インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~   作:鳳慧罵亜

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蘇摩の実力

日本の街中で、蘇摩は一人歩いていた目的は特になく、ただ、街をぶらりと散歩したかったからである。更識から受けた任務は開始までに少し日にちが開く、それまでの暇つぶしというわけだった。

楯無には、早めに帰るようには言われているので、まあ従うけど。クライアントだし。

 

「4年前と比べると、だいぶここも変わったな。高度経済成長ってすげー」

 

ややずれたことを言いながら歩いている蘇摩。少しして、ふと立ち止まる。店の看板を見ると@(アット)クルーズと書かれていた。

 

「ここか。此処等辺で飯が美味いのは」

 

4年も経てば、街並みは変わるし、店も変わる。蘇摩は今どこの店がうまいのかは知らなかったため、態々交番にいって、ここら辺でうまい職位ができる店を知らないかと訪ねた。

それで、帰ってきた返事が先ほどの店だった。

 

(まあ、所謂メイド喫茶て場所か・・・・・・あとにも先にも縁のない場所だと思っていたが、えてして人生ていうのはわからんものだ)

 

とりあえず入る。中は割と人気のある店なのか結構入っていた。

 

「お客様、@クルーズへようこそ」

 

執事服を着た金髪の人が迎えてくれた。顔立ちは、男性にしては線が細く、流線的だ。女性にしては、部分的に筋肉がよく付いている。

正直、一見しただけでは判別は難しい。同じような人間がRAVENにもいるからな。

 

「有難う。一人だけど、空きの席はあるかな?」

 

「分かりました。では窓際の席へ案内します」

 

よかった。どうやら待たずに飲み物は飲めそうだ。飯はメニューを見なければよくわからないが、まあそれなりのものはあるだろう。席へ付く。

今度は、メイド服の女性が、水を持ってきてくれた。こいつは驚いた。なんとドイツの名高き代表候補生、IS部隊シュヴァルツェア・ハーゼ部隊長のラウラ・ボーデヴィッヒではないか。

IS学園に転入したという情報はあったが、どうやら本当だったらしいな。

 

「水だ。飲め」

 

「有難う」

 

簡潔な言葉とともに、少し強めにテーブルに置かれたコップをまずは、一口飲んだあと、テーブルに戻す。そして、注文を一つ。カマかけようかと思ったが、こんな場所で、変に目立っては、のちの行動に影響が出るため、やめることにした。

 

「悪いけどメニューを持ってきてくれないか?水だけではさすがに昼時は辛い」

 

そういうと、彼女は一言「わかった」とだけいい、踵を返した。さすが軍人というべきか、動きの一つ一つに無駄がない。ただ、バイトか何かは知らんけど、店で働くんなら、もちっと愛想よくしたほうがいいんじゃね?まあ、あの冷たさが、そっち方面の人には人気なんだろうけど。

 

もらったメニューで、適当に注文し、昼食を頂く。確かに美味しい。こんな美味しいスパゲティを食べたのは大体イタリアへ出張してた時以来だから、約1年と少しか。

そんな感じで、30分ほど食事を堪能していたとき、それは起きた。

 

「全員動くんじゃねえ!!」

 

ドアを破って侵入してきた3人組の男たち。その中のリーダー格の人間が、その言葉を吐いた。

 

一瞬、何が起きたのかが、分からずに、店内は静まり返る。がそれもすぐに発せられた銃声を皮切りに悲鳴が上がる。

 

「騒ぐんじゃねえ、静かにしろ!!」

 

男たちの格好はといえば、ジャンパイーにジーパン、顔に覆面をかぶり、手にはそれぞれ銃を、背中にバッグを背負っている。まあ、見るからに強盗だろう。

いまどきあんな強盗っぽい強盗なんてほとんど見ないと思うが。

 

「あー、犯人一味に告ぐ。君たちは完全に包囲されている。大人しく投降しなさい。くりかえす―――」

 

おいおい、警察の対応が早いのはいいが、手段が古すぎるだろ。警告の前に、SATかなにかを裏口から侵入させろって。じゃなきゃけりゃ、人質取られて膠着するだろう。あ~あ、言わんこっちゃない。こいつらここの客さんたち人質にするつもりだぞ。

 

「おい、聞こえるか警察ども!人質を安全に開放して欲しくば車を用意しろ!!勿論、追跡や発信機なんて受けるんじゃねえぞ!」

 

そう言って警察に向け、発泡するリーダー格らしき人物。幸い警察側はパトカーのフロントガラスが割れた程度で済んだようだ。ただ、警察側も、強盗等の要件を飲むわけにはいくまい。

彼らにも面子ってものがある。それに強盗たちは下手に人質を殺すわけにも行かない。下手に殺したら警察側が強硬手段に出る恐れがある。こうして、基本的に日本で起きる立てこもりや強盗などの人質事件は膠着し、長期化するのだ。

 

正直、やってらんない。こんなところに何時間も居たくはない。目立つのは避けたいがこの際仕方がない。

恨むんなら、今日、この時間帯に強盗を起こしたおのれらの愚を嘆け。戦争処女(アマチュア)ども。

 

――――

 

(一人はショットガン。一人はサブマシンガン。そしてリーダーがハンドガン。他にも予備でもっている可能性もあるけど、とりあえずは・・・・・・)

 

目立たないようにしゃがみながら、シャルロット・デュノアはもう一度、店内を確認しようと辺りを見回す。そして、驚きに目を見開いた。

 

そこには銀髪の少女が立っているではないか。シャルトットはその少女のことをよく知っていた。ついさっきまで、一緒に出かけて、この店で成り行きでで働いていたのだから。

そして、さらに彼女を驚かせる要因があった。銀髪の少女、ラウラの影になっていて、パッと見よくわからなかったが、窓際のテーブルに一人、余裕綽々といった顔をした人物が座っていた。

シャルロットは、その人物に少し見覚えがあった。ほかのお客さんとは違った雰囲気で、足運びや挙動一つ一つに、明らかに一般の人と胚芽雨雰囲気をにじみだしていたから、頭に残っていた。そして、その人物はゆっくりと椅子から立ち上がった。

 

「おママゴトはそこまでにしておけよ。戦争処女ども」

 

 

――――

 

「おママゴトはそこまでにしておけよ。戦争処女ども」

 

その一言は、強盗たちを怒らせるのに十分すぎるほどの効果を持っていた。手下の二人が蘇摩に銃を向ける。そして、リーダーが一歩足を前に出した。

 

「何だてめえは。騒ぐなって言ってんのが聞こえなかったのか?」

 

そう言って、銃を向ける。だが、蘇摩はそんなことにも、動じることはなかった。そして、こともあろうにこう言い放った。

 

「は、銃を向けた程度で、俺を抑えた気になってんじゃねえよアマチュアが、録すっぽ人も殺したことねえくせにいきがってんじゃねえよ。所詮てめえらは銃を持っても撃てるのは一般市民くらいだろう。戦場で兵士を撃つ事もできはしない」

 

「なんだと!!」

 

案の定リーダーは怒り心頭と言ってご様子で、怒鳴る。だが、蘇摩は恐怖を感じるどころか、一歩前に出て、足元のナイフに、つま先を掛けた。

 

「ちょうどいい。お前らに戦争の心得ってものを教授してやるよ。ありがたく思え」

 

爪先でナイフをかち上げる。縦に回転するナイフが、腰の高さまで上がり、落ちる。その瞬間。縦に回転するナイフの柄を綺麗に蹴り飛ばした。

銃弾のように飛来するナイフ。それは、強盗の一人が持っていたショットガンに直撃し、その手からはじき飛ばす。その光景に強盗たちは、目の前の少年から目を離してしまった。

 

「なっ!?」

 

「ひとつ」

 

その一瞬で、蘇摩は強盗の一人に距離を詰める。そして、肘鉄をショットガンを持っていた強盗の鳩尾に入れた。

 

ズムッという低く、不気味な打撃音が響き、崩れ落ちた。強盗は目の前に起きた光景に2度目の驚愕をする。

 

「敵から何があっても絶対に目をそらすな」

 

「う、うわああああああ!」

 

「ま、まて!!」

 

恐怖心に駆られたもう一人の強盗はリーダーの制止も聞かずサブマシンガンの引き金を引いた。放たれた銃弾は、窓ガラスをわり、テーブルに穴を穿ち、椅子を弾き飛ばす。だが、

それだけの量を乱射しても、本来狙ったはずの少年には、一発も当たらなかった。

 

「ふたつ」

 

蛇行するように走る少年は、強盗の目の前で床を蹴り、飛び上がる。あまりの速さに、消えたと錯覚し、あたりを見あたす強盗。直後、首筋に衝撃が走る。

 

みしっ、というなってはならないような音と共に、二人目の強盗が2m程吹き飛ばされた。今の一瞬で蘇摩は、強盗の上を飛び、後ろへ回り込む。そして、足が着地する前に、体をひねり、踵回し蹴りを首筋にお見舞いしたのだ。その威力は吹き飛ばされ、床に横たわる強盗の一味を見ればわかるだろう。

 

「常に冷静になって周りを把握しろ。取り乱した時点で、ジ・エンドだ」

 

「・・・・・・すごい」

 

シャルロットは、目の前の少年の力に驚きを隠せないでいた。ISのフランス代表候補である彼女は、拳銃程度なら躱せる自信がある。だが、銃弾を捉える彼女の目にも、目の前の少年の動きは

ほぼ、捉えることは叶わなかった。辛うじて、最初の動き出しから接敵までの動きは、ぎりぎり目で追えたものの、次のサブマシンガンの雨を躱しきったあの動きは、とても負いきれるような動きじゃない。

というより、あんな動きが人間にできるのかと疑いたくなるほどである。ラウラの方を見ると、彼女も同じことを思ったのか、あまり表情には出ていなかったが、目を見開いていた。

自分たちでこうなのだ。周りの人達には彼の動きは完全に消えたようにしか映らないと思う。

 

だが、さらに驚くべき事が起ころうとしていた。

 

「くそお!なんで俺たちがこんなガキなんかにい!!」

 

「みっつ」

 

最後に残ったリーダーが叫び、銃を彼向かって、撃つ。銃弾が彼の頭に当たる寸前、消えた。

 

「な!?」

 

「うそ!?」

 

「馬鹿な!」

 

直後。男が持っていた銃がはぎき飛ばされ、その後ろに、少年が立っていた。今のは、完全に見えなかった。動き出しの挙動も、体に力を入れる為に踏ん張った様子も見えない。

それは、ラウラも同じだったようで、少年を除く3人が驚愕の声を上げた。

 

「敵を見た目で判断するなよ。アマチュア」

 

リーダーの後ろに立っていた少年が呆れた声を出す。リーダーが、振り向こうと足を動かした時には既に、少年の足が、振り上げられていた。

 

 

       ズゴン!!

 

 

まるで、金属バットでで殴ったような、決してかかと落としでなるような音ではない音がした。それと同時に、床に張り付くように叩きつけられた男。かかと落とし一発で、いったい何キロの

圧力が加わったのだろうか。理解に苦しむ。

 

暫く、無音の様に静まり返る店内。ジェットコースターのような急展開についてこれなかった店員を含む一般人はゆっくりと頭を上げた。

 

「お、おわった?」

 

「私たち、助かったの?」

 

ざわざわとし始めた店内では、例の少年が、頭を掻いていた。まるで、やってはいけないことをした高校生が、若干後悔しているような雰囲気である。

 

「さて、更識に情報統制でもかけさせるか、さっさとこっから退散して、知らぬふりをするか・・・・・・」

 

状況を理解し始めた一般人たちの目には『休日にひとりで遊んでいた高校生くらいの少年が、強盗たちを退治した』といった感じに写っているのだろう。

 

これは、面倒なことになった。

 

どこかの面倒嫌いの捨て台詞が頭に浮かぶ。いや、ほんとその通りだよ。

 

店内の様子を見ていた警官たちが、一斉に店内に入ってくる。いやはや、行動が早いことで。

 

報道陣立ちも集まってきている。早めに退散するか・・・・・・

 

そう思った矢先、状況が急変する。

 

「畜生!捕まってムショぐらしになるなら、いっそ全部吹っ飛ばしてやらあ!!」

 

チッ、打ちどころが甘かったか、随分復活が早いことで。強盗のリーダーは、立ち上がるなり、ジャケットを左右に開く。そこには、まあ40M四方は吹き飛ばせるレベルの爆弾が、体に巻きつけてあった。

プラスチック爆弾。まあ、レミントン持ってた連中だ。どうせC4だろう。起爆スイッチは無論リーダーの手の中にある。

 

「うわー」

 

「最後まで古ー」

 

そんなつぶやきが皮切りになったのか再びパニックに陥る店内。シャルロットやラウラも、突然の行動に、一瞬、対応が遅れた。だが、

 

「よっつ」

 

ボギン

 

 

鈍く、重い音と共に、リーダーの右腕、肘と手首の中間、ちょうど前腕部に位置する部分が二つに折れ、腕の関節がひとつ増えたような状態になった。いや、もはや折れたと言っていいのか、骨や筋肉がむき出しになっている。

 

リーダーの腕を掴んでいるのは蘇摩。いつ動き、男の腕をへし折ったのか、それがわからないほどに行動は早かった。

 

「ぎゃああああああああああ!!」

 

「自爆する気なら宣言するなよ。戦場なら既にお前は蜂の巣だぜ?。馬鹿が」

 

呆れ返ったような声とは裏腹に、凄まじい力だ。左手で、リーダーの腕をへし折ったのだ。しかも、てから落ちた起爆スイッチを、足で、踏み潰す。ガシャンという音と共に、

起爆スイッチは無残な石油の塊へとなり果てた。

 

「お、俺の腕が、うでがあああああ!!」

 

男は自身の腕を押さえ、床に崩れる。だが、蘇摩は容赦はしない。止めとばかりに、右足を振り上げる。

 

「勉強になっただろう?特別だ。受講料は無料にしておいてやる。ありがたく思え」

 

リーダーの顔面に蹴りという名の鉄槌が振り下ろされた。

 

警官たちが、強盗たちを取り押さえた時には、既に少年何処へと去っていった。その速さはさながら白き閃光(ホワイト・グリント)が如し。

 

「アイムシンカー トゥ~トゥ~トゥ~トゥトゥ~」

 

その鼻歌が、店にいた人が聞いた少年の最後の声だった。




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もう一人の主人公は、立場場出番は少なめになると思いますが、おいおい登場させていけたらと思います。

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