東方読心録   作:Suiren3272

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どうも、こんばんは。
少しの更新停止の筈が、かなり遅れてしまいました。申し訳ありません。
これからはまたいつも通りの更新となりますので、よろしくお願いします。
それでは、どうぞ。


第十五話 ~閑話休題~

「うーん、どれにするかな...」

一通りぐるっと見て回ったけど、数が多すぎて迷う。

俺の身長の三倍はあるであろう本棚には、物語系から魔術書みたいなものまで、多種多様な本達が並んでいた。

それにしてもこれだけ棚が高いと地震が来たりしたら危なそう。本がぶつかって死ぬってなんか嫌だ。

 

ゆっくりと歩きながら本を見ていく中で、一つ目に留まったのが『(さとり)の謎』という本。

俺はその本を棚から抜き出すと、パラパラとページをめくる。

​───────

覚。人の心を読むことができると言われている妖怪。山小屋などに居る人の心を読み、隙があれば襲うという。

しかし、偶然や気まぐれ、無意識などの思いがけないことには弱い。

 

ふーん... さとりと言うよりは元の覚妖怪の事っぽいけど、なんか面白そうだし、この本を借りていくか。

これともう一冊、幻想郷に関しての本を手に取ったところで、背中を何かにつつかれる。

「ねぇお兄さま、この本読んでくれない?」

「ああ、フランか。いいよ、あっちで読もうか」

二人で中央のテーブル横にある椅子に座る。フランが持ってきたのは、薄めの絵本のようだった。

読み聞かせなんて小学校の頃、委員会かなんかの関係で少しやったのが最後だから久しぶりだな。

「じゃあいくよ...」

 

 

 

「めでたしめでたし...っと」

「あー、面白かった。ありがとう、お兄さま」

こういう絵本にも、結構学ぶところがあったりするよな。哲学的な話も割と多いし。

丁度本を読み終えたところで、入口の扉が開いた。入ってきたのは銀髪のメイド。

咲夜さんいつの間に外に出てたのかと思ったけど、能力を使ったのか。

「真剣様、霊夢達が到着したようです」

「お、皆来たか。じゃあそろそろ行こうかな」

俺はパチュリーにお礼を言うと、二冊の本を持って図書館から出る。後ろからフランもついて来た。

 

「お兄さまはどこに住んでいるの?」

「地底の地霊殿に。さとり達と一緒に暮らしてるんだ」

女の子と同居とかベタなアニメみたいだけど、アニメみたいな展開は無い... と言うかあったら困る。

なるべく平穏な日々を送れますように。

 

* * *

 

「失礼します」

再びレミリアの部屋に戻ってきた。咲夜さんがノックをしてから扉を開ける。

中には霊夢に魔理沙、パルスィに古明地姉妹。部屋に入ると、さとりがホッとしたように息を吐いた。

「碧翔、良かったです...」

こいしも安心したような表情をしていた。俺のせいじゃないとはいえ、心配をかけたみたいだ。

俺は心の中で小さくごめん、と呟いた。

 

「ところで... お二人はどのような関係でいらっしゃるのですか?」

と、唐突に咲夜さんが聞いてくる。どんなって言われると... 同居人?なんか違う気もするけど。

「あー... イマイチいい表現が浮かばないな...。と言うか何でそんな事聞くの?」

「失礼致しました。昨晩はお二人で一緒に寝られていたようなので、少々気にかかりまして」

咲夜さんがそう言った瞬間、さとりの顔が赤くなる。なんかしょっちゅうなってる気がするけど、中でも今日は真っ赤だ。

確かに、昨日のことは思い出すと恥ずかしい...

「べ、別に意味はないので!何もない...です」

 

さとりがそう言うと、魔理沙が溜め息を吐いた。

「全く、さとりも奥手だよなぁ」

「魔理沙、余計なこと言わない」

「はぁ、相変わらず妬ましい...」

昨日は結局何だったのかよく分からないけど、まぁそこは置いておこう。ともかく、皆とまた合流できて良かった。

そんな事を話していると、俺達を見ていたレミリアが思いついたように言った。

「そうだ、折角だからここで食事をしていかない?碧翔もまだ起きてから何も食べていないでしょう?」

「そういえばそうだね。それじゃあお言葉に甘えるか。さとり達も良いよね?」

俺が問いかけると、皆頷く。こいしは元気に「はーい!」なんて返事をしていた。

なんか幻想郷生活も充実してきたな。皆を見て、改めてそう思った。

 

 

レミリアが、料理ができるまで少し時間が掛かるから、ということでゆっくりしていて良いと言った。

確かに、能力を使っても時間を止めてたら焼いたりできないしな。

皆と待っていても良かったんだけど、折角だし迷わない程度に館内をぶらぶらしていたら、赤色の髪の女の人に会った。チャイナドレスと華人服を合わせたようなものを着ている。

なんか幻想郷の人達の格好にももう慣れたな。俺がこんにちは、と言うと向こうも元気に返してくれた。

「紅魔館で門番をしている紅美鈴です。あなたは?」

「外来人の真剣碧翔。よろしく」

 

この館、門番とかもいたんだな。俺は入り方がイレギュラーだったし、知らなかった。

「あなたがお嬢様の言っていた外来人ですか」

「別に特別秀でた所もないし、そんなに取り上げられるような人じゃないと自分では思うけどね」

俺と比べて友人の蒼月は運動が得意だったからな。あいつ足超速かったし。

運動能力が重要そうな幻想郷では俺は結構危ないのかも。少し運動しようかなぁ。

「丁度庭の花に水やりをするところなんですけど、来ますか?」

「ああ、まだ時間もあるし、見てみたいかな」

 

こっちです、と美鈴の案内で来た所は、壁が他と違いステンドグラスになっていた。

横の扉を開くと、奥に見えたのは色鮮やかな花たち。

植物はそんなに詳しくないから分からないものが多いけど、チューリップとかパンジーみたいな定番の花もあった。

上を見上げれば青空。周りは花に囲まれていて気持ちがいい。

「庭の花たちには私が毎日水やりをしているんです」

「へぇ、どれも綺麗だね。あ、この花はなんて言うの?」

「それはガザニアですね。春から夏の終わりにかけて、結構長い間咲いています。きらびやか、純白なんて言う花言葉があるんですよ」

楽しそうに話している。本当に花が好きなんだな、と感じた。

その後も庭の花について聞いたり、植物の話をしていたりすると、入り口の扉が開いた。出てきたのはパルスィだ。

 

「ご飯が出来たから二人とも来いって言ってたわよ」

「分かった、行くよ」

パルスィの知らせで、三人で会話しながら部屋に向かう。美鈴って話しやすくていい人だな。

さとりも話してて楽しいけど、それとはまた違った感じがする。

「皆とご飯ってなんか久しぶりですねー。仕事の関係上、私は皆と食べないことが多いので」

「そうなんだ。門番って大変だね」

 

少し歩いて、かなりの長さのテーブルがある部屋にやってきた。なんか海外映画とかに出てきそう。

高級感溢れる蝋燭に、装飾の施されたお皿。細長いグラスがランプの光を反射している。

皆はすでに席に座っていた。

「もうすぐ咲夜が料理を持ってくると思うから、待っていてね」

「咲夜さん仕事早いなー。まだそんなに時間経ってないと思うけど」

 

少しすると、咲夜さんが料理を運んできた。お待たせしました、って言ってたけどそんなに待ってないよ。

料理も美味しそうなものばかりだ。俺が作らないようなジャンルのものが多いからか、なんか新鮮。

一口食べるとそれはもう絶品でした。流石メイドだからか、料理の腕は半端じゃなかった。庶民の俺とは違うなぁ。

前を見ると、紅魔館の豪華な椅子にきっちりと座るさとりの姿。

「この料理すごく美味しいね」

「そうですね。私も少し料理をしないと...」

「あはは、さとりの手料理だったら喜んで食べるよ」

 

皆で雑談をしながら食事をする。

パチュリーがどんな本を読んでるのかや、レミリアの一日の過ごし方。

美鈴の日常にフランが大事にしている人形の話。俺の幻想入りの経緯や外の世界での事。

本当にちょっとした話なんだけど、それが楽しい。なんて言うか、充実してる、生きている楽しみがある、みたいな?

皆良い人達だし、自然は多いし、幻想郷って本当に良いところだな。

 

* * *

 

「もう行くのかしら?」

「ああ、まだ周りたい所もあるからさ。今度は自分の足で訪問させて貰うね」

紅魔館の門の前。皆で俺達を送ってくれた。こう正面から見てみると、紅魔館って相当大きいな。地霊殿と同じかそれ以上?

それにしても、紅魔館の人達には本当にお世話になった。人を寝てる間に攫っていくのはどうかと思うけど。

「ありがとう、また来るよ」

レミリアにそう伝えると、俺達は紅魔館を後にした。

 

 

 

薄く霧がかった湖。皆で歩いていると、魔理沙が一つ息を吐いた。

「いやー、料理うまかったなー」

「魔理沙、結構食べてたよね。霊夢も凄かったけど」

魔理沙は常識の範囲って感じだったけど、霊夢の食いつきようは凄かったな。

まぁあれだけ美味しければ分かる気もするけど。

「当たり前じゃない、タダで食べられるんだから」

あ、美味しさは関係なかったみたいです。

 

そんな事を話しながら霧の湖を歩く。こういう場所って結構好き。

霧が醸し出す独特の雰囲気がなんとも言えない気持ちにさせる。

ふと、こいしが俺の方を見て問いかける。

「お兄ちゃん、次はどこに行くの?」

「うーん、俺は人里に行きたいかな。さとりが良ければだけど」

「人里、ですか...」

この辺はさとりの過去に触れることになっちゃうんだよな。やっぱりさとりは待ってる方が良いか。

だけど、さとりの様子を見る限り、なんだか迷っているようだった。

俺達を見て察したのか、霊夢が言う。

「...そういえば家にマントみたいなものがあったと思うけど、使う?」

「そう、ですね。 一回見てみたいです」

さとりがそう言うと、魔理沙がハキハキとした声で言う。

「よし、じゃあ博麗神社に戻るか!」

 

てなわけで、それを取りに博麗神社に戻ることになりました。

イマイチ効果があるかは分からないけど、無いよりはマシだよな。

「あ、俺はここで待ってるよ。ほら、一緒に行くと移動が大変だし」

「確かにそうね。それじゃあ私とさとりで行きましょうか」

「私も付いてくぜ。ずっとここにいても暇だしな」

霊夢と魔理沙、さとりは三人で博麗神社に向かって飛んでいった。残ったのはこいしとパルスィと俺の三人。

それにしても飛べるって便利だよな。移動とか超速いし。現代の人達が飛べたら車とかいらないんじゃないか。

 

「ねぇパルスィ、飛ぶってどんな感じ?」

「どんなって... 私達にとっては当たり前だから」

あー、人間で言う手足を動かすのと同じ感じなのか。

手をどうやって動かしてる?って聞かれても、イマイチ説明しにくいしな。

「なんか羨ましいな。いや、こういう時は『妬ましい』か」

「全く...」

パルスィはふん、といった感じで遠くを見た。

 

俺も同じように湖の方を見ると、遠くに水色と緑の何かが飛んでいた。二つともだんだんこちらに近付いてくる。

見えてきたのは... 何あれ、妖怪?なんだか喧嘩をしているようだけど...

「あたいはサイキョーだから大丈夫なの!」

「だ、駄目だよ、危ないって」

水色の髪に水色の服、水色の目をした女の子と、緑色の髪を片方で結んでいる子が話していた。

二人とも背中に羽根のようなものがある。妖怪と言うより、妖精?

 

「どうしたの、二人とも」

俺が話し掛けると、緑の髪の子があたふたした様子で言う。

「え、えっと...チルノちゃn」

「あたいがサイキョーだから、あの穴を確かめに行くんだ!」

なかなかに強引な子だな。良く言えば元気がいい、か。昔の妹を思い出すなぁ。疲れるんだけど、一緒にいて楽しい、みたいな。

「それで、その... あなたは?」

「あ、ごめん。俺は真剣碧翔。よろしくね」

このセリフは何回目なんだろう... テンプレになっている自己紹介をすると、向こうも答えてくれた。

「わ、私は大妖精って言います。それで、こっちはチルノちゃん。よろしくお願いしますね」

大妖精にチルノか。チルノは活発で、大妖精は常識人って感じ?なかなか良いコンビだな。

 

それで、穴がどうのって言ってたけど...俺が問いかけると、二人で交互に答えた。

どうやら、向こうの方に大きい穴があるらしい。

「ねぇお兄ちゃん、それって地底の穴じゃないの?」

「あ... そうじゃないんです。人里の近くにあって、地底の入り口ほど大きくないので」

「大ちゃん、早く行こうよ!」

そこにチルノが行きたがってるのか。うーん、俺は幻想郷に詳しくないからよく分からないな。

パルスィに聞いてみても知らないらしいし。

まぁとにかく、万が一何かあったら二人が危ないし、今は止めておこう。

人里だったら後で俺達も行くし、その時に霊夢と魔理沙あたりが確認すればいいからな。

 

「と、そんな訳だから、二人はここで待っててね」

「えー、行きたかったー」

チルノはやっとな感じで大妖精に止められた。ほんと騒がs... 元気が良いな。それにしても、穴か...

まぁ霊夢と魔理沙がいるし、大丈夫だよな。あ、フラグじゃないよ。




いかがでしたか?
ちなみにこの話の季節は、まだ夏の後半頃です。
話の進みがどうしても季節に追いつかず...
次回もよろしくお願いします。

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