東方読心録   作:Suiren3272

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皆さん、こんばんは。
忙しかったため、少し投稿が遅れてしまいました。
もう少し早く書けるようになりたい。
それでは、どうぞ。


第十四話 ~紅い館と吸血鬼~

赤を基調とした壁や家具。地霊殿とは違った、高級感あふれる部屋だ。そんな所のベッドで寝ていた俺。

あれれー、おかしいぞー。博麗神社に居たはずなのに目覚めたら見知らぬ部屋ってどういうこと。

なんか幻想入りした時と似てるな。確か教室で急に眠くなって、気が付いたら幻想郷にいたんだっけ。

なんて回想してる場合じゃなかった。とりあえず外に出てみようか。

そう思い、ベッドから立ち上がろうとすると、部屋の扉がノックされる。

 

「失礼します、起きておられますか?」

「えっと、まぁ一応...」

綺麗な声だ。可愛らしさのあるさとりやこいしとは違う、美しい、と表現できるような声。

というかまともにノックされたのって、幻想郷に来てから初めてなのでは...?

俺が返事をすると、ガチャリと扉が開く。

入って来たのは、俺と同い年か少し上くらいの、銀髪のメイドさんだった。

青と白のメイド服に、頭には白いカチューシャ。アニメなどでよく見るメイドオブメイドだ。

 

「私はこの紅魔館のメイド長を務めております、十六夜咲夜です」

「あー、ご丁寧にどうも... 俺は外来人の真剣碧翔って言います」

「はい、存じ上げております」

俺の事知ってるのこの人?俺の記憶には無いけど... 幻想郷に来てから、そんなに多くの人とは会ってないし。

俺が悩んでいると、彼女は微笑んで言う。

 

「真剣様とは初対面ですね。それと、無理な敬語は必要ありませんよ」

「あはは... ごめん。でも、それじゃあ咲夜さんも普通に接してくれていいよ」

「すみませんが、私はお嬢様から客人に対しては丁寧に接するよう仰せつかっておりますので」

そうか... まぁいいか。ところでお嬢様って... 紅魔館って言ってたけど、やっぱり主人が居るのかな。

と、そろそろ本題に入らないと。

 

「何故自分がここに居るのか、という事を聞きたいのでしょう?」

「もしや覚妖怪!?」

なんて茶番は置いておいて。まさにおっしゃる通りです。なんで俺はこんな所に居るの。

咲夜さんも悪い人とは思えないし、よく分からないな。

「まず、今日ここに真剣様をお連れしたのは、お嬢様の命令です」

「え、そうなの?」

という事はその人も俺を知ってるってこと?いつの間にそんな有名人になったんだ俺。

噂になったりとかしてないよね?幻想郷怖い。

 

「私も詳細は知りませんが、外出途中に真剣様を偶然お見かけしたので」

「えーと、それで俺に会ってほしいと」

うーん、やっぱりよく分からないけど、状況的に会うしかなさそうだな...

その時にさとり達の事を話せば分かってくれるか。

ところで、それじゃあ寝てる間に俺をここに連れてきたってことだよな。

なんか不自然な気がするけど... まぁいいか。

 

* * *

 

咲夜さんの後ろについて廊下を歩く。所々に絵画があったり、花瓶に花が挿してあったりなど、中々すごい。綺麗だけど掃除が大変そう。

色々オシャレなものがあるけど、一つ気になるのが、窓が無い。ランプなのか魔法なのか中は明るいけど、窓がほとんど見当らない。

それに加えて壁とか床、天井まで全部赤いから結構目にきます。雰囲気は良いけど、居心地は微妙... ってこんな事言ったら失礼だけどね。

 

しばらく歩いていると、一際大きい扉が目に入った。その前で咲夜さんが止まる。

「こちらです。よろしいですか?」

「ああ、大丈夫」

俺が返事をすると、扉を軽くノックした。なんか今更だけど、状況が急展開すぎる気がする...

さとり達はどうしてるかな。突然人がいなくなったら相当驚くと思うんだけど。

「お嬢様、真剣様がお目覚めになられました」

「入っていいわよ」

扉の奥から、レミリアのものであろう声が聞こえてきた。

威厳があるが、どこか可愛らしい声の許可とともに、咲夜さんが扉を開ける。

 

その奥にいたのは、やはり赤が基調となっている大きめの椅子に座った少女だった。

紫色の髪に白い帽子を被り、背中には大きな羽がある。とりあえず、人間ではないな。

小さな体から大きな何かを感じ取れる。流石、館の主って感じだ。

「私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主よ。あなたがあの外来人ね」

「あの、というのはよく分かりませんけど... 外来人の真剣碧翔です。よろしくお願いします、レミリア様」

「ふぅん。...敬語はいらないわ。普通な感じで接してほしいの。なるほど、確かに写真と同じね」

なんか敬語を訂正されることが多くないか、俺。レミリアはテーブルの上にある新聞を取り、その一面を俺に向ける。

えーと...『地霊殿の主、さとりと熱愛!?外来人、真剣碧翔の正体とは!』

 

「あ!これって!」

「あなた、新聞に載っていたでしょう?」

これはあれだ、俺が幻想入りしたばかりの頃に射命丸に盗撮(?)されたやつ。

でもこれ結構前のだし、あれはあの後すぐ射命丸に発行を止めさせたはず...

運が良いのか悪いのか、たまたま持ってたっぽいな。

「普段は天狗の新聞なんて読まないけれど... あなたの事が気になってね」

「俺が?」

「あの覚妖怪と同居。気にならない訳がないでしょう?」

 

そんな風に言われるって、さとりは周りからどう思われてるんだ...?

というか本当に有名人になっちゃってるじゃん俺。しかも新聞の内容的に勘違いされそうな...

「あー、でもこれに書いてる内容はほとんど嘘だと思うけど」

「そんな事私も分かってるわ。だからこそここに連れてきたんじゃない」

彼女の目が光る。いやー、なんと言うか... もう帰りたい。

 

 

 

それから数十分に渡り質問されまくった俺。

年齢とかの普通な質問もあれば、さとりの事をどう思っているのか、みたいなよく分からないものまで。

何はともあれ、やっと気が済んだのか質問の嵐が止まりました。...凄い暴風雨だったぜ。

「ところで、俺はもうそろそろ博麗神社に戻らないといけないんだけど...」

「ああ、霊夢達だったらもうすぐ来るんじゃない?」

「え?」

夜中に突然連れ去ったんだし、俺の居場所は知らないのでは?

 

と、急に咲夜さんが目の前に現れた。

「置き手紙を添えておいたので、時期にいらっしゃるかと」

「ああ、そうなんだ... って、ええ!?」

すごい自然な流れだったから思わずスルーしちゃったけど、今目の前に突然現れたよね。いやいやいや、ホラーすぎ。

心臓に悪いよ、高血圧になるよ。俺はまだ高校生だけど。

本人によると、今のは『時間を操る程度の能力』というものらしい。

チートと言うか化け物と言うか... あ、ちなみに彼女は人間です。俺を運んだ時に使ったのもこれらしい。

いくら時間を止められると言っても、男一人を運ぶのはかなり大変そうだけど... まぁあれだ、メイドの心得だ、きっと。

 

 

その後もしばらく二人と雑談をした。

「それじゃあレミリアは料理は苦手なの?」

「に、苦手って訳じゃないわよ。館の主だからやらないだけであって...」

「前に『料理を作ってみたい』と言い出して大失敗したのはどこの誰でしょう」

「咲夜、余計なこと言わないで!」

うわぁ、その時の絵が容易に想像できる。なんか微笑ましいな。

立場的には逆だけど、結構咲夜さんが母親って感じしない?

「あはは、今度教えようか?」

「うー...」

レミリアは俯いてしまった。あれ、こんなキャラだっけ?

 

​───────

 

「真剣様は読書がお好きなんですね」

「まぁ大好きって程でもないけど、暇な時は結構読むかな」

幻想郷の本って現代とはまた違った感じがして結構好き。

今まで学校に行ってたりゲームしてたりした時間が半分くらい読書になってるから、地霊殿にある本も結構消化してると思う。

「うちにも大図書館があるので、何か借りに行ってはどうでしょう?」

「へぇ、大図書館か。折角だし、少し見ていこうかな」

という訳で、さとり達を待ってる間に図書館へ行くことに。

 

* * *

 

咲夜さんの案内で紅魔館の中を進む。しばらく歩いていると、角から金髪の少女が出てきた。

レミリアと似た帽子を被っていて、髪を片方で結んでいる。サイドテールって言うんだっけ。

そして何よりも、背中から伸びる七色の翼が目を引く。

翼って言っていいのか分からないような感じだけど、多分そう。

「妹様、おはようございます」

「おはよう咲夜。この人は?」

「俺は真剣碧翔。外来人なんだ」

俺がそう言うと彼女はこちらに近付き、まじまじと見てくる。

 

「ふぅん。私はフランドール・スカーレット。皆はフランって呼ぶの。よろしくね」

さっきレミリアが妹がいるって言ってたけど、この子の事か。

まぁ見た目は幼くても吸血鬼らしいし、俺とは比べ物にならないくらい長生きなんだろうけど。

「今は図書館に行くところですが、妹様もご一緒しますか?」

「うん。行こう、お兄さま」

そう言うと、俺の手を引く。こいしからはお兄ちゃん、フランからはお兄さまか。

実際に妹もいるけど、俺ってそんなに兄気質?

 

 

 

「こちらです」

咲夜さんが一際大きな扉を開けると、その先には本、本、本。

天井付近まである棚に本がビッシリと収まっているのは圧巻だった。流石は”大”図書館というべきか。

咲夜さんの後に続き、中を進む。中央にある机に、ゆったりとした服を着た女の人が座っているのが見えた。

近くにもう一人いるみたいだ。二人ともこちらの方を向く。

「魔理沙以外の人間がいるとは珍しいわね」

「俺は外来人の真剣碧翔。咲夜さんの薦めで本を借りに来たんだけど...」

 

「へぇ... パチュリー・ノーレッジよ。本は貸し出すけど、ちゃんと返すように」

「私はパチュリー様の使い魔の小悪魔って言います。こあって呼んでください」

よし、許可も貰ったし、本を見てみようかな。と言っても、これだけあると相当迷いそうだけど。

俺の横にいたフランが、左を指さして言う。

「お兄さま、あっちに行ってみよう」

小走りで進んでいくフランの後を追って、俺も奥に入っていった。




いかがでしたか?
前回、地上編は三話で終わると言いましたが、文字数的にもう少し長くなりそうです。
次回もよろしくお願いします。

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