最近はサブタイトルが思いつきません。オラに発想力を分けてくれー!
ということで、どうぞ。
第六話 ~忍び寄る烏天狗~
「んー、あぁ、朝か……」
目が覚めると知ってる天井。地底にいると時間が分かりにくいけど……さて、今日から地霊殿生活の始まりだ。
昨日は楽しかったな。こいしのあれはあんまりやってるとどこかの巫女さんと魔法使いに勘違いされそうだけど。いや、既に手遅れか?
とりあえず起きるか。ベッドから降りて、大きく伸びと深呼吸をする。服は……クローゼットに入っていたあの服しかないな。この世界では一般的なんだろうけど、あのデザインにはやっぱり少し抵抗が……。まあ、これしか無いししょうがないか。
何で男の服があるんだろうな……と思いつつ一通り着替える。鏡で見てみると、明らかに奇抜な服を身にまとった自分の姿があった。これで現代を歩いてたら完全に変人だな。
着替えも完了したところで、昨日の部屋に向かう。扉を開けると、既にそこにはさとりとこいしが座っていた。
「あ、その服着たんですね。中々似合ってますよ」
「あはは……ありがとう」
「お兄ちゃん、こっちに来て」
こいしに言われるままに隣に座った。
「今日は何か、やりたい事はありますか?」
「そうだな……まだ全然地底を見て回ってないから、とりあえず旧都の方に行きたいかな」
お店も色々あったし、是非入ってみたい。あ、勿論普通の飲食店で。俺人間だし、未成年だから鬼達に絡まれるのは勘弁だ。
さとりはそれに頷くと、少し考えるような仕草をしてから言った。
「それじゃあ私もついて行きますね」
「え、いいの? 人……というか妖怪達もいるし、あんまり出歩くのは……」
「私なら大丈夫ですよ。それに案内役がいりますよね?」
「……確かに。それじゃあお言葉に甘えるとするよ」
……ありがとう、と心の中で呟くと、彼女は俺に柔らかな笑みで返してくれた。
「こいしはどうする?」
「んー、私は今日は留守番してるよ。まだ眠いし」
「そう。それじゃあ早速行きましょうか。朝御飯もお店で食べる事にしましょう」
そんなこんなで、俺はさとりと一緒に旧都を見て回ることになった。
* * *
「来た時も思ったけど、すごい賑やかだなぁ」
辺りを見回すと、様々な妖怪達で一杯だった。店の種類も多種多様だけど、共通点として大体の人はお酒を飲んでいる。改めて見ると凄い光景だなこれ。
「鬼達はお酒が好きですからね」
「へぇ、そうなのか。確かに、俺も来る途中に飲まされそうになったな」
「大丈夫だったんですか?」
「ああ、パルスィが助けてくれたからさ」
あれは助かった。飲まされてたらシャレにならないし……。
そんな事を話していると、人混みの中にその金髪緑眼の橋姫がいるのを見つけた。
「っと、噂をすればなんとやら、ってやつかな」
「え? と、ああ、あそこですか」
俺の言葉にさとりも気付いたみたいだ。折角だから声を掛けるか。
「おーい、パルスィ!」
向こうもこちらに気付いたみたいで、俺達の方に向かって来る。パルスィの他に、もう二人後ろから付いて来る人達が居た。片方は髪をポニーテールにしていて、もう片方は桶のようなものに入っている。
「結局地霊殿に住むことになってるんだから。ああ妬ましい」
「そこで妬ましいって言うと勘違いされると思うよ?」
「口癖だし……別に大丈夫だと……」
三人で何やら話してるけど、とりあえず自己紹介をした方がいいか。
「俺は真剣碧翔。地霊殿に住まわせて貰ってるんだ」
「パルスィから聞いてるよ。私は黒谷ヤマメ。土蜘蛛っていう妖怪だよ」
「ええと……私はキスメって言います……よろしくお願いします」
ヤマメにキスメか。ヤマメは明るくて、反対にキスメは内気って感じかな? 中々良いコンビな気がする。
と、パルスィがいつかのジト目で見つめてきてます。地霊殿に住むうえで、ジト目を向けられる事はもはや宿命なのかもしれない。
「それにしても、地霊殿に住むなんて凄いね! どうやってさとりを落としたの?」
「ちょっと、変なこと言わないでくださいよ」
「お兄さんすごいですね……頑張って下さい……」
「……私だと収集つかなそうなので、碧翔お願いします」
え、ここで俺に話を振られても困るんだけど。というか二人ともノリがいいね。
……んー、あえてここでヤマメ達と一緒になっても面白い気が……っと、すいません、そんな事しないんで足を踏もうとしないでください!
「あはは、俺は何もしてないよ」
「ホントにー? じゃあ何でさとりは住むことを許可したの? 今までそんな事無かったのに」
やっぱりそうなのか? まあ確かに地霊殿にはペット達以外に誰も居なかったけど⋯。さとりの方を見ると、少し横に目を逸らした。……よく分からないな。
「まぁいいや。それよりもさ、これから私達お店に食べに行くんだけど碧翔達も一緒に行かない? パルスィも良いでしょ?」
「……別に、好きにすれば?」
「ああ、それなら俺達もまだ食べてないし良いよ。さとりも大丈夫?」
「ええ、構いませんよ」
という事で、皆でお店に食べに行く事になった。今更ながら朝からお店って結構ハードじゃない?
* * *
「いらっしゃいませー!」
店員の明るい声とともにお店に入る。時間なんて関係なし、と言わんばかりに席はお客で一杯だった。
中に入ると店の奥の方の席に案内される。前にはパルスィ、隣にはさとり。パルスィの両隣にヤマメとキスメが座った。
……うーん、今のメンバーも、周りの人達を見ても、明らかに男女比率がおかしいなこれ。今まで知り合った人も全員女の子だし、地霊殿にも男は俺だけらしいし。アニメとかで良くあるハーレムってやつじゃないですか。現実だと嬉しいと言うよりも気恥ずかしいと言うか場違い感が凄い。
「さて、何を注文しましょうか」
さとりの持っているメニューを覗き込んで俺も考える。
色々あるけど基本的にファミレスとかでよく見るようなものが多い。全体的にちょっと古い感じはするけど。基本は日本と変わらないって感じか。俺は朝からガッツリしたのもあれだし、軽いものが良いかな。
「だったらこの辺りのメニューですね」
「ああ、ありがとう。助かるよ」
さとりの助言でメニューを選ぶ。……うん、美味しそうだしこのホットドッグでいいかな。基本は肉とパンだけど野菜も入ってるし。
皆で店員に注文する。しばらくすると、それぞれの所に頼んだものが運ばれて来た。俺の前にはソーセージやレタスが挟んであるホットドッグ。さとりはサンドイッチを頼んだみたいだ。
「それじゃあいただきます」
一口食べる。……うん、美味しい。ソーセージはパリッとしていて中はジューシーだし、マスタードの風味とすごく合っている。レタスも新鮮で瑞々しく、全体のバランスを保ってる気がするな。
「美味しいなこれ。さとりはどう?」
「ええ、美味しいです。良かったら一つどうですか?」
「いいの? じゃあ貰おうかな」
さとりから一つ受け取って食べる。これも美味しいな。
……ホットドッグもサンドイッチもすごく美味しいんだけど、さっきからやたら視線を感じる気がする。三人からも何故かチラチラ見られてるけど、それじゃないな。どこか別の方向からだと思うんだけど。俺の思考を読んだのか、さとりがこちらを見る。
「さとり、分かる?」
「いえ、人が多すぎてどうにも……」
なんだなんだ、面倒事にならないと良いけど。そんな事を考えていると、横に光が見えた気がした。そっちをよくよく見ると、植木に隠れて人影が。手にカメラを持って、頭に白い丸が付いてて……って!
「射命丸か!」
「あやや、見つかってしまいましたか」
植木の陰から出てきたのは、清く正しい烏天狗。一体どこが清く正しいんだ。盗撮とか犯罪じゃん。
「あれー、文じゃん。何やってんの?」
「いやー、ちょっと良いネタが目の前にありまして」
「ネタって……ああ、そういう事ね」
パルスィとヤマメはなんか納得してるけど、何の事だ? 俺達を撮って面白いことでもあるのだろうか……なんて思っていたら、射命丸の思考を読んだであろうさとりが急に顔を真っ赤にした。
「あれ、どうしたの?」
「な、何でもないです! 文はカメラを渡して下さい!」
「はてさて何の事でしょう。っと、私はこれで失礼いたしますので」
そう言って飛んでいってしまった。相変わらず凄いスピードだな。
「全くあの天狗は……」
「あはは、大丈夫?」
「私は大丈夫ですけど、よく気付きましたね」
さっきの光はおそらくカメラのレンズの反射光か何かだと思う。FPSとかのゲームではスナイパーライフルの反射光で敵の位置を特定したりするからね。ゲーム知識が役に立った。
皆が食べ終わった所で、雑談をしながら店を出る。
「それじゃあ行こうか。さとり、碧翔、今日はありがとね」
「いや、こちらこそ。楽しかったよ」
「ありがとうございました」
三人と別れて先に進む。それにしても、射命丸はなんで俺達を撮ってたんだろう。まぁ、とりあえずいいか。さとりに聞いても言ってくれなさそうだし。
そうして俺達は、地底散策を続ける事にした。
ちなみに、数日後に届いた『文々。新聞』のトップ記事が『地霊殿の主、さとりと熱愛!? 外来人、真剣碧翔の正体とは!』となっていて一荒れしたんだけど、それは別の話だな。
いかがでしたか?
なんかグダグダしているような気もする……。
これからは毎週日曜日に投稿できたら、と思ってます。
次回もよろしくお願いします。