もう少しで今年もおしまい、何だか早いですね。これからも執筆、頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。
今は一応冬休みなので、もしかしたら投稿ペースが復活するかも...
という訳でお待たせしました、第十八話です。それでは、どうぞ。
「う、腕が...」
幻想郷の空。パルスィに運んで貰いながら俺は発電機を持ってるんだけど、もう腕が死にそうです。
長時間だとすっごくつらい。いや、俺の力が弱いとかじゃなくてね?
「私が持ちましょうか?」
「い、いや、大丈夫だよ ノーセンキュー」
「...気を使わなくてもいいんですよ?」
こういう時に読心が出来ると見抜かれちゃうからな... なんと言うか、情けない。玄武の沢は最後に行った方が良かったか。順番間違えた...
「パルスィは重くないの?」
「あんたとは違って貧弱じゃないのよ」
発電機に加えて言葉まで重いよ、パルスィ...
しばらく飛んでいると、木々が立ち並ぶ森の中に一つだけ、和風な一軒家があるのが見えた。
「あそこよ」
やっとのことで着地。危ない危ない、ほんと途中で落としそうになったよ、発電機。息を吸い込むと自然の香り。風が吹くと、カサカサと葉の擦れ合う音がした。
和風の建物の看板には、『香霖堂』と書かれている。その家の雰囲気とは似合わず、入り口は普通のドアだった。
それを開けて中に入ると、目に映ったのは白黒の服。この金髪と大きい帽子は...
「あら、魔理沙じゃない。実験はもう終わったの?」
「霊夢達か。おう、こっちは一通り終わったぜ」
魔理沙も来ていたみたいだ。霊夢と魔理沙が会話している間に、店の中を見回す。全体的に薄暗くて少し埃っぽいけど、外見と同じく古風な感じが良い。
一般的にガラクタと呼ばれそうなものが、あちこちに置いてある。全く並んでるようには見えないけど、一応商品なのか...?
その奥の窓にある障子は、あちこちに新聞が貼ってあった。見たところ破れた時の応急処置みたいだけど...
しばらく店内を観察していると、店の奥から男の人が出てくる。
一本だけ跳ね上がったくせのある短い銀髪に、下だけに縁のついた黒い眼鏡。青と黒の二色で構成された和服のようなものを着ている。
幻想郷で眼鏡をかけてる人ってあんまり見ないよな。というかそもそも眼鏡を作る技術があるんだろうか。
彼はこちらを見ると、俺をまじまじと観察する。
「え、えっと...」
「...君、もしかして真剣碧翔君、じゃないか?」
「ああ、そうですけど... 何でですか?」
俺がそう言うと、彼は障子の方を指差す。恐る恐るそっちを見てみると、修理に使われている新聞には俺の顔。やっぱり新聞じゃないですかやだー。
文々。新聞恐るべし。というか自分の顔が載ってる新聞で障子が修理されてるってなんか複雑な気分...
「障子を修理しようと前の新聞を漁っていたら、たまたまね」
「なるほど... でも、よく覚えてましたね?俺なんて平凡な顔してるし、新聞を見ただけで思い出せるなんて」
「ああ、魔理沙から話を聞いていたんだよ。自分から地底に行ったロリコンがいるって。ロリコンってどういう意味なんだい?」
「それ違いますよ!?」
なんかこの流れ、幻想入りした直後にもあったような...
ちなみにロリコンは『ロリータ・コンプレックス』の略で、幼女・少女を恋愛対象とする人のこと。って、何説明してるんだ俺。
「ねぇお兄ちゃん、ろりこんってどういう意味?」
「うん、こいしはちょっと黙ってようか」
そもそもさとりは妖怪なんだし、具体的には知らないけど見た目以上の年齢のはず。
レミリアなんて人間で言えばすごい老婆... あ、これ怒られるやつだ。
「まぁそれは置いておいて、あなたは?」
「おっと、自己紹介が遅れたね。僕は森近霖之助。香霖堂の店主をやってるんだ」
「ちなみに私はこーりんって呼んでるぜ」
魔理沙が横から顔を出して言う。それにしても、人里以外で男の人(妖怪?)を見たのは初めてだな。出会う妖怪皆女の子なんだから驚き。いっつふぁんたじー。
とりあえずお互いに自己紹介を済ませてから、もう一度店の中を見回してみる。本当にガラクt... 幻想郷じゃ使わないようなものが多いな。
工夫次第で使えそうなものも無くはないけど... さとりも周りの商品を見ているようだ。
「これはなんですか?」
そう言ってさとりが持ってきたのは、紺色で角が丸まった三角形。
「あー、自転車のサドルか... なんて言うんだろう、日本にある乗り物の座る部分かな」
ちなみに俺の自転車は黒に白い線が入ったサドルだった。全体的にシンプルなデザインだったっけ。
幻想郷だとサドル単体じゃ全く意味無いから、にとりの所にでも持っていった方が良いな。流石に今日は行かないけど、また機会があったら寄ってみるとしよう。
しばらく商品を見ていると、奥から霖之助さんが懐かしいものを持って出てきた。全体が銀で塗装されていて、大きめのボタンが三つ並んでいる。
その上には、『再生』や『停止』などと、少し掠れた文字で書かれていた。
「碧翔君、少し見て貰いたいものがあるんだけど、良いかい?」
「はい、それですよね?俺が小さい頃、家にありましたよ」
霖之助さんが持ってきたのはビデオデッキ。昔、かなりの安値で売ってたビデオを何回も見ていた記憶がある。今はもう捨てたか売ったかで家にはないけど。
最近は皆DVDとかだし、時代は変化していくね。なんて、俺はゆとり世代の高校生なんだし、そんな事言える歳じゃないか。
「これは、保存したものを見るための機械だよね?どうやったら使えるんだい?」
「はい、そうですね。使うには映像が保存されているテープと、テレビに接続コード、後は電気も必要なんで、幻想郷じゃ使うのは難しいと思いますが...」
テレビは無傷なものが幻想入りするなんてそうそう無いだろうし、電気も安定供給は難しいよな...
俺が持ってる発電機も、誰かがペダルを漕いでないといけないし、その前に多分テレビとビデオデッキが使えるほどの発電はできないと思う。
残念だけどここだと使えないかな...
「分かった、ありがとう。これは一応僕が保管しておくよ」
「はい、役に立てなくてすいません」
それからは皆で少し雑談。その中で、霖之助さんは道具の名前と用途が分かる能力があることを知った。だからビデオデッキも用途は分かったんだな。
と言うか霖之助さん、銀髪っていう時点でなんとなく予想はついたけど、やっぱり妖怪だったのか。
そう本人に言ったら、正確には半妖、妖怪と人間のハーフだと訂正された。そのせいか、どうやら食事はしなくても良いらしい。
それに加えて寿命が長く、更に病気にもかからないと言うんだから驚きだけど、基本は人間と同じような生活をしているんだそう。
太陽が西に傾き始めた頃、外から何やら物音が聞こえた。音がした窓の方を見ると、修理に使われている俺の顔が載った新聞が急に破け、外から手が出てくる。
「文々。新聞でーす!」
「うわぁ、なんだ!?」
声が聞こえたと思ったら、翼の羽ばたく音がして声の主は飛んでいった。
よく見ると、破けた障子の前には、きっちりと折り畳まれた新聞。
文々。新聞って言ってたけど、また射命丸か...?
それにしても、俺の顔が見るも無残な姿に... なにも障子を破って行くことないでしょ。
「天狗の新聞だね。たまに来るんだよ」
霖之助さんはそう言うと、今届いた新聞を手に取って少し目を通してから、それを使い障子を修理し始めた。いやいや、それで修理するんかい!
あんまり読まれてないのか、文々。新聞。そう考えると、射命丸も少し可哀想な気がしなくもない...かな?
「これで大丈夫かな。面白い内容の時もあるんだけど、今日のはイマイチだったからね」
「そ、そうなんですか...」
香霖堂での新聞の末路であった。
* * *
「今日はありがとうございました」
「僕は何もしてないよ。気が向いたらまた来るといい」
香霖堂の入り口、俺は霖之助さんにお礼を言った。用意も出来たし、そろそろ帰ろう。少し不思議なお店だったけど、地上に来たらまた寄るか。
入り口のドアを開けると、そよ風が吹き込んでくる。中とは大分空気が違うな。香霖堂も少し換気をすればいいのに。
ドアをしっかりと閉め、俺達は香霖堂を去った。...重い発電機を持って。
「さて、用事も全部済んだし、今度こそ地底に帰ろうか」
「はい、お燐やお空も待っていると思いますよ」
お燐に空、ヤマメにキスメ、勇儀に萃香。萃香は例外な気もするけど、皆、地底で暮らしてる。
この一ヶ月間地底にいたからか、やっぱり帰る場所は地霊殿って感じがするな。
「お前達はほんと、仲良いよな。こいしとか特に碧翔と一緒にいるし」
「そう?そんな事言ったら魔理沙の方が霊夢と一緒なイメージだけど」
「それは魔理沙が勝手に絡んでくるだけよ。私としてはすごく迷惑なんだから」
はは、やっぱり仲が良い。まぁ、確かにこいしはよくくっついてくるな。本読んでたら背中に乗ってきたりするし。
そんな会話をしながら空を飛ぶ。俺は運んでもらってる、が正しいか。自分から頼んでおいてなんだけど、パルスィもよく毎回運んでくれるよな。
本人は気が向いただけだって言ってたけど... 怪我した時も治療してくれたし、なんだかんだ言って優しい。
発電機の重さで腕がまた疲れてきた頃、地底の入り口である大きな穴が見えてくる。
「霊夢も魔理沙も、本当にありがとう。色々助かったよ」
「全然大丈夫だぜ。私も楽しめたしな」
「そうね。最近は異変も起こらないし、暇だったから良かったわ」
「また地上に遊びに来てくれよな」
二人はそう言うと、それぞれの場所に向けて飛んでいった。
「よし、じゃあ俺達も戻ろうか」
そう言って、俺達は深い穴へと入っていく。一番最初に来た時も思ったけど、やっぱり怖いな。
暗闇の恐怖って感じ?ここを抜けると別にそんな事は無いんだけど。でも、ここも何か懐かしいな。やっぱり最初に来た場所だからか。
* * *
「戻ってきたー」
やっぱ発電機は重い。もう持ちたくないね。それにしても、地底特有のこの空気。この旧都の雰囲気。
「いつも通り、騒がしいわね」
「パルスィはこういうの嫌い?」
「......別に」
そう言うと、パルスィはいつもの橋の方へ向かっていく。離れていくパルスィに向かって、俺は一言。
「今回はありがとう!」
てな感じで、戻って来ました地霊殿。相変わらずの大きさです。もう通り慣れた門を開けて、中に入る。
自然に包まれた庭を通り抜け、茶色の扉を開ければ、コンクリート製の玄関。
「ただいまー!」
こいしが大きな声で叫ぶ。すると、奥からさとりのペット代表である二人が出てきた。
「あ、さとり様!おかえりなさい!」
「碧翔もー。待ってたんだよ?」
「ごめんごめん」
やっぱり、帰るべき場所は地霊殿だな。
「今日もお兄ちゃんのご飯食べたいな!」
「しょうがないな、何がいい?」
「えーとね...」
不意に、こいしの向こうにいたさとりと目が合う。それが何だかおかしくて、二人でお互いに微笑み合った。
いかがでしたか?
もっと文章を書くスピードが上がると良いんですけどね... 文章力が欲しいです。
次回もよろしくお願いします。