やっとさとりの登場です。お待たせしました。
それと同時に書き溜めが底をつきました。やばいです。
それでは、お楽しみ下さい。
追記
文が酷かったので、大分修正を入れました。改善されてるかは微妙ですけど。
話の流れは変わってないので、一度読んだ人は読み直さなくても大丈夫だと思います。
地霊殿の門を開け、中に入っていく。庭は沢山の緑が全体を彩っていて、動物も沢山いた。町がある方とは違った優雅な雰囲気だ。話には聞いてたけど凄い所だな。
大きな玄関の扉を潜り、こいしの案内を受けて中を進んでいく。しばらく進むと、こいしは数ある扉の中の一つに入っていった。
「お姉ちゃん、ただいまー!」
「あら、こいし。おかえりなさい」
中にはさとりと思われる人影があった。静けさや寂しさを感じさせつつも、どこか優しいような声が聞こえてくる。
「皆も入っていいよー」
こいしの声で、俺達も中に入る。
そこには、桃色と言ったらいいのか、薄紫と言ったらいいのか分からないが、変わった色の髪に、水色の服を着た女の子がいた。こいしと色違いのサードアイが周りに浮いている。……彼女のは開いているけど。
かなり幼い容姿をしているが、今の会話を聞くに、どうやら彼女がさとりのようだ。
「……今日はお客さんも連れてきたみたいですね」
「ああ、初めまして、外来人の真剣碧翔っていうんだ。なんというかごめん、突然押しかけちゃって」
「いえ。こいしとは……ああ、博麗神社で出会ったんですね」
おお、流石だ。心が読めるって凄い。色々と便利そうだな、会話しなくても良いなんて。色んな場面で役に立ちそうだ。
そんな事を考えていると、彼女は少し目を見開き、こちらを見てから俺に自己紹介をした。
「私は古明地さとり。この地霊殿で妹のこいしやペット達と一緒に暮らしています。……なるほど、今回は挨拶も兼ねて、ということで来たのですか」
「あ、うん。困ってたところを、こいしがここを紹介してくれて」
「で、どうなんだ? さとり的には」
早速と言うべきか、魔理沙がさとりに聞いた。こいしもさとりに事情を説明しているみたいだ。
なんとなく、俺は部屋の隅の方にいたパルスィに質問してみた。
「ねぇ、何でこいしはここを紹介してくれたんだと思う?」
「さあ? でも、私には理解できないわね」
素っ気ない態度でそう言った。まあそりゃあそうか。
「お兄ちゃーん!」
こいしに呼ばれたので、二人のもとへ向かう。相変わらず元気だな。
「なんと言ったらいいのか、随分と急な話ですね」
「あはは……まあそうだよね」
当たり前だけど、やっぱり駄目か。人里で家を探すのってどのくらい大変なんだろうな。あ、というかこれって、帰りもまた魔理沙の箒に乗らなくちゃいけないのか。気を付けないと今度こそ本当に落ちそうだ……。
なんて、そんなことを考えていると、彼女は遠くを見るような目で言った。
「……少し、訊いてもいいですか?」
「ああ、いいけど……なに?」
「私は覚妖怪です。心が読める訳ですから、当然あなたが今考えていることも分かります。そんな私と同居なんて、あなたは嫌じゃないんですか?」
……ああ、そういう事か。今まで能力のせいで、色々大変な思いをしてきたからだろうな。俺じゃあ理解できないような事も、色々とあったんだろう。
「……そういうの、あんまり気にしないかな」
もしかしたら俺の心を読んで、もう言いたい事が分かってるかもしれないけど……それでも、声に出して言うことにした。
「なんと言うか、正直、俺には君の苦労は分からない。今まで普通に暮らしてきた学生だし……むしろ、俺みたいな普通の人間が分かるなんて言ったらいけないとも思うよ。でも……そんな人間だから言えることかもしれないけど、俺は君のその能力、好きだよ。会話せずに意思疎通ができるなんて、凄いことだと思わない?」
それに、まだ少し会話しただけだけど、明らかに悪い人ではないと思う。こいしには慕われているみたいだし、魔理沙もパルスィも、普通にここまで来ているし。なら、俺がさとりを避ける理由はない。
さとりはそれを聞くと、黙り込んでしまった。やっぱり余計な事言っちゃったかな……。
少しの沈黙を挟んでから、さとりは俺の方を見て言う。
「……すごいですね」
「え?」
「そう思えることが、です」
あー……イマイチ意味が掴めないな。確かに非難する人もいるとは思うけど、俺と同じ考えの人も多いんじゃないか? 凡人の俺が言ったんだから、尚更だと思うけど。
「すごいです……けど、やはり私に近づくのはやめた方がいいと思います。人の考えというものは、簡単に変わってしまいますから」
どこか遠い目でそう言った。彼女には、色々思うことがあるのかもしれない。
確かにそうだよな。考えなんて簡単に変わるし、趣味嗜好であっても時間の流れで変化してしまう。現に俺は、小さい頃嫌いだった人参も、今なら普通に食べられる。規模や内容は違ったとしても、意味合いは同じで……時間の流れや成長とともに変わっていくのが普通だ。
「俺、妹がいてさ。昔は仲が良かったんだけど、最近は口も聞いてくれなくて。だけどあいつ、なんだかんだ言って優しいんだよな。無視してるようで実はよく見てたりするし」
あれは思春期特有のものかもしれないけど。でも、俺に対する態度が変わったのは事実だ。
「だから、なんて言うんだろう……人間ってさ、変わっていくけど、原形が全くないものにはならないと思うんだ」
……なんて、一通り言ってから自分の恥ずかしさに気がついた。
「あー、だから、その……ごめん、やっぱり忘れて。突然無理なお願いをしちゃって、ごめん」
「……ふふっ」
俺がそう言うと、さとりが少し笑ってこちらを見た。……やっぱりおかしかったか? 普段こういうことってあんまり考えないし言わないし考えないからな……。と、そんな事を考えていると、さとりが。
「そうですね……私は構いませんよ、ここに住むの」
「……ええ!?」
俺としてはすごく意外というか、驚いた。いや、だって今ので納得する訳ないと思ったし。というかそもそもこの幻想郷って、今まで会った人達を見ると大半が女性だから、男の俺と同居なんて常識的に考えて駄目だろうと思っていたんだけど。
「えっと、本当にいいの?」
「はい。……もう一度、人間を信じてみたいと思えたので」
と、声のトーンを少し下げて言ったのだった。
「で、結局碧翔はここに住むってことでいいのか?」
魔理沙の問いに、さとりも俺も頷いた。……今日からここで暮らすのか。なんか実感が湧かないな。
「驚いたな。まあ、霊夢には私が報告しておくぜ」
「ああ、ありがとう。魔理沙とパルスィはこれからどうするの?」
「私は橋に戻るわ。ここにずっといてもしょうがないし」
「私も地上に帰るぜ。この前珍しいキノコが見つかったんだ」
「そう。二人ともここまでありがとう。気を付けてね」
俺の言葉に頷くと、二人は地霊殿から出ていった。
魔理沙は茸が好きなのか。……あれ、ここだけ聞くとなんか卑猥な言葉に聞こえて……。
「真剣さん?」
おっと、さとりさんがこちらを睨んでいらっしゃる。すいませんでした何でもないです。
さとりはさて、と言うと、座っていた椅子から立ち上がる。
「案内しますよ、真剣さん。こいしも一緒に来る?」
「うん、行くー」
こいしも元気よく立ち上がった。
と、ここで一つ、さとりに提案してみる。
「そうだ。仮にも同居人なんだし、真剣さんって言うのは堅苦しいから名前で呼ぶことにしない?」
「……そうですね。えっと……それじゃあ碧翔。行きましょうか」
「おー!」
さとりの言葉に、こいしも元気よく答えた。
* * *
さとりの案内で、地霊殿の中を進んでいく。それにしても広いな、ここは。なんか動物もいっぱい居るし。さっきの庭といいこの廊下といい、全体的に自然が多いな。
そんな事を考えながら歩いていると、扉の中から誰かが出てきた。大きな黒い翼に緑のリボン。右手にはなにやら神社のおみくじのような形をした筒状のものを付けている。
「うにゅ? さとり様、この人誰?」
「俺は真剣碧翔。今日からここに住まわせて貰うんだ」
「彼とはこれから会うことも多くなるだろうから、挨拶をしておいて」
「分かった! 私は霊烏路空。よろしく!」
俺に挨拶をしてくる。それにしても何だあの棒。すごい目立つんだけど。
すると、俺の思考を読んだのか、さとりが俺に教えてくれた。彼女はさとりのペットのようだ。右手の棒は、制御棒というらしい。名前というか見た目というか、なんだか中二病的な心がくすぐられる。
「それじゃあまた後で。仕事はしっかりしておいてね」
「はい! 分かりました!」
さとりの言葉に元気よく答えると、彼女はすぐそばの部屋に入っていった。
「お兄ちゃん、こっちだよー!」
こいしが廊下の先で大きく手を降りながら俺達を呼んでいる。
「あはは、元気いいな」
「私としては嬉しい限りです。サードアイを閉じた時は不安でしたけど」
そうだ。こいしも色々あったんだよな。それでもこれだけ明るくしていられるのはすごいことだと、俺は思う。
「ここだよ!」
こいしとさとりが、一つの部屋の前で立ち止まった。見たところ、他の扉と大差はない。
「ここが碧翔の部屋ですね。まあ空き部屋なので、少し埃などはあるかもしれませんが……。基本的な家具はあると思いますけど、なにか必要だったら遠慮なく言って下さい」
俺はさとりに礼をいうと、その扉を開ける。おお、かなりすごい部屋だ。タンスやらテーブルやらの基本的な家具は勿論、ベッドも大きいものが設置されていた。……ホテルとかにありそうだな。窓もしっかりあって、地底だから太陽の光は届かなくても、開放感があって気持ちいい。
「ふふ、気に入ってくれたなら嬉しいです」
「ああ、ありがとう。本当に助かったよ」
「どういたしまして。今日はゆっくりしてくれて構いませんよ。そのうち何か手伝ってくれると嬉しいのですが」
「ああ、家事とかならお易い御用だよ。現代の方でもやってたし」
実際のところ、俺は居候のような立場だと思うし、それくらいはやっておきたい。
俺の言葉を聞くと、彼女は微笑んで礼を言った。
「ありがとうございます。それじゃあまた後で」
「お兄ちゃん、また後でね!」
「ああ」
扉が閉まると、部屋が急に静かになる。なんだか不思議な気分だな。
……とりあえず部屋の中を一通り確認する。クローゼットには奇抜なデザインの服がいくつか入っていた。今まで皆変わった服装だったし、幻想郷では俺のような服装の方が異常なのかもしれないな。
ベッドに寝転がると、真っ白な天井が見えた。うっすらと模様がある。何か疲れたし少し寝ようかな。これからどうなっていくんだろう……と、そんなことを考えながら目を閉じるとすぐに、俺は眠りの世界へと落ちていった。
いかがでしたか?
サブタイトルの意味合いが違う気がしますが気にしたら負けです。
次回もよろしくお願いします。