力か守備力を持つモンスター1体を破壊する事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使えない。
「サイバー・レーザー・ドラゴンでブレイズマンに攻撃。エヴォリューション・レーザーショット」
レーザーに焼き殺されるブレイズマン。
東條創:LP4000→2800
これで俺の場はがら空き。なのに、亮さんの場にはまだサイバー・ドラゴンがいる。
「サイバー・ドラゴンで創にダイレクトアタック。エヴォリューション・バースト」
「ぐああああああああああああ!!」
東條創:LP2800→700
やべぇ……とんでもない衝撃だ。
しかも、たった2ターン目でライフが三桁まで減らされちまった。
絶体絶命のピンチ。
間違いなくダメージはこれで限界。これ以上一発でもくらったらヤバイって、脳からの危険信号が伝わってくるのが分かる。
「どうした創。これで根をあげるか」
「いいえ、全然」
「そうか。安心した。メインフェイズ2に移行。未来融合‐フューチャー・フュージョンを発動し、ターン終了する」
《未来融合‐フューチャー・フュージョン》はここ最近効果が変わった。いわゆるエラッタってやつだ。
融合素材を墓地に送る効果は1回目のスタンバイフェイズ時、融合召喚されるのは2回目のスタンバイフェイズ時になった。
《未来融合‐フューチャー・フュージョン》
永続魔法
(1):このカードの発動後1回目の自分スタンバイフェイズに発動する。
自分のエクストラデッキの融合モンスター1体をお互いに確認し、そのモンスターによって決められた融合素材モンスターを自分のデッキから墓地へ送る。
(2):このカードの発動後2回目の自分スタンバイフェイズに発動する。
このカードの(1)の効果で確認したモンスターと同名の融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。
そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。
確かに即座に墓地に送れた以前の効果は強力すぎた。
他のカードと組み合わせることによって即座に融合召喚することもできるし、他のことにも悪用できたのがダメだった。
これでようやくバランスが取れたと思う。
だけど、俺にはフューチャー・フュージョンを破壊する術は……エアーマンの効果を使うしかないけど、それにはフィールドに他のHEROが必要だから、それは今は不可能。
どうする?
あえて無視するか?
とにかく、次のドローを見てから決めるしかない!
東條創 LP700 手札5枚
場 なし
魔法・罠 なし
セット なし
丸藤亮 LP4000 手札3枚
場 《サイバー・ドラゴン》《サイバー・レーザー・ドラゴン》
魔法・罠 《未来融合‐フューチャー・フュージョン》
セット なし