インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~ 作:鳳慧罵亜
今回はそこまで長くはなりません。
全2部構成になり、今回の話は長めで、次回の後編は短めになる予定です。
ではお楽しみください。
―――思い出す。あの時のことを。
幾許かの時が流れていった。
私は、今までともに戦ってきた企業の奴らより、入ってきたばかりのこいつのほうが信用できたし、信頼できた。だから、何度もこいつと作戦を遂行していった。
こいつは本当に、私の障害を取り除いていった。作戦の遂行で、私の邪魔をしようとするものは、全て後ろからこいつに撃たれ、死んでいった。
こいつごと敵を撃った事も何度かあった。一度私のミスであいつが一時人質になったことがある。
その時私はやつごと敵を撃った。撃ったのは奴がレイに拳銃を向けていた手だったが、一歩間違えればやつは死ぬところだった。
だが、あいつはそのことに何の文句もいうことはなかった。互いに利用し合う関係。そうだ、私は何の不満もなかった。あの日までは
そして、あの日。私たちの利用し合う関係が、終わったあの日がやってきた。
任務の内容は、イギリスのIS実験基地への襲撃、そしてイギリスの第3世代実験機の強奪。
――――――――
レイはマドカの後ろを走っていた。その後ろからは、銃声と銃弾が迫ってくる。だが、相手も混乱の中にあるのだ。そう当たらないし、追いかけられているとは言え、結構な距離もある。
二人が施設内に侵入し、陽動部隊が戦闘を開始させた後、イギリスが実戦試験を行う予定であったBFF製第3世代2号機「サイレント・ゼフィルス」を強奪する。陽動にはオータムが出ている。
相当派手にやっているらしく、思ったより人が外に出払っていたため、侵入は容易だった。
「ふん。ザルな警備だな。こんなんだから、古いことしか取り柄のない国だと言われるのだ」
「マドカ、油断はしないでね。まだここの代表は出張ってないんだから」
そう、懸念すべき事項は、陽動舞台が派手にやっているにもかかわらず、イギリス国家代表、ロスヴァイセ・ヴィンヤードが戦場に出てきていないこと。外での戦闘は、
ロスヴァイセではなく、通常部隊が戦闘をしているなぜ、ロスヴァイセが戦場に出てきていないのかという疑問は
、彼らにひとつの可能性を思い至らせるには十分だった。
通路を走り抜け、目的の扉の前に立つ。そこは第2実践試験室。と書かれていた。
あらかじめ、研究員から奪ったカードで扉のロックを解除する。
中に入ると、中に慌ただしく作業をしている研究員や、おそらくそこに鎮座されているIS「サイレント・ゼフィルス」に搭乗するテストパイロットが慌ただしく作業をしていた。
だが、私たちには関係ない。手に持ったアサルトライフルで、容赦なく射殺していく。悲鳴や、発泡音、血を噴出す音や硝煙と血の匂いに部屋はまもなく満たされる。
「マドカ、こっちはOKだよ」
「ああ」
邪魔者を片付けた私たちは、早速ゼフィルスを強奪するために、レイはコンピュータでゼフィルスを搭乗可能な位置に移動させ、私は今まで着ていた。戦闘用の防弾ジャケットを脱ぎ捨てた。
ジャケットの下に来ていたISようスーツが顕になる。そして、サイレント・ゼフィルスに歩み寄った。
「そこまでだ。侵入者」
銃弾が私の頬をかすめた。振り向くと、そこには拳銃を持った銀髪の女性。そう、イギリスの国家代表ロスヴァイセ・ヴィンヤードだ。
「随分と派手にやってくれたな」
そういって、拳銃をこちらに向けたままゆくりと近寄ってくる。っく、下手に動けばそのまま殺される。だが、貴様は勘違いしているな。私はひとりじゃないぞ
「M!!」
私をコードネームで呼んだ金髪の少年は、アサルトライフルで、ロスヴァイセを牽制した。
「チッ」
ロスヴァイセは舌打ちをし、飛び退く。そして、
「貴様ら、生かしてここから出れると思うな!」
純白のIS「ヴァルキュリアC」を身に纏う。そして、ライフルを私に向けたが、私は動じなかった。ISをそちらから持ち出したところで、私は殺せん。
橙色の閃光が、ヴァルキュリアCを襲う。ギリギリで飛び退いたものの。ライフルの銃身が、半ばから綺麗に溶解し、消し飛んでいた。
そして、物陰から、彼は姿を現した。
漆黒の、鉤爪を持った巨大な右腕を纏わせた少年。レイ。その右腕からは、掌から未だに橙色の粒子が残照のように漏れていた。
「マドカ。今のうちにゼフィルスを」
「ああ」
そう言って私はゼフィルスへと向かう。無論それを阻止しようと、あの女は右肩の砲塔を此方へ向けるが、
「させない」
またしても、レイの「あれ」によって阻まれる。あいつのISはおそらくこの世界に現存する全てのISの中で、最も兵器として完成されている。そして、アイツは、自分のISを完全に展開した。
「『ランブリング・メガセリオン』」
それはまるで機械の獣のようだ。流線的で、それでいて尖ったような外見をしており、ボディのいたるところに備え付けられたブースタ。そして、背部に装備されている。
大型スラスターと小型のポッド上の物体。
なにより、一番目を引くのが、アンバランスなまでに大きな右腕だった。
五指は獣のような巨大な爪になっており、その掌は、大きな穴があいている。そして、その肘関節には小型のブレードが装備されている。
アイルランド製第3世代型。ランブリング・メガセリオン。訳して「大きな音を響かせる獣」
奇しくも私が強奪する予定の「
「ちっ、アイルランドの第3世代。つまり、お前は・・・・・・!」
ロスヴァイセは苦虫を噛み潰したような表情をした。そうだ、彼女は僕のことを知っていたね。
「そうです。ロスヴァイセ。僕ですよ」
そう言って、右腕を向ける。既にその掌から、橙色の粒子が、とめどなく溢れてはまた収束されていく。を繰り返していた。
「レイ・ベルリオーズです」
「くそっ!!」
先程とは比べ物にならないほど巨大な橙色のレーザーが撃ち出された。アイルランドの企業とイギリスの企業が互いに試験的な技術を出し合い完成された機体。
数ある試験武装の中で、一番危険なもの。
右腕部に装備されいている。第3世代武装「イメージインターフェース式リアルタイムでの出力と収束率を変更可能な重粒子レーザーキャノン」『シヴァ』
エネルギー総量3006。レーザーの温度はおよそ5700℃。それは太陽の表面温度に匹敵するものである。それだけの熱量のものが流れれば周りの空気は一瞬で電離(イオン)化し、
凄まじいプラズマの渦流と、灼熱の奔流を巻き起こす。これはセラスのISノブリスに装備されていたウイングブラスターの発展である。
そのレーザーは、壁を紙のように貫き、施設に大穴を開け、外への道を作り出す。凄まじい火力を誇る武装であり、しかも重粒子自体荷電粒子の一つである故か、
そのエネルギーの確保は機体からのエネルギー供給ではなく、武装自体に専用のジェネレータ。背部のポッド上の物体にコンデンサがあり、
機体のエネルギーロスは無い。しかも、腕の内部には冷却装置が、いくつかあり、それのおかげで、短いサークルでの発射が可能。
つまり、引き金さえ引ければ短時間に何発も発射が可能である。無論限度はあるが、それでも、ほとんどタイムラグなしでこれだけの砲撃を連射可能というのは、
驚異にほかならない。
「こっちは終わったぞ」
「くっ」
いつの間にか、ゼフィルスの方も奪われてしまった。これで2対1。正直勝てる見込みは薄い。外に出たほうがましだろう。そう思い、ロスヴァイセは、メガセリオンのあけた穴を素早く抜けていった。
外に出たあと、予備のライフルを展開。外ではアメリカの第2世代が暴れていた。やつは私に気づいたようで、こちらに顔を向けた。
「へっザコの相手も飽きてきたんだ。てめえも殺してやらあ!!」
そういって8本のアームを稼働させ、私に突進してくる。
「馬鹿め」
右肩のキャノンを展開。標準合わせ、発射。
ガガガガガガガガガガガ
「な!?」
毎秒20発で発射される700個のベアリングボール弾は散弾のようにある角度に散りばめられる。圧倒的な近距離での面制圧能力を誇るこのキャノンは
瞬く間にやつのIS『アラクネ』の装甲をズタズタに裂いていく。
「く、くそ」
やつは両手で早急にエネルギーを綾取りのように作り出し、放り投げたが私に届く以前に吐き出される弾丸の津波に引き裂かれていくだけである。
そして、やつは散弾の雨による衝撃で身動きが取れん。私はセラスのような甘ちゃんじゃない。
ライフルを構える。標準を合わせる必要もない。発射
「ぐはあ!!」
1発2発。心臓と脇腹の部分に直撃。シールドにヒビが入っただけだが、エネルギーは削れていく。そして、私の攻撃ではエネルギーは減ることはない。
弾が続く限り、何発でも撃てるのだ。
「このまま殺してやる」
そして、ショットカノンの発射をやめ、ブースト。
そのまま細い脚部の先端をやつの腹に突き刺し、地面に急降下。ドガァンという派手な音と共に、私はあの女を地面に叩きつける。
「ごばアア!!」
吐血するか。当然だな。
そして私は、ライフルの銃口をゼロ距離でやつの顔面に着けた。
「思った良き綺麗だな。その顔を吹っ飛ばしてやる」
「て、てめえ……!」
引き金に指を掛け、まさに引き金をひこうとしたとき―――
水色の純プラズマバレットが私の後ろから放たれる。
「ふん」
それを避ける。プラズマ弾はあのおおなと少し離れた位置に着弾し、破裂しそれはプラズマの渦流となってECM効果を発揮する。後ろを向くと、例の二人が既に臨戦態勢だった。
「………本当なら、ゼフィルスは破壊したくはなかったんだがな」
だが、そうも言っていあれない状況になってきたようだ。これ以上先頭を続けては、国際問題に発展しかねない。
それに、このまままんまと逃げられては、こちらの沽券に関わる。
「『これ』を使うのは第2回モンド・クロッソ以来だ」
「「「!?」」」
3人は、驚愕した。
目の前にいたはずの、ヴァルキュリアCが目の前から消えたのだ。
「馬鹿な!!」
「そんなはず!?」
「糞があ!」
3者三様の反応を示す。いい気味だ。
これこそがこのヴァルキュリアCの
肉眼はもちろん、カメラ等のものからその姿を消す。
それは熱波、光波、電子、電波に及び空間位相以外全てから姿をくらませる。
しかし、存在が消えるわけではないし、見えなくなるだけなので触れれば実態はあるし、立体なために空間位相を索敵すれば結構簡単に引っかかる。
だが、そんな真似はさせないし、ロックオンができないんじゃあまともに撃っても当たらない。
ドオン!
「っく」
背後に周り、撃つ。直撃。メガセリオンは後ろを向き、右腕のキャノンを撃つが、既に私は移動し、ゼフィルスに狙いを定める。
ドオン!ドオン!ドオン!
連射。既に強奪されてしまったので、奪え返すには少々遅すぎる。ならば、破壊してしまう他ない。
ついでにもう2機も処分してやる。
「ぐはっ!」
「M!くそっ」
やはりレイは頭の回る男だ。すぐに空間位相センサーで、私の動きの軌跡を読み取り、私がどこにいるかをおぼろげながら探り当てていくが、
そう簡単にあたりはしない。左手に装備されているプラズマライフルを避け、胸部装甲にスナイパーライフルの弾丸を直撃させる。
「ぐっ―――!!うあああああああああ!!!!」
私の目論見は的中した。やはり『核』にダメージが入れば、コイツはすぐに行動不能にできる。
そして、一気に突進。一度胸部装甲に蹴りを入れ、地面に叩きつける。そして、一度ステルス稼働時間が終了する。
もう一度展開するのに10秒ほどのインターバルが必要になる。
だが、メガセリオンは既に私が踏みつけており、ゼフィルスはダメージ負い、アラクネは戦闘不能。
当然だ。私がIS勝てないのはこの世に2人だけだ。
だが、レイ。お前とは一度話をしたかったな……。
一抹の悲しさ。4年前、コイツは突然アイルランドから行方不明になった。
原因は恐く、当時アイルランド代表候補、カノン・メンフィスが死亡したことだろう。事故死ということでこの事件は幕を閉じられたが、
私はそれは嘘だということを知っている。
……いや、よそう。所詮詮無きことだ
感情の表現って難しいですね。うまくできているか心配になることが多々あります。
感想、意見、評価、お待ちしています