なんだか最近、不定期更新になってますね。ペースを戻さないと...
それでは、どうぞ。
近くで鳥のさえずりが聞こえる。それと共に目が覚めた。瞼の隙間からうっすらと光が射し込む。
「うーん...」
顔に生暖かい風がかかる。少し湿っぽい、まるで人の吐息のような...
ゆっくりと目を開けると、知ってる天井でも、知らない天井でもなく、きっちりと閉じた目が視界に映った。
長めのまつ毛に、眉毛のあたりまでかかった黒髪。どう見ても霊夢ですね分かります。
俺の布団の上だけど霊夢がいるってことは... 向こうの方を見ると、くしゃくしゃになった霊夢の掛け布団があった。
どうしようかと固まっていると、霊夢の赤茶の瞳が顔を出す。向こうもしばらくは固まっていた。
どうやら思考が追いついていないみたいだ。
「えっと... お、おはよう、霊夢」
「っ~~~~!!」
平手打ちの甲高い音が、博麗神社に鳴り響いた。
* * *
「だ、大丈夫ですか...?」
さとりが心配そうに近付いてくる。痛い... 霊夢本気で叩いたな...
霊夢の寝相のせいでこんなことになったんだから、俺は悪くないはずなのに... 昨日といい今日といい、寝起き運悪すぎだ。
「ねぇお兄ちゃん、これもう使えないの?」
そんな俺に荷物を漁っていたこいしが見せてきたのは、電池切れのスマホ。確か河童に充電に関して頼むんだったっけ。
どうしよう、今日行ってみようかな。あんまり博麗神社に長居するのも悪いし、河童の所に行ったら地底に帰ろうか?
「てな感じで、行ってみようと思うんだけど、どこにいるの?」
「河童は基本的に玄武の沢にいるそうですね。妖怪の山の麓にある河川です」
河童が居ると言うだけあって川か。幻想郷って海が無いらしいけど、川の水はどこに流れて行くんだろう。
よし、じゃあ今日は玄武の沢に行ってみるか。と、その前に...
「お腹すいたー... お兄ちゃん、ご飯ー」
「おう、了解」
* * *
「という訳で、玄武の沢に行こうと思うんだけど、霊夢達はどう?」
朝食中に霊夢や魔理沙にも聞いてみる。
魔理沙はこれから魔法の実験(という名の毒薬作り)をするらしく、ついていけない、とのことだった。
昨日の帰りに道端の草を見てなんか色々言ってたけど、この事か。
霊夢は、面倒だけどどうせ参拝客は来ないから、と言って一緒に来てくれることに。参拝客ゼロとか悲しいな。
「なんか悪いな。私だけ行けなくて」
「全然大丈夫だよ。薬、どんなのができるか楽しみにしてるね」
俺がそう言うと、霊夢が意味ありげにこちらを見た。あれ、今俺変なこと言った?
しばらく朝食を食べていると、パルスィが俺を見て言う。
「そういえば、今キュウリはあるの?」
「キュウリ?確か昨日買った分が残ってると思うけど。河童に?」
「そう、持っていけば喜ぶと思うわ」
なるほど、そのあたりは日本の河童のイメージと同じなんだな。じゃあ手土産として持っていくか。
朝食の後片付けをした後、鞄に例のスマホとキュウリを入れる。なんか変わった組み合わせだけど、これで大丈夫だな。
用意も大体できたので、博麗神社から玄武の沢へ出発。パルスィさん、毎度毎度ありがとうございます。
何度見ても幻想郷の景色は綺麗。大自然の中、妖精たちが飛んでいる姿はとても幻想的だった。
太陽の光が顔に当たる。空気がおいしい。ああ、素晴らしきかな。ちょっとした話をしながら移動するのもなんか良いね。
「それで、そのスマホっていうのは何ができるの?」
「んー、基本的には他の端末との通話とか、インターネットの閲覧とかかな」
電波が必要だから両方幻想郷じゃ出来ないんだけど。
そんな感じで玄武の沢に到着。断崖絶壁の崖になっている所に降りる。
耳をすますと、下の方からはさらさらと水の流れる音が聞こえてきた。
水が近くにあるからか、他と比べると随分涼しく、ゆっくり休めそうだ。
なんかレジャーシートでも敷いて弁当を食べたい気分だな。さっきご飯食べたばっかりだけど。
崖の端から下を見ると、結構な高さがあり、川の流れもそれなりに速い。これは落ちないように気を付けないとな。
「確かこっちだったはずよ」
霊夢の記憶を頼りにしばらく歩くと、大きな湖が見えてくる。紅魔館の湖と違って明るい雰囲気だ。
これは是非写真を一枚撮りたい。もし充電できたら撮ってみようか。
そう思い、辺りを見回していると、大きな緑色のリュックを背負った後ろ姿が見えた。
俺が想像する『河童』とは似ても似つかない容姿だったけど、さとりは勿論、勇儀やレミリアの前例もあるし...
「あ、あれが河童のにとりね」
案の定でした。
「にとり、ちょっといい?」
霊夢がそう呼びかけると、その少女は俺達の方へ振り向く。
「ん、なんだい、盟友?」
緑の帽子とリュックを身に付け、水色を基調とした服は、全体的に水をイメージさせる格好だった。何故か胸元に鍵を付けている。
小柄なのに旅行に行くみたいな大きさのリュックを背負っているからか、かなりの違和感。
「ちょっと頼みたいことがあるんだけど」
俺がそう言うと、興味深そうにこちらを見る。
「お、人間か。やぁ盟友、私は河城にとり。河童のエンジニアさ」
「盟友っていうのはよく分からないけど、外来人の真剣碧翔。よろしく」
お互いに自己紹介を済ませると、用件を説明する。ふんふん、みたいな感じのノリで聞いてたけど...
「ちょっと見せてくれる?」
俺がスマホを渡すと、充電コードの差し込み口あたりをまじまじと観察する。
幻想郷にスマホなんて当然無いだろうけど、大丈夫なのかな。まぁ今更なんだけども。
「うーん、そういえば前に似たようなコードを拾ったような...」
にとりは「少し待ってて」と言うと、近くにあった建物(工房らしい)に入っていった。
しばらくすると、片手に白いコード、もう片方の手にはなにやらペダルのようなものが付いたよく分からない物体を持って出てきた。
...何だあれ。一つはさっき言ってた充電コードだろうけど、もう一つは...?
「あったあった。はいこれ」
そう言うとその二つを俺に渡す。いや、はいって言われても使い方が分からないんですが。
「そのコード合ってるかい?」
「ああ、うん、USBだしちゃんと差さるけど、こっちは?」
ペダル付きのよく分からないものを見せて問いかける。
所々からコードの束が飛び出ていたり、管のようなものが付いていたりと、いかにも発明って感じだ。
というかこれかなり重い。これを持ち歩けば良い運動になりそうだけど、明らかに使い方違うな。
「それは私が作った発電機。幻想郷は給電する所が無いから、前に作っておいたんだ」
ああ、なるほど。言われてみれば確かに、それっぽい部品があるような...
ペダルを漕いで発電するってことか。これはこれで運動になりそうではあるな。いや、別に運動目的じゃないんだけど。
「ありがとう。あ、そういえばこれ、お礼って言うのもなんだけど」
持ってきたキュウリを手渡す。これだけのものをくれたのに、お礼がこんなので本当に良いんだろうか...?
「おお、ありがとう!発電機を作った甲斐があったよ!」
あ、良かったみたい。 お礼がキュウリって、常識的に考えてどうかと思うけど... 本人は喜んでるみたいだしまぁ良いか。
「少し試してみようかな」
持ち帰る前に、一度充電できるか確認してみる。コードがおかしかったりしたら大変だし。
恐らく差し込み口であろう穴にコンセントを差すと、もう片方をスマホの方にも繋ぐ。その状態でペダルを回すと...
「あ、付いたみたいですよ」
スマホの画面には、充電中のマークが大きく表示されていた。良かった、普通に使えたみたいだ。
しばらく充電してから起動してみる。バッテリー残量8%。ちょっと時間がかかりそうだけど、ちゃんと充電できてるな。
「そうだ、写真を撮ってみようかな」
カメラのアプリを起動して、湖を写す。...うん、良い感じに撮れた。折角だし、これからも少しづつ撮っていこうかな。
ギャラリーを見ると、幻想入りしてから間もない頃にさとりとこいしと、三人で撮った写真があった。
なんか懐かしいな。こんなのも撮ったんだっけ。さとりにも少し見せてみる。
「ほら、この写真、覚えてる?」
「はい、懐かしいですね...」
「あはは、やっぱり?一ヶ月だけでもなんかそう思えるよね」
さとりも俺の方を見て微笑んだ。
「よし、じゃあもうそろそろ行こうかな。今日は本当にありがとう。助かったよ」
「キュウリも貰ったし、何せ盟友の頼みだからさ。困ったことがあったらまた来るといいよ」
俺はもう一度お礼を言うと、来た道を戻っていった。
* * *
「それで、これからどうするの?」
「うーん、俺はもう特に用事は無いかな」
地上でやりたい事は全部済ませたし、俺はもう大丈夫だな。さとりとこいしに行きたい所があれば行っても良いけど...
あ、そういえば、結局今まで知り合ったのは全員女の子だったよな。
「ねぇ、霊夢の知り合いで男の人っていないの?」
「男... いるにはいるけど、何で?」
「今まで出会ったのは全員女の子だったからさ。折角地上に来たんだし、男の人とも知り合いたいな、と」
そんな感じで地底に戻る前に少し寄り道。霊夢の紹介で、ある店に行くらしい。
幻想郷に来て約一ヶ月。やっと男の人と知り合える... まぁ幻想郷のことだから、一癖ありそうではあるな。
どうでもいいけど、発電機を持ったまま移動って、絶対大変だ。俺の腕の力力が試される時が来たか。
この後、腕が動かなくなるくらいに疲れたのは言うまでもない。うん。
いかがでしたか?
先日予約したゲームが、コンビニ払いにしたため、発売日に受け取ることができず... 悲しい。
次は早めに投稿できるようにしたいです。次回もよろしくお願いします。