週一投稿と言ったな?あれは嘘だ。
理由は、この物語のヒロインであるさとりが、物語の都合上序盤は登場しないんです。
なので、あまり最初からダラダラやるのもあれだと思ったため、最初の数話は少し早めに投稿させて貰おうと思います。
それでは、お楽しみ下さい。
「ああは言ったものの、どうしようか」
決意したのはいいものの、全く計画を立てていなかった俺は、今絶賛ホームレス中。
「霊夢が泊めてやれば?」
「そうね、一泊三千円なら手を打つわ」
「こんな神社なのにそれは高すぎだろ」
「こんなって何よこんなって」
うーん、参ったな。最悪今日はここに泊まるとしても、毎日は迷惑だろうし俺の財布がもたない。実際に住むとなると大変だな。
どうしたものかと悩んでいると、ぐぅ、とお腹の音が聞こえた。どうやら魔理沙のみたいだ。
「あはは、なんか腹減ってきたな。霊夢なんか作ってくれよ」
「えー、面倒くさい。そこの外来人に作ってもらえば?」
「そうか? じゃあ碧翔、頼んだ」
「いやいや、今の流れおかしくない?」
ついさっきここに来たばっかりの人間に何やらせようとしてるんだこの人達は。……でも、俺もお腹は空いてきたかも。それに、上手くいけば宿泊代三千円は免れる可能性が。うーん、じゃあ下心ありまくりだけど作ってみるか。そもそもこの神社にちゃんとした食材があるかちょっと心配だけど。
* * *
「へぇ、悪くないわね」
「いいな、早く食べたいぜ」
かなり簡単ではあるが、数品作ってみた。食材は少なかったけど、一応ちゃんとしたものがあったから安心した。それにしても、まさかこんな所で俺の家事スキルが役に立つとは。人生何が起こるか分からないね。
「いただきます」
二人は手を合わせてから、それぞれの料理を口に運んだ。
「おお、これは美味いな」
「確かに。私は質より量だけど」
魔理沙からは好評みたいだ。霊夢はよく分からないけど、悪い評価ではないようだし……。料理に関しては普段から作っているし、一応そこらの男子高校生よりは作れる自身もあるにはあるけど、二人の言葉を聞いて安心した。これで不評だったらちょっと悲しいよな。
そんなこんなで皆で雑談を交わしながら食べていると、スーッという音とともに急に襖が開く。急だったため少し驚いた。
そこにいたのは、緑がかった銀髪にリボンが付いた黒い帽子を被る少女。黄色を基調とした服に緑のスカートを履いている。幻想郷の常識に習ってなのか、これまた変わった服装だ。何よりも驚いたのは、彼女の周りにあるコードのようなものだった。明らかに浮遊しているし、全体的に見たことのないような質感だ。
「こいしじゃないか。どうしたんだ?」
「んー……私もよく分かんない」
魔理沙の問いに、こいしと呼ばれた少女は曖昧な返事をした。自分の意思でここに来たはずなのに、分からないってどういうことだ?
俺が困っていると、霊夢が説明してくれた。
「彼女は古明地こいしって言う覚妖怪よ」
「覚妖怪?」
聞いたことがあるようなないような。妖怪については当然ながら詳しくない。そんな趣味なかったし。
霊夢の説明によると、覚とは心を読む能力を持った妖怪で、
「だから、今の彼女に読心の能力は無いわ」
「……へぇ、そうなんだ」
事情は分からないが、なんとなくあまり聞いてはいけないような気がした。
「あ、何それ?」
と、こいしが俺の料理に気付いたらしく、なんだか興味深そうに見ている。
「俺が作った料理だよ」
そう答えると、彼女はじっとこちらを見てくる。
「ああ、俺は真剣碧翔って言うんだ。好きなように呼んでくれて構わないから」
「そっか。……じゃあ、お兄ちゃん。この料理、私も食べてみていい?」
……お兄ちゃん、か。
そう呼ばれたのはいつぶりだろう。懐かしいなぁ、妹が小さい頃はよくそう呼ばれてたっけ。あいつは大きくなるにつれ、無愛想になっていったからな。小学校の高学年あたりからは名前で呼ばれるようになったし、中学になると話すことも少なかった。
「ああ、いいよ」
近くにあった新しい箸を手渡すと、ぱくっと一口食べる。しばらく咀嚼していたが、その後、彼女は満面の笑みを浮かべた。
「ん、おいしー。料理が上手なんだね」
そう言って他の料理にも箸を伸ばす。
自分が作ったもので相手が喜んでくれると嬉しい。これは料理に限らず、何でもそうだと思う。
こうやって見ていると、なんだか小さい頃の妹を思い出すな……。
しばらくこいしを見ていると、霊夢と魔理沙がジト目でこちらを見ているのに気が付いた。
「……ロリコン」
「違うからな!?」
俺の知らない間に何かとてつもない勘違いをされそうだったので、話題を変えることにした。
「そ、そういえばこいしはどこに住んでるの?」
「ん? えーとね、地底にある地霊殿っていうところだよ」
どうやらこの世界にはそんな所もあるらしい。地底世界があるとは、中々ロマンがあるな。なんだか気になるし、機会があれば行ってみようか。
「お兄ちゃんはどこに住んでるの?」
「ああ、俺はさっき、外の世界……だっけ? そこから来たから、まだ住む場所は決まってないんだ」
よくよく考えてみたら、かなり危うい状況だ。さっき霊夢に聞いたけど、妖怪とかが普通に存在してるらしいし。俺、運動とかは全然ダメだからなあ。出会ったら速攻で餌になる。
「そういや、碧翔はどうするつもりなんだ?」
「いやー、出来れば人里、だっけ? そこに住めればいいかな。ここだと俺の所持金が無くなるし」
一泊三千円は俺の所持金的に多分すぐ底をつく。しかも霊夢に迷惑をかけることになりそうだしな。
そういえば、人里に行ったら仕事も探さないと。本当にここで暮らすんだったら流石に学生の財布の中身じゃ無理がある。
「家の手伝いをしてくれるんだったら、私は別に構わないけど?」
「あれ、本当に?」
「炊事洗濯に掃除、私の身の回りの世話とかは基本ね。一日二回は肩もみをして、私の言うことは何でも聞くこと。そんな感じの雑用をこなしてくれるなら構わないわ」
……うん、多分普通に働いた方がいいな。まだ出会ったばかりだが、この人はなんか危ない、色々危ない。本当に住んだら徹底的にこき使われそうだ。
うーん、でもやっぱり一から家を借りたり、仕事を見つけたりするのは相当大変だよな。そう考えるとここの方が良いのか……?
俺が決めあぐねていると、こいしが言った。
「お兄ちゃんが良かったら、うちに来ない?」
……え、今トンデモ発言しなかった?
「え、どういう意味?」
「お兄ちゃんが私の家に来るの。なんか困ってるみたいだしさ」
こいしの家って、さっき地底にあるって言ってたもののことだよな。かなり急……というか駄目でしょ。
霊夢と魔理沙も驚愕の目でこいしを見ている。この十数分の間にそんな信頼関係築いたっけか。
「いや、でも悪いんじゃ……そこには他にも人が居るんでしょ?」
「えー、私は全然大丈夫だよ。面白そうだし、さっきの料理のお礼。お姉ちゃんには私が説明するから」
うーん、どうしてこいしが誘ってくれたのかよく分からないんだけど。というかこいしって姉がいるんだな。
まあ、確かに地底も気になってはいるし、行ってみたいとは思うけど……。
「……えっと、よく分からないけど……じゃあ、今回はとりあえず挨拶を兼ねて様子見で行ってみるよ。迷惑になるんだったら人里で家を探すから」
「やったー! 決まりだね!」
常識的に考えて、住んでる人の許可なしに決めるのはまず駄目だろう。というかそもそも許可なんて取れないだろうけど。
本当に良いのか? なんというか、これも日本と幻想郷とやらの常識の違いなんだろうか。
そこでまた二人のジト目が俺を刺す。もちろん物理じゃなくて、精神的な意味なんだけど、心なしかチクチクした痛みを感じるよ。
「……ロリコ――」
「違うから!」
聞いた話だと、どうやらこいしの姉はさとりと言うらしい。種族名がそのまま名前に来てるってなんか凄い。
「まぁ、本当に碧翔が地底に行くんだったら、私もついて行くぜ」
「あれ、魔理沙も? なんで?」
「なんでってのは酷いな。せっかく私がエスコートしてやるって言ってるんだぜ? 目的地まで遠いし、道中危険だからな」
そうだ、この世界には妖怪が出るんだった。そう考えると、現実じゃないみたいだな。確かにその辺は魔理沙がいれば大丈夫そうだ。……大丈夫、なんだよな? どう見ても普通の女の子にしか見えないけど、何か妖怪に対しての対処法でもあるんだろうか。
「もう行こうよー」
「ああ、うん、若干不安は残るけど、そうしようかな。霊夢、さっきは色々ありがとう。今度またお賽銭入れに来るよ」
「本当に!?」
「あ、ああ」
凄い食い付きようだった。まあでも、霊夢には本当に感謝しないとな。最初に会った時は格好的な問題で色々疑ったけど。これが幻想郷では普通って言うんだから、ここではむしろ俺の方がおかしいのか。
そんなことを考えながら外に出ると、こいしが俺の手を取って、自分の手と一緒に上に突き上げた。
「それじゃあ地底に、れっつごー!」
いかがでしたか?
いやー、早めに投稿する分、急がないといけませんね。
やばい、書き溜めが無くなっていく⋯
次回もよろしくお願いします。