やはり俺がチート部隊の隊長をするのは間違っている 作:サラリーマン
次はもっと早く出せるように頑張ります
その日、楓子はめぐりと一緒に八幡のベストプレイスで食事をとっていた。
「八幡君まだ起きてこないね」
「そうですね」
八幡は千種隊の防衛任務付き添いの後から三日間眠り続けていた。
「けどほんとに八幡君がディザスターになっちゃったのかな…」
「千種さんのお話を聞いた限りでは、完全ではありませんがユイちゃんの映像で見たディザスターの特徴とそっくりらしいですね…」
その時、二人同時にボーダーから支給されているスマホが鳴る
二人は八幡が起きたのかと思いすぐさま電話に出る。しかし、電話から聞こえてきたのは八幡が起きたということではなかった
『全ボーダー隊員は今すぐに警戒区域に向かってください。繰り返します。全ボーダー隊員は今すぐに警戒区域に向かってください』
「ふうちゃんこれから何にあるのかな」
「わかりませんが嫌な予感がします。急いで向かいましょう」
楓子は職員室に向かい、緊急の任務で総武高の全ボーダー隊員が出動することを伝えると、めぐりとともにボーダー本部に向かった。
***
「迅さんこれはどういうことなんですか」
楓子はめぐりを本部に送った後、謡・陽乃と合流し警戒区域に戻ろうとすると迅と会い、迅と警戒区域に向かう。迅ならば何か知っているであろうと思い、楓子は迅に尋ねる
「これから人型ネイバーが来る未来が見えた。それと一緒に見たこともないトリオン兵が警戒区域全域で戦っている未来が見えた。だからみんなを招集したんだ。」
「そうなんですか…!迅さんあれを!」
楓子の視線の先には一つのゲートがあり、そこから5人の人が出てくる。
「どうやらあいつらが今回の相手みたいだな」
5人の中心にいた錫杖を持った女性がこちらに気付いた
「聞け!玄界の兵よ!我らはレオニーズ!我らの要求はただ一つ。先日こちらに来たはずのディザスターの次の依り代の身柄を渡してもらおう!」
「悪いがそれはできないな。仲間をお前らに渡すわけにはいかない」
「ふっ、いいだろう。お前らが渡さぬというならば力づくで奪うまでだ。絶対に次の依り代は手に入れる。行けドラーク!」
錫杖を持つ女性が投げた卵から生まれたのは龍型の新型のトリオン兵だ。
「私は船に戻り、適当なところにドラークをまく。お前らは好きに暴れていろ」
女性の指示を聞きレオニーズの兵が二人ずつ二手に分かれる。
「俺が金髪の少女と黒髪の少年の方へ行く。楓子さんは新型のドラゴンの方に、陽乃さんと謡ちゃんはもう一つの人型の方に向かってください」
迅の指示に三人は素直に了承する
「「「了解」」」
そうして彼女たちの戦いは始まった。
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リーダーと思われる女性が持っていた卵から出てきたドラークと言う名の新たな龍型のトリオン兵。
先ほどから楓子は距離を取って攻撃を仕掛けているが楓子の攻撃は龍のうろこを貫けないでいた。
(これは硬いというより攻撃そのものが弾かれているといった感じでしょうか)
楓子のその予想は当たっていた。ドラークの鱗には不完全ではあるがトリオンリフレクターが備わっており、普通の遠距離攻撃ではトリオンリフレクターを破れるほどの威力を出せない
(これは時間かかりそうですね…)
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「トリオンメイク槍騎兵(ランス)」
黒髪の少年―グレイはトリオンで作った槍を迅に向けて放つ。迅は余裕をもってそれをよけると風刃の斬撃をグレイに向かって飛ばす。グレイはそれを自分で作ったシールドでガード。その隙に金髪の女性―ルーシィは迅の横に回りその手に持っていて鍵を虚空に突き出しひねると同時に言葉を発する
「開け人馬宮の扉 サジタリウス!」
出てきたのは馬の帽子をかぶった弓を持った一人の男性。予知ですでにこういう未来があると分かっていたとはいえ、目にするとさすがに迅は驚きを隠せなかった。その隙にグレイは次の技を発動する
「トリオンメイク アイスフロア。ルーシィ!」
「うん!サジタリウスお願い!」
グレイがトリオンで氷の床を作って迅の足を止めるとルーシィはサジタリウスに命令を出す。サジタリウスはトリオン体の急所である脳とトリオン伝達器官を狙って弓を射る。
迅はそれを風刃ではじくと足の氷を破壊、それと同時に少し距離を取る。
「なあ、少し話をしないか?」
「話だと」
「ああ。君たちの目的を教えてくれないか」
唐突に迅は二人に話しかけ始める
「あ?ディザスターの次の依り代を手に入れるってあいつが言ってただろうが」
「違う違う。あの女性たちの目的じゃなくて君たち二人の目的だよ。君たちだけはあの連中とこっちに来た目的が違うんだろう?」
「なんでそう思うの?」
「俺のサイドエフェクトがそう言ってる。」
「…グレイ。この人になら話してもいいんじゃない?」
「ルーシィはこいつが信じられるのかよ。こんな胡散臭いやつ」
「確かに胡散臭いだけど…信じてもいいと思う。」
グレイはしばらく考えた後、自分たちの本当の目的を話し始めた
「おい先代のディザスターの依り代だった男は今どうなってる」
「今は本部で安置されているはずだ。」
「俺とルーシィの目的はそいつの遺体を返してもらうだけだ」
「どういう関係だったか聞いてもいいか?」
この質問に答えたのはルーシィだ。
「あたしたちは家族だったんだ。親のいなかったあたしたちをマスターが引き取ってくれてそれからあたしたちは血より濃い絆で結ばれた家族になった。けどあの日あナツはあたしたち家族を守るために禁断だった力に手を染めちゃったの」
「それが≪ザ・ディザスター≫だったってことか。事情は分かった。その件に関しては俺が本部に交渉してなんとかする。その代わりあの新型トリオン兵の弱点みたいなものがあれば教えてくれないか?」
「あいつの鱗にはトリオンリフレクターがあって下手な威力の攻撃では通らないってことは分かってるな?」
「ああ。それをどうすればいいのか知りたい」
「奴の喉元に一点、少しだけ色の違う鱗がある。そこを攻撃すればトリオンリフレクターは消える。」
それを聞くと迅は警戒区域に展開している全ボーダー隊員に通信をつなぎ、弱点について伝える。
「これで良し。それでこれからどうする?本部との交渉はこれが全部終わってからにしてほしいんだが」
「わかってる。どうしよっか、グレイ?」
「あーもしあれだったら協力してくれないか?」
「何に?」
迅はそこで少しためを作り、
「リーダーのあの女性を倒す」
***
『新型トリオン兵、ドラークと言うらしいんだが、そいつの弱点は喉元にある色の違う鱗だ。そこを攻撃すれば攻撃が通るようになる。みんな頼んだぞ』
(そういうことでしたか)
楓子は迅からの通信でドラークの弱点を知るとバイパーで重点的にそこを狙い始める。
尻尾での薙ぎ払いなどで体の向きを頻繁に変えていたのだが、ボーダーの中・遠距離トリガーの上位の使い手である楓子にはそれくらいなんてことはない。
楓子の方に頭が向いた瞬間に喉元にある鱗をピンポイントで打ち抜く。
(これで攻撃は通るはず)
バイパーを展開しドラーク目掛けて放つ。バイパーはドラークの体をいとも簡単に貫いた
(攻撃を反射させるのにトリオンをたくさん使って本体の防御力はないも等しいですね。これなら…)
再びバイパーで攻撃しようとトリオンキューブを楓子は展開したが、そのトリオンキューブは発射されなかった。なぜなら
「やっほー楓子。元気ー?」
「楓ねえお待たせしましたなのです」
二人の人型ネイバーの相手をしていたはずの陽乃と謡が先にドラークにとどめを刺してしまったからだ。
「二人の人型はどうしましたか?」
「ちゃんと倒して捕虜にして本部に引き渡してきたのです」
「それにしても楓子。あの新型を倒すのに時間がかかってたみたいだね」
「初めて見るタイプでしたのでモーションを把握するのに時間がかかりました。けど完璧に把握したのでもう大丈夫ですよ」
「じゃあ楓子を頼りに他のところを救助に行こっか。めぐり、ここから一番近いところで助けが必要そうな部隊がいるところは?」
『えーとですね、今みんながいるところから…みんな近くにゲート発生だよ』
めぐりの新たなゲート発生の報告と同時にさっき聞いた声が聞こえてきた
「なぜこうもたやすくドラークがやられている…まあいい。所詮はただの兵器。やはり最後は我の手でやるしかないようだな。」
女性――コスモスは手に持っていた錫杖を二回鳴らす。
すると、コスモスの周りにゲートが開きそこから二体のドラークが姿を現す。
「また出てきたね。楓子二体だけど頼んだよ。」
「任せてください。」
「それでは行くのです!」
謡は先手必勝とばかりにコスモスに向かい矢を放つ。その矢はコスモスの周囲に当たりコスモスを煙で包み込む。そして陽乃が旋空を放つ。二人はこんな攻撃で倒せたとは思っていない。しかし当たった音はしたので何かしらのダメージは入っていると考え、すぐに追撃しようと陽乃は剣を、謡は弓を構えたが結局、追撃することはなかった
「陽姉、これは…」
「うーん敵のトリガーかな?けどこれは厄介だね。まさかデバフがかけられるなんて(・・・・・・・・・・・・)」
コスモスの持つブラックトリガー≪ザ・テンペスト≫。その能力を一言で言うなら―エンチャント。錫杖の音を聞いたものに様々な効果を付与する。
今使ったのはスロウ。簡単に言えば体の動きが遅くなるということだ。普段ならほとんど効果はないが、こと戦闘においてはすごい効果を発揮する。
***
楓子が体の異常に気付いたのはドラークとの戦闘中だった。ドラークの攻撃のスピードは変わらないのにさっきまで余裕で受けきれたはずの攻撃が急に受けられなくなった。それだけで楓子が異常に気付くのは十分だった。それから致命傷となる攻撃は受けていないが細かな攻撃で大分削られ、あと一発でも攻撃を受けたら即ベイルアウトという状況。普段の楓子ならこの状況でも焦りはしなかった。しかし、八幡が三日も眠っていて起きる兆候もないという事態が楓子に焦りを生んだ。その結果―
転倒。
それをドラーク二体は見逃さなかった。楓子に近寄り、口を開ける。そして楓子にかみつこうとしたところで
獣の怒号によって(・・・・・・・・)動きを止めた。
二体のドラークの目線の先には銀灰色の全身鎧を身に纏った一匹の獣がいた
ここに災禍の力を持った獣が再臨した。