東方読心録   作:Suiren3272

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皆さん、こんばんは。
いやー、ごろごろしてたらいつの間にか日曜日の夜。
時が経つのは早いですね。
それでは、どうぞ。


第十話 ~真剣碧翔のお料理教室~

「あっち向いてほい! あ、また負けたー!」

 こいしがポカポカと叩いてくる。これで俺の三連勝。本人に言ったら怒るだろうけど、単純だから簡単に予想できるんだよな。

 俺にも中一の妹がいるけど、幻想入りする半年位前から口も聞いてくれない。こいしとは正反対だな。……いや、前はそんなことなかったか。

 

「むー、全然勝てないー」

「あはは、簡単には勝たせないよ?」

 そんな事を話していると、こいしが俺に近づいて、 くっついた。

「ねーお兄ちゃん、おんぶして?」

「え? なんで?」

「んー、なんかそういう気分!」

 

 よく分からないけど、まあいいか。少ししゃがむと、すぐにこいしが飛びついてきた。後ろからぎゅっと抱きしめるように手を回す。

「よーし、進め、進めー!」

「……いつから俺はこいしの世話係になったんだ」

一つ息を吐くと、部屋を出た。

 

 

* * *

 

 

 こいしと一緒に廊下を進む。いくら体が小さいと言っても、長時間背負ってると結構疲れそう。いい運動にはなるだろうけど。まあ俺も力はない方だし、丁度いいか。

 それに、こいしも喜んでるみたいだしな。笑顔ではしゃいでいるのを見ると、なんだかこっちまで癒される。

 

「ねー、お兄ちゃん」

「ん、何?」

 しばらく廊下を歩いていると、こいしが俺に声を掛けてくる。代謝は人間の子供と同じなのか、体温が高く、背中がかなり温かい。

「お兄ちゃんは幻想郷に来る前は何をしてたの?」

 ここに来る前か。……そういえばさとりにも似たような事を聞かれたな。うーん、もともと俺はこれと言って特徴のない、普通の高校生だったからな。こんな世界に偶然やってきたから、今では全く違う生活を送ってるけど。

 

「普通の人間だったかな。皆と変わらない高校生だよ」

「こうこうせい?」

 ああそうか、高校もここには無いんだった。

「高校って言うのは、うーん……幻想郷でいう寺子屋みたいな感じ? 俺くらいの年齢の人が通うところかな」

「へえー。でもお兄ちゃんは、普通の人間とは違うと思うな」

 

「え?」

 後ろから抱きしめるように手に力が入る。

「だって、お兄ちゃんは優しいから。いつも私と遊んでくれるし、お姉ちゃんの事を怖がらないし。だから私は、お兄ちゃんが大好き!」

 元気にそう言う。……そっか、地上には定期的に出てるみたいだけど、人間とのこういう関わり方は、こいしもしたことないのか。

「……うん、ありがとう」

 

 

 それからしばらく廊下を歩き回っていると、向こうから空が歩いてきた。

「うにゅ? 何やってるの?」

「今はね、お兄ちゃんにおんぶして貰ってるんだ」

 いやー、流石に疲れてきた。正直もうそろそろ降りて欲しいんだけど……。

 そんな俺の思いに全く気付く様子もなく、こいしは空と会話している。

「へー。あ、じゃあ私もおんぶして?」

 

 ……え?

「いやいや、ちょっと待っ……がふっ!」

 こいしの上から空が乗ってきました。当然支えきれずに潰れる。三人が重なってサンドイッチのできあがりだ。

「あれ、大丈夫?」

「もー、お空重いよー」

「く、苦し……」

 

 三人でそんな事をしていると、近くの部屋からお燐が出てくる。

「……こんな所で何やってるんだい?」

 視線が痛いんでそんな奇怪なものを見るような目で見ないで……。

 そこでやっと空が上から降りる。それに続いてこいしも離れた。あー、死ぬかと思った……。とりあえずお燐にこうなった理由を説明していると、誰かのお腹の音が聞こえてくる。

 

「……お兄ちゃん、お腹空いたー」

「ああ、こいしか。でもご飯はもう少し先だと思うよ?」

「むー」

 ご飯と言われてもまだ結構時間あるし……どうしようか。何かおやつでも……って、それじゃあご飯食べられなくなるしなあ。

「ねー、お兄ちゃんってご飯作れたよね?」

「俺? うん、一応出来るけど、何で?」

 

 こいしは博麗神社でのことを言っているんだろう。

 俺がまだ小さい頃に父は他界してしまった。母は仕事で忙しくて、基本的な家事は俺がやっていたから、家事スキルは結構なものだと自負している。もちろん料理も例外じゃないけど……。

俺の問いにこいしは満面の笑みを浮かべて言った。

「私、またお兄ちゃんのご飯が食べたいな!」

 

 

* * *

 

 

「と、言う訳なんだけど」

俺の説明にさとりは溜め息を吐く。

「全く、こいしはまた我がままを言って...」

「いや、別に俺は良いんだけどさ。さとり達は大丈夫なのかと思って」

いつもは皆が作ってるから予定もあるだろうし、いきなり俺がやっていいものか……向こうからしたら迷惑なんじゃないかとも思う。

 

「いえ、私は構いませんし、今からペット達に伝えれば予定も変更は出来ますよ」

「やった! じゃあお兄ちゃん、何か作って?」

 うーん、何か、と言われても……どうしよう。人数もそれなりに居るし、皆で取り分けられるものがいいよな。

 んー。カレーは……幻想郷にカレー粉ってあるのか? 煮物は……地味だし単品だと味気ないよな。

 ……そういえば、前に家族三人で炒飯を食べた事があったような気が。これだったら皆で取り分けられるし、特別な材料も必要じゃないし……よし、それじゃあ炒飯に決まりだな。

 

 作るものが決まったので、キッチンの方に行く。おお、広い。

「ねぇお兄ちゃん、何を作るの?」

 そして何故かこいしもついて来てます。別にいいんだけど、ずっと見られてるとなんか……まあいいか。特に気にする様子もなく、俺に付いてくる。

「炒飯を作ろうと思ってるけど」

「へー、美味しそう、早く作って!」

 

 うん、作るから少し落ち着こう。こいしを少し宥めてから、調理を開始する。

 まずは手を洗って、材料を切る所から。使えそうな材料を用意する。こいしが身を乗り出して見てくるから、少し下がるように言った。材料と一緒に手も切ったりしたらシャレにならないしな。

 次にフライパンに油を敷いてから、基本的な材料を入れて、卵とご飯も入れる。炒飯って手軽だけど、本格的なのはかなり難しいんだよね。

 肉とネギを加えたら、更に炒める。上手くやらないとパラパラにならないんだよな、これが。

 最後に冷蔵庫にあったダシっぽいやつと塩コショウ、醤油を入れたら完成。

 

「よし、これで完成かな」

 ついでに付け合わせの品も、本当に簡単にだけど作っておいた。

 大きいお皿に盛ったら、部屋へ持っていく。既に皆は椅子に座って待っていた。

 テーブルの上にお皿を置く。いやー、量が多いと重いね。

「お、なかなか美味しそうだね」

「早く食べよう!」

 俺とこいしも席に着いた。皆が揃ったところで、手を合わせる。

「それじゃあ、いただきます!」

 

 皆がそれぞれのお皿に取り分けて食べる。俺も自分の分をお皿に盛ると、一口食べてみた。

 ……うん、まあそれなりにいい感じにはなったかな。久しぶりに作ったから不安だったけど。こいしも満面の笑みで食べている。

「ん、おいしい! やっぱりお兄ちゃんって料理上手だね」

「確かに、美味しいですね。これからは碧翔が料理担当でも良いんじゃないですか?」

 なんて言うけど、流石に毎日はレパートリーがそんなに無いしな。折角の誘いだけど、お断りさせて頂くとしよう。まあ、たまにならまた作ってもいいけど。

「あー、美味しかった。ごちそうさまでした!」

「うん、お粗末さまでした」

 手を合わせると、こいしは元気よくそう言った。誰かのために料理をするっていいな。もちろん現代でも家族のために作っていたけど、それが当たり前になってたから、今日はなんだか新鮮だった。

 

 こいしは俺の手を取ると、ぐいっと引っ張りながら言う。

「部屋に行ってまた遊ぼう!」

 ……こいしの世話係役はまだまだ続きそうだ。




いかがでしたか?
炒飯ってうまく作るのそれなりに難しいらしいですよね。
私は作ったことありませんが。たまには自炊もしてみたいです。
次回もよろしくお願いします。

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