今回は少し文字数が少なめです。
ということで第七話、どうぞ。
「うーむ」
俺の前にはスマホが一つ。 電池残量80%。バッテリー状態は良好となっている。
元を辿ると俺って学校の教室からここまでワープした訳だから、ほとんど何も持って来てないんだよな。今あるのはポケットに入れてたスマホと財布くらい。何かもっと便利なものを持って来れてたらなあ、とも思ったり。
「お兄ちゃん、それってなに?」
「スマートフォンって言う機械だよ。えーっと……遠くの人と会話したり、写真を撮ったりできるんだ」
「そういえば霊夢達が前に似たような事をしてましたね」
幻想郷って結構発展途上だと思ってたけど、そんなのもあったのか。魔法とか普通にあるみたいだし、発展途上というよりは、独自の文化を築いてるのかもな。
それにしても、このスマホも電池が切れたら使えなくなるんだよな。
「地上には河童が居ますから、行ってみると良いかもしれませんね」
「河童?」
さとりが言うには幻想郷の河童はかなり光学的みたいだ。正直よく分からないけど、機会があったら行くとしよう。
まあ幻想郷って電波とか無いし、カメラくらいしか使い道ないんだけどね。でも最近のスマホのカメラは凄いよ、ホントに。俺の機種は古めだからそんなでもないけど。
「そうだ、写真でも撮らない?」
「それで撮れるの?」
「ああ、他にも色んな機能があるよ」
スマートフォンなんて機械、幻想郷からするとかなりオーバースペックかもな。普通に使ってていいんだろうかと思いつつも、カメラを起動する。
「あ、じゃあ三人でいっしょに撮ろうよ!」
こいしの提案で、三人一緒に撮るために内カメラに。位置を調整する。
「二人とも、もう少し寄ってくれる?」
「こうですか?」
三人一緒って結構難しいな。かなり近寄らないと。チラッと横に目をやると、さとりの横顔が見えた。ずっと思ってたけど、幻想郷の人達って皆綺麗だよな。幻想郷ってどうも外の世界とかけ離れた感じがするけど、これが原因の一つかも。
どうにか画面内に収めると、シャッターのボタンをタップする。
シャッター音とともに撮った画像が画面に映った。まあそれなりに上手く撮れたんじゃないかな?
「へー、すごいね、すまーとふぉんって」
「他にこんなのも出来たりするよ」
そう言って電波の必要無いゲームを起動してみる。簡単だし、こいしも出来るんじゃないかな?
一通りやり方を教えてみるとすぐに覚えたらしく、はしゃぎながらソファーの上で遊んでいた。
さとりは自分の椅子へ座り、俺もこいしの隣に座ろうとした時、さとりが小さく声を出した。
「痛っ……」
「どうしたの?」
見ると、木製の椅子にささくれができていて、それに引っかけたみたいだ。大した怪我じゃないけど、血が出ている。
「大丈夫?」
「少し切っただけですから、心配ないですよ」
「……そういえば」
俺はポケットの財布を取り出した。中にはお金やカードの他に、絆創膏も入っている。非常用に入れておいて良かった。たまに使うんだよね。
「絆創膏ですか?」
「そう、いつも財布に入れてるんだ。結構使えるんだよ」
一つ取り出してさとりに渡す。彼女はお礼を言って微笑んだ。
* * *
「……こういうの、暇っていうのかな」
ベッドに寝転がってそう呟いた。あ、Twitt○rじゃないよ。
あれから部屋に戻ってきたけど、やる事がない。うーん、現代じゃ勉強したりたまにゲームやったりで時間を潰してたんだけど、幻想郷って娯楽が少ないのかな。ずっとごろごろしてるのもあれだし、お燐あたりに手伝える事がないか聞いてみるか。
そう思って立ち上がろうとした瞬間、物凄い轟音とともに部屋に巨大な何かが突っ込んできた。
「な、なんだ!?」
よく見ると、黒くて大きい岩のようなものが見事に壁を突き破っている。……いや、なにこれ。
辺りにはコンクリートの破片が飛び散り、砂埃もすごい。辛うじて無事だった窓から外を見ると、勇儀と萃香が弾幕? らしきものを飛ばし合っているようだった。
状況に着いていけず棒立ちしていると、勢いよくドアを開けてお燐が入って来る。
「ど、どうしたんだい、これ」
「いや、俺もよく分からないけど、あれ……」
窓の外を指差すと、お燐は呆れたような顔をして言った。
「あいつらか……全く、勘弁して欲しいね」
「何あれ?」
「どうせまた喧嘩でもしてるんだと思うよ。最近は少なかったんだけどね」
危な過ぎだろあいつら。一歩間違えたら死ぬところだったぞ今。注意した方がいいんじゃないか? まあ、それで止めるとも思えないけど……。
それにしても、どうするんだ、これ。岩みたいなこれは二人に片付けさせるとして、壁の損壊は酷いし……業者的な人に頼まないといけないんじゃないか?
「とりあえず片付けはあたい達の方でしておくから、碧翔はさとり様に報告してくれるかい?」
「ああ、分かった」
俺は少し早足でさとりの部屋へ向かった。
* * *
「なるほど、さっきの音はそれだったんですね……怪我とかありませんか?」
「あ、うん、俺は大丈夫だけど……」
さとりもお燐と似たような反応をしていた。やっぱ幻想郷やばいな。
部屋の修理はやはり頼みに行くそうだ。俺が行こうかと思ったけど、よくよく考えたら道とかまだ全然覚えてなかった。仕方ないし、それはお燐達に任せる事にしよう。
俺の代わりの部屋は地霊殿の内側にして貰った。庭は見れないけど、命は大事だよ、ホント。
しばらく待っていると、旧都の方に行っていたお空とお燐が帰ってきた。二人が連れてきたのは……って、ヤマメ?
「ヤマメ? どうしたの?」
「もちろん碧翔の部屋の壁を修理しに。というかよく生きてたね?」
頼むって言ってたけど、それってヤマメにだったのか。本人曰く、土蜘蛛は建築が得意らしい。修理と建築って微妙に違う気もするけど。
とりあえず部屋の修理は任せるとしよう。色々な道具を持って、ヤマメ達は部屋の方へ向かった。
「それにしても、碧翔が無事で良かったです。
「あはは、そうだね。ありがとう、心配してくれて」
「勇儀達にはしっかり注意しないといけませんね……」
と、なんだか少しぞわっとした。注意って……?
そんな事を話していると、玄関の扉がノックされ、開かれた。いや、ノックしたらこっちが開けるまで待とうよ。入ってきたのは、俺の部屋の壁を壊した張本人の二人。何故来た。
「いやー、何か悪かったね」
「いや悪かったじゃないでしょ、俺死ぬところだったんだけど」
「ところで今から飲みに行くんだけど、碧翔達も行かないか?」
二人がそう言った瞬間、俺の隣から唯ならぬ殺気が……。
「二人とも……少しこっちの部屋に来て下さい」
あれあれ、なんだかさとりさん、笑顔なのに目が全く笑ってないぞ。
「碧翔は少し待っていて貰えますか?」
「あ、ああ……いいけど」
こうして二人は連れて行かれ……数分後、隣の部屋から鬼二人の悲鳴が聞こえてきた。ちょっとした覚妖怪の闇を垣間見た気がします。
でもまあ、こういうのこそが幻想郷の日常……って、そんな訳あるか!
いかがでしたか?
短いとかって言ってましたが、加筆修正してたら他の話とあんまり変わらなくなりました。全部で2800文字くらいなので……400字詰め原稿用紙7枚分ですね。
まあそんなわけで、次回もよろしくお願いします。