めざめてソラウ   作:デミ作者

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一年と……数ヶ月ぶり……
やあ。更新なんだ。しかし申し訳ない、番外編なんだ。
番外編なので本編とは毛色の違う話になってます。それでもよければどーぞ。

あ、あとがきに近況報告でも書きます。


ダークネス魔法少女プリズマ★ソラウちゃんツヴァイ!!

 ――意識が暗転し、反転する。一秒が一時間に引き伸ばされ、一瞬が無限に拡張する。ぼんやりと浮遊しているような感覚。上下もわからない、重力も感じない、おかしいな、と立ち上がろうとして――自分が、横たわっていることに気がついた。

 目を開け、身体を起こし、飛び退く――前に、吹き飛ばされた身体は宙を舞い壁に叩きつけられる。再度立ち上がろうとして、下半身がまるごとごっそり吹き飛ばされていることに気付いた。

 痛覚は遮断済みである。遮断済みであるのに、耐えられないほどの痛みが脳を裂いた。ずるりずるりとずり落ちるままに泥を――この世全ての悪(アンリ・マユ)を呼び出し、そこに沈み込む。

 

 ああ、なぜ、こんな事になっているのか。

 

 記憶は遠く、数百、数千時間前の昨日を思い返す。あれは――そう、麗しの狩人(アタランテ)夢幻召喚(インストール)して、二人の魔法少女と二人の魔術師の前に立ったのだったか。不意を打ってクラスカードを手中に収め、解析魔術をかけながら時間を稼いで。

 

『で? アンタ、結局何者なのよ。それが何なのかも知らないで掻っ攫いに来た、なんてそんなワケはないでしょ? こちとら大師父直々の回収任務なの。何に喧嘩売ったか分かってる?』

『あら。その直々の回収任務を任されておきながらいがみ合ってばかり、挙句魔術礼装からも見放されておきながら、代わりの人員が送られてきたとすら考えられないの? ……まあ良いわ。何者か、くらいは教えてあげる。私は、そうね……ライバル魔法少女、ってところかしら』

『……馬鹿にしてるの?』

『そんな訳ないわ。そっちの……白とピンクの。あなた、あなたなら分かるでしょう? 魔法少女モノにはライバルが付き物だって』

『え……っと……いやぁ、確かに分かるんだけど……その、あなたの格好は魔法少女というより、悪の親玉とか、敵側のヒロインに近いかなって』

 

 そうだ、確かそんな話をした気がする。その後、二人と戦ったんだっけか。アタランテの夢幻召喚を解いてただ杖と聖杯としての機能を前面に押し出した俺――この世界に来てロリと化したソラウ・ヌァザレ・ソフィアリと、ステッキを手にしたばかりのカレイドの魔法少女二人――イリヤスフィールと美遊。

 当たり前のことだが、性能としてはあちらの方が遥かに高い。魔法使い……魔術師ではない、魔術師を超えたそれが作成した超抜級の魔術礼装に対し、此方は聖杯の機能を使用しているとはいえ使い手は俺。黒き聖杯をユスティーツァの魔術回路ごと自分に適合させたとしても、その権能を十全に振るうには宝具の開帳が必要だ――かの黒き聖杯のサーヴァント(ドスケベキャスター)と同じように。

 従って、此方が不利であるのは必然。しかし――緒戦に於いて、二人を圧倒したのは俺の方だった。何故か、答えはいくつもある。イリヤはまだ戦う覚悟が出来ていない、美遊はまだ空を飛べない、対人であるからクラスカードを使うことも出来ない。すぐに挙げられるだけでこれだけにもなるが、やはりそれよりも大きな要因は、「本当の戦いを見たことがあるか」の差だろう。

 俺の目には、魂には、七騎の英霊が誇りをかけてその技を競い合ったいくつもの場面が焼き付いている。その鮮烈さ、その疾さ。それらを決して忘れ得ぬからこそ、それらと同じだけの速さで動くことができる。魂が覚えているのならば、それを目に落とし込むことで。目が彼らの速度について行ける様になったのならば、身体へ魔力を通すことで。

 自らの内にのみ魔術を施すのとは俺の得意とすることだ。黒き聖杯の、その魔術回路。特性を最大限(フル)に活かして駆けた。……副作用として、励起した聖杯の魔術回路がSNのイリヤの励起した令呪みたいなビジュアルになって、また「やっぱり悪者!?」と恐れられたが。

 

 ともかく、ああ、思い出してきた。そこで戦って、やりたかったことは自身の戦力の確認と、黒き聖杯を自身に馴染ませること。どちらも此処へ来る前に試していたことであるが、実戦の機を活かしたのだった。そして、その途中に――

 

「っ、がは……げほっ」

 

 コンクリートの床に手をついて、ずるりと泥溜まりから全身を引き抜く――同時に、腹部に蹴り。木っ端のように吹き飛び、鉄筋コンクリートの壁に蜘蛛の巣状のひび割れ。ずり落ち、倒れ臥し、顔だけを動かす。視界に映るのは細く小さな腕。用意してあった魔法少女衣装は戦闘の余波で既に無残に引き裂かれ、今では胸元と腰回りとスカートくらいしか残っていない有様だ。

 そう。俺は戦っていた。二人の魔法少女を相手取った後、その場から離脱してすぐ。ふと、この世界の今、この時。何があるかに思い至ったのだ。

 探せばそれはすぐに見つかった。建設中のビル、SN(原作)では屋上でセイバーとライダーの宝具がぶつかり合った場所。

 

「――――」

 

 顔を伏せて、下を向いていても感じる圧倒的なプレッシャーと存在感。放つ熱量、こちらを押し潰すかのような圧力。低い唸り声。がりがりとコンクリートを抉る得物の音。大気を捻じ切る轟音に、眼前の敵すら見ないまま横っ跳びに跳ぶ――爆音、風圧。ただの余波だけで、俺の矮躯は吹き飛ばされて、再度壁に叩きつけられた。

 両手足を投げ出し磔のような体勢。そこでようやっと、癒着してしまったかのような瞼を無理矢理に開いた。

 

「……ああ、やっぱり……」

 

 頭の鉢が割れたか、夥しい流血に真っ赤に染まった視界の向こう。冷え切った闇の中に聳え立つそれ。口から漏れ出る、あるいはそれの全身から立ち昇る熱気が白くゆらゆらとゆらめいている。

 ――その鋼がごとき肉体は、いかなる攻撃も通さず。

 ――その丸太がごとき両脚は、それの巨軀をすら雷の如き速さで動かし。

 ――その、天を支える腕は、眼前の全てを粉砕する。

 

「……カードでも、黒化英霊でも……強いなぁ、ヘラクレスは」

 

 眼前に立つは、万夫不当の大英雄。その名をヘラクレス――その影である、

 

 そうして意識が覚醒する。

 そうだ、俺はこのヘラクレスのカードが座するビルに乗り込んだ。理由は――いずれ来る未来、人理焼却の日、それより先の七つの特異点を越えるため。聖杯の力を得たとて、ただの人間の魔術師である俺が、待ち受ける脅威と戦うため。己の知る、最も屈強な大英雄ヘラクレスの影を相手に、少しでも自身を鍛えよう、と思ってのことだった。

 仕込みは万全だった。事前に、頭さえ無事ならば聖杯の泥の中に沈むことで身体を癒せることを確かめ――その為に自傷したらこの世全ての悪(アンリ・マユ)に大笑いされた――、鏡面界を構成する術式に手を加え、内部時間を外界の何百、何千倍にも加速させ。願わくば彼の大英雄の技、剣の振り方のひとつでも学ぶことができれば、と勇んで――

 

「が、っは……!」

 

 第一合。どこにも繋がっていない無名のカードから呼び出した剣、それごと身体を両断されたことを、思い出す。

 血を吐きながら身体を起こす。眼前に迫る武骨な斧剣に、逸らした身体の左半分を持っていかれた。ぐしゃりと鈍い音、噴き出す鮮血が床を真っ赤に染める。見れば、もはやどこもかしこも赤一色であった。

 

「ぐ、ッおぉ……!!」

 

 残った右脚で身体を転がす。呼び出した悪意の泥の上を転がり、そこから欠けた身体を継ぎ接ぎする。左腕を再生する傍ら、その手の中にカードも生成。

 頭の中でスイッチを入れる。詠唱――限定召喚、無銘・剣、剣、剣、剣。

 

「██████▅▅▅▃▄▄▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▃▃▄▅▅▅━━━━――――ッ!!!」

「っがぁぁあああぁぁッ!!!」

 

 一振りに束ねた三百枚の無銘の(カード)と、振り下ろされるたった一つの頂点(いただき)の剣。数瞬の拮抗ののち、名も無き剣とそれを振るう細腕はすべて砕け散る。

 ああ、ここまで来るのにどれだけ掛かったことか。

 

 最初の一合は、たった一振りで断ち斬られた。

 そこから千合に、何の進歩もなかった。

 一万合を重ねてやっと、かの大英雄の影の最初の一太刀で死ぬこと(戦闘不能)はなくなった。

 二万と立ち向かい、三万と砕き割られ、五万と屠られ、十万を費やし。そうしてやっと――俺は彼の前で、細く拙いながらも一応の生存権を得た。

 

「上っ、左手っ、左手回し蹴りっ、もっかい上っ、体当た――りッ、そのまま蹴りっ!!」

 

 流石にこれだけやっていれば、辛うじて防戦することくらいは出来る。防ぐたびに剣を呼び直し、一秒生存するたびに身体を作り直すとしても、それでもどうにか立ち続けることができる。

 ――カレイドの魔法少女はこうではなかった? 全くその通りだ。彼女らは最初から彼に食らいついてみせた。それもそのはず、彼女らに比べて、俺のスペックは格段に低いのだから。

 まず、俺にはステッキが発動している物理保護がない。鎧を着ているかのような彼女らと違って裸一貫同然――文字通り服も半分以上吹き飛んでいる、大人状態だったら双丘・視線集束(ツインバスト・ビッグブルンチ)だっただろう――な俺は、大英雄の剣が掠るだけでも致命傷を通り過ぎてデッドエンドだ。

 次に、中身……というか、素体の貧弱さ。身体強化や神経強化、速度強化に反射神経強化。物理保護と合わせて、俺にも該当の魔術を行使できないわけではないが――カレイドの魔法少女の使うそれと比べて、俺のそれは弱い。聖杯の権能を一部行使できるとはいえ、たかだか二流前後の俺の魔術と魔法使い(宝石翁)の礼装のそれが比較になる筈もない。これがケイネスならばまた違ったのだろうが、俺は自身の特性と原作知識で以ってどうにか『それらしいソラウ』を取り繕っているに過ぎない。

 あるいは、俺自身の出自にも関係があるのかもしれない。聖杯の器として製造された最高傑作のホムンクルスであるイリヤスフィール、中身入りの天然聖杯である衛宮美遊。比較して、俺も同じく聖杯の末端に触れたとはいえあくまで紛い物、後天的にアインツベルンの秘術を肉体に刻みつけ、その疵によって力を振るっているだけだ。『自ずからそう出来ているもの』と『そうなるように為されたもの』では天と地ほどの差があるだろう。英雄王の言葉を借りるならば、真作と贋作と言うべきか。

 そして最後に、何よりも――戦い方、だろう。限定召喚や夢幻召喚を駆使し、風に乗り空を翔ける彼女らに比し、俺は地を蹴って、無銘の武具だけを頼りに真正面から大英雄へ斬りかかっている。そりゃあ、傷も増えようと言うもの。どう考えても馬鹿の所業、ずっと前から頭の中で、小憎たらしいアンリの笑い声が響いて止まない。

 ……白状してしまえば、俺自身も自覚していない驕りもあったのだろう。原作知識として未来と魔術を、英霊とその能力を知っている。ソラウの肉体には才があると知っている。ここにいるのは大英雄の影で、影ならば大元よりも格段に能力を落としている。いざとなれば聖杯の力もある。一流でこそ無いが、魔術師として二流程度の自分ならば食い下がるくらいなら、いい訓練になる――と。

 果たして、結果はこの有様だ。今になって、イアソンの言葉が思い起こされる。英雄達の誰もが憧れ、挑み、一撃で返り討ちにされ続けた頂点――その影、現し身ですらこれなのだから、己の愚かさにはほとほと笑いしか出ない。

 いや、違う。思考がまとまらないが、違う。己の愚かさなど知っていた。自惚れてはいたが、そんなものは知っていた。かの大英雄と己の距離を、この俺が見誤る筈などない。太刀打ちできないどころか、話にならないことなど分かっていた。

 だから、この結果も。全て納得の上で、こうして無限に立ち向かっているのだ――一重に、頂に立つ彼に憧れたが故に。

 

「なんとなく、外から気配を感じるなぁ……もうそろそろ、美遊達が乗り込んでくる頃なんだろうな。外界時間でおよそ〇.〇五秒……こっちで、だいたい三十七秒か」

 

 ゆっくりと立ち上がる。振り下ろされる拳に、五百を超え、千に連なる無銘の剣を一振りに束ね迎え撃つ。かち合う衝撃だけでその半数が砕け散るが――大丈夫、まだ、死んでない。

 無限に魔力を引き出せるとはいえ、一度に使える魔力は決まっている。タンクに水が無限に入っていたとしても、蛇口から出る水の量が一定以上にならないのと同じ。それでも無理やり、その規定を超えればどうなるか。どうなると思う?

 答えは、もうめちゃくちゃ痛い。身体中の魔術回路が励起し、さっきからそれが光と熱を放って止まないのだけれど、それでも魔力を引き出し続ける。

 砕けた端から無銘の剣を重ねてゆく。一振りで五百壊されるから、一秒で千を追加する。重ねれば重ねるほどに、内側からどんどん焼け落ちていく。しかし、何のことはない。ただの激痛が、大英雄の一撃より痛い訳がないのだから。

 この身は既に、この手に握る剣と同じ。幾千幾万回砕かれ、その残骸を寄せ集めて人型に継ぎ接ぎしただけのモノ。そこに芯として熱を通し、熱の上を走る魔力で身体を動かしている。成る程、こうなって初めてかの衛宮士郎(主人公)の気持ちの欠片でも理解できたような気がする。血潮は鉄、それも溶鉄。ああ、熱い。

 

「███▅▅▃▄▄▅▅▅██▅▃▄▅▅▅━━━―――ッ!!」

「が、ぁぁああッ!!」

 

 咆哮。猛進。かの威容は、敵対していて尚、俺の心を震わせる――なんと勇ましいのだろう、と。轟音とともに真正面上方から振り下ろされる一撃。受け止める? 避ける? 弾き返す? 道は多数、しかしそのどれもが死へ繋がっている。ならばどうする、ただ死ぬだけか。違うだろう、ここで間違えばかの戦士に申し訳が立たない。俺は何のために、彼の剣を見続けていたのだ。それは一重に――

 

「██▅▅██▅▃━━―ッ!?」

 

 強大な敵からの一撃。大英雄、ヘラクレスならこう対処する――右手に握った剣をかち上げながら手首を捻る。前に出ながら力をいなす。砕けた剣を補修しながら、懐に潜り込んで――振り抜いた一撃は防がれた。

 ならどうする? 大英雄ならこうする。体躯の差、巌のような横腹へ、握り込んだ左拳を叩き込む。魔力をブーストさせるも、大英雄にダメージはない。逆に、余剰魔力がひび割れから溢れて俺の左手が肩まで砕けたくらいだ。けれど、対価は確かにある。ダメージは無くとも衝撃は通る、かの巨体がよろめき、片足を後ろに下げた。

 

「行くぞ、大英雄――!!」

 

 砕けた腕を泥で再生する。横薙ぎに薙がれた岩の斧剣の上へ肘から転がり乗る。肩からごっそりと肉が削がれた。そのまま回転して、剣の上で立ち上がる。ぎりぎりと引き絞った腕を、魔力放出で加速させて突き出す。

 破砕音。重ねた千が全て砕ける。大英雄にダメージはない。衝撃。砕けた剣から生まれる圧が、大英雄を後方へ弾き飛ばした。好機――

 

「は、ははは、なんでだろな。こんな有様なのにさ。俺、楽しいんだ……!!」

 

 俺は知っている、数多の英雄の戦い方を。そのどれもが、俺には真似のできない一級品。だけど――真似できないなら、学ぶだけだ。

 泥の中で無限に精製するクラスカード(屑カード)。宙空にばら撒いたそれらを一斉に限定召喚し、無銘の黒い武具の雨を大英雄へと射出する。同時に、両手にはそれぞれ剣を。千ずつ重ねた剣を引っ提げ、剣軍を潜り抜けて大英雄のもとへ。

 正面から一撃。無傷。胸板を蹴り飛び退る。降り注ぐ剣軍。無傷。地を這い、両足に力を込めて再度突撃。右、左、もう一度右、下から、上から。ビルの天井や壁を蹴り、四方から斬りつける――無傷。そも、彼の身体まで届いたものは一つとて存在しない。全てその剣が斬り払っている。

 速度を上げる。出し惜しみはナシだ。射出した全てを爆破し、衝撃で命よりも貴重な一瞬を稼ぐ。よろめく影へ両手の剣を投擲。同じだけを限定召喚、もう一度投擲。同じだけを限定召喚、もう一度――そのまま、全身が壊れるほどの全力で踏み込んだ、

 二振りが着弾し、大英雄の影が大きく揺らぐ。それでもなお、斬り崩すには足りない。振り下ろされる剣。迎え撃つように、剣を交差して斬り上げる。一瞬の拮抗――もう二振りが着弾。ここしかない。

 

「砕けろ、妄念――ッ!」

 

 壊れた幻想、などと形容できる筈もない。しかし、生み出す爆発力はそれに勝るとも劣らない。至近距離で砕けた無銘の剣。弾き飛ばされる彼と俺。彼我の距離が開くその前に、俺は浮き上がった身体を魔力で更に打ち上げて、天井へ到達する。

 視界が反転する。床となった天井を蹴る。手の中に無銘の剣。注ぎ込むはありったけの黒い魔力。かの叛逆剣のごとく赤黒い雷を撒き散らしながら一振りの剣へと収束した力を携え、俺は――

 

「――███▅▅▅ッ!!」

「――幾度の死を賭してでも(アンリミテッド・レイズ・デッド)ッ!!」

 

 振り下ろす黒雷、かち上げる轟音。幾度も繰り返された剣戟と真逆となったそれは、互いの肉体へ吸い込まれる。

 衝撃。吹き飛ばされ、剣を床に突き立てることでどうにか倒れない。腹は裂かれ、鮮血が溢れ出している。

 対する大英雄――顔を上げた俺の目に飛び込んできたのは、頭の上から顔の半ばまで、斜に傷を抱えた、ヘラクレスの姿だった。

 

「……へへ」

 

 鏡面界に張った術式が解けるのがわかる。踏み込んでくる美遊、凛、ルヴィア。何事かを話したような気もするし、話していないような気もする――正直、ほぼ覚えていない。その少し後に乗り込んできたイリヤスフィールにも含めて臭いことを言ったような記憶と、肩を並べて戦ったような記憶だけがある。

 そして気がつけば、俺は冬木市と隣町の境に立っていた。空気でわかる、これはプリヤ世界ではなく、俺が元々いた世界であると。何が起こったのか理解もできず、はてあれは白昼夢であったかと一歩踏み出し――継ぎ接ぎの身体に走る大激痛に転倒、そのまま泥の中へ。結局俺は、無謀の代償として、一月を泥の中で痛痒さに悶えることとなったのであった。

 




改めまして明けましておめでとうございます(隔年)。

職場環境が変わったり残業が増えたり深夜残業が増えたり残業が減ったりで完全に供給側でなくなってたデミ作者です。
定期更新はブランクのおかげで難しいですが、またちまちま書こうかと思います。
SN編1話(いつになるか不明)が書き上がるまでこれを最新話として起きておきます。書きあがったらプリヤ編のところに移動します。
それでは、以下Q&A。

Q:なんで遅れたし?
A:SN編の展開がまるで思いつかない。
ソラウちゃんが参戦する必要がこう、ね……デメリット覚悟で人外魔境に飛び込む理由付けができてないのです。

Q:なんか考えてることは?
A:あるにはある。
具体的には間桐慎二改造計画。スーパーケイネスを育てた手腕でスーパーシンジ(エヴァにあらず)にする。
聖杯パワで無理やり魔術回路を開くか、魔術が嫌になった桜ちゃんの合意の上(慎二くんの合意は得てない)で二人の精神を入れ替えるか。
慎二くんが中に入った高校生桜ちゃん見たい……見たくない?

Q:HF2章見た?
A:見た。
今話の前半分くらいは1章見た時に書いてたものをリメイクしてたりします。ヘラクレスぅー! ヘラクレスぅー!
どう見ても影とはいえ大英雄にただの魔術師が対抗できる筈もないので、実質十年くらいソラウちゃんにはボコボコに殺されてもらいました。顔だけは守る女の鑑(脳があるから怖かった模様)。

Q:意識朦朧としてる時ソラウちゃん何したん?
A:イリヤと美遊に抱きついてほっぺたにチューした。
イリヤちゃんも美遊もかわいいからね、仕方ないね。
なお黒化聖杯アンリマ★アイリさんからご褒美が貰えた模様(再臨)

このくらいでしょうか。
それでは、遅くなりましたがお読みいただきありがとうございました。

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