インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~ 作:鳳慧罵亜
「こいつ!」
鈴の甲龍の衝撃砲は、『敵』のエネルギーシールドによって阻まれる。鈴はそのまま『瞬時加速』で突撃し、衝撃砲があたあった部分のシールドに双天牙月で斬り込む。
両手で振りかぶった斬撃はシールドとぶつかりエネルギー特有の火花のようなものが散る。だが、シールド自体には特にダメージはなかった。
「くっ!なんて硬さなのよこいつ!!」
「鈴さん!下がってくださいまし!!」
セシリアの声に従い、後ろへバックする鈴。そこにセシリアの射撃が入る。だが、『敵』それを避けると両腕をそれぞれに向ける。
「またぶっぱなしてくるわ!避けなさいよ!」
「っく!なんてこれで何発目だと思っていますの!?」
先ほどと同じようにこちらの攻撃を避けては砲撃で反撃してくる。こちらが何もしなければどちらかに格闘戦を仕掛け、それに対応した動きを見せると、また攻撃を避けて砲撃してくる。
それを繰り返していた。
「ったく……これじゃあの時とまるで同じじゃない!」
「本当ですわね……あの時は一夏さんの零落白夜のお陰で切り抜けられましたけど、今度はそうはいきませんわよ?」
「わかってるわよ。ともかく、今は偶然でもいいから直撃を与ることに集中しないと、こっちが終わるわ」
未だどちらも直撃はないが、このままでは此方がエネルギー負けをするか、集中力が切れて畳み掛けられるか。
相手は2人の予測では無人機。ただの機械だ。疲労なんてないし、ないから人間のように集中力を切らすこともない。
そこはきちんとわかっている2人。だからこそ、その前にやつを倒す。
「作戦はありますの?」
「……セシリアのビットでやつの動きを止めて。できれば何発か当てられればよろしく」
「分かりましたわ。鈴さんはエネルギー砲の直撃を避けてください」
「あんたこそ私より先に堕ちんじゃないわよ」
作戦が固まったところで、無人機がセシリアに向けて、突進してくる。大型ブレードを持つ『敵』に対してセシリアはそれを十分に防御するすべはない。
だが、それは本人たちもわかっていることだ。
「いちいちセシリアばっか狙ってんじゃないわよ!!」
鈴はあらかじめ連結させた双天牙月を『敵』に向かって投擲する。回転しながらそれは、『敵』に向かって飛ぶ。『敵』それを大型ブレードで弾くが、その隙にセシリアはその場から離脱。ビットを展開する。
「踊りなさいな!」
4基のビットから放たれるレーザーを『敵』それぞれこ個別に捉えて躱す。だが、4本のレーザーすべてを回避したところで、そのレーザーが4散した。
『
「喰らいなさい!」
まずライフルの射撃。それを躱す『敵』だが、間髪いれずに襲ってきた4本のレーザーは躱しきれずに2発ほど当たる。
だが、当たる部分はシールドでカバーしていたのでダメージはなかった。だが、その瞬間。
背後に衝撃が走った。
「喰らぁえええええええ!!!」
背後に回り込んだ鈴が『龍砲』を乱射する。
完全に虚を突かれた形となった『敵』その直撃に逆くの字に折れ曲がり、さらに衝撃砲の追い打ちがかかった。
「このまま押し切るわよ!」
鈴は衝撃砲の出力を上げる。さらに威力の上がった衝撃砲は、『敵』の装甲を徐々に砕いていく。
セシリアは、その時見た。
『敵』の頭部のカメラが怪しく光りだしたのを。
「鈴さん!下がってくださいまし!!」
セシリアは、危険を感じライフルとビットをフルパワー状態で一斉射撃をかける。
それは『敵』に直撃した。それによりほとんど装甲が砕け散り、フレームがむき出しの状態になっている。
瞬間
凄まじいエネルギーの波が2人に牙を向いた。
「きゃああああ!!」
「くううう!」
虚を疲れた2人はエネルギー波の直撃をもらい、吹き飛ばされる。
装甲が砕け、フレーム飲みの状態になった『敵』。
その周りには青白く光るビットのようなものが廻り、その腕には大型ブレードを持つ。その姿はまるで骸骨の怨霊のようでもあった。
「っく!?何が起きたんですの!」
「知らないわよ!でも、明らかにヤバそうね……」
2人が身構えると、『敵』の周りを回っていたビットのようなものから、大出力のレーザーが放出される。
その威力は先ほどの両腕部から放出されるものと同質だった。
「くっ!」
鈴はそれを避け、衝撃砲を放つ。それはあっさりと『敵』に避けられて、逆に『敵』は『瞬時加速』でセシリアに突進していく。
「セシリア!」
「っく!ですが『ブルーティアーズ』は6基でしてよ!」
セシリアの乗機『ブルーティアーズ』のスカート部のパーツが可動し、ミサイルが顔をのぞかせる。
発射。
『敵』はミサイルをブレードで両断する。爆発とともにかなりの量の煙が『敵』を包む。
『敵』が煙から抜け出た先にあったのは、ビットを集結させ一斉発射の準備が完了したセシリアだった。
「これでフィナーレですわ!!」
合計5本のレーザーが『敵』に牙をむく。
――――
「くっそ!がぁ!!」
蘇摩は『敵』のレーザーを躱す。間髪いれずにそこにもう一体の『敵』がブレードで切りかかり、それを弾く。そこにまた別の『敵』と先ほどの『敵』が十字砲火を浴びせるように
大出力レーザーを撃ってくる。その一発目を避けて、2発目をシールドを展開し、防いだ。
そこへ再び『敵』がブレードで襲ってくる。
「くぅ……!」
大型ブレードを大剣で防ぐ。鍔迫り合いになり、大剣とブレードの交差点から火花が散る。
相手の強力なパワーアシストにより、こちらも左腕で踏ん張っているために、下手に動けない。だが、動きを止めると2機の『敵』からお十字砲火が飛んでくる。
「くそっ」
鍔迫り合いをしている『敵』のブレードを強引に弾き、急上昇をする。そして、間隙を突いて蘇摩は砲撃してくる『敵』の一機に『瞬時加速』で突進する。
蘇摩のIS「アビス・ウォーカー」の加速能力は第4世代機に匹敵する。その凄まじい速度で、接敵し斬りつける。
「はぁあ!!」
左腕の斬撃は『敵』のブレードに受け止められた。
だが、それは予想通りのこと。今、蘇摩は『敵』の射線上の中にいま鍔迫り合いをしている『敵』を巻き込んでいる。あの『敵』が味方関係なしにぶっぱなしてくるようじゃ考えものだったが、
そこまで思考力が敵殲滅思考ではないようだ。
「このまま叩っ斬ってやる……!」
一度剣を弾き上に持っていく、『敵』ブレードを構えたまの状態だ。蘇摩は『瞬時加速』を展開し、直後に再び剣を振り下ろす。
「堕ちろおおおおおお!!」
再び打ち合う剣。だが、今度は『敵』の大型ブレードがパキンという子気味良い音とともに両断され、そして、片腕が切り落とされる。
「!?!?!?!?」
訳のわからない電子音と共に動きを停止させる『敵』。剣を折られた事に動揺しているのだろうか。
こちらは特に難しいことはしていない。『瞬時加速』で速度を一瞬最高にしてその勢いを上乗せした斬撃を入れただけのこと。
『敵』のパワーアシストがもう少し弱ければあのブレードは折れなかったかもしれない。
敵のパワーシストで固定されだような状態のブレードに重い一撃を加える。
ある実験で、固定された大剣に日本刀を叩きつけてどちらが頑丈なのかを測ったものがある。
結果はクレイモアがパッキリを折れた。
つまり、今の状態とほとんど同じということ。
であればこの結果は、蘇摩の大剣と『敵』の大型ブレード。どちらが硬かったのかは明白だったということだ。
「まずは腕一本頂いた!」
口角を釣り上げて得意げに言う蘇摩。だが、状況が好転したわけではない。『敵』一体の戦力は半減したといっていいが、それでも現状3機の『敵』に囲まれていることに変わりはないのだ。
さらに、こちらは消耗するが、『敵』には一切疲労の様子は見られない。無人機とはわかっていても、そのタフさには見習うべきこともあるか。
急に、『敵』の頭部のカメラアイが怪しく光りだした。
「!?」
瞬間、蘇摩に向けて2体が突進してくる。蘇摩はそれを避けるが、間髪いれずに一体が蘇摩を狙い撃ちして、それを避けると今度は背後から2対の『敵』が蘇摩を撃つ。
それをなんとか躱すと、今度は背後と前から敵がブレードを振り上げて、突進してくる。
それを上昇して躱す。今度はそれを読んでいたかのように片腕の『敵』が大出力レーザーを撃ってきた。
「ちぃ!」
蘇摩はシールドを展開しそれを防御する。その隙に『敵』が背後と側面からブレードで斬りかかってくる。
「なに!?」
蘇摩は左腕のブレードで背後の的に対応し、側面の『敵』は蹴りでブレードの持つ腕を弾いた。
それを見越したように腕をはじかれた『敵』はもう片方の腕を蘇摩に向ける。そこからはエネルギー特有の光が覗いている。
「ちぃ―――」
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