やはり俺がチート部隊の隊長をするのは間違っている 作:サラリーマン
数日後の会議室にはゾンビのなりそこないが大量にいた。現在この会議室にいるのは20人弱。確か全体で60人くらいいたはずだから三分の二がさぼっていることになる。そのせいで真面目に参加してる人の仕事が増えた。さらに陽乃さんの有志参加を聞きつけてか有志の申し込みが急増。急増した申し込みは雪ノ下、めぐりさん、楓子さん、竹宮先輩の尽力と管弦楽の練習の合間をぬって来てくれる陽乃さんとバンドの練習のために来ていた謡の手伝いでやっと回っていた。そんな中で俺は自分の仕事を進めつつマッ缶を配って回っていた。マッ缶教の布教をしようなんて少ししか思っていない。少しは思ちゃってるのかよそんなことは置いといて糖分を補給してもらおうという粋な計らいだ。で、マッ缶をテーブルに置くだろ?そうするとお礼を言っているつもりなのであろうが「あ゛~」という「あ」の濁った声しか返ってこないわけだ。もうほんとになりそこないじゃなくてゾンビなんじゃねーの?と思っている俺ガイル。
なんやかんやでようやく下校時間を迎え明日は週末。ゆっくり休んでください。いやマジで。さすがに俺たちもこれからバンドの練習をする元気は残ってないので、今日はこのまま解散となった。その際に大変そうで尚且つ今すぐに取り組んだ方がいいものから半分くらいを持って帰ることも忘れない。…社畜ってつらいなぁ…
***
翌日、みんなで作戦室で俺の持ち帰った仕事をしている
「陽乃さん、雪ノ下の処遇ってどうするんですか?そろそろ処遇決めて文実の方に手を打たないと誰かしらが倒れてもおかしくないと思うんすけど」
「処遇って…それなんだけどこれで決めるつもりだよ」
陽乃さんの手には各クラスの企画申請書類がまとめてあるファイルがあり、2-Fつまり俺のクラスのものだけなかった。確か相模がやるって言ってたはずだが…こんくらいやっておけよ
「わかってると思いますけど俺は書けませんよ。ろくにクラスの方に出てないんだから」
「わかってるよ。それじゃあ問題です。八幡はこれを書くにはどうしたらよいでしょうか」
「適当に書く、ですか」
「それをするのはハチ兄だけなのです!」
いやいや俺だけじゃないでしょ。ほら米屋とか出水とかもしそうだけどな
「普通は分かる人に聞きますよハチさん」
「うん楓子のが正解だよ。続いて問題です。八幡は誰に聞くのが正解でしょうか」
「演劇の監督ですか?」
「普通だったらそれで正解なんだけど今回の正解は隼人だよ」
「隼人?…ああ葉山か。けどなんで葉山なんです?」
普通だったら監督である海老名さんに聞いた方がしっかりかけると思うのだが
「それはね、隼人だったら今の雪乃ちゃんを見ればきっと手伝うって言うと思うからだよ」
なるほど。ここで雪ノ下が素直にそれを受ければ成長したってみなすってことだな
「わかりました。葉山を呼び出すのはお願いしますさて次の問題は…」
「どうやって文実を正常にするか…だよねー」
「あ、それについては一つ案がありますよ」
「ほんと!?八幡君!」
「ええ。それはですね…
***
休みが明けての月曜日。文実のメンバーは金曜から誰一人欠けずにそろっていた。土日にしっかりと休んだおかげかゾンビ化していた人は全員元に戻っていた。チッ!
仕事を始めるとすぐに企画申請書類のことで雪ノ下に呼ばれた。
「2-Fの担当者。企画申請書類がまだ出てないのだけれど」
「わり、俺書くわ。つっても俺はクラスのことはよくわからんしな。どーすっか…」
「そんなことだろうと思って強力な助っ人を呼んどいたよ」
順調に計画通りに進み、会議室のドアがノックされ葉山が入ってくる。
「えっと、陽乃さんに呼ばれて来たんですけど」
「お、隼人早かったね~八幡強力な助っ人の葉山隼人君です!拍手~」
「何でこいつなんすか」
葉山がなんか言ってるが無視して話を進める
「だって2-Fで連絡取れるの隼人しかいなかったし」
「それで俺は何のために呼ばれたんです?助っ人とか聞こえましたけど」
「八幡がクラスの方に参加してないから企画申請書類が書けないの。だから八幡にいろいろ教えてあげて」
「わかりました。ヒキタニ君どんなことを書くんだい?」
「ああこれだ。立ちっぱじゃ書きづらいから座るぞ」
葉山に紙を渡すと席に座る。
それから葉山に教えてもらいながら書類を書き始める。
「なあヒキタニ君。人手足りてるのかい?」
「さあな。俺は担当部署だけで手いっぱいだから他のことは分からん」
「担当部署って?」
「記録雑務」
「似合うな」
殺すぞ
「けどぱっと見、一部の人に仕事が集中してるように見えるけど」
はたから見ればそう見えるかもしれないが実際はみんながそれなりにやった上でできる人は追加でやるみたいな感じだから一部の人に仕事が集中してるなんてないけどな。
「そう見えるんならそうなんだろうな」
「このままじゃどこかが破綻する。そうなる前にちゃんと人を頼った方がいいよ」
俺たちは雪ノ下の反応を待つ。雪ノ下は少し考えると自分の考えを口にした。
「いえ、結構です。」
陽乃さんが小さくため息をついたのが分かった。
「でもこのままじゃ誰か倒れるかもしれないよ。そうなる前に手を打っておくべきじゃないかな?」
陽乃さんがめぐりさんに視線を送る。めぐりさんはそれに気づきうなずく。
「そのことでみんなに相談があるんだけどいい?」
***
翌日、放課後を迎えると、久しぶりに会議室に文実の全員がそろっていた。ここで今日の作戦を紹介しよう。今日は文化祭のスローガンのことで全員を集めた。その会議の途中でここまで真面目に文実に参加してきた者たち(以下真面目組)に舟をこいでもらう。そのうえで俺が会議の頃合いを見計らい完全に寝たふりをする。そうすると平塚先生なり誰かが俺を起こすだろう。もしそれがなかった場合はめぐりさんに起こしてもらうことになっている。起こされた俺はこの会議自体にいちゃもんをつける。なんやかんやで来てもらっている謡を引き合いに出し罪悪感を抱かせる。というのが今回の作戦だ。…見通しが甘すぎるというツッコミはしてはいけない。きっと作者がめんどくさがっただけなのだから。ん?作者?まあいいや。
会議が始まると真面目組はあくびをしたり舟をこいだりし始めた。前の案がだめになりほかの案考えなければならないためにみんなを呼んだ。という意図がめぐりさんから伝えられ、意見を求められる。なかなか出てこないのでなぜか参加している葉山の提案で紙に書くことになった。その紙が配られている中で俺はめぐりさんに合図をし、寝たふりを始めた。………
まだかなー?早く起こしてくれないかなー?今はそれぞれが考えた案を発表しているのだが、自前のカメレオンが働いているのか平塚先生に気付いてもらえない。ねぇ!早く起こして!
「おい比企谷何寝ている」
俺の思いは通じたようで平塚先生に起こされた。俺はいかにも今起きましたよという感じでのそりと寝ていた上体を起こす。
「すいません。最近仕事が溜まっていたもので」
「そんなに寝たいなら帰ればぁ?あんたなんかいなくても誰も困らないっつーの」
嘲笑の混じった声で相模が入ってくる。ボーダー組が一気に殺気だつと同時に俺も切れた
「テメェ――
「じゃあお言葉に甘えて帰らせてもらいます。」
は?楓子さん?あーそういうことか。真面目組の全員が楓子さんの意図を察し立ち上がる。
「え、ちょっと」
相模の制止も無視し、俺たちは会議室を出る。
「今日中に仕上げなければならない書類がいくつもあるんでお願いしますね。そこまで難しいものじゃないんで今まで真面目に参加してればすぐに終わると思いますんでよろしくお願い致します。…あーやっと寝れる」
最後に会議室を出た俺はこう言い残した。まぁ実際は今日仕上げなければならん書類は昨日までに終わらせてあるから無いんだけどな。さぁてバンドの練習かぁ…
***
結論から言うと次の日にはさぼっていた人も全員がそろっていた。謝罪もなく何事もなかったように来ていることにイラつきを覚えるがここで俺が切れてまた来なくなっては元も子もないのでここは我慢する。
「やあやあしっかりと働いているかね?」
「御覧の通りですよ。陽乃さん」
「ここ計算間違ってるよ」
陽乃さんが指摘したのは俺がやっていた書類だ。
「ほんとだ。ありがとうございます陽乃さん」
「暇だし私も手伝おうかな。雪乃ちゃーん!私も手伝うよー!」
「姉さんは邪魔だから帰って」
雪ノ下は冷たく返すが陽乃さんは全く意に返さない
「ひどい!雪乃ちゃんひどい!……まぁ暇だし勝手にやっちゃうんだけどね。八幡、半分もらうよ~」
陽乃さんが俺の机に置いてある紙束に手を伸ばそうとすると、雪ノ下は深々とため息をついた。
「…はぁ。予算の見直しをするから勝手にやるならそっちにして」
「はーい♪」
陽乃さんは雪ノ下の背中を押して移動する。きっと打ち合わせでもするのだろう。
しかし陽乃さんは時間大丈夫なのか?うちの部隊のバンドのほかに管弦楽の方の練習もあるだろうに…まぁ大丈夫か陽乃さんだし…
***
一日一日文化祭が近づくたびに総武港全体の熱量は上がっていく。
「副委員長。ホムペ、テストアップ完了です」
「了解。…相模さん確認を」
「うん。OK」
「本番環境に移行してください」
雪ノ下は的確な指示を飛ばして。ひっきりなしに来ている人をさばいている。そこに後ろから忍び寄った陽乃さんが抱き着いた。
「さっすが私の雪乃ちゃん」
「離れて近づかないで帰って」
「雪乃ちゃんがいじめるよ~八幡」
雪ノ下に邪険に扱われた陽乃さんがこっちに来る
「おーよしよし。って何ですかこの茶番は」
「気にしない気にしない♪」
俺が陽乃さんをあやしているとめぐりさんと楓子さんが雪ノ下に近づくのが見えた
「雪ノ下さんあと任せていいかな?下校時間が近くなったらまた戻ってくるから」
「はい。大丈夫です」
「ありがとね!ほら八幡君もはるさんも遊んでないで行きますよ。ういちゃんも待ってますし。」
「そうだね!」
陽乃さんは会議室の中を見回す
「やっぱ文実はこうでなくちゃ!あー今すっごい充実してるなー!」
陽乃さんの声にみんながうなずく。文化祭実行委員としての責務を果たしているからだ。ただその行動はこないだまでの文実を否定するものだ。机の下で相模が紙をくしゃッとしたのが分かった。
さあ、ついに明日は文化祭だ…バンド間に合うかな…