インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~   作:鳳慧罵亜

98 / 116
なんでこうも予定がギっちり詰まってくんだよ!!
おかげでろくに書く時間がなかったわ!!

と愚痴るのもこれくらいにして遅れて申し訳ありません。
ホントに。


交戦 Ⅳ

「ぜぇ……ぜぇ……っ、く」

 

「どうした?さっきまでの威勢はどこに消えたんだ?」

 

ウィンターのラファール・リヴァイブはすでに損傷レベルCにまで達しており、エネルギー残量も残りわずかとなっている。

対して未だスミカのシリエジオはダメージレベルAになったばかり、しかもエネルギーは6割以上残っている。

 

「まだよ……まだ!」

 

ウィンターは重機関銃、「デザート・フォックス」を展開、両手に構え引き金を引く。

それをスミカは流水のような滑らかかつハイスピードな機動でかわしつつ、ロックオンと同時のクイックドロウでレールガンを撃つ。

それをウィンターは躱し、シールドを構える。その瞬間、3発のレーザーライフルがシールドに向けて撃ち込まれた。

 

「くぅ……!」

 

シールドの影からデザートフォックスを乱射する。ばら撒くように発射した弾丸は流石に数発命中し、彼女のISの桜色の装甲を削り取る。だが、まだダメージとしては足りないだろう。

そして、その程度ではスミカの攻撃はとまらない。

 

レーザーライフルを再び発射。同時に肩のASミサイルを発射する。

弾速の早いレーザーライフルにライフルに比べると遅い敵を自動追尾するミサイルの2段攻撃。そして、ウィンターがレーザーを防ぎ、ミサイルを躱したところへ

レールガンが発射される。

 

ライフル程度の大きさではあるが、貫通力と弾速でラウラ・ボーデヴィッヒの使用している大型レールカノンを上回っており、その分連射力と破壊力では劣る。

そして、最大の利点はレールカノン一発分のエネルギーでスミカのハンドレールガンは4発撃てるという破格のエネルギー効率を持っているのだ。

 

「まだよ!!」

 

ウィンターは瞬時加速でスミカに突撃する。左手に物理シールドを展開し、迎撃に撃ち込まれたレーザーライフルを防ぎ、そのまま距離を詰める。

スミカも同じように瞬時加速を使うが、ラファールリヴァイブと、シリエジオは機動力に差が生じており、どうしても距離は詰まってしまう。

 

「喰らいなさい!!」

 

ウィンターは連装ショットガン「レイン・オブ・サタデイ」の引き金を引く。

本来ならば楽に躱せる攻撃ではあるが、スミカはあえて躱すのではなく、反撃することを選んだ。

 

「貴様もな」

 

レールガンの出力を上昇、レーザーライフルを構える。

 

ショットガンの雨が降り注ぎ、シリエジオの装甲を削り、エネルギーを奪っていく。

だが、スミカはあくまで冷静に反撃を行使する。

 

レールガンの砲口から超音速で放たれる飛翔体。

本来レールガンとは、砲身の長さと、弾である飛翔体の大きさ、重量、そして使用電率の黄金比率で成り立っている武器である。

だから、ただ高電圧で行けば協力になるかと言われれば、そうではない。

 

だが、基本的にスミカのレールガンは黄金率よりも多少電圧を抑えている。

理由はごく簡単でくだらなく、このレールガン『RG01-PITONE』はライフルサイズにまで大きさを切り詰めたために

通常では出るはずのない射撃反動が生まれるのだ。

 

ロックオン同時の早撃ち(クイック・ドロウ)を旨とする彼女はその反動によって射撃精度が狂うことを嫌う。

それに、通常の状態でも威力は十分にあるため、無理をする必要はないと思っているからだ。

 

だが、距離の詰まったこの状態ならば、外すことなどない。ダメージは甘んじて受けてやろう。

だが、どちらが痛いかな?そういうことだ。

 

「きゃあああ!!」

 

そして、黄金率そのものとなったレールガンはウィンターの物理シールドを貫通し、本体にダメージを与える。

さらに、そこへ撃ち込まれたレーザーライフル。

 

2発でシールドは破壊され、2発を直接浴びることとなった。

 

「悔しいか?」

 

失笑しながら、スミカはウィンターに問いかける。

 

「安心しろ、私を相手にここまで戦えているだけで貴様は強いさ。私と互角にやれるのなどそれこそARKの一部だけだ」

 

そう、霞スミカ。彼女を相手取って、ここまで戦える彼女は十分に国家代表に伍する実力は兼ね備えている。

むしろ相手が相手ならば、善戦ないし、勝てる可能性だってある。

 

だが、相手はスミカなのである。

彼女は全Aランカー中で、最高の早撃ちの能力とランクA-1。イツァムに匹敵するであろう基礎技術の高さを持つ。

彼女が今のランクから動かないのは、もはや自分にとってランクはどうでもいいものだからだ。

 

そして、どうでもいいからといっても、他人に渡すのはしゃくにさわるという、彼女らしい理由から今のランクを保っている。そういうことだ。

 

「さて、終わるか……」

 

不意に、そんなことをつぶやくスミカ。直後、今まで自分からは流す程度にしか攻撃せず、もっぱら反撃のカウンター飲みを行っていた彼女が、一気に攻勢に出た。

 

「!?」

 

発射されるレールガン。それを脚部の装甲に直撃だけは回避した瞬間、目の前には、銃口が既にこちらを捉えている。

 

バシュン、というレーザーライフル特有の発射音が複数回連続してなり、彼女のISを弾き飛ばす。

 

「っく!」

 

なんとか体制を立て直し、反撃のために、アサルトカノン『ガルム』を構えるが、目線の先にはあの特徴的な流線型のフォルムも、綺麗な桜色の装甲も映らない。

どこに消えた?―――すぐに気がつくはずのそれに数瞬反応が遅れたつけは、高く付いた。

 

「―――しまっ!?」

 

「こっちだ」

 

背中に衝撃が走り、再び弾き飛ばされる。体を走る痛みの中、視界を隅に落とせば、みるみるうちに減少していくエネルギー残量。

もはや満足な戦闘は出来そうにない。だが、いやだからこそ。その状況を見逃すスミカではない。

 

「堕ちろ」

 

体勢を立て直そうとしたウィンターに向けて、放たれるレーザーとレールガンの応酬。数秒と経たないうちに、ISの装甲は脚部から胴体、腕部、スラスターと順番に破壊されてゆき、

最後は原型をとどめなくなったISと共に、地面に叩きつけられた。射撃を食らった反動で身動きが取れずにそのまま地面にぶつかり、彼女は口から血反吐を吐き散らす。

 

そして、ISは光の粒子となって、彼女の体から姿を消した。

 

「そんな……」

 

具体維持限界(リミット・ダウン)を起こしたか」

 

感慨もなくつぶやくと、彼女の前に着地し、レーザーライフルを突きつける。

 

「……っ」

 

仰向けに倒れ込んだ状態では、もはや何ができるわけでもない。自分の体ももはや死に体で、目の前の敵が、そこらへんにいる兵士でも簡単に殺せるくらいであろう。

が、目の前の敵はそんな状態の私を前に、先程までは嫌味な笑みを浮かべながら戦っていたものだが、今はそれとは違った意味で嫌になるくらい無表情だ。

 

終わった。

 

自分はあと数十秒と経たずに、殺される。もう、何もできない。

あの日、すべてが奪い去られ、白いコート。それのみを追い続けた人生。何人と殺してきて、奪ってきて、それでも追い続けた私の人生はここで虚しく終わる。

もう、諦めるしかないのだろうか。

 

「何か最後にあるか?」

 

ごめんなさい。みんな。弱い私を許して、アイリーン。

結局私は……何も―――

 

「……」

 

「まあ、あるはずもないか。だったら最後に教えてやる」

 

―――できなかったよ―――

 

 

 

 

 

 

貴様の仇は、(・・・・・・)今このエリアにいる(・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

「――――ぇ?」

 

 

 

それはある種、天啓のようなものだろう。

 

「少なくとも、この島のどこかには必ずいるだろうな」

 

目の前に立っている少女、霞スミカはまた顔にいやみったらしい笑みを浮かべている。まるで、私を挑発するように。

 

「―――っ」

 

仇がここにいる。

 

それだけ、本当にそれだけだった。

ならば、まだ自分はやるべきことがある。そうだ。

 

(まだ私は、こんなところで死ねない―――!!)

 

それからの行動はもはや意識の埒外にあると言ってよかっただろう。

 

『コア摘出。自爆シーケンス発動』

 

 

瞬間、彼女のいた場所に閃光が迸る。

 

 

ズゥ…ン

 

爆発音、爆煙、爆風、規模としてはプラスチック爆弾数個分程度のものだったが、それだけの爆発を至近距離で浴びれば、いくらISといえども、全く微動だにしないということはない。

スミカは寸前で、後ろにバックし、ダメージを最小限に抑えたが、その爆発で標的を見失う。

 

「……ふん」

 

スミカはつまらなさそうに鼻を鳴らすと、レールガンをあさっての方向に向けた。

 

「あとはゴミ掃除でもしておくか」

 

砲口から雷光が走ると同時に、物陰に隠れていた兵士数人と思わしき肉塊が地面にはじけ、転がった。

 

――――

 

 

「……はぁ……はぁ……」

 

血みどろになりつつも、なんとか通路の壁に手をついて歩いている。足は少しおぼつかないが、折れたり、動かなかったりとしていない分はるかにいいだろう。

なにより、利き手の右腕がまともに動くことがありがたい。おかげで、懐の銃は抜けるし、構えられるし、撃てる。

 

たとえ自分はあのお女にこうなるように誘導されただけだとしても、私はあの男を殺して、仲間の敵を取れればそれでいい。

それで私が死んでも、それが仇を討ったあとならば本望だ。

 

一番怖いのは、このまま仇と会えずに、力尽きること。

 

「ううん」

 

そんな考えは捨てる。見つかるか見つからないかじゃないんだ。なんとしても見つけるんだ。たとえ見えるのが正面からでも、背後からの不意打ちであろうと殺せれば、それでいい。

 

「フフ……」

 

どこにいる。どこにいるんだ。ああ、待ちきれないぞ、早く私の前に来い。

暗い通路を壁伝いに進んでいく。

 

一度右に曲がって、次の曲がりはまっすぐ、次は左に曲がって、もう一度右に曲がる。

そして、もう一度通路を右に曲がったところで、ウィンターは自らが追い求めた仇を見つけた。

 

「I'm thinker……Tru~Tru~Tru~TruTru~……I'm thinker―――」

 

「私は思想者」などと、ふざけた歌を口ずさみながら、そいつは私の前に立ったのだ。

 

――――

 

「Tru~Tru~Tru~TruTru~……I'm thinker……Tru~Tru~Tru~Tru~」

 

鼻歌を口ずさみながら、俺はいつもの白いコートを羽織って、暗い通路を歩いていた。

すでにISもちは殺したので、あとは掃除として生き残りの兵士十数人をバラバラにして来ている。

 

暗いといっても非常灯がついているから、視界が利かないというわけではない。

ただ、ほかの連中は随分ド派手にやっているらしいな。

 

さっきなんて、近くで重粒子ライフルの音が聞こえたぞ。テペスの奴が『あれ』をぶっぱなしたに違いない。

それに遠巻きにはなんかまた変なのが聞こえてくるし、なんだあいつら、大掛かりな戦闘が久しぶりだからってはしゃぎすぎだろ、いい年こいて。

 

それに一回爆発でがれきが吹っ飛んできたし、ホントなにやってんだあいつら。

 

『移動体接近。数は12m先です。移動速度からして人間かと思われます』

 

「了解」

 

そろそろ、縁もたけなわだ。ここらで幕引きとしようじゃないか。もうお前ら(亡国企業)と付き合うのも、いい加減だれてきたし。

あと8m……5m……。

 

そして、次の分かれ道が見えてきた時だった。

 

「―――貴様っ」

 

「あん?」

 

何やら俺を見たとたんすごい形相をしてきたやつがひとりいた。

 

――――

 

「―――貴様っ」

 

その姿を見たとき、私はある種の既視感(デジャヴ)を覚えた。

右手に持った黒い杖のようなもの。

体に羽織った純白のコートはあの時とおなじように、血を弾き、白さを損なわない。

 

見間違えるはずもない。こいつだ。この男だ。

 

反射的に上着の内ポケットから拳銃を抜くや否やに、引き金を引く。

 

パン!という軽い、乾いた音が廊下に反響する。だが、不意打ちに近かったその一発は、目の前の少年の顔を一直線に進みながらも、少年が顔をひねりながら交わしたことで不発に終わる。

 

「いきなりぶっぱなすなよ。カルシウム足りてないんじゃねえのか?」

 

笑いながらそう口にする少年は、しかし、その目は決して笑ってはいない。

 

「まあ、職業柄恨まれるのは常だが、ここまでいきなりだったのは初めてだぜ?」

 

言いながら、彼は杖のようなものから、刃を抜く。そこで初めてわかった。あれは杖じゃなくて、ニホンの伝統武器であるカタナなんだと。

 

「ま、反応からなんか俺に恨みでもあるっぽいけど……仇討ちかな?」

 

「……ああ、そうだ」

 

足が震え、頭から流れる血で、意識が若干おぼつかないが、関係ない。そんなものは気力でねじ伏せ、銃を構える。

対する少年は、銃を向けられても何ら臆することなく、むしろ撃ってこいよと言わんばかりの態度でいる。

 

「2年前、イラク解放戦線。私は反政府軍側にいたゲリラだった」

 

「……ああ、懐かしいな。思い出したよ」

 

私にとっては、悔やみ、恨んでも恨みきれないほどに憎悪している記憶を、こいつはまるで懐かしい思い出に浸るような感覚で言い返してくる。

 

「まあ、言いたいことはわかった。要は俺が担当した地区に運悪くお前と仲間が巻き込まれたということだろ?。ご愁傷様としか言えんが、仇を討ちたい気持ちはわかる」

 

だからそら、来いよ―――。やつはそう言って、右手で手招きする。

 

「……」

 

引き金にかける指に力を込める。

 

今まで、このために生きてきた。この瞬間のためだけに生きてきた。

仲間の、アイリーンの仇を討つ。そのために今まで。

 

だから―――ためらわない。

 

「……死ね」

 

その言葉に万感を込めて、私は引き金を引いた。




感想、意見、評価、お待ちしています。

お詫びと言ってはなんですが、知り合い等に結構質問などされたので、この場で簡単にQ&A的に行きたいと思います。

Q:どういった理由でセラス生きてんの?
A:詳しいことはネタバレになるので言いませんが、セラスは一度死んでます。
これだけは確実に言い切ります。

Q:ぶっちゃけAランカー最強は誰だよ?
A:結構難しいんだよ。というわけでこの場では全員で殺し合うというバトルロワイヤル方式で最後まで生き残ったやつが強いという方式できます。
そうなると、最強は文句なしで蘇摩になります。次点でイツァムとスミカです。

Q:んで?蘇摩は結局誰とくっつくわけ?
A:今回は楯無こと刀奈とだよ。タグに書いてあんだろが。

Q:俺は楯無よりセラスのほうがいいんじゃねとか思ってるけど。
A:自分で書いたキャラにそう言ってくれるのは嬉しいがすでに決めたことだ。セラスは日陰の女なんだよ。

Q:セラスにCV付けるとしたら誰?
A:お前は誰付ける気だよ?まあこっちは榊原ゆいさんとかかな?

Q:蘇摩ACに載せるとしたらなに?
A:AC4ホワイト・グリントかな?出来ればAA載っけたい。

Q:レイとマドカのISが気になる件
A:原作?黒騎士?知らぬ知らぬ聞こえぬ見えん。とだけいっておこう。

Q:R系統は書かないの?特に蘇摩とヒロイン2人の絡み。
A:書いて欲しいのかな?書いてもいいのかな?これは読者さんに聞きたい。

Q:蘇摩のキャラは嫌う人多いと思うけど、そこンとこどう思ってる?
A:まああのキャラを嫌いだっていう人は多いだろうとは思うよ?でもまあ、ああいうキャラが好きだっていう人もなかにはいてくれるでしょ?

Q:セラスが綺麗すぎて生きてるのが辛い
A:ああ、うん……それはよかったな。

Q:セラスと蘇摩のラブが見たいぞ。あんないい女ほかの小説でもそう見ねえよ。
A:お、おう。つか、セラスってそんないい女に見えるか?だとしたらそれは嬉しいが。お前には既に話してあっけども。

……とまあ、こんな感じです。

他にも小説の疑問点があれば質問はOKなはず……禁止はアンケートなだけなはずだ。うん。
では、疑問等々お待ちしてます。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。