最近は寒くて、朝着替えるのが辛いです。まぁこれからもっと寒くなるんですけど。
それでは、どうぞ。
あれから数十分後、霊夢達が博麗神社から戻ってきた。
マントみたいなものって言ってたけど、何と言うか... ゲームのラスボスが着てそうな感じ?
頭の部分はフードになっていて、そこから下は体全体を覆うようなものだった。
フードだから安心感があるだろうし、周りからはサードアイも見えない。これなら大丈夫か。
それにしても霊夢、何でこんなもの持ってたんだ。使う機会滅多にないよな、これ。
「さとり、大丈夫?」
「まだ分かりませんけど... やってみます」
よし、とりあえず人里に行ってみるか。ちなみに魔理沙は何故か煎餅を咥えていた。
ただでさえ厳しい霊夢の家計が... まぁ煎餅一枚で死活問題ってのもおかしいんだけど。
* * *
そんな訳でやってまりいました、人里です。人間だよ、人間がいるよ。霊夢と魔理沙も一応人間だけどね。
人里、と言うだけあって、雰囲気は江戸時代って感じ。道行く人は皆、着物のようなものを着ている。
人通りが多く、店も沢山あり、全体が賑やかで活気に溢れていた。
そんな中を俺達六人で歩く。周りと服装というか格好が違うけど目立ってないのか?
隣にいるさとりを見ると、少し俯きながら歩いていた。
しばらく里内を見て回っていると、霊夢が尋ねる。
「それで、どうするの?」
「どうするって...特に決めてないけど。皆の行きたい所でいいかな」
もともと予定があった訳じゃないからな。
俺がそう言った直後に、こいしが店の方を指差して言う。
「あ、あの人形かわいい!」
小物が色々並べてあるお店の端の方にあった小さなうさぎの人形。
手のひらサイズくらいで、男の俺でも確かに可愛いと感じられるようなものだった。
里の雰囲気と違って、売ってる物は結構現代的だな。
「確かに可愛いね。買ってあげようか?」
「いいの?ありがとう!」
商品の並べてあるところから一つ人形を取ると、お店の人に渡してお金を払う。
小さいけど結構いい値段するな。こういうところも現代と同じか。
「ありがとうね」
俺から商品を受け取ったお婆さんは、一つお礼を言うと人形を丁寧に袋に入れていく。
そういえば、チルノ達が言ってた穴のこと、少し気になるな。
「すいません、人里の近くに大きな穴があるそうなんですが、何か知ってる事はありますか?」
俺がそう聞くと、少し考えるような動作をしてから答えた。
「穴、ねぇ。私にはちょっと分からないねぇ」
「あ、すいません、ありがとうございました」
「申し訳ないね、役に立てなくて。はい、出来たよ」
お婆さんから人形の袋を受け取る。うーん、穴なんて本当にあるのか?
チルノ達が見間違えた可能性もあるけど...。こいしに袋を手渡すと、笑顔で答えた。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
さて、どうしようか。俺はもう目的もないし...
「さとり、何か買っていく?折角人里に来たんだし」
「そ、そうですね。食材が少ないので買っていきますか...?」
なんか受け答えがぎこちない。やはり、周りを気にしているようだった。
フードのやつを羽織ってはいるけど、やっぱり気になるか。
「あー、マント...じゃないけど、それを着てるから覚妖怪だと思われることは無いし、俺達もいるからさ。大丈夫だよ」
「...そうですね。ありがとうございます」
さて、それじゃあ買い出しに行ってこよう!あ、持って帰るのは野菜とかの常温で保存できるものに限るけどね。
肉とか魚は博麗神社で調理しよう。これはまた俺の料理スキルが役に立ちそうだ。
* * *
「あー、どれにしよう...」
俺の目の前には無数のカボチャ。定番の煮付け以外にも天ぷらとかスープとか、思ったよりも応用がきく。
確かカボチャは重くて茎の切り口にヒビがあるやつが、身が締まってて高品質なんだよな。うろ覚えだけど。
「...これが良いんじゃない?」
後ろで黙って見ていたパルスィがカボチャを一つ手に取る。確かに他と比べるとかなり良さそうだ。
前の料理も美味しかったし、パルスィは女子力と言うか生活力が高いな。
「ありがとう。パルスィは凄いね」
「ふん、別に...」
───────
「お、このシイタケ美味そうだな」
「あはは、魔理沙は本当に茸が好きだね」
嫌いな人も多いシイタケだけど、栄養は多いんだよな。良薬は口に苦しってやつか?俺は好きだけど。
これもいくつか買っていこう。カボチャと全然関連性無いけど気にしちゃいけない。
シイタケって言うとなんとなく鍋のイメージがあるんだよな。端っこの方で煮えてるやつ。
もう少し野菜を見たら、次は肉の方に行くか。
# # #
そんな感じで買い出し中。魔理沙とこいし、パルスィはさっき魚屋の方に向かっていった。
二手に分かれた方が早いだろうしね。俺とさとり、霊夢は肉屋の方に向かうことに。
三人で雑談をしながら歩いていると、少し遠くにある『鈴奈庵』という看板が目に入った。
「あのお店は何?」
「あれは鈴奈庵ね。破茶滅茶な子が店をやってる貸本屋」
へぇ、貸本屋か。なんか面白そうだな。破茶滅茶ってのが気になるけど。
「ねぇさとり、少し寄って行ってもいい?」
「ええ、私は構いませんけど...」
てなわけで鈴奈庵に少し寄り道。なんか幻想郷に来てからだいぶ本と触れ合ってる気がする。
近くで見るとなんだか雰囲気がある。筆で書かれたような迫力のある文字が目を引いた。
ガララ、という音とともに霊夢が正面の引き戸を開ける。暖簾の奥に、棚に並んだ本たちが見えた。
中に入ると、空気が本特有のものに変わる。図書館と同じような感じだ。
俺達の入店から一歩遅れて、奥から俺と同い年くらいの女の子が出てきた。
「いらっしゃいませ!...あ、霊夢さんじゃないですか」
「久しぶりね。ここは相変わらずみたいだけど」
頭に大きな鈴の飾りを付けている。
特徴的な模様の服の上から、ローマ字で『KOSUZU』と書かれたエプロンのようなものを着ていた。
「その人はどなたですか?」
「外来人の真剣碧翔。よろしくね」
いつも通りのテンプレで返す。とても元気そうな女の子だ。破茶滅茶って言ってたけど、何となく予想がつくな。
「私、本居小鈴って言います。外来人なんですね!この鈴奈庵に置いてある本は、ほとんどが外来本と言って、外の世界で作られた本なんですよ」
「へぇ、外の世界の本か」
もしかしたら俺が知ってる本もあるかもな。面白そうだし、やっぱり来て正解だった。
「あれ、後ろの人は?」
小鈴が俺の後ろのさとりを見て、唐突に言った。
「あ、あの、私...」
「ああ、こっちは俺の... 連れって言うのかな?古明地さとり」
そうだったんですね、と言うと、小鈴は霊夢と話をし始めた。
やっぱり人間との会話は駄目か...?霊夢は小鈴のことを「妖怪を差別するような子じゃない」って言ってたけど...
とりあえず、本を見るか。棚を見ていくと、どこかで見たことのあるような本がいくつかあった。
なるほど、やっぱり現代から来た本なんだな...って、そういえばこれって、どうやって幻想郷に来たんだ?
まぁ外の世界から来た俺が言うのもなんだけど...
そんなことを考えていると、近くにいたさとりが答えた。
「...幻想郷の結界に綻びができたりなど、様々な理由で幻想入りする物があるようです。詳しくは私も知りませんが」
「へぇ... それじゃあ俺は何で幻想郷に来れたんだろうね」
幻想郷ってよく分からないな。二人でしばらく話していたら、小鈴と霊夢が会話をしながら近付いてくる。
「そういえば、あれから妖魔本とかの管理はしっかりしてる?」
「それは、あーっと...」
「妖魔本って何?」
幻想郷に来てから、分からない言葉だらけだ。そこら辺も勉強した方が良いのか。
うーん、なんか難しそうだな。
「妖魔本って言うのは、妖怪が書いた本とか、妖怪の存在を記した本とか、そんな感じね。で、どうなの?」
「あー... 実は今から二、三時間前に妖怪が一匹逃げ出して...」
「はぁ?全く、何やってるのよ...」
逃げ出すって、封印でもしてるのか?やっぱりよく分からないな。
それにしても二、三時間前って、チルノ達が穴について騒いでた頃じゃ...
「で、でも!今回は大丈夫ですよ!ちゃんと再封印できたので」
「ふぅん... まぁそれなら良いけど... どんな妖怪だったの?」
「店から近い所で何故か穴を掘っていたので、無事に終わったんですけど... どんな妖怪だったっけ...?」
穴を掘る妖怪ってどんなのだよ。人里近くにあった穴って、やっぱりその妖怪のせいか。
普通の人間が生活している中に妖怪が逃げ出すって、かなり危なくないか。
しかも『今回は』再封印できたって... 破茶滅茶ってそういう事?霊夢は苦労してそうだな。
「とにかく、本当に気を付けなさいよ?」
「はい!次はすぐに霊夢さんを呼びに行きますね!」
霊夢は呆れたような表情をして溜め息を吐く。うん、まぁ憎めない感じだな。
「それで、どうするの?あんまり長居しててもしょうがないし」
「あー、それなんだけど、今回は紅魔館で本を借りてるし、返しに来るのも大変だしさ。また今度、改めてって事でも良い?」
あんまり多く借りると読むのも返すのも大変だからな。
じゃあ何のために店に入ったんだって話になるけど、まぁ、気になったもので...
俺が小鈴に問いかけると、笑顔で答えた。
「はい、全然大丈夫です!また来て下さいね」
「あはは、近いうちにまたお邪魔するよ」
俺はそう言うと、出入り口の引き戸を開ける。雰囲気が良くて、落ち着けるような所だったな。
次地上に来ることがあったら、また入らせて貰おう。
* * *
肉屋に行って、人里の入口に戻った頃には既に日が沈みかけていた。
地平線へ消えようとしている夕日の残片がとても綺麗だった。
鈴奈庵に寄り道していたせいか、魔理沙達を待たせてしまっていたようだ。
三人と合流してからは、再びパルスィに運ばれ、博麗神社に戻る。
別にパルスィじゃなくても良いんじゃないかと思ったけど、霊夢は面倒だって言うし、さとりは体格的なものがあるからな。
魔理沙については、本人は別に良いって言ってたけど、あの箒はもう勘弁願いたい。
パルスィは妬ましい、などと文句を言いながらも、ちゃんと運んでくれた。優しい。
買ったものに生ものがあったから、結局今日も神社に滞在することに。千円パワーはまだ続くようです。
と、そんな訳で現在絶賛料理中。パルスィが選んだカボチャはすごく良かった。切った時の感じで大体分かるんだよな。
色々あるけど、やっぱりカボチャと言えば煮付けだろう、という事で今煮込んでおります。
しばらくすると、こいしが駆け足で近付いてくる。
「わー、美味しそうだね!」
「パルスィが選んだからね。後でお礼言っておいて」
「はーい!」
皆でご飯を食べてから、少し休憩したら就寝時間。
さとり達と一緒に寝るのは止めよう、というさとりと俺の意見で、今日は俺だけ少し布団を離して皆一緒の部屋で寝ることに。
昨日は変な空気だったからな。あの気まずい感じは困る。
それにしても、まだ知り合った人達が女の子しかいないんですが。
人里に行ったら普通に男もいたけど、仲が良くなるって所まではいかないし。
こういう状況の時に男友達が一人くらいはいた方が気が楽というか...
まぁとりあえず、今日は穏やかに眠れますように。目が覚めた時も知ってる天井であることを祈ろう。
いかがでしたか?
穴を掘る妖怪について、明確な表現はしていませんが、それはご想像にお任せします。
いや、何分妖怪について詳しくないもので...
次回もよろしくお願いします。