妥協の産物がまた一つ……クソ作者の本領発揮だな!
はっ、とする。
不意に、友人二人の事を思い出す。
戦いに集中しすぎて、視界――というか意識の中からすっぽり抜け落ちていたが、もともと俺は彼らを救う為にここに来ていたのだ。
巻き込まれて何か怪我をしてないかとか、途中で催眠状態が解けていたら説明が面倒だなとか、しかしちゃんと解けるのだろうかとか、催眠状態の後遺症とか残らないかとか、いろいろと心配事が出て来たが――。
まあ特に怪我をしてたりする事も無く、催眠状態が解ける事も無く依然として忘我のまま、棒立ちを続けていた。
後遺症などは流石に判断が付かないが、しかしついさっき指示を出していた者が消えたのだから問題ない、と思う。
催眠状態である事を利用して、二人に帰宅するように言う。また明日、学校で会おうぜ、と。
バイサーと同じ事をやっているという事に最低な気分になるが、こんな場所の記憶があるよりはましなはずだ。
幸運なことに二人は素直に帰って行ってくれた。
はぐれ悪魔バイサーの消滅した後の事だった。
「……ふうっ」
元浜と松田の二人が廃屋から出て行ってしばらく。
昂った精神が少しだけ、落ち着いた。
必要以上の力が込められた右手をリラックスさせ、そこに握られた十字槌をだらりと下ろす。
マラソンを走り抜けた直後のような、今すぐにでも座り込んでしまいたいくらいのとてつもない疲労感がこの身体を襲っていた。
力の抜けて位置の下がった十字槌の四角いヘッド部分が綺麗な白い石の床をガツ、と削った瞬間。
「おわっ!?」
そこには音も無く椅子が出来ていた。
それは高級感溢れる白い椅子。
背中を預けるのに十分な、というよりも過剰に大きい背もたれもあり、一見玉座のようにも見えて威圧感すら感じるが。
見る限り材料は床の石と同質――というかまるっきり同一の物に見える。椅子の周りの床が大きく凹んでいるあたり、間違い無さそうだ。
「……なるほどな、そういうことか。この、十字槌の能力は――」
そう、間違いない。
――打ち付けた物質の変化、構造と造形の改変。
バイサーの槍の時ももしかしてとは思ったが、他に誰もいないこの場でこんな現象が起これば、信じざるを得ない。
「武器がひとりでに動いて自分を貫く……そんな事には何の意味も無い、不利益だけだ。なら、それが反対にメリットになる、俺の神器が引き起こしたって考えるのが自然だ」
いや、まあ槍がうねうね蠢くとか自然さの欠片も無いけど。
呟きながら十字槌で椅子をコツリと叩く。脳裏に浮かべる物は十字架だ。
すると椅子は火が通る前のパン生地のように形を失い、同じ大きさの十字架に変貌する。
純白の十字架のオブジェクトはシンプルながら荘厳な雰囲気を醸し出しており、売り物にもなりそうに見えるが――。
「まあ、売る相手もいないし、な」
鋳造されたかのようにつるりとした表面は削り出されて作られた事を感じさせず、磨き上げられる工程を想起させる事も無く、醸し出す雰囲気には若干の違和感がある。こういう所から神器の存在がバレるのだろうか。
十字槌でオブジェクトを撫でるように叩き、床の厚みに還元する。
「椅子が出来たのは多分、俺が疲れて座りたかったからで――明確なイメージが無くても神器の方で補完してくれるのか? じゃあバイサーの槍については自衛本能と殺意が合わさった結果とかかな……、ある程度の時間差か遠隔操作も出来るっぽい……?」
神器の考察を続けていると己の思考の揺れにでも反応したのか、オブジェクトを還元した床がぐらぐらと波打っている事に気付く。
こんなことも起こるのか、と少し驚きながら、落ち着け。と呟き、波打つ床が落ち着くのを確認する。
――十字槌を見つめる。
「…………。」
十字槌が光に包まれる――否、包まれていくのではない、変換されているのだ。
白銀の十字槌が端から解けるように光へ変わり鱗粉のように散って、それを言外に裏付けるように手の中の重みが減少していく。
「――――。」
終い。
十字槌の最後、手の中に残った物は、バイサーとの戦いで頚から引きちぎった物。
つい一昨日のこと、アーシア•アルジェントから受け取った十字架のペンダントトップだった。
「また……助けられたのか」
屋内故の制限された光源の光を白銀に弾くそれを、強く、握り締める。
―――
「お前はロリババアが好きで、俺はのじゃロリが好き! そこになんの違いもありゃしねぇだろうが!」
「違うのだ! 年齢的に!」
「ははは、ちなみに俺は実のところロリ属性無いんだ。時代はおっぱい、豊かな山脈よ」
翌日、ロリコン(元浜)の言を躱しつつ。あとエロ坊主(松田)の事も流しつつ。
見る限り、謎の筋肉痛に苦しんでいる事以外に二人の様子に変わりは無く。前日の記憶は無いようで、特に心配は要らないだろう。
というかこの世界にキン肉マンなんて無いはずなのだが。オリジナルか。
ともかく、今気にするべきは二人の事ではなく、もっと別の事だ。
「……なんか、ピリピリしてね?」
「なにがだよ? 静電気とかか?」
「学校の雰囲気がだよ。なんか緊張感があるっていうか、背筋が冷たくなるような」
それは学校の異変だった。
空気が張りつめて一触即発、今にも弾け飛んでしまいそう――という訳ではないが、例えば視界の隅、例えば物陰にでも怪物が息を潜めていそうな、ホラーゲームのダンジョンのような物々しさ。
しかし実際には別に、クラスメイト達は特に何も感じていないようで、いつもの喧噪を繰り広げており、様子に変化は見られない。
故に。
「おう、今日も今日とて中二病に翳りは見えない――というか磨きがかかっているな。今回はどんな陰謀が待ち受けているんだ?」
「おら、早くその右目に隠された魔眼の力で謎を暴くんだよ! イッセー君のー、ちょっといいトコ見てみたいー!」
「話した俺が馬鹿だったよ!」
ご覧の有様だった。
友人二人のバカ騒ぎに、もしかしてこれは気のせいなのではないかとも思えてくるが――しかし楽観は出来ない。
つい先日死線をくぐり抜け、更にその二日前には文字通り死の淵に立ったばかりなのだ。もしかしたら何か、神器と共に危機を直感的に感じ取る力でも目覚めた可能性がないとは言い切れない。いや、むしろあるべきだ。
もともとこのバトルファンタジー世界では「敵の殺気を読んで攻撃をかわす」みたいな意味不明な芸当をさも当然の権利のように戦術に組み込む強者が腐るほどいるはずなのだからして、謎の神器を宿すこの俺にそんな第六感スキルが目覚めない訳が無い。
(――というか、今のうちにその手のスキルに目覚めておかないとこの先生きのこれないんだよな)
なので。俺はこの異変、謎の気配について自分の感覚を全面的に信じる事にする。
(それに……心当たりがないってわけでもない)
というか、本来平和なはずの駒王学園でこんな緊張感を感じるならば、原因は一つしか無い。
(悪魔、だな)
もともと駒王学園というのは悪魔に深い関わりを持つ組織だ。
所有権が悪魔の名門であるグレモリー家の下にあるし、学園のトップもほとんどが悪魔の関係者によって占められているらしい。俺の知る限り原作に於いてはノータッチだったが、もしかしたら教師の何人かは悪魔が務めている可能性もある。
そしてもう一つ。つい先日、俺が倒し――殺した、はぐれ悪魔バイサーの事だ。
バイサーは原作では悪魔の大公から依頼を受けた悪魔リアス•グレモリーとその眷属によって討ち倒されている。
――そう、大公からの依頼によってだ。
悪魔の大公がいつグレモリーに連絡を出したのかは定かではないし、まだ出していない可能性も否定出来ないが、出したという前提で考察すれば筋は通る。
おおまかな流れはこうだ。
――大公から依頼を受けたリアス•グレモリーは早速はぐれ悪魔バイサーを狩りに向かう。
――バイサーの居ると思しき場所に到着するグレモリー一行であったが、時既に遅し。俺が先に殺してしまった為、残るは凄惨な戦闘痕のみであった。
――バイサーははぐれ悪魔だ。はぐれ悪魔とは前提として己を転生させた主を殺す、もしくは主から逃げ果せるだけの力を持ち、決して雑魚ではない。
――そんなバイサーを殺しうる存在が駒王町に隠れている事を悟ったグレモリー一行は、これからの日常で警戒を強め、排除――少なくとも正体を突き止める事を誓うのだった。
――と、こんなところか。
おそらく、もしその正体が兵藤一誠であると既にバレているのであれば、遅くとも放課後には俺に接触してくるはずだ。
ちょっと、考えてみた方が良いかもしれない。
―――
そして、放課後。
「……拍子抜け、だな」
一人、帰路に着き、路を歩きながら呟いた。
結局、悪魔は来なかった。
昼休みには焼きそばパンを齧りながら警戒し、授業と授業の合間にも教室のドアをチラチラ見ながらいつ来ても取り乱さないよう心を整えていた。
それでも悪魔は来なかった。
金髪イケメンも、白髪マスコットも、黒髪と赤髪の学園二大お姉様も。――だれ一人として、来る事はなかったです。(オフ会0感)
――まるで自分が自意識過剰野郎みたいじゃないか!
「いや、まあ。いくら優秀だったとしても流石に一日かからずってのは無理ゲーだよな」
それに、よくよく考えてみれば悪魔サイドには俺に関する情報がこれっぽっちも無いはずなのだ。
まず、はぐれ悪魔バイサーの死体が無い事。
実際に殺した実行犯である俺だからこそバイサーが死んだ事を知っているが、行方知れずの者は通常、死体が無ければまずそれは失踪事件として扱われるのだ。
そうでなくとも、ただでさえバイサーは「はぐれ悪魔」なのだ。悪魔の社会に於ける「人権」のようなもの――すくなくとも生命が生命を尊重するという、最低限の倫理の対象範囲外に位置し、それこそ野犬害獣と同等の扱いを受ける、冥界にあって最底辺の存在だ。
数多くの人外に狙われ、見つかり次第殺処分とされ、駆除のために依頼まで出される程に忌み嫌われる命だ。生存の為に居場所を頻繁に変え、西へ東へと寝る間も惜しんで逃亡を続けていたに違いない。
たとえば、そう。
――バイサーは、グレモリーの管理する駒王町で一心地着いた所でたらふく腹ごしらえし、「食べ物」から足が付く事を警戒してすぐに去っていった。
と、そういう風には考えられないだろうか?
ただでさえ俺の神器がバイサーの死体を灰も残さず灼き尽くしてしまったのだ。おまけにその時の俺の武器は鈍器だったため、辺りにバイサーの血液を撒き散らした訳でもない。どこかに有ったかもしれない血痕からDNAでも採取して、痕跡を確かめる事も出来ない。
そう、バイサーと戦った――打ち負かした者の痕跡など、残っている訳が無いのだ。
戦闘痕だってバイサーが一人で勝手に暴れただけとか、そういう考え方も出来るし。
「……そう考えると、むしろ怖がってんのがバカらしくなるな」
発想の転換により、気持ちが落ち着いていく。
結局の所、恐れようが勇もうが結果は変わらないのだから、今の感情には何の意味も無い。
ならば、無駄な思案に時間を取るよりも、せめて最悪の場合に備えるべきだ。
そう思い至ったところで自宅、兵藤家に到着し――通り過ぎる。
通り過ぎて、加速する。
「学校からも遠くなったし、そろそろあっためていくか」
足取りが軽くなった、という訳ではない。
むしろその逆、先に比べて歩みは重くなっている。
正確には馬力が増したのだ。
胸の中心部の最奥、ともすれば背中を突き抜けてしまうのではないかと思えてしまいそうな程に深く遠い。感覚の上ではそのように感じる一点から、湧き起こる活力を肉体に満たす。
荒々しい熱量を吹き込まれた筋繊維は強靭に稼働し――危うく自身の肉体を吹き飛ばしてしまいそうになる。これでは先日のバイサー戦の再現だ。
「っとと……」
そうなっては悪目立ちが過ぎる。事件になってネットの海で人気者になるのはご免被りたい。
慌てて全身から力を抜き、体の跳ね上がりを抑えにかかる。
結果としてグラリ、と体勢を崩し、危うく転倒しかけるが、辛くもバランスを持ち直した。
――脚の運ぶペースを早める。
たんっ、たんっ、たんっ、と。図らずも常よりも比較的長いストライドで走る俺は、まるでランナーになった気分だった。
主観としてはジョギング程度の意識だったのだが、しかし客観視すればランニングに見えるだろう。――自分の力を制御出来ていないのだ。
跳ねるように……と言うと誇張が大きいが。それでも反発係数の高い、スーパーボールが弾むように。風を斬って進みゆく。
……曲がり角には気をつけた方が良いかもしれない。
―――
走って、走って、走って――活力込みの脚力に少しだけ慣れて来た頃。
立ち止まる。
地面はアスファルトから土へ、周囲の物はコンクリートの建物から木々へと姿を変えていた。
むき出しの自然がある。
辺りに人気は無い。
ここは、原作二巻でグレモリー眷属一行がライザー•フェニックスとのレーティングゲームに向けた特訓の場、その拠点となるグレモリー家所有の別荘――があると思しき、山の中。
「疲れは……あんまりないな」
立ち止まった俺がまず始めにした事は、コンディションのチェックだった。
両手両足をぷらぷらと振るい、四肢に違和感の無い事を確認する。
これまた主観ではあるが、異常は特に無し。むしろ良好である。
――が。不調、という訳ではないものの、奇妙な感覚を覚えていた。
まるで生まれ変わったかのような清々しさ。
己の中に有る力を僅かにでも解放できる高揚感。
今なら自分に出来ない事など何も無い、という全能感を確信しながら、それをどこか遠い所から眺めているような、人ごとのような現実感の無さ。
自分を「力に溺れない冷静な男」と取るべきか、「降って湧いた幸運に喜べない冷めた男」と見るべきか、悩みどころである。
「まあ、どっちでも良いか」
何にせよ、気分が乗っているのは確かなのだから悪い事は有るまい。
目的は修練。目標は最低限、自分の持つ力に慣れる事。
好きこそ物の上手なれとも言うし、集中力の有るうちにものにしてしまいたいところだ。
力の総体、はたして俺のような若造に見極められるか……まずは武器の出し方からだな。
―――
窓の無い一本道があった。
意図的なまでに明かりの欠如した空間だった。
そこは地下。
もはや人も神も絶えて久しい、埃の積もって寂れた教会の隠し階段の更に奥。
ほんの僅かなロウソクで作られた、刻むような闇で彩られた通路には、小柄な少女が歩いていた。
コツ、コツ、と足音を立てる、ゴシックロリータ風の装いをした少女の向かう先には通路よりも光源の多い広まった空間があり、通路に仄かな光を差し込んでいた。
「……ミッテルトか」
低い声が掛かる。
広まった空間――祭壇の設けられた広間に入り、少女の視界の明度がガラリと変わった瞬間の事だった。
「レイナーレの行方が分かったってのは本当っすか。――ドーナシーク」
「…………」
返す言葉は返事ではなく。
ミッテルトと呼ばれた金髪の少女の、暗い声音の無愛想な言葉に、紺色のコートを着た男性――ドーナシークは答えなかった。
通路から入って来たミッテルトを迎えるような形で設置されている祭壇の方を向いたまま――つまりミッテルトに背を向けたまま。
振り向く事無く。
まるで何かを躊躇うように。
「ドーナシーク……?」
「……ああ。レイナーレの行方は分かった」
そう言って振り返るドーナシーク。
ようやく見えた表情は何か堪えるような――その時、ミッテルトはドーナシークの手に何かが有る事に気付く。
それは広間の薄暗さに紛れるような黒。指と指の間に挟むような持ち方はその何かが軽量であることを推測させ。そのシルエットはミッテルトら、堕天使にとって否応なしの不吉をイメージさせる。
「レイナーレは――――もう居ない。どこにもな」
今際の羽。
堕天使がその命を散らす時、その末期に残す羽の事だ。
堕天使はその種族に共通する特性として、個々人の羽を完全に見分けるという共感覚とでも言うべき能力が備わっていた。
ドーナシークの持つそれはあまりにもボロボロで、全体が黒く焼け焦げており、先端から根への半ばまでは炭化すらしているという有様だったが――それでも、ミッテルトはその正体を見抜いた。
見抜いて、――――拒絶した。
「嘘っ…………っすよね」
「これが嘘に見えるなら。俺はお前の正気を疑うぞ、ミッテルト」
しかし、ドーナシークはその欺瞞を許さない。
「十中八九、殺ったのは悪魔共だろう。この土地に居るのはグレモリーにシトリー……両方とも現魔王の妹だ、勝ち目は無い」
「嘘っすよ!」
だが、ミッテルトとて、突っ張ることをやめなかった。
ミッテルトにとって、レイナーレはただの仲間ではない。
互いに下級の堕天使として生きて来た者同士、長く苦楽を共に、多くの死線を共に越えた仲だ。
仲間というよりは家族、戦友というよりも姉妹と言うべき仲だ。
命を共有したことも一度や二度ではない、文字通りの運命共同体。相手の死ぬ時は自分の死ぬ時と思っていた。
だから、レイナーレの死は、まさしく半身をもがれたようで――。
「だってそんなの、うちらは百も承知の筈だったじゃないっすか! 確かに、あいつら上級悪魔にはうちらみたいな下級堕天使如きじゃ勝てないっすよ! でも――」
「上級悪魔といえど、所詮は平和ボケした貴族のお嬢様。我ら堕天使が本気で気配を隠せば感付かれる等あり得ない、か?」
「……そーっすよ」
「なるほど、その通りだ。グレモリーもシトリーも家柄は大層な物だが、しかし実戦経験には乏しい。――ならばこの羽はどう説明する?」
「…………」
言葉を失う。
ドーナシークの説明は最終的なもので、まず結果ありきでのものだ。
まず証拠があり、まず事実があり――感情、希望、楽観に浸った論では相対もできずにくじけてしまう。
「レイナーレは死んだ。これは事実だ、覆せない。その上で聞こう。お前はこれからどうするつもりだ?」
「どうするって……」
「仇討ちに向かって無駄死にするか? 虫のように隠れ潜むか? 尻尾を巻いて逃げ去るか? 我々のこの行動は非公式なうえ非公認だ。援軍は望めんし、手駒のはぐれエクソシスト共は小粒で使い物にならん」
しかし、ここでミッテルトは違和感を覚える。
発言に妙な迂遠さを感じる。
問題の提起というよりはむしろ行動の抑止のようで、核心を突くための前振りのようなものか。
しかし、ミッテルトの知るドーナシークは、このように遠回しな物言いをしただろうか――?
「何が言いたいんすか」
「禍の団というものを知っているか?」