前回のプロローグに続き、第一話です。
二話目からは、大体週一で投稿したいと思っています。
それでは、お楽しみ下さい。
第一話 ~幻想の世界~
「ふわ……ああ……え……?」
目を開けて一番最初に視界に飛び込んできたのは赤い鳥居。硬い地面の上で寝ていたからか、体が痛い。
ゆっくりと体を起こしながら、辺りを見回す。……いや、どこだここ。見たところ神社のようだけど、家の近所にこんな所……なかったよな。というか、なんで俺はこんな所にいるんだ? さっきまで学校に居たはずだけど、どういうことだろう。
考えていてもしょうがないので、とりあえず神社に入ってみる。全体的にちょっとボロいというか古めかしい感じがするけど、それがまた雰囲気を醸し出している。よく分からないけど、なんだかのどかで、俺は好きだ。
折角だし、お賽銭でも入れておくか。……っと思ったら十円玉が無い。ちょっと勿体ない気もするけど、百円にしておこう。
百円玉を賽銭箱に投げ入れると、チャリーンと小気味よい音が響く。正直、今は訳が分からないし――この不可思議な状況から抜け出せますように。
なんて願っていると、境内の奥から誰かが猛スピードで走って来る音が聞こえた。
「お、お賽銭を入れたのってあなた?」
「え、ああ、そうだけど……」
おお、何だこの人。紅白が基調の巫女服の様なものを着た女の子……なのだが、その服が一般的な巫女のイメージとはかなりかけ離れている。いや、そもそも本当に巫女服なのか? 腋まわりだけ妙に露出してるし、動きにくそうだな。というか何その反応速度。
「ちょっと家でお茶でもしていかない?」
「え? あ、いや……」
変な人には関わらないのが一番。明らかに怪しいけど、ここがどこなのかも、どこに人が居るかも分からないし、訊いてみた方がいいのかもしれない。
うーん、話だけ聞いたらさっと出ていこう。
* * *
「こっちよ」
中に入ると、客人用っぽい和室に案内された。下は畳で、部屋全体が
言われるままに座布団の上に座った。緑茶が出されたので一口啜ってみる。……なんかやたら味が薄いんですが。色も全体的に氷を大量に入れたやつみたいになってるし。
「私は博麗霊夢。この神社の巫女よ」
「ああ、俺は真剣碧翔、よろしく。それで、なんで俺はこんな所に案内されてるの?」
おそらく同い年くらいであろう巫女さん(?)こと、霊夢に聞いてみる。
「それはもちろん、あなたがお賽銭を入れてくれたからよ」
「……普通はお賽銭を入れたくらいでこんなにもてなされないと思うけど」
色々と訊きたい事はある、というかあり過ぎるけど、とりあえず当初の目的を果たすとしよう。
「ええと、まず前提なんだけど……ここってどこ?」
「幻想郷よ」
…………。
『ゲンソウキョウ』で記憶を探るが、俺の頭の辞書には載っていなかった。地名だとしたら、随分と変わってるな。
「あなたが住んでた国とは隔離されてるの。……って言っても、分からないでしょうけど。毎度のことながら説明が面倒ね」
「あー、えっと、隔離? どういう意味で?」
「結界よ。あなた外来人でしょう? だったら、外の世界に帰った方が良いんじゃないかしら?」
……話についていけないんだけど。結界で隔離って、そういう話は平面の世界にしか存在しないはずでは。俺が困惑しまくっていると、外から元気な声が聞こえてきた。
「おーい! 霊夢ー!」
「ん、また魔理沙ね。……面倒だし、あなた行ってきてくれる?」
「良いけど、どこの誰かも知らない俺に任せて大丈夫なの?」
「魔理沙に何かする気なのかしら? 大丈夫よ、返り討ちに逢うだけだから」
「怖っ、何返り討ちって。いや、そもそも何もしないけどさ」
霊夢に恐ろしい忠告を受けてから外に出ると、その恐ろしさとは正反対の魔法使いのコスプレみたいな格好をした金髪少女が立っていた。いや、魔女と捉えれば、ある意味恐ろしいか。
というか、これまた奇抜な服装だな。なんて言うんだっけ、いわゆるコミケにいそうだ。行ったことないけど。
「ん、お前誰だ?」
「あー、俺は真剣碧翔。何故かさっきまでそこに倒れてたんだ」
「よく分からんが、外来人か? 私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ。よろしくな」
……いや、魔法使いって。そう信じ込んでる痛い人……って訳じゃないよな。……まあとりあえずいいや。
あと気になるのはやっぱり、外来人って単語か。さっき霊夢もそう言っていたけど……外から来た人って書くんだよな? やっぱりここは異世界的な何かなんだろうか。
それ故にと言っていいのか、霊夢も魔理沙も中々目立つ服を着ている。これで普通に道を歩いてたら、周りから白い目で見られること間違いなしだろう。
とりあえず霊夢の所まで魔理沙を案内した。少しだけ会話をしたけど、馴染みやすい感じの人だった。霊夢も悪い人ではなさそうだし、人は見かけによらないってやつか。別に悪い人って外見でもないけど。
例の部屋の襖を開けると、さっきと同じように霊夢が寝転がっていた。
「ご苦労さま。ついでに魔理沙にお茶を出してくれると助かるわ」
「……この人、人使い荒くない?」
「元からの性格だからな。しょうがないぜ」
友人からも諦められるとは、なんという事か。
仕方なくお茶を入れようと、おそらく台所であるだろう所に行くが、茶葉の袋が無い。と思ったら、明らかに使ったのを乾かしたような茶葉が側に置いてあった。さっきの薄いお茶の原因はこれか。どれだけ貧乏なんだ、あの巫女さんは。魔理沙は慣れているらしく、特に気にすることなく普通に飲んでいた。なんだか可哀想になってきたな。
魔理沙にお茶を入れたところで、本題に入る。
「で、この世界は……なんだっけ、幻想郷、でいいの?」
「あら、信じるの?」
「うーん、正直半信半疑ではあるけど、そうでもないと今の状況の説明がつかないからね」
色々とツッコミどころはあり過ぎる。けど、現に俺は学校からここにワープしてきた訳だしな。これでドッキリなんてのはありえないだろう。多分。
まあとりあえず、信じざるを得ない状況ってやつだ。
「それで、これって帰れるの?」
「返そうと思えば返せるわ。それが私の仕事でもあるし」
……なるほど。
「それで、もう帰るのかしら?」
「……いや、俺はしばらくここに残るよ」
そう言うと、霊夢も魔理沙も驚いた顔をする。……まあ、確かに普通だったら帰りたいって言うかもな。というか俺も少し思うし。けど、こう、なんと言うか……一言で言うと、『面白そう』。色々大変だろうけど、それでも、この世界が気になる。……だって異世界だよ? 普通の人生を送ってれば、絶対体験することはないだろうし。そう考えると、この世界をもっと見てみたいな、と思った。楽観的思考すぎるかな?
「はは、面白い奴だな! 私はこういう人間を待ってたぜ!」
と、急に魔理沙が大きな声で言った。面白い奴……なんだろうか。あまり良い選択ではないだろうとも思うけど、俺はこの世界にとても魅力を感じた。
こんなにワクワクする事なんていつぶりだろう。なんて、どこかのオレンジ色のボールを集める話の主人公のような事を考えつつ、俺は立ち上がる。
いつかは帰ることになるだろうけど、今は余計なことは考えず、この世界を満喫しよう。
これから訪れる新しい生活の予感に、俺は胸を踊らせた。
いかがでしたか?
まだ主人公のキャラが固まっておらず、悩んでいます。
小説を書く大変さが分かった気がしました。
次回もよろしくお願いします。