やはり俺がチート部隊の隊長をするのは間違っている   作:サラリーマン

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なんか違うな


原作突入4

ある日それは唐突に起きた。

 

『緊急警報 緊急警報 門が市街地に発生します。市民の皆様は直ちに避難してください。繰り返します。市民の皆様は直ちに避難してください。』

 

突如として学校に響いたサイレン。とある少女は手に持っていたロッカーから取り出したばかりの次の教科の教科書をその場に投げ捨て、二つ隣の教室に向かう。

 

「スグちゃん!」

「小町ちゃん!」

 

二つ隣の教室にいるのは小町と前は同じクラスだった直葉。この学校の二人しかいないB級隊員の一人だ。そしてもう一人は…

 

「B級に上がったって聞いたけど本当なの小町ちゃん!?」

 

そう小町だ。と言っても二日前に上がったばかりで実戦経験など彼女にはない。

 

「うん。けど数日前に上がったばかりで実戦経験がないよ」

「そっか。なら小町ちゃんは先生たちと協力して生徒の避難誘導をお願い。」

「うん。」

「それじゃあ行こう!トリガーオン」

 

直葉の体がトリオン体に切り替わる。

 

「トリガーオン」

 

小町もトリオン体になり、直葉とは別れて行動する。直葉は校舎内に侵入してきたトリオン兵の排除を、小町は校庭に出て先生の手伝いを。学校に出てきたトリオン兵は三体。その三体とも避難が進んでいない南館の方に足を向けていた。しかしそのうちの一匹が避難している生徒の方に向かってくる。

 

「えっとこれは小町が対応するパターン?」

 

誰にも聞こえないように小町がそうつぶやく。小町は校舎の方に目を向け、直葉が二匹を相手に戦っているのを確認する。それを見て小町も覚悟を決める。

 

「この一体は小町が倒す。」

 

覚悟を言葉にして口にする。そして八幡からフランたちと買い物に行った後、家に帰ってからトリガーセット以外に言われたことを思い出す。

 

『トリオン兵の動きは不規則のようだが、実際はただプログラムに沿って動いているだけだ。』

『射手の仕事は味方に取らせることだ。仲間が取りやすいように常に考えて、相手を動かせ。』

 

それを頭で反芻しながら考える。小町の今のトリガーセットはC級からいつも使っていたハウンドにアステロイド、シールドだけだ。

 

(この手持ちで時間を稼ぐ!)

 

小町のこの考えは正しい。まだ実戦を経験したこともない少女がベテランのバックアップなしで一人でネイバーと戦うことは難しい。こんなイレギュラーな状況なのだ。彼女が一人でネイバーを倒せる実力があってもイレギュラーな状況、初の実戦の緊張で本来の実力は出せないだろう。

だからこそベテランである直葉の到着まで時間を稼ぐというのは正しい選択なのだ。さっきつぶやきは一人で戦う覚悟を決めるため。

そうして彼女の戦いが始まる。

 

***

 

ある程度経験を積んだ射手であれば本職のアタッカーには負けるもののそれなりの近接戦闘ができるが、B級上がりたての射手である小町には近接戦闘の技術はない。

したがってモールモッドに対して接近をさせずに遠距離から時間を稼ぐ。まずはハウンドを目の周りに撃ちかく乱をする。

そしてターゲットが自身に移ったことを確認すると、逃走を開始する。少しずつ移動しながらハウンドを放つ。速度重視にしてあるためダメージはほぼ通っていないが、タゲをとり続けることには成功している。

そして彼女の耳に待ち望んでいた通信が入った。

 

『小町ちゃんこっちは終わったよ!すぐに救援に行くね』

 

その言葉を聞いた瞬間小町の緊張の糸は切れた。切れてしまった。

初めての実戦を一人で戦う。そのプレッシャーの中で救援が来る。誰だって安心するだろう。しかしまだ安心してはいけなかった。

 

「え?」

 

小町は緊張の糸が切れたせいで足元の確認を怠った。

足元には小さなへこみが。小町とモールモッドの戦闘でできた小さなへこみだった。小町はそこに躓いた。

そして顔前には鎌を振り上げ小町の命を絶とうとするモールモッドがいる。

 

(あちゃーこれはもうダメかな)

 

小町は目を閉じて襲ってくるはずの衝撃に身をゆだねようとした。が、少年の叫び声によって小町は目を閉じることをしなかった。

 

「うわあああああああああ!!」

 

その少年は振り下ろされている鎌と小町の間に入ると、小町を守るように手に持っていたもの縦のように振り下ろされている鎌にかまえた。

 

(あれは三雲君?それにあの恰好…三雲君ってC級隊員だったんだ)

 

場違いにも小町はそんなことを考えた。間に入った少年―三雲 修は手に持っていた武器―レイガストをモールモッドにかまえたが、三雲の弱いトリオン、しかも訓練用のトリガーでモールモッドの鎌を防げるわけもなく、三雲は片腕を切り落とされた。(運よくトリオン体は破壊されなかった。)

モールモッドがまた鎌を振り上げる。三雲は片手がなくて戦えない。小町はまだ体勢が整えきれてなくて戦えない。しかし、今度こそ小町は安心していた。

 

「ゼェアアアアアア!」

 

直葉が弧月を一閃。まずは鎌を切り落とすと返す刀で目を切り裂いた。

 

「大丈夫?小町ちゃん。あと、えっと…」

「三雲、三雲修だ。よろしく桐ケ谷さん」

「あたしのことは知ってるんだ」

「そりゃあそうだよスグちゃん。ボーダー隊員で剣道部のエースだよ?知らない方がおかしいって」

 

直葉はボーダー隊員にしては珍しく部活をしている。ボーダーの活動で出れることは普通よりも少ないがそれでも参加できるときは参加し、この前の大会ではベスト8まで進んでいた。

 

「それよりもその恰好。三雲君ってC級だよね?基地の外でトリガー使ったら隊務規定違反になっちゃうよ!」

「そうだよ!それにB級以上のトリガーにはベイルアウトの機能がついているからあそこで三雲君が間に入らなくても本部に飛ばされるだけだったんだよ!それなのに無茶して!」

 

二人に詰め寄られタジタジになる三雲。

 

「それでも、それでも僕がそうするべきだって思ったから」

「……なんか主人公みたい」

 

原作主人公に向けてそんな言葉を放つ小町。と、そこにもう一人の原作主人公が来た。

 

「お、いたいた。ヒキガヤとキリガヤ、先生が呼んでいたぞ。一段落したら知らせてほしいって」

「ありがとう空閑君。行こスグちゃん」

 

そう言って小町と直葉は去っていった。そしてその場に残った原作主人公たち。

 

「だから言っただろオサム。近くにキリガヤが来てたんだからお前が行く必要はないって。」

「それでも僕はそうするべきだと思ったんだ。それに僕が行かなきゃ比企谷さんはトリオン兵に殺されていたかもしれないだろ」

「いやそれはないだろう」

「……!?」

 

唐突に発された知らない声に三雲は驚いた

 

「しゃ……しゃべった!?なんだそいつは!!」

「珍しいなレプリカ。おれ以外としゃべるとか」

「うむ。初めましてオサム。私の名前はレプリカ。ユーマのお目付け役だ。」

「お目付け役……!?」

「以後よろしく。それでさっきの話なのだが、玄界には緊急脱出のトリガーがあると聞く。オサムは知らなかったから一部の隊員だけかもしれないが、それを使えばヒキガヤは無傷だったはずだ。」

「緊急脱出……」

 

何度か復唱して心当たりがあったのかはっとなる三雲。

 

「ユーマ、オサムそろそろ戻った方がいいのではないか?あまり遅いようだと心配されるだろう」

「そうだな。いこーぜオサム」

 

そう言い、空閑はさっさと歩いて行く。三雲が空閑に追いつき、二人で校庭に行くとそこにはおそろいの赤いユニフォームの部隊、嵐山隊がいた。

 

「ん?小町ちゃん、彼は?」

「あちゃー」

 

嵐山の視線の先には片腕を失ったままのいまだにトリオン体(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)の三雲がいる。

小町も直葉も当然三雲がトリオン体から生身に戻ってからくると思っていた。

 

「えっと、C級隊員の三雲修です。この格好の方が避難誘導をさせやすいと思ったのでトリガーを使いました」

 

事実、三雲はトリオン体で避難活動を手伝っており、ボーダー隊員と言うことで生徒も安心してスムーズに避難できたいた。

 

「そうだったのか!よくやってくれた!!」

 

怒られると思っていた三雲は嵐山に褒められて驚く。

 

「小町ちゃんや直葉ちゃん、君がいなかったら犠牲者が出ていたかも知れない。それに撃ちの弟と妹もこの学校の生徒なんだ!」

 

そういうと嵐山は避難した生徒の中から自分の弟と妹を見つけると素早く近づき頬ずりをしていた。

しばらくすると満足したのか三雲たちの方に戻る。

 

「嵐山先輩。彼がしたことは隊務規定違反です。違反者をほめるようなことはしないでください」

 

嵐山兄妹の団欒?に水をさしたくなかったのかずっと待っていた木虎が戻ってきたばかりの嵐山に言う。

 

「しかし、三雲君が動かなければ負傷者が出てきたかもしれなかったのは事実なわけだし」

「それは評価に値しますが、ここで彼を許せば他のC級隊員でも同じことをする人が現れます。今回はB級隊員もいて避難誘導だけでしたが、C級隊員だけだった場合、実力不足から深刻なトラブルを引き起こすことは目に見えています。

他のC級隊員に示しをつけるため、ボーダーの規律を守るため、彼は処罰されるべきです」

 

木虎の発言に周りはどよどよする

 

「…なあ何で遅れて来たのにえらそうなの?」

「…だれ?あなた」

「オサムの友達だよ。日本だと誰かを助けるのにも許可がいるのか?」

「…それは個人の自由よ。ただしトリガーを使わないならね。トリガーはボーダーのものなんだから使うにはボーダーの許可が必要。当然でしょ?」

「何言ってんだ?トリガーはもともとネイバーのもんだろ。お前らはいちいちネイバーに許可取って使ってんのか?」

「あ……あなたボーダーの活動を否定する気!?」

 

そこに現場調査を終えた時枝が帰ってくる。

 

「はいはいそこまで。現場調査は終わったから回収班呼んで撤収するよ」

「時枝先輩……!でも」

「木虎の言い分もわかるけど三雲君の処罰を決めるのは上の人だよ。ですよね嵐山さん」

「そうだな充の言うとおりだ。今回のことはうちの隊から報告しておく。三雲君は今日中に本部に出頭するように。処罰が重くならないように力を尽くすよ。」

 

さっきのシスコンブラコンの姿とは打って変わってしっかりとした姿で指示を出す嵐山。

 

「あとは、小町ちゃん、直葉ちゃん。今まで同じ場所で複数回ゲートが開いたって言う報告はないけど警戒はしといてくれ」

「わかりました!」

「よし、木虎、充撤収するぞ」

 

嵐山隊の三人が帰っていくと、避難していた生徒たちも教室に戻され、否定の声は上がったものの最後まで授業をし、その日は放課後を迎えた。

 


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