東方読心録   作:Suiren3272

9 / 34
皆さん、どうも。
今回は少し時間があったので挿絵を入れてみました。
それと、一人称と三人称が切り替わる部分がありますので、読みにくいところがあるかもしれませんが、よろしくお願いします。
ということで、どうぞ。


第八話 ~酔態の果てに~

「イェーイ! 真剣碧翔でーす! これからよろしくぅ!!」

 碧翔の声で場が盛り上がる。外来人、真剣碧翔は酔っていた。

 未成年でありながら酒を飲むという、現代なら問題になる行為だが、幻想郷では関係ない。何故このような事になってしまったのか。事の始まりはこの日の夕方……。

 

 

* * *

 

 

 さとりのお仕置き(?)を受けてから、二人はすごすごと帰って行った。何かちょっと可哀想な気もするけど、さとりには「この位はしないといけません」と言われた。何をしたんだ何を。まあ二人は反省したっぽいし、部屋の修理も順調に進んでいるらしいから結果オーライか。

 ……とまあ、この時はそう思っていたけど、次の日に二人がまたやって来た。

 

 どうも昨日の事は反省したから、地底の仲間への紹介ついでにお詫びとして宴会でもしよう、という事になったらしい。

 いや、正直嫌な予感しかしない。というか俺お酒飲めないし。さとりも一応許可をしたけど、「気を付けて下さいね」との忠告を受けた。

 

「ほら、碧翔。折角なんだから呑もうよ」

「い、いや、俺はいいって」

 それで今、萃香に全力でお酒を勧められてる訳です。どうしたらいいんだこれ。しかも瓢箪みたいのに入ってるこのお酒、匂いからして絶対強いよ。母親はお酒を飲まなかったからよく知らないけど、これは絶対やばいやつだって。

 パルスィも特に止めてくれないし。チラッとパルスィの方を見ると、あからさまに視線を逸らした。……面倒なんですねそうなんですね。

 

 そこで、勇儀が思いついたように言った。

「そうだ碧翔、折角だから自己紹介しておかないか?」

「良いねえ、是非やってくれよ」

「いや、俺はいいって、恥ずかしいし」

 この大人数の前で自己紹介とか無理だよこれ。そういうのあんまり得意じゃないし。

 俺がそう言うと、萃香がフフン、と笑った。

 

「そこでお酒の出番だよ。勢いで行っちゃえ!」

「だから俺はいいか――がぼぅ!?」

 無理矢理口に突っ込まれました! 種族通り鬼だ! というかこれさっき萃香も飲んでたよね!? という事はこれって、か、関節キ……。

 そんな事を心で叫んでいるうちに、口にお酒が流れ込んでくる。辛っ! 超辛いし喉が熱い……!

 ――あ、これ死んだかも。そこで俺の意識は途切れた。

 

 

* * *

 

 

「あ、起きたみたいだぞ」

 碧翔が目を覚ますと、周りに何人か人が集まっていた。その中にパルスィもいる。

「あ、碧翔、大丈夫!?」

パルスィはひどく心配しているようだった。いつもは素っ気ないが、なんだかんだ言って世話焼きなのだろう。

 碧翔はパルスィを視界に捉えると、いつもとは全く違ったテンションで答えた。

「あー、全っ然大丈夫! パルスィの可愛い顔を見たら元気になったよ!!」

「か、かわ……え?」

若干呂律が怪しい口調でそう言った。パルスィは戸惑った様子で碧翔を見る。まるで別人だ、当然の反応だろう。

「本当に可愛いなパルスィは。緑に透き通った瞳も、絹のようなその金髪も、全部最高に可愛くて綺麗だ!」

「な、何言ってるのよ。お酒でおかしくなったんじゃないの?」

 

 パルスィは顔を少し赤くしつつも、警戒して後ずさる。お酒を飲ませた張本人は、呑気に笑って見ていた。

「俺は至って正常だよ? っと、そうだ、自己紹介をするんだったかな」

 そのままのテンションで真ん中の席に立つ。当然周りからの注目が集まっていき、碧翔はそれを眺めるように辺りを見回した。普段からは考えられない様な状態だ。

「イェーイ! 真剣碧翔でーす! これからよろしくぅ!!」

 碧翔の声に周りの人達も同じように返す。その場はどんどん盛り上がっているようだった。ついでに勇儀や萃香も一緒になって騒いでいる。パルスィはそれを見て、まだ少し赤い顔で溜め息を吐いた。

 

 

 それから約一時間後、碧翔は思い出したように言った。

「っと、俺はもうそろそろお暇しようかな」

「もう帰るのか?」

「あんまり遅くなるとさとり達に怒られそうだからね! さらばだ皆!」

 皆に大きく手を振って去っていく。そんな碧翔の後ろ姿を横目で見ながら、パルスィは溜め息を吐いた。

「はぁ……あの調子で帰って大丈夫なのかしら……」

 

 

* * *

 

 

 大きな音とともに地霊殿の扉が開け放たれる。部屋の中にはさとりの姿。碧翔は大股で部屋に入り、手を上げて言った。

「ただいま、さとり!」

「ええ、おかえりなさい……って、どうしたんですか? 何というか、様子が変ですが……」

「ちょっと宴に行ってきただけだよ。それにしても、さとりはやっぱり可愛いな」

「可愛いって……え?」

 さとりもパルスィと同じく、戸惑った様子だ。慌てて碧翔の心を覗くと、萃香達が原因だということが分かる。

 

「あの二人は……まだお仕置きが必要のようですね……」

 そんな事を言っていると、碧翔がさとりに急接近した。片手を腰に回して、半分抱いているような状態になる。さとりの顔が少し赤くなった。

「あ、あの……」

「よし、俺の部屋に行こう!」

「ち、ちょっと……!」

 反論するが、完全に碧翔のノリに流されている。結局二人で碧翔の部屋に向かった。

 

 

「ただいま俺のマイルーム!」

 そう叫びながら碧翔はベッドへ向かう。勿論さとりも一緒に。碧翔に手を引かれ、二人でベッドに寝転がった。

「あ、あの、碧翔、何でここに?」

「あはは、たまには一緒に寝ようと思って。一緒に住んでるんだし仲を深めないとね!(義務感)」

「いや、あの、かっこぎむかんってどういう……!?」

 碧翔はさとりを抱き寄せる。さとりは完全に混乱状態だ。逃げようにも身動きが取れず、力づくで抜け出すのは碧翔が怪我をするかもしれない。仕方がないのでさとりも目を閉じる。しばらくは恥ずかしさで全く寝付けていなかったが。

 

 

────

─────────

 

 

 痛てて……ひどい頭痛だ。おまけに吐き気もする。というか体全体が重いな。 あれ、俺って何してたんだっけ。確か勇儀達に誘われて……そうだ、そこで無理矢理お酒を飲まされたんだ。今の気分の悪さは二日酔いってやつか?

 で、それから、それから……あれ? どうしたんだっけ。というかここ何処だ? 布団があるからベッドの上か。

 ゆっくりと目を開けると、そこにはさとりの顔。一瞬思考が停止した。改めて見ると、さとりは俺の隣で静かに寝息を立てながら寝ていた。

 

【挿絵表示】

 

「うおお!」

 思わず声を上げて飛び起きる。なんでさとりが隣にいるんだ!? というかここって何処!? 半分混乱状態で辺りを見回すと、そこは地霊殿の俺の部屋。あれ、いつの間に帰ったんだ?

 さとりをもう一度見ると、俺の声で起きたのか目を開けていた。

 

「あの……」

「え、えーと……おはよう?」

「お、おはようございます」

「あー……これってどういう状況?」

「……え?」

 俺の質問に少し戸惑った様子のさとり。そういえばお酒を飲まされてからの記憶が無いな。

 ……目が覚めたら二人ベッドの上で、酔ってて記憶がない。加えて、さとりの戸惑い具合……俺、何かしたのか? ありえないと思いつつも、状況的に嫌な考えが頭をよぎる。……やってないよな?

 

「な、な……! へ、変な想像しないでください! 何もしてないです! 一緒に寝てただけですから!」

「ご、ごめん、そっか」

 すごい勢いで否定してくる。まあそりゃあそうか。というか本当に安心した。そもそも、さとりなら俺くらい軽く吹っ飛ばせるだろうしな。

 余計なことを考えたせいで変な汗が出てきた。

「えっと……それじゃあ何で二人で寝てたの?」

「それは……その」

 さとりが言いかけたところで扉がノックされた。お燐と空みたいだ。

「碧翔ー、入ってもいい?」

「別にいいでしょ、入っちゃおう!」

 俺達が返事をする前に質問を解決してるんだけど。って、ちょっと待てよ。これ今入られたら……。

 ガチャ、と扉が開く。時が止まったかのような沈黙が数秒間、部屋を支配した。

「えーと、これには訳があってさ……」

「……お楽しみ中失礼しました」

「ちょっと待ったぁ!」

 お燐は少し複雑な表情をしてから空を連れ部屋から出ていった。……いや、どうすんのこれ。

 

 その後、お燐はさとりがちゃんと説得したらしい。……どことなく不安だけど。

 勇儀達には、「いやー、中々いいもん見せて貰ったよ」なんて言われた。お酒飲んでから何したんだよ俺。

 とりあえず、勇儀と萃香に誘われた時はもっと気を付けよう、と心から思った。……というか、もう行かないでおこうかな。




いかがでしたか?
というか改めて見ると中々酷い挿絵ですね。そのうち描き直そうか……。
ということで、次回もよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。