東方読心録   作:Suiren3272

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どうも、こんばんは。
今回も現代での話なので、主人公に興味ない人はスルーOKです。
それにしても⋯眠い。小説書いてたらいつの間にか寝てました。睡眠は大事ですね。
ということで、どうぞ。


第二十五話 ~再開と決裂~ Side:A

俺の家は俺、母、妹の三人家族だ。父は俺が小さい頃に亡くなってしまった。父がいた頃は家族団欒というか、皆で一緒にご飯を食べて、休日は皆で出かけたりもして、色々楽しかった記憶がある。もう十年くらい前だから、本当にうっすらとしか覚えてないけど⋯。

 

父がこの世を去ってからは、母が働き、俺が妹の面倒を見て、どうにか生活していた。妹は少しドジというか、要領があまり良くなかったから、いつも俺と二人で協力して色々やってたんだよな。俺が小学校高学年くらいになるまで、本当に家計は火の車だった。

⋯今、火の車でお燐を思い出した俺は、もう相当幻想郷に馴染んでいたのかも。

本当に大変だったけど、俺が中学に入った辺りで母の仕事もようやく安定して、俺も妹も少し落ち着いた。

 

ちなみに、その辺りから俺に対して妹の風当たりが強くなった気がする。まぁ思春期だってこともあるんだろうけど、話しかけても返事しないし、家にいる時は基本部屋に篭ってるからな。昔はよく二人で一緒にいたんだけど⋯。

 

と、色々考えているうちに、俺の家が見えてきた。

一ヶ月ぶりに見る俺の家。俺が本来帰るべき場所。それは一ヶ月で何も変わっていないように見えれば、何かが大きく変わったような気もする。

「お前、大丈夫かよ。さっきから様子が変だぞ」

「ああ、いや、なんでもないよ。⋯行こうか」

家賃の安い借家のドア。その横にある、インターホンを鳴らす。段々緊張してきた⋯。そういえば今日は何曜日だ?蒼月と青澄はここにいるんだから、休日ではあるんだろうけど⋯。

 

しばらく待ってみるが、誰も出ない。

母の仕事はシフト制のため、定期的な休日というものはなく、休みはその月ごとにバラバラだ。妹は基本部屋に篭っていて誰かが来ても出ようとしないから、母が仕事だと出る人がいないことに。

「誰も出ないね」

「親は多分仕事で出てるんだと思う。妹はいても出ないから」

俺の鍵は通学用の鞄に入れてるから今は持ってないし、どうしようか⋯。

 

と、突然ドアがガチャリと開く。出たのは――妹だった。

妹は目を見開いて、唖然とした表情でこちらを見ている。

「あ⋯えっと、色々混乱してるだろうけど⋯とりあえず中入っても、大丈夫?」

俺が問いかけるが、何かを恐れたような感じで一歩後ずさる。

と、俺の隣にいた青澄が声をかけた。

「碧翔の妹さんだよね?いきなりで悪いんだけど、事情はすぐに説明するからさ、お邪魔しちゃってもいい?」

しばらくの間を挟んだが、無言で頷くとドアを大きく開けた。⋯やっぱり駄目だな、俺。

三人の後に続いて、俺も中に入った。

 

* * *

 

「⋯この辺りに、座って」

無愛想な感じで、妹が二人に言う。

家の中は思っていたよりも綺麗だった。というか、俺がいた時とほとんど変化がない。正直、もう少し変わってるんじゃないかと思っていたけど⋯。

 

小さなテーブルを挟んで四人で座る。

「じゃあ、碧翔を見つけた時の話なんだけど」

青澄はそう言うと、順を追って説明し始めた。

「碧翔を見つけたのは街の高台の上でね。出かけた帰りに、こっちの蒼月とたまたま会って、碧翔についての話をしながら二人で歩いてたんだけど⋯」

「階段登ったら本人がいたわけだ。驚くなんてもんじゃねぇよ、全く」

蒼月は軽く笑いながら言った。

そこから、二人は俺のことについて話をした。変わった服を着ていたこと、俺が⋯記憶喪失だということ。⋯心が傷んだ。

妹は終始無言で聞いていたが、ずっとこちらを睨むような目付きだった。

 

「その⋯俺がいなかった間はどうなってたの?」

俺が問うと、蒼月と青澄は顔を見合わせてから、言う。

「お前がいなくなったあの日⋯俺達は普通に登校してたよな?」

「普通に教室にいたと思うんだけど、気が付いたら碧翔がいなくなってた」

そうだ。俺が幻想入りした日、二時間目の始まる直前に意識が途切れて、気が付いたら幻想郷だった。何が原因かは分からないけど、そこで現代から俺は姿を消したってことか⋯。

「最初はトイレにでも行ってんのかと思ったよ。だけど、いつまで経っても帰ってこねぇ。次の日になっても、一週間経ってもだ」

「私達はよく知らないけど、一回、碧翔の家に警察が来てるのが見えたよ。多分、捜索願を出してたんじゃないかな」

と、そこで突然、妹が口を開いた。

「警察に色々⋯質問、された。何か悩みはなかったかとか、原因に心当たりはあるか、とか」

失踪した原因が何なのか、というのを色々質問されたが、どれも分からなかったらしい。報道関係の機関も来たが、全て断ったそうだ。

「だが失踪から一ヶ月後、突然本人が現れた⋯か。これが知れたら大ニュースだぞ」

「どうしようか。とりあえず、碧翔の親を待った方がいいよね」

日によって違うが、親は大体二十一時から二十二時くらいに帰ってくる。今は昼頃だから、まだ結構時間があるけど⋯。とりあえず待つしかないか。

 

それにしても⋯幻想郷の方はどうしているだろうか。

幻想郷にいたのは、俺が今まで生活してきた時間と比べればすごく短い期間だった。短かったけど⋯でも、忘れられない。

突然来た俺に状況の説明をしてくれた霊夢、地底まで送ってくれた魔理沙。少し棘があるけど本当は優しいパルスィ、俺の部屋を直してくれたヤマメ。豪快な性格で頼りがいのある勇儀に、いつも俺を気にかけてくれるお燐。明るくポジティブな空に、一切穢れのない澄んだ笑顔を、いつも俺に向けてくれるこいし。そして⋯人との関わりに関してはちょっと不器用だけど、優しくて穏やかで、一緒にいるとすごく楽しい、さとり。

皆、幻想郷で出会った大切な人達だ。

 

でも⋯俺が本来居るべきなのは、外の世界(こっち)。自分を産み育ててくれた親や、血の繋がった妹、いつも一緒だった友人達。今回のことで迷惑をかけてしまっているし、家族も友達も大事だ。

 

――なら、これからは今まで通り、ここで暮らしていくのが正解のはず。

 

そう、思っているはずなのに⋯。俺は何に迷ってるんだ?

 

「⋯翔?碧翔ー?大丈夫?」

「⋯え?あ⋯う、うん、ごめん」

青澄に呼びかけられ、我に返る。さっきから何やってるんだ。一先ず今は目の前の問題に集中しよう。

そもそも、幻想郷から何か来るのかすら分からないんだ。いや、むしろ来ないという可能性の方が高い。⋯落ち着け。

「今の話、聞いてたか?俺達は一旦帰ろうかと思う」

「ずっとお邪魔してるのも悪いし、私達がいても出来ることはないからさ」

青澄はそう言うと、立ち上がって身体を伸ばす。蒼月もそれに続いて立ち上がった。

「碧翔もあんまり思い詰めないでよ?何かあったら私達に相談してね」

「⋯ああ」

 

二人は玄関の方に向かい、それぞれ靴を履く。

「それじゃあ、今日は帰るね。明日は月曜日だけど、学校が終わったらまた来るから。お母さんによろしくね」

お邪魔しました、と言うと、二人は外へ出ていった。

 

部屋は静寂に包まれる。誰かが家から出ていった後の静まり返った感じ、俺はあまり好きじゃない。

と、でも今妹はいるんだ。以前は学校にこそ通っていたものの、家にいる時は部屋に篭もりっきりだったからな。何か変化があったんだろうか。

 

「⋯碧翔」

「うわっ。な、何?」

いつの間にか後ろにいたようだ。振り返ると、刺すような眼差しをこちらに向けている妹。今俺が驚いたからか⋯?とは言っても、最近はほとんど会話してなかったからな。どう話したらいいのか⋯。

話しかけてきたのは向こうだが、こちらを見てずっと黙ったままだ。

「あーっと⋯今日はなんか、ごめん」

「⋯ふざけんな」

「え?」

向こうはずっと俺の目を見たままだ。その表情からは、怒りや苛立ちといったものが見て取れる。

「突然消えたと思ったら突然戻ってきて、記憶喪失がどうのとか訳の分からないこと言って⋯ふざけんな」

 

至って普通に話しているように聞こえるが、その言葉一つ一つにうまく表現できないような重みがあった。俺を責め立てるかのようにじりじりとこちらに迫る。

「えっとさ、混乱する気持ちは分かるよ。でも――」

「分かるわけない!」

大声を張り上げたかと思うと、一層こちらを睨む。目に、鋭い光が宿っていた。

「不器用なくせに無駄に人の気持ち探ろうとして!人の事なのに自分の考えだけで答えを出そうとして!そんな奴に、そんな事してる奴に私の気持ちなんて分かるわけない!」

そう吐き捨てるように言うと、妹は早足で廊下の角へと消えていった。おそらく自分の部屋に向かったんだろう。

 

玄関近くの廊下。ここは窓が少ないため、昼夜に関わらずいつも薄暗い。

扉の小さな硝子から射し込む外の光が、一人佇む俺の顔を照らしていたが、しばらくするとその光さえも消えてしまった。

 

 

 

 




いかがでしたか?
何かしら身を守れる能力とコミュ力を持って幻想郷行きたい。
私の場合相当貧弱なんで、身を守る系の能力がないと多分速攻で死にます。
ついでにコミュ力もないと、キャラに出会った時にまともな会話ができません。
そう考えると、幻想郷に行っても問題だらけですね。現実はつらいよ。
ということで、次回もよろしくお願いします。

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