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天上院吹雪 LP2400 手札3枚
場 《
魔法・罠 《
セット 1枚
天上院明日香LP3200 手札4枚
場 《サイバー・プチ・エンジェル》
魔法・罠 なし
セット なし
さっきのプレイングミスで兄さんを有利にしてしまったけど、致命的なミスではなかった。今のドローフェイズで引いたカード――《儀式の準備》のおかげで、何とか挽回できそう。
さぁ、見てみなさい兄さん、創! これが私のデュエルよ!!
「私は、マンジュ・ゴッドを召喚! 効果により、機械天使の儀式をデッキから手札に加えるわ」
これでデッキに入っている《機械天使の儀式》をすべて持ってきた。
この儀式魔法は墓地に行っても効果を発揮することのできるカード。これを有効に使用して墓地に送ることができれば私の勝利は目前なはず。
「次に魔法カード、儀式の準備! デッキからレベル7以下の儀式モンスターを手札に加え、さらに墓地から儀式魔法を手札に加える。私はデッキから韋駄天を、墓地から機械天使の儀式を、それぞれ手札に加えるわ」
「…………」
兄さんは黙ったまま私の手を睨みつけるように見ている。
普段の優しい表情からは想像できないほどキレのある目つきだったから、私はちょっとだけ怯んでしまった。
いけない。このデュエルは全力全開でぶつかりに行かないと。
このデュエル中だけは、気を強く持つのよ……私!
「次は……」
小さく呟く。
手札には機械天使の儀式が三枚、韋駄天、手札断殺がある。
場には《サイバー・プチ・エンジェル》と《マンジュ・ゴッド》の二体のモンスターがいる。そのレベルの合計は6だから、韋駄天を召喚できる。
でも、その前に。
「手札断殺を発動。お互いのプレイヤーは、手札を2枚墓地に送り、そのあと2枚ドローする。さぁ、兄さんも手札交換よ」
「分かったよ明日香」
私は兄さんの表情と、目線、手札を注意深く観察する。
だけど、表情からは何も読み取れない。ポーカーフェイスを貫きながら迷いなく手札を2枚選び墓地に送る兄さん。
そして私も、手札の機械天使の儀式を2枚墓地へと送る。これで私の墓地には2枚の《機械天使の儀式》が送られたことになる。
「この手札断殺の効果でボクはドラゴン族モンスターを1体墓地へ送った。つまり、ダークネスドラゴンの攻撃力が300ポイントアップする!」
《
正直この可能性は予測の範疇。
攻撃力3300ならばまだ大丈夫よ。
「2ドロー!」
「ボクも2枚ドローするよ。」
さて、引いたカードは……これは強力だわ。
レッドアイズ・ダークネスドラゴンの突破口が開けた。
「儀式の下準備を発動!」
《儀式の下準備》
通常魔法
「儀式の下準備」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):デッキから儀式魔法カード1枚を選び、さらにその儀式魔法カードにカード名が記された儀式モンスター1体を自分のデッキ・墓地から選ぶ。
そのカード2枚を手札に加える。
「このカードの効果で、祝祷の聖歌を手札に加える。そして、この祝祷の聖歌に記された儀式モンスターである竜姫神サフィラをデッキから手札へ」
「竜姫神サフィラ! そいつは強力なモンスターだね。サイバー・エンジェルだけでなく、その儀式モンスターまで使っているとは驚くばかりだよ」
「別に驚くほどのことではないわ。サフィラとサイバー・エンジェルの相性の良さはちょっと調べれば分かることだし」
「謙虚だな明日香は」
「謙虚なわけじゃないわよ。当然なことだし。さて、サフィラのレベルは6だから、サイバー・プチ・エンジェルとマンジュ・ゴッドのレベルの合計がちょうどいいわね。さぁ行くわよ! 祝祷の聖歌を発動し、竜姫神サフィラを降臨させる!」
《竜姫神サフィラ》
儀式・効果モンスター
星6/光属性/ドラゴン族/攻2500/守2400
「祝祷の聖歌」により降臨。
「竜姫神サフィラ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが儀式召喚したターンのエンドフェイズ及び、このカードがモンスターゾーンに存在し、手札・デッキから光属性モンスターが墓地へ送られたターンのエンドフェイズに、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●自分はデッキから2枚ドローする。
その後、手札を1枚捨てる。
●相手の手札をランダムに1枚選んで墓地へ捨てる。
●自分の墓地の光属性モンスター1体を選んで手札に加える。
翼の生えた蒼い鱗を持つ美しい人型のドラゴンが姿を現す。
これが私の切り札。サイバー・エンジェルデッキを最大限に活用しようと思ったときに見つけたこのモンスターで、兄さんを倒して見せるわ!
「そして、テラ・フォーミングを発動。デッキからフィールド魔法、祝福の教会‐リチュアル・チャーチ‐を手札に加えて発動!」
《祝福の教会‐リチュアル・チャーチ‐》
フィールド魔法
「祝福の教会-リチューアル・チャーチ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分の手札から魔法カード1枚を捨ててこの効果を発動できる。
デッキから光属性の儀式モンスター1体または儀式魔法カード1枚を手札に加える。
(2):自分の墓地の魔法カードを任意の数だけデッキに戻し、デッキに戻した数と同じレベルを持つ、自分の墓地の天使族・光属性モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この場が純白の教会へと姿を変えた。
兄さんはそれを見て、こう言った。
「とてもロマンチックなカードを使うね明日香。教会とは……未来の花嫁姿を想像してしまうよ。相手は――」
「兄さん! そんなどうでもいい話は置いておいて! デュエルを続けるわよ」
「まったく、シャイなんだから」
「うるさい! いくわよ、リチュアル・チャーチの効果を発動。私の墓地の魔法カード、儀式の下準備、儀式の準備、手札断殺、そして……機械天使の儀式をデッキに戻す。4枚の魔法カードをデッキに戻したから、レベル4の天使族、光属性のマンジュゴッドを墓地より特殊召喚!」
「なるほど、今デッキに戻した機械天使の儀式を手札に加える気だね」
「その通り。そして、今手札に加えた機械天使の儀式を墓地に捨ててリチュアル・チャーチのもう一つの効果を発動。魔法カードを1枚捨てることで、光属性で儀式モンスターのサイバー・エンジェル‐
「連続儀式召喚……! いったい誰に影響を受けたのかな?」
そんなの、決まってるじゃない。
私の幼馴染で、お互いに高めあっている、ライバル的存在。
彼なくしてこのデッキは作り出せなかったと思う。
「それは兄さんのよく知っている人。さぁ、行くわよ! 私は機械天使の儀式を発動。手札のサイバー・エンジェル‐韋駄天‐と、フィールドのマンジュ・ゴッドを生贄に捧げ――降臨せよ、サイバー・エンジェル‐荼吉尼‐!!」
《サイバー・エンジェル‐
儀式・効果モンスター
星8/光属性/天使族/攻2700/守2400
「機械天使の儀式」により降臨。
(1):このカードが儀式召喚に成功した場合に発動できる。
相手は自分のフィールドのモンスター1体を墓地へ送らなければならない。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分の儀式モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。
(3):自分エンドフェイズに自分の墓地の、儀式モンスター1体または「機械天使の儀式」1枚を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
「荼吉尼の効果! 兄さんは、フィールド上のモンスター1体を墓地に送らなければならないわ」
「なら、ボクはレッドアイズ・トレーサードラゴンを墓地へ送るよ。そして、墓地にドラゴンが増えたからダークネスドラゴンの攻撃力がさらに300アップする」
《
「関係ないわ。生贄に捧げた韋駄天の効果が発動。私のフィールドにいる儀式モンスター全ての攻守が1000ポイントアップする」
《サイバー・エンジェル‐荼吉尼‐》攻撃力2700→3700
《竜姫神サフィラ》攻撃力2500→3500
これで兄さんのレッドアイズ・ダークネスドラゴンの攻撃力3600を上回った。
戦闘破壊できるけど……あの伏せカードが気になるわね。
でも私の手札にはアレを破壊する手段がない。でもここで攻撃せずにターンを渡してしまったら、何らかの方法で墓地のドラゴン族を増やされて攻撃力が逆転する可能性がある。
ここは――臆せず攻めるしかない!
「バトルフェイズよ! サイバー・エンジェル‐荼吉尼‐で、レッドアイズ・ダークネスドラゴンを攻撃!!」
通れ!
私はそう願いながら、兄さんのことを見つめ続けた。
しかし、兄さんはデュエルディスクの操作を行おうとしない。
つまりこの攻撃は――。
「やるね、明日香。ボクの切り札、レッドアイズ・ダークネスドラゴンを倒すとは」
天上院吹雪:LP2400→2300
攻撃が通った……!?
あの伏せカードはブラフだっていうの?
なら、ここは続けて攻撃するのみ。
大丈夫、墓地にある機械天使の儀式と祝祷の聖歌がサフィラを破壊から守ってくれる。
「続けて、竜姫神サフィラで兄さんにダイレクトアタック! これで終わりよ!!」
「でも――ここで負けるわけにはいかない。リバースカードオープン」
「無駄よ。墓地にある儀式魔法がサフィラを破壊から守ってくれるわ」
「破壊はしない。少しばかり隠れてもらうだけさ。月の書だよ」
月の書……!
フィールド上のモンスターを裏側守備表示にする速攻魔法。
機械天使の儀式と祝祷の聖歌は戦闘破壊と効果破壊の代わりに除外する効果。
破壊しないカードに対しては手も足も出ない。
「くっ……このターンで決着をつけれなかった。エンドフェイズ時、荼吉尼の効果で墓地にあるサイバー・エンジェル‐弁天‐を手札に加えるわ。これでターンエンド」
天上院吹雪 LP2300 手札3枚
場 なし
魔法・罠 《
セット なし
天上院明日香LP3200 手札1枚
場 《サイバー・エンジェル‐荼吉尼‐》《竜姫神サフィラ(裏側守備表示)》
魔法・罠 《祝福の教会‐リチュアル・チャーチ‐》
セット なし
「ボクのターン、ドロー!」
その引いたカードを見た瞬間、兄さんの表情が変わった。
微笑するその顔は、どこかしらに優しさが垣間見えた。まるでデュエルの相手――敵としてではなく、兄妹としての、家族としての、表情。
いったいどうしたっていうの?
何をするつもり?
「明日香、新たな儀式モンスターを使い、ボクをここまで追い詰めたのは素直に賞賛するよ。兄として、妹の成長をこうやって実感できることがとても嬉しい。でもね、ボクも兄としての意地があるんだよ。このデュエル――勝たせてもらう」
私の墓地には機械天使の儀式が3枚、そして祝祷の聖歌が1枚ある。
どちらも戦闘破壊と効果破壊の身代わりに出来る効果を持っている。
それなのにどうやって突破するっていうの?
「まずは魔法カード、復活の福音を発動。墓地のレベル7か8のドラゴン族モンスターを対象にし、特殊召喚することができる」
「まさか、レッドアイズを?」
「いいや、ボクが特殊召喚するのはこのドラゴン――パンデミック・ドラゴン」
《パンデミック・ドラゴン》
効果モンスター
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守1000
(1):1ターンに1度、100の倍数のLPを払って発動できる。
このカード以外のフィールドの表側表示モンスターの攻撃力は、この効果を発動するために払ったLPの数値分ダウンする。
(2):1ターンに1度、このカードの攻撃力以下の攻撃力を持つフィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊する。
(3):このカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動する。
フィールドの全ての表側表示モンスターの攻撃力は1000ダウンする。
「パンデミック・ドラゴン!? まさか、手札断殺のときに……?」
「その通り。そのときに捨てたこのドラゴンを蘇生させてもらったよ。パンデミック・ドラゴンはウイルスをその身に持っている。それにより、ボクのライフを100支払う毎にフィールド上のモンスターを100ポイント減少させる。ボクはライフポイントを2200支払う」
2200……! 兄さんが支払える最大のライフポイント。
天上院吹雪:LP2300→100
これで私のフィールド上のモンスター《サイバー・エンジェル‐荼吉尼‐》の攻撃力が3700から1500まで下がってしまう……!
でも墓地の儀式魔法で守ることができるわ!
「パンデミック・ドラゴンの効果を発動。1ターンに一度、このモンスターより攻撃力が低いモンスターを破壊できる。荼吉尼を破壊だ」
「だけど、私の墓地にある機械天使の儀式を除外することで、破壊を免れるわ」
「オーケー。さて、ここからが本番だよ明日香。明日香が儀式を扱うなら、ボクも儀式を行おう」
兄さんが、儀式召喚ですって!?
いったい何が出てくるっていうの……。
私は、緊張しながら兄さんの手札を見つめた。
レッドアイズデッキで儀式召喚……いったい何が出てくるんだ(すっとぼけ
とにかく年内は次の投稿が最後になると思う。
最低でも吹雪VS明日香の戦いを終わらせますね。