東方読心録   作:Suiren3272

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皆さん、こんばんは。
果たしてこの作品を覚えている人はいるのだろうか、と思う今日この頃です。
最初の数話の修正をしたり、少し怠けていたらいつの間にか二ヶ月も経っていました。
三章に入るまでのネタがあまり思い付かず... 申し訳ないです。
それでは、どうぞ。


第十九話 ~カードの奇術師~

「思ったんだけどさ、俺ってなんか特徴ある?」

地上から帰ってきた次の日。さとりとこいしにそんな事を聞いてみた。

人間誰しもが個性というものを持ってると思うけど、俺にはどんなものがあるんだろうか。単に気になったからってのもあるけど、地上に行ってから見直してみると、自分の個性が見当たらない気がする。

あ、あと自己紹介も何か考えたい。自分の自己紹介がかなりテンプレというか単調で、もう少し何かないかなあ、と。そもそもの原因として、俺が外来人ということ以外は特徴がないからなのでは?と考えたわけなんだけど...

 

「うーん... 優しい!」

「それは... 私も思いま、す...けど、それって個性ですか?」

俺が優しい...かどうかは分からないけど、人間他人への優しさというのは、誰しもが必ず持っているものだと思う。まあ程度の差はあると思うけど、全く無いって人はいないんじゃない?どれだけ極悪非道な人でも、それは性格とか他の部分が捻じ曲がったせいで、隠れてるだけなんじゃないかなあ、と俺は思うけど。楽観的思考過ぎるかな?

 

まあ優しさ云々は置いておいて、何かないものか...。地上で沢山の人に会ったけど、大体名前と外来人だと言う事しか伝えてないし。

何かないかと考えていると、さとりがこちらを見て言った。

「そうですね... 何も無くても良いと、私は思います」

「え?」

「特別目立ったところは無くても、碧翔の小さな気遣いや、大事にする思いが大切だと、私は思いますよ」

 

と、穏やかな雰囲気と口調のさとりはいつもと変わらず、それでいてなんだか普段より真剣な面持ちで答える。

「さっきこいしが言ったものだって、こいしが一番に思い付くくらいに、そういう優しさが大きいからです。それを前面に出すのは中々出来ないと思います」

「んー、そうかな...?」

「はい、そうですよ!」

さとりは微笑んで答えた。...結局自己紹介の問題は解決してないけど... まあ、それはおいおい考える事にするか。

と、話が一段落したところで。

「ねぇお兄ちゃん、これやろう?」

唐突にこいしがそう言う。俺とさとりが話している間にいなくなっていたけど、いつの間にか手にトランプを持って戻ってきていた。

プラスチックのケースに入ったそれは、とても綺麗な状態で保管されていたらしく、キズなどは見当たらない。

「トランプか。良いけど、何で急に?」

今までこいしと遊んでいたのは比較的単純なもので、こういう頭を使いそうなものはやっていなかった。別にやってもよかったんだけど、なんとなく流れでそうなってたし。

 

「うーん... なんとなく?」

「そんな疑問形で返されても困るけど... 折角だし、お燐とかも呼んで皆でやってみようか」

と、言う訳で何故か皆でトランプを使って遊ぶことに。

さとりも快く引き受けてくれたけど、地上に行った次の日で、仕事とか大丈夫なのかな。まあさとりの事だし、心配はいらないと思うけど。

 

* * *

 

「さあ、始まりました!第一回トランプ大会!」

「...で、なんでパルスィとヤマメまで来てるの?」

俺の向かい側に座っているのは、微妙にテンションがおかしいヤマメ。というか大会って大袈裟すぎ。しかも何故か顔が赤い。フラフラしてるし、お酒でも呑んでたのか?

「はぁ、碧翔もヤマメも、妬ましいわ」

ヤマメはともかく、なんで俺まで...?

パルスィによると、明らかに酔っているような状態のヤマメが地霊殿に入っていくのを見たらしい。それをパルスィが追いかけて行ったんだとか。なんで追いかけたのかは知らないけど。

「まあ、とりあえずやっていこうか」

「碧翔ー、さとり様はどうするの?」

「私は審判をやりますよ」

さとりは能力の関係で審判をやることになった。読心ができるとそういう面では色々役に立つし、無いと思うけど、反則しようとした時なんかもすぐに分かるからな。こんな事に付き合ってくれるなんて、さとりに感謝しないと。

 

一通り辺りを見回す。丸いテーブルを中心とした時計回りに、俺、お燐、パルスィ、ヤマメ、空、こいしの順で座っている。

「何をやるの?」

「まあ最初だし、まずはシンプルにババ抜きとかで良いんじゃない?」

そう言ってトランプをシャッフルする。トランプを二つに分けてから指で弾いて重ねていき、それを山なりにして戻す、リフル・シャッフルと呼ばれるものだ。手品とかで使われることが多いけど、いい具合に混ざるから割と普通に使う。

「わ、お兄ちゃんすごい...」

「ホントだ、どうやってるの、それ?」

どうやってるって言われても、見たままだと思うけど。この位だったら少し練習すれば大体出来るようになると思う。俺は一時期、やたらこのシャッフルばかりしてて、指が切れた(というか皮膚が剥がれた?)ことがあるんだけど... 今考えると相当馬鹿らしいな。

「他に何かできないの?」

「そんな見せるものでもないし、これだけだよ。じゃ、配るね」

 

閑話休題ということで、今度こそ皆に配っていく。一通り配り終えたところで、空が小さく手を挙げて言った。

「はーい、質問なんだけど」

「どうかした?」

「ババ抜きって、どうやるの?」

おう、そこから始まったか。まあ空らしいと言えばそうだけど... とりあえず簡単にルールを説明する。

「......って感じ。分かった?」

「うにゅ、多分大丈夫!」

...心配すぎる。

 

とりあえず自分のカードを確認すると、幸先悪く、手持ちカードの中にババがあった。まずは一ターン目という事で、お燐が俺のカードを取る。

迷い手をしたり、俺の手札を凝視したり、なんか相当迷ってるらしい。意を決したのか、やっとの事で札を取るけど... あ、ババ引いた。肩をビクッと動かしたかと思えば、おぼつかない動きで次のパルスィにカードを差し出す。分かりやす過ぎる。

パルスィは迷いなくさっと引いたかと思えば、同じカードが無かったのか、少し混ぜてから隣のヤマメにカードを見せた。ヤマメは意気込み、大袈裟な動作でそれを引く。「あーなるほど...」と一言言うと、今度は空にカードを向けた。一枚引いた空は、しばらくそのカードを眺めてから...

「これってババって言うの?」

俺達の方に向けた。いや、見せたら駄目だろ。というかそれ本当にババだし。パルスィもヤマメも引いてたらしい。だとするとパルスィは隠しが上手だな、全然分からなかった。

「あー、それはババだからとりあえず次行こう、次」

この辺りはあまり気にしない事にした。

 

​───────

 

「わー、また負けた!」

「碧翔強いなー、全然勝てないや」

「俺もそんなに勝ってないと思うけど...」

「いえ、これで碧翔の三勝なので、皆の中では一番ですよ」

六戦中三勝。どうやら俺が一番らしい。こういうのはそんなに得意じゃなかったはずなんだけど... ちなみに他は、パルスィが二勝でヤマメが一勝。後の三人は天然とバk... おっちょこちょいなんだな。

「と、言うことで、第一回トランプ大会、碧翔は準優勝!」

「まだ言ってるのか。というか準優勝って、優勝者は?」

「主催者権限で私!」

権限逸脱だ!そもそもヤマメは主催者じゃないし、これは大会でも無いはずなんだけど。

 

と、そんな事を話しているとこいしが俺に向かって言う。

「ねえ、もう一回シャッフルやって?」

「あー、あれ?俺はいいけど」

という事で、もう一度シャッフルをやって見せる。どうやらこれが気に入ったらしく、こいしは喜んで見ていた。今まで人に見せるなんてこと無かったけど、人生何が役に立つか分からないな。

 

* * *

 

「さとり、今日はありがとう」

部屋に戻るさとりに声をかける。勝敗の記録をしてくれたり、色々と助かった。優勝者を決めるのは何故かヤマメだったけど。

「いえ、私も楽しかったので。碧翔は何勝もしてましたし、シャッフルが凄かったです。そうですね... 奇術師みたいでした」

「き、奇術師って、喜んでいいの?」

「はい、私としては褒め言葉なので」

奇術師ってなんだっけ、手品師みたいなものだったような。まあ折角だし、ありがたく受け取っておこう。

と、そこでさとりが、何かを思い付いたように言った。

「あ、自己紹介、カードの奇術師でどうでしょうか?」

「そ、それはお断りしておきます...」

俺の二つ名が生まれた瞬間だった。...おそらく使うことはないだろうけど。




いかがでしたか?
もう少し発想力が欲しいです。
今後はなるべく早めに投稿しようとは思っているので...
次回もよろしくお願いします。

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