インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~   作:鳳慧罵亜

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EOS模擬戦開始

 

「く……このっ」

 

「ぐぐぐ……」

 

「お、重いですわ……」

 

「うへぇ……うそでしょお……」

 

「う、動きづらい……」

 

こちらにご覧なられるのはEOSのことを舐めてかかった代表候補生+2名の成れの果てでございます。総重量はISに比べて軽量だが、それでも重いことに変わりない。

しかもあちらさんにはPICという反重力なんたら機構が存在して重さを感じないので余計に動かしづらく感じるだろう。

しかもISは各部位に補助制御機構やパワーアシストとかいろいろあるため、さらに動かしづらさが増しているのだ。

 

まあEOSにも補助駆動システムくらいはあるだろうけど、まあISとは比べ物にはならんわな。

しかもたしか……なんだっけ?

 

ダイレクト・モーション・なんたらとかいうもので搭乗者の動きを先読みするISとは違ってこちらは搭乗者の動きについてくるので、それはそれはISに

慣れきった者らにとっては動かすづらいことこの上ないでしょうな。

 

挙句には背中に背負った動力の『P.P.B』正式名称ポータブル・プラズマ・バッテリー。日本語で携帯電子機構型燃料電池。携帯とは言っても重量30Kgはあるそうなので

まあ高校生レベルにとっては重いわな。

 

というよりはどこからかの圧力で開発が進んでいない語が現状といったところか。

 

なんてったって国連が開発してるんだぜ?きちんとした人員に資金があればもっと性能のいいものくらい作れたはずだろう。

 

事実、RAVENS ARKで開発されている新型兵器は、電磁駆動流体の人工筋肉のアシストによって人間が普通に動くのとなんら変わらない反応速度を持ってるし動作も軽いし、

通常の人間の8.97倍近い身体能力の向上結果をたたき出している。

さらに動力もそんな大それたものじゃなくて、普通にレイレナード社が作っている高純度水素燃料電池にちょっと手を加えたもので済んでるし。

重量2.5Kgの半永久動力機関だ。まあ損傷したら大量被爆で即死間違いないが、そんなヘマをするほどレイレナードもRAVENも馬鹿じゃあない。

 

性能もこんなものよりもかなり高い。

 

まあ賢い連中ならわかるだろうが、どうせIS委員会の連中が圧力でもかけてんだろうなぁ。

ちなみに、IS委員会の委員は全員女性ということであとはお察しください。

 

それにしてもこれだけの性能差ってやっぱISってすごいよな。そしてその技術を他に活かせようとしないIS委員会のお偉方はお頭にお花畑でも咲いているのでしょうか?

もしそうならチャッカマン持っていきますのでご連絡ください。すぐ焼け野原にして差し上げますので。

 

っと話が脇道にそれてしまった。

ちなみにあちらで動きに苦戦している人とは違って、俺の近くにいるドイツ軍人少佐殿(Not大隊指揮官殿)はもうすでにコツを掴んだらしく、「よし」と言っていたため

さすがは現役軍人と言うべきだろう。つか弱冠15、6歳で少佐とかすごいよなぁ。

 

俺は少し準備体操をすればなんとかなるかな。流石にいきなりこれで戦えはちょっと厳しい。

 

「では、これよりEOSによる模擬戦を行う。なお、基本防御機構は装甲のみとなるため、生身には攻撃するな。ペイント弾とは言え当たると結構痛いぞ」

 

千冬が手をたたいて仕切る。その直後に、「始め!」と合図が響く。その合図が出た瞬間に、ラウラが脚部のローラーを回転させて未だ操作に手こずっていた一夏に突進する。

 

「やっぱ俺からかよ!」

 

予想はしていたのだろう一夏は反撃に拳を突き出すが、回転運動であっさりとよけられて逆に足払いを喰らう。それにより一夏はあっさりと仰向けに倒れ込んでしまった。

かなり重量があるため、起きるのにも時間がかかる。その隙を見逃すラウラではない。

 

「がっ!」

 

「もらったぞ!」

 

ラウラはそのままサブマシンガンを構えて、引き金をひこうとした。距離はすでに50cmない。躱すすべなく引き金を惹かれれば瞬く間にペイント弾によって一夏は変な色まみれになるだろう。

だが、その瞬間を待っていたかのように、一夏の口元に笑みが溢れた。その証拠に、一夏の右足が跳ね上がる。

 

「お返しだ!!」

 

「ぬう!」

 

ラウラのサブマシンガンを持つ手を、思いっきり蹴りあげる。重い金属同士のぶつかり合いは強い衝撃を起こし、お互い生身の体にも響く。

腕部と脚部nぶつかり合い。それは当然互の腕と足にまで行き渡る。だが、その衝撃によるダメージは足よりも腕の方が強い。

 

その衝撃により、ラウラはサブマシンガンを手放してしまった。一夏の思わぬ反撃にラウラは驚きの表情を見せる。だが、一夏はすぐにサブマシンガンを取り出した。

 

「へっ。まだ操作に慣れてないからって舐めるなよ」

 

一夏は、逆にサブマシンガンを構える。ラウラはすぐに飛び退き、発射された弾丸の雨からかいくぐった。予想外のできごとに面食らったラウラであったがすぐに

状況を把握し、体制を立て直す行動を起こせるのは軍人としての訓練の賜物だろう。

 

「やっぱラウラはやるよな。箒か鈴だったら今のでアウトだったろ」

 

「ふっ。見ないうちに腕を上げたな。それでこそ我が嫁だ」

 

ラウラは、ローラーを鳴り響かせて、地面を滑るように移動する。一夏はそれを撃つが、もともと射撃の経験の少ない一夏にとって、反動を相殺する機能のないEOSでの射撃は

お世辞にも精度がいいとは言えずに、結構的はずれなところにも飛んでいったりしている。しかもラウラの走る先には車線上にほかの人もいてそれらをうまく盾にするように走っているため

なかなか当たるものではない。

 

「フッ……」

 

「あ」

 

その中の一発が凰の顔を掠った。かすっただけだったが、その一発で彼女の怒りは頂点に立っしたようで、どこから来たのかを確認し、その目線の先に俺を確認した瞬間。

ものすごい形相になって俺に向かってきた。

 

「ぃ一夏あ!!」

 

ローラーダッシュの速度も凄まじく、一夏もようやく慣れてきた動作でローラーダッシュを後方に向けるがどんどん距離が縮まっていく。凰は手にしているサブマシンガンを

連射してくるが、彼女もISのサポートのない銃を撃つのは慣れていないのだろう。かなりまばらであり一夏には一発も当たる気配がない。

 

それでも彼女はお構いなしにさらにスピードを上げる。でも一夏は焦ることなく、ローラーダッシュで逃げる。どんどん距離がつ縮まっていくが、一夏は一向に焦りを見せることはない。

 

おそらく今の凰は周りが見えていないに違いない。それとは逆にこちらは周りをよくみていた。

だから分かる。焦る必要などないことが。

 

「こんのおおおおおお!!」

 

「側面に気をつけろ」

 

突如、凰の側面から鋭角状の物体が滑り込んできた。それは凰の体制を簡単に崩す。もともとかなりの速度が出ていたため、簡単に躓いた彼女の機体は、前のめりの状態で浮かび上がった。

 

「へ?」

 

「じゃあな」

 

凰が最後に見たものは、サブマシンガンの銃口をこちらに向ける、蘇摩の横顔と、嫌味につり上がった口元だった。

 

ダダダダダダ

 

合計6連射。全て凰の生身の部分を的確に撃ち抜いた。無論顔面も含めて、だ。

 

あの時蘇摩が凰に向かってスライディングキックをかましたのだ。頭に血が昇っていて周りが見えていなかった凰はあっけなく躓いて、しかも速度が出ていたためにわずかながら飛んだのだ。

走り幅跳びの要領で前のまりに飛ぶ彼女は、身動きができるものではない。そこに蘇摩は止めとばかりに銃弾を撃ち込んだのだ。

 

しかも最初に攻撃するなと言われた生身に向かって。

 

「こええええ……っと!」

 

一夏は、蘇摩のあまりに慣れきった動作と動きに感心しつつも、すぐに左腕の物理シールドで側面からの射撃を防いだ。すぐにローラーダッシュで動きながら銃撃のあった方向を見やる。

すると、比較的こちらに近い距離で、シャルが一夏と同じように動きながら銃を構えていた。銃口から煙が出ているということは多分シャルが撃ってきたのだろう。

 

「やるね一夏。今のはいい不意打ちだと思ったんだけどな」

 

「そりゃどうも!」

 

一夏はまだなれないながらも両手でサブマシンガンを構えて、撃つ。さっきよりは安定した精度でシャルを撃つがシャルは、滑らかに左右に機体を振って、一夏の狙いから機体を外していく。

 

「くそっ」

 

「撃ち方もだいぶよくなってきたけど、ちょっと肩にハマり過ぎかな?」

 

シャルも同じようにサブマシンガンを構えるが、すぐに何かに気がつき、一夏から距離を取る。

 

一夏は、シャルの突然の行動に戸惑いながらも、何かあったのかと後ろをちらとだけ見た。

 

そしてシャルを追いかけるようにローラーダッシュを全開にした。

 

「付いてこないで一夏!」

 

「いや、あれを見たら誰だって逃げたくなるよ!」

 

一夏が指をさした方向には、凄まじい速度でこちらに近づきながら格闘戦を行っているラウラと蘇摩がいた。

 

「ぐ!やはり『白い閃光』の名は伊達ではないか!だが、これの扱いならば負けん!!」

 

ラウラの蹴りを蘇摩は状態を反らして躱し、カウンターとばかりに右足の回し蹴りを放つ。それをラウラは左腕のシールドで防いで、右手を突き出す。

蘇摩はそれを回転運動でかわすと、左足の後ろ回し蹴りを入れる。

 

「やるねえ。だがな!!」

 

ラウラはそれを両腕をクロスさせて防いだ。そしてその足がもどる前に右足で蹴りを入れる。だが、蘇摩はそれを後ろ回し蹴りを放ったの足で踵落としをして撃ち落とした。

ラウラは右足が撃ち落とされた瞬間に、その勢いを利用して強く地面を蹴り、左腕の拳を突き出す。蘇摩はそれを口元を釣り上げながら、首の動きだけで躱した。

 

そして、それに対するように、右足でミドルキックを入れる。ラウラはそれを左足の膝で受けた。

 

傍から見てるだけで息が詰まるようなレベルの攻防。しかもそれをローラーダッシュで動きながら行っているのだからすごい。

 

っていうか……

 

「こっちくんじゃねえよ!!」

 

何の因果か、本人たちが移動しながら行っている格闘戦。その先には絶妙な位置に一夏たちがいた。

 

未だ難を逃れている箒とセシリアは触らぬ神に祟りなしとでも言うのか、2人でEOSの乗り方だとか、どういうふうに扱うのかとかを仲良く練習していた。




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