やはり俺がチート部隊の隊長をするのは間違っている   作:サラリーマン

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職場見学2

大志が相談を始める

 

大志 「俺の姉ちゃんは川崎沙希って言って、2年生です。クラスは確かF組だったと思います。」

戸塚 「あ、うちのクラス」

八幡 「川崎…あいつか」

由比ヶ浜 「あのちょっと怖い感じの人だよね」

 

俺はこの前遅刻したときに同じ日に遅刻した奴を思い出していた

 

大志 「最近その姉ちゃんが帰ってくるのが遅いんです」

雪ノ下 「具体的に何時くらいなのかしら」

大志 「5時です」

八幡 「朝じゃねえか」

 

ボーダーならその時間になることもあるが少なくとも俺はボーダーで川崎を見たことがない

 

戸塚 「ご両親は何も言わないのかな?」

大志 「両親は共働きだし下がまだいるんで、あんま姉ちゃんにはうるさく言わないんです」

戸塚 「そうなんだ…」

大志 「それにこの前家にエンジェルなんとかって店から電話が来たんすよ!エンジェルっすよ!エンジェル!絶対やばい感じの店っすよ!」

謡 「それはエンジェルという店に偏見持ちすぎでは?」

由比ヶ浜 「へんけん?」

雪ノ下 「今までの話から推測するに川崎さんはバイトをしているんじゃないかしら」

 

エンジェル…川崎…朝帰り…!それまでばらばらだったものが一気に一つにつながった気がした

 

八幡 「大志何個か質問いいか?」

大志 「はい」

八幡 「まず一つ目、朝帰りはいつからだ?」

大志 「2年になってからだと思うっす」

八幡 「2つ目、その前と後で何か変わったことは?」

大志 「…たぶん俺が塾に通い始めたくらいです」

八幡 「ラストだ。お前は姉にどうしてほしい?」

大志 「家族はみんな心配してるので朝帰りはやめてほしいっす。それができなくても、せめて事情だけでも話してほしいです」

八幡 「そうか…小町、謡帰るぞ。大志もついて来い」

大志 「えっ、あ、はいっす!」

雪ノ下 「待ちなさい」

 

席を立とうとすると雪ノ下に呼び止められる

 

雪ノ下 「貴方にこの問題が解決できるのかしら」

八幡 「ああ。もう朝帰りの原因は分かっている。さっき言った通り相談を受けたのは俺だ。雪ノ下、お前は何もするなよ」

 

雪ノ下が何か言う前に席を立ち、金を払い店を出る

 

八幡 「大志、お前はもう帰れ。姉の事情がどうであれお前が勉強をしなくていい理由にはならないからな。姉の件はできる限りのことはしてやるよ」

大志 「よろしくお願いします!お兄さん!」

八幡 「お兄さんと呼ぶな!お前この件が片付いたら二度と小町に近づくなよ。視界に入れることも許さん。もし小町に手を出して見ろ。地の果てまで追いかけてお前に死ぬよりつらい地獄を見せてやるからな」

大志 「…姉のことはよろしくお願いします」

 

大志は去っていった。それから小町を家まで送り謡と一緒にボーダー本部に行き防衛任務をこなした。その時に陽乃さんに事情を説明し、またスーツを用意してもらえないかと頼んだ

 

 

 

翌日の夜となり、陽乃さんに用意してもらったスーツを着て、この前二宮さんに呼び出されたエンジェルラダー 天使の階に向かっている。横には陽乃さんがいる。昨日スーツを頼んだ時にやはり今回もついてくると言った。エンジェルラダーに着くと、まず店内を怪しまれないように見まわし目的の人物がいるか確認する。いた。川崎はカウンターでグラスを磨いている。俺たちはカウンターに座り川崎に話しかける。

 

八幡 「川崎沙希で合ってるよな?」

川崎 「そうですけどあなたは?」

 

川崎は俺を怪しみながらも敬語で返す

 

八幡 「お前と同じクラスの比企谷八幡だ。」

 

俺が言うと川崎は驚いた表情を作ってから悲しげな表情になった。

 

川崎 「そっか。とうとうばれちゃったか。先に言っとくけどあんたが先生に言っても無駄だよ。このバイト辞めさせられても別のバイトするからね」

八幡 「お前がそこまでバイトをしたがる理由…学費で合ってるか?」

川崎 「っ!?なんであんたがそれを!?」

八幡 「お前の弟から俺の妹を通して相談があってな。そこでいろいろ聞いた。まあ学費というのは推測だけどな。弟が言ってたぞ。家族なんだから相談してほしいって」

川崎 「相談できるわけないじゃん!両親は共働きで忙しい!大志は受験生で塾に通い始めた!毎日働いて大志の塾のお金を出した両親にまだ二年なのに私の塾のお金まで出してほしいなんて言えるわけないじゃん!それにまだ妹もいる。妹のことを考えると私が迷惑をかけるわけにはいかない。それともあんたは私の学費を払ってくれんの?それができないなら私の問題には関わってこないで!」

 

川崎の言葉を俺たちは黙って聞いていた

 

陽乃 「はいはーい!私はあなたの学費を払ってもいいよ!私にメリットがあるなら…だけどね」

八幡 「陽乃さん茶化さないでくださいよ。真剣な話してるのに」

川崎 「比企谷、この人は?」

陽乃 「私は雪ノ下陽乃。八幡の師匠だよ!」

川崎 「師匠?なんの?」

八幡 「それはあとで話す。俺はお前の学費を払ってやることはできない」

川崎 「だったら――

 

川崎の言葉を遮る

 

八幡 「だけどお前に二つの提案をしてやろう。一つ目はスカラシップだ」

川崎 「スカラシップ?」

陽乃 「簡単に言えば成績優秀者を対象に入学金や学費の一部もしくは免除しようってことだよ」

八幡 「大体そんな感じだ。先生に聞けばより詳しくわかると思うぞ」

川崎 「…それで二つ目って何なの?」

八幡 「それはボーダーに入ることだ」

川崎 「は?ボーダー?」

陽乃 「うん。最近いろんな大学がボーダー推薦をしてるの。ボーダー隊員がいるってだけでそれなりのステータスになるからね。最低限授業についていけるだけの学力は必要だけどね」

八幡 「お前の普段の成績は分からないがこれだけでボーダーと提携している大学にはほぼ確実に入れる。塾に行かなくてもだ。それに妹がいるって言ったよな?ボーダーならその妹のために金を稼ぐことができる」

陽乃 「まあ良い事ばかりじゃないけどね」

川崎 「どういう事?」

八幡 「ボーダーに入ればネイバーと最前線で戦うことになるわけだ。防衛任務ならまだ安全だがまた大規模侵攻があれば当然危険が伴う」

川崎 「なんだそんなことか」

 

川崎が言った一言に驚く

 

八幡 「そんなことって。結構重要だぞ」

川崎 「だってそうでしょ。あんたたちボーダーを信頼してないわけじゃないけど、ネイバーが警戒区域から出てきたとき、自衛手段がないことの方がよっぽど危険じゃない?」

八幡 「確かに…」

川崎 「一つ聞きたいんだけど、ボーダーって才能とか必要じゃないの?」

八幡 「川崎の言う通り才能がないやつが上の連中を見て才能の差を感じてやめていくやつもいる。けど才能なんて本人の努力と工夫次第でどうとでもなる。嵐山隊の木虎は知ってるか?」

川崎 「うん」

八幡 「あいつはトリオン量が少なかった。トリオン量ってのはボーダーの武器と使うためのエネルギーだと思えばいい。けどあいつは努力と工夫で嵐山隊のエースになった。才能がないからってあきらめるのは努力したくないやつの言い訳だ」

陽乃 「八幡正論なんだけど木虎ちゃんの個人情報…」

八幡 「あっ…川崎、他言無用で頼む」

川崎 「…うん」

 

川崎は呆れながらもうなずいてくれた。

 

八幡 「まあボーダーに向いてるかどうかは職場見学の時にわかるだろ。他のところと同じ内容なら対ネイバー戦闘訓練があるはずだしな」

 

今年の総武高の職場見学は希望者が二年生の九割を占めたため全員でボーダー本部になった。

 

川崎 「初心者に戦闘訓練なんてさせるの?」

八幡 「ネイバーが相手って言っても向こうは攻撃してこない。その分耐久力だったかなにかしらが上がってたはずだ。まあこの記録がすべてじゃないが一つの目安としてはいいはずだ。これで提案は終わりだ。スカラシップにしろボーダーにしろ決めるのはお前自身だ。ボーダーの方は家族と相談しないと決められないけどな。陽乃さん、帰りますよ」

陽乃 「は~い。ボーダーに入るならよろしくね川崎ちゃん」

川崎 「比企谷ありがとう。雪ノ下さんもありがとうございました」

八幡 「気にすんな。もう一つ言っておく。ここ、やめるなら早い方がいいぞ」

川崎 「は?どういうこと?」

八幡 「J組の雪ノ下雪乃って知ってるよな?そいつが近いうちにここに来る」

川崎 「どうして?」

八幡 「俺がお前の弟から相談を受けていた時に近くにいたからな。あいつはたぶんお前をやめさせようとするぞ」

川崎 「そうなんだ。わかった。」

八幡 「俺たちはこれで帰るから」

川崎 「うんじゃあね」

 

俺たちは店から出てエレベーターに乗る。

 

陽乃 「そういえば昔八幡がよくやってたスカッシュゲーム、あれ訓練として導入されるらしいよ」

八幡 「やってた、じゃなくてやらされてた、ですよ」

陽乃 「いやいや、最終的には自分からやってたじゃん!」

八幡 「これしか選択肢がなかったからですよ」

 

あん時は、これをやるか、陽乃さんと楓子さんのバイパーをよけ続けるという選択肢しかなかったからな

 

八幡 「それで導入はいつからなんです?」

陽乃 「今調整中らしいから職場見学のころには導入されるんじゃないかな?」

八幡 「ポイントってもらえるんですかね?」

陽乃 「もらえないんじゃないかな?反射神経だけよくても強いわけじゃないしね」

八幡 「そうですよね。…思ったんすけどこれってスナイパーがすごくつらくなりません?」

 

反射神経をよくするということはつまり不意打ちなどに強くなるということ。スナイパーにとっては天敵なのだ

 

陽乃 「けど、しとめるだけが仕事じゃないし。連携次第ってことだよ」

八幡 「そうですね」

 

エレベーターが止まる。どうやら一番下の階に着いたようだ。陽乃さんが先に降り続いて俺が降りる。すると降りた先には雪ノ下と由比ヶ浜がいた。

 

陽乃 「あれ?雪乃ちゃんじゃーん!なにしてんのこんなところで?」

雪ノ下 「ね、姉さんには関係ないでしょ。それより姉さんは何でここに?」

陽乃 「私は大学の友達と飲みに来ただけだよ。ね、八幡(やはた)君?」

 

陽乃さんは俺に会話を振る。今の俺の恰好は陽乃さんが用意してくれたスーツに髪はワックスで迅さんふうに仕上げ、メガネをかけている。これで名前を変えることで俺は完ぺきに「比企谷八幡」には見えない。それから、嵐山さんのようなさわやかな笑顔になり

 

八幡 「ええ。それで陽乃さん。彼女たちは?」

陽乃 「黒髪の方は私の妹の雪乃ちゃんだよ!もう一人は雪乃ちゃんの友達の由比ヶ浜結衣ちゃん、通称ガハマちゃんだよ!」

八幡 「初めまして。私は陽乃さんの友達で桐ケ谷八幡(やはた)と言います。よろしくお願いしますね。」

由比ヶ浜 「よ、よろしくお願いします」

雪ノ下 「姉さん。なんで由比ヶ浜さんのことを知っているのかしら」

陽乃 「私は雪乃ちゃんのことならな~んでも知ってるんだよ?例えばこれから最上階にあるバーでバイトしてる女の子のところに行こうとしてる、とかね!」

 

雪ノ下と由比ヶ浜の顔が驚愕に変わる

 

雪ノ下 「何で姉さんがそれを!?」

陽乃 「さっき言ったじゃん!雪乃ちゃんのことなら何でも知ってるって。…というのは冗談で、今雪乃ちゃんが教えてくれたんだよ。」

雪ノ下 「カマかけたっていうの!?」

陽乃 「そうだね!」

八幡 「少しいいですか?女性の店員なんて今日いましたっけ?」

雪ノ下 「どういうことですか!?桐ケ谷さん。」

八幡 「僕たちけっこう長い時間居たんですが女性の店員なんて今日は見ませんでしたよ」

雪ノ下 「本当ですか!?」

八幡 「ええ。ですよね、陽乃さん?」

陽乃 「そうだね。それに私としては妹が非行に走ろうとしてるのを黙ってみてるわけにはいかないんだよね。もしこのまま行こうとするなら私はお母さんに相談するよ。」

雪ノ下 「…ごめんなさい、由比ヶ浜さん。今日は帰りましょう。」

由比ヶ浜 「う、うん」

陽乃 「ごめんね、八幡君。私は雪乃ちゃんがしっかり家まで帰るか見届けないとだから雪乃ちゃんたちと行くね」

八幡 「わかりました。お気をつけて」

陽乃 「うん。またね八幡君」

 

陽乃さんが二人を連れてホテルから出て行く。三人の姿が見えなくなった瞬間、俺は顔に張り付けていた笑顔を解いた。

 

八幡 「疲れた…」

 

それから、疲れた体を引きずって家に帰った。

 


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