やはり俺がチート部隊の隊長をするのは間違っている 作:サラリーマン
翌日の放課後になり、那須の指導と防衛任務のためにボーダー本部に行こうとすると予想していた通り平塚先生に呼び止められた。
平塚 「おい比企谷どこへ行く」
八幡 「どこって帰るんですよ。バイトありますし」
平塚 「昨日奉仕部に入れと言ったはずだが」
八幡 「それ断りましたよね」
平塚 「異論反論抗議口答えは認めんと言ったはずだぞ。三年で卒業できなくてもいいのか」
八幡 「いくら生徒指導の先生とはいえ、たかが一先生が出席日数も足りてて問題を起こしてもいない生徒を卒業させないとかできると思っているんですか?」
平塚 「グっ…」
平塚先生が黙る。
八幡 「理解してもらえたようで何よりです。では俺はこれで。最後に一つ、俺にかまう暇があるなら男でも探した方がいいですよ」
最後に余計は一言を加え、俺は先生に背を向け歩き出す。こうすることでほぼ確実に先生は俺を殴ってだろう。きっとおそらく十中八九。俺を殴ったことを盾にすればこれ以上先生が俺に必要以上にかかわることもしなくなり、めぐりさんや陽乃さんの手を煩わせなくて済む。これが俺の考えた作戦だ。
平塚 「衝撃のォォォォファーストブリッドォォォォ!!」
その声が聞こえた瞬間振り返りつつ、腕を胸の前でクロスさせわざとあたり吹っ飛ぶ。もちろんパンチが当たる瞬間に少し後ろに飛んでダメージを軽減させることも忘れない。吹っ飛ばされた俺はすぐに立ち上がり先生に近づく。
八幡 「昨日に比べてずいぶんと速くて重いパンチになりましたね。これが一晩の修行の成果ってやつですか。それともまさか精神と時の部屋にでも?そんなことどうでもいいですね。材木座!!」
隠れている材木座を呼び出す。そう俺が昨日めぐりさんの後に電話していた人物はこいつなのだ。そしてこいつはボーダーのエンジニアでエンジニアの次期エースと呼ばれている。
八幡 「見せてくれ」
俺は材木座が持っていたスマホを受け取り、画面に表示されている動画を見る。
八幡 「材木座ばっちりだ。それ俺に送ったら消していいぞ」
材木座 「おう。」
八幡 「さて平塚先生、今俺の手元には先生が俺を殴ったシーンの動画があります。これを俺が偉い人に見せたら先生はどうなるでしょうかねぇ~。そんなわけでこれを公開されたくなければ俺に必要以上にかかわらないでください。別に全くかかわるなと言ってるわけじゃないです。授業で俺だけかけられないとか目立つだけですからね。ただ授業以外で俺にかかわるなってことです。それじゃあ、今度こそ失礼します」
これでまた俺にかかわってくるならもうただの馬鹿としか言いようがない。それから俺が歩き出すと俺についてくるやつがいた。
八幡 「何でついてくる材木座。ってかお前まだいたのか」
材木座 「ひどいではないか八幡!!我とお主の——
八幡 「本題を言え。」
俺は少し殺気を込めながら言った。
材木座 「わかったわかったから八幡!殺気を出すでない。陽乃殿に伝えてくれ『頼まれていたものができた。金土日のどれかに来てくれるとありがたい』とな。」
八幡 「それを陽乃さんに伝えればいいんだな。用がそれだけならもう行く。じゃあな材木座。今日は助かった」
材木座 「さらばだ。八幡」
そして俺は材木座と別れてボーダー本部に向かった。
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平塚先生との一件から数日後の金曜日、俺がいつも通りベストプレイスでメシを食っていると背後から、足音が聞こえた。ボーダー隊員でも学校ではよほどの用がない限り話しかけるなと言ってあるので、俺に用事があるやつではないのだろう。そんなわけで俺は気にせずに飯を食う。すると
??? 「ヒッキー!…おーいヒッキー!…ヒッキー?」
声を聞く限りさっきここにやってきたのは女子のようだ。さっさと反応してやれよ引きこもり君。うるさかったので少しにらんで静かにさせようと思ってそいつの顔を見ると、そいつもこちらを見ていて目が合った。
??? 「やっと反応してくれた。なんで無視したし!」
八幡 「いや俺じゃないと思ったんで。それよりお前誰。」
??? 「信じらんない!同じクラスじゃん!由比ヶ浜結衣しっかり覚えてよ!」
八幡 「気が向いたらな。それでなんか用か」
由比ヶ浜 「あの…えーと…これ!お礼だから!」
そういって由比ヶ浜は俺に袋を投げてすぐに走って行ってしまった。由比ヶ浜に渡された袋の中身を見ると
八幡 「なにこれ」
木炭が入っていた。
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由比ヶ浜から木炭?をもらった日の放課後、俺は比企谷隊の隊室で勉強をしている。ここには楓子さんと謡もいて俺と同じように勉強に取り組んでいる。陽乃さんは材木座のところに新トリガーを取りに行っている。めぐりさんは生徒会の仕事があるらしく今日は来ていない。なぜ俺がここで勉強しているのかというとここなら基本的に陽乃さんか楓子さんかめぐりさんがいるのでわからないところは教えてもらえるのだ。さらにこのメンバーでチームを組んでからはテスト前には誰かしらが要点を絞って教えてくれるので常に学年で五番以内に入ることができている。過去の最高順位は二位。ちなみに一位は奈良坂だ。あいつは高校に入ってから誰にも一位を譲ったことがない。あの時は雪ノ下に勝って二位になっても何も思わなかったが今になってみると…何も思わねえな。もう関わらんし。まあいいや。
それからしばらくして俺の宿題が終わると同時にタイミングを見計らっていたように陽乃さんが隊室に入ってきた。
陽乃 「やっほー!みんなお疲れ!八幡今時間ある?」
八幡 「ちょうど宿題が終わったんで大丈夫です。新しいトリガーですか?」
陽乃 「うん!さすが材木座君だよね。エンジニアの次期エースと呼ばれていることはあるよ!」
八幡 「そんなにすごいんですか。楽しみです」
陽乃 「期待してていいよ。楓子訓練室お願い!」
楓子 「了解です」
謡 「陽姉、私も見てていいですか?」
陽乃 「もちろん!よしじゃあやるよ八幡!」
八幡 「わかりました」
それから俺と陽乃さんは訓練室へ転送された
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俺と陽乃さんは訓練室の中で向かい合っている。
陽乃 「とりあえず一本目は何もしないでただ受けてね。二本目以降は戦いながらって感じかな」
八幡 「二本目以降は俺も仕掛けていいんですよね」
陽乃 「もちろん!ぞれじゃあ行くよ。スターバーストストリーム♪」
陽乃さんがそうつぶやいたら、気づいた時には俺の体は切り刻まれていた。
八幡 「は!?」
すぐに俺の戦闘体が再換装される。
八幡 「陽乃さん今のって」
陽乃 「この前八幡が読んでた本の技を再現してみました!なかなか再現度高いと思わない?」
二刀流ソードスキル、スターバーストストリーム。某デスゲームの中で黒の剣士の使っていたソードスキル。確か16連撃だったはずだが、一瞬すぎて何回剣を受けたかがわからない
八幡 「すごいですね…。それってどういう仕組みでそんな速く動けてるんですか?」
陽乃 「原理的にはあらかじめ動き方をプログラムその動きを再現してる感じかな。だから早く動けてもプログラムに沿ってしか動けないから技を途中で止めることはできないみたい」
八幡 「そうなんですか。二本目やりましょう。」
陽乃 「そうだね。行くよ」
それから何回か剣を打ち合わせていく。陽乃さんは俺の体勢が崩れた時にソードスキルを使ってきた。俺は今回もよけようとはしなかった。しかし俺は
八幡 「バーストリンク」
俺のサイドエフェクトの能力である加速を使ってソードスキルを発動してから16連撃終わるまでの時間を確認してみる。すると俺が加速してから約50秒で八太刀受け、そこで戦闘体が破壊された。つまり現実時間で八太刀で約0.05秒。なので16連撃が終わる時間は約0.1秒ということになる。0.1秒で16太刀。無理だ。防げる気がしねえ。となるとよけられるかだな。それができないとマジ詰む。
八幡 「三本目やりましょう。」
陽乃 「なんか攻略法でも見つかった?」
八幡 「そうですね。これがだめだったらもうなんも思いつかない程度の策ですけどね」
陽乃 「そうなんだ。じゃあやろうか」
今回も二本目と同じように何度か剣を打ち合わせ俺の体勢が崩れた時にソードスキルを使ってきた。俺は陽乃さんの声が聞こえた瞬間にグラスホッパーを使い強引にその場から離れる。なんとか左腕を犠牲にしただけでベイルアウトせずに済んだ。すぐさま反撃しようと陽乃さんの方を見ると動かずにその場で固まっていた。あ~これはアレだな。スキル後硬直。原作と同じようにスキルを使った後は動けないらしい。念のためその場からバイパーを打ち込みベイルアウトさせる。すぐに陽乃さんの戦闘体が換装され、俺の戦闘体も換装される。
八幡 「やっぱり原作と同じようにスキル使った後は動けないようですね」
陽乃 「うん。無理やり体を動かすからどうしても使った後は動けなくなるみたい。一対一ならいいけどチーム戦だとフォローがないと使えないかな。それよりあんな回避方法があったんだね!」
八幡 「テレポーターでもあれば無傷で回避できると思うんすけど、グラスホッパーだとあれが限界だと思います。あとソードスキルってそれしかないっすか?突進系のがあればもっと便利だと思うんすけど」
陽乃 「そうだね。これから材木座君とこ戻って頼んでみるよ。あと硬直時間ももっと短くできないかも。」
そして楓子さんに訓練室の解除をしてもらい陽乃さんはまた出て行った。なんとなく物足りなかった俺は見ていてうずうずしていたのか楓子さんと謡の三人でランク戦ブースに足を向けるのだった。
それからいい時間になったので三人で隊室に戻り帰る準備をする。
謡 「八兄、ランク戦に行く前から気になっていたのですがそのかばんの中に入っている袋は何が入っているんですか?」
八幡 「木炭だ。」
謡 「木炭?なんでそんなものがカバンの中に?」
八幡 「今日な、女子にお礼だとか言ってもらったんだ。これ渡されてすぐに走ってどっか言ったから何のお礼かわかんねえけど」
楓子 「お礼に木炭ですか…もしかしてそれってクッキーなんじゃ」
八幡 「クッキーですか…」
楓子 「ええ。常識的に考えてお礼に渡すと言われたらクッキーが普通じゃありませんか」
八幡 「まあそうですけど」
謡 「だとしたらハチ兄。食べないとなのです」
楓子 「そうですね。せっかくその人がハチさんに感謝を伝えたいと思って作ったんですから、食べないと失礼ですよ」
八幡 「いやこれ食べたら俺は死ぬと思うんすけど」
楓子 「大丈夫です。死んだら骨は拾います。」
謡 「なのです!それに加古さんの外れチャーハンと同等のものがこの世にあるとは思えないのです!」
確かに加古さんの外れチャーハンと同じものが何個もあるとか考えたくないな。それから覚悟を決めた。
八幡 「死んだらあとはお願いします」
クッキー?を口に入れ、ゆっくりと咀嚼する。そして飲み込む。そして俺の意識は暗転した。