インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~ 作:鳳慧罵亜
文化祭当日。俺は生徒会室に一人椅子に座っていた。
まだ可能性の域を出ないが、仕掛けてくるとすれば今日。いつ、仕掛けてくる?
一般開放はしていないらしいから、一般人に紛れて~という手段は使えない。
あるとすれば企業の人になりすますか、直接急襲するか。
後者の手はまずありえない。前者の手が一番安全で、確実。
なら、誰になりすます?
レイレナードのエルザムか?インテリオルグループのセシールか?それとも有沢の社長……は、ないとして、もしくは……
pipipi……
メールか。
携帯を見ると、『Itzam』と記されている。中身を確認すると、求めていた情報が記されていた。
『貴方に頼まれたとおり、一通りの企業は調べたわ。すると、あなたの言っていた通り『みつるぎ』の巻紙礼子という人物が一度事故で入院。すぐに現場復帰をしている。要注意よ』
顔写真と共に送られてきた情報。前に俺がイツァムに頼んだことの一つは、可能な限りこちらの求める情報のなかで、一番精度の高いものをピックアップして俺にくれ、というものだ。
それが今回送られてきた。頼んだのは、『企業の広報委員で、不自然な動きを見せた人員を探してくれ』広報委員は一番こちらに入ることができる。
そして、IS学園の行事に来れるの企業は数が限られる。
その中で、不自然に入退院をしたものや一時期行方不明になったものなどを探してくれと頼んだら、思ったより数が少なかったな。
一人とは、俺の見立てではもう二人ほどやってるかと思ったが……。
ん?P.S.がある……
画面をスクロールした。
『P.S. ロスからの情報。イギリスのBFF製第3世代が何者かによって強奪された。組織はISを使用。数は2。内一人は男かもしれない。って、気を付けてね』
……BFFはロスのヴァルキュリアを作った会社じゃねえか。ロスからは警備は相当厳重だと聞かされていたし、それも彼らにとって最重要機密であるISの第3世代を強奪されてとなると、かなり手練の組織の行動だ。
BFFってことはブルーティアーズと同型機か。それに急襲した2機のISの内1機に男性が乗っている可能性か……嫌な予感がするな。
(さて、一夏に付けた(無断で)GPSは……)
PCのモニターを見ると、今は外に出ているのか……あと1時間半ほどで生徒会の出し物が始まる時間。上手くやれよ、楯無。
だが、まさかあんなふざけた出し物が、まさか半分ほど罠になっているとはな……。もう半分はガチに遊びだろう。さて、俺も行きますか。
――――
「ハロー。ソーマ」
学園の校門にもたれかかっていた女性は、こちらを見つけると、手を振りながら歩み寄ってきた。
「よくこられたな。イツァム」
茶髪にウェーブのかかった長身の女性、イツァム・ナー。オーストラリア国家代表にして現RAVENS ARKランクA-1。
名実ともにRAVENの頂点に立つ女性であり、超が3つほど付きそうな程の有名人である彼女は黒いジーパンに紅色のYシャツというシンプルで、派手というかなんというか、微妙な服装のチョイスだな。そんでグラサンか。
「これでも、一番地味なやつ買ってきたんだからね。この日の為だけに」
「アホかお前は」
「いいのよ。1セット12万程度ですんだし」
12万が程度て……。
金銭感覚を養え。と言いたいが、セラスもロスも金銭感覚がホントどうかしてるぜ。俺なんて最近一番高い買い物が日本に来る飛行機代3万7千だぞ。
おかげで報酬金が貯まりに貯まり、カードの金額表示限界を超えて最近泣く泣くブラックに手を出す羽目になったわけだが。
「つうか、ここに来るんなら、メールくれなくても良かったんじゃねえの?」
俺のもっともな質問にイツァムは辺りを見回しながら言った。
「本当は会いに来るのは2日目の予定だったのだけど、直接亡国のエージェントを見ちゃったからにはね」
「巻紙礼子、か」
「そう。だから予定を繰り上げて急遽ここに来ることにしたわけ、お忍びでね」
それなら納得してやるか。まあ、こんなところでくだらない議論を交わしている暇はない。楯無に見つかる前に行動を起こすべきだ。あいつに見つかれば面倒なことになりかねん。
「まあ、変な行動に出る前に片付ければいいのだが、それでは……」
俺が途中で言葉を切ると、イツァムがそれに同調するように続ける。
「亡国殲滅に必要な情報が得られない可能性が高くなる」
まあ、俺たちが手を出すのは連中が動き出したあと、そこで直接エージェントを引っ捕えて、自殺図る前に拷問でもなんでもで、情報吐かせるとするか。
逃がしたらその時だ。次来るまでに確実に捕獲する方法でも考えよう。
「あらあら、顔が怖いわよ?」
「悪いな」
さて、長話もそれくらいに、とりあえず店でも見て回るか。楯無には見つからんように。
「じゃあ、しばらく見てまわろうかしら。案内お願いね」
「ああ、わかった」
――――
「へえ、どの部活も面白いことやってるのね」
「だな。つかこれはやってもいいのか?っつう疑問符が出てくるようなのもやっているからな」
俺が喋ったところで、ちょうどイツァムが足を止める。そこは文化祭の計画書(みせられました)美術部が出し物をやっているところだったな。……でたな運ゲー。
「爆弾解体ゲーム。面白そうね」
「やっていくのかよ……」
部長に手渡されて爆弾。を床に置く。タイムリミットは3分で、見たところ衝撃センサー付きの時間切れでドカン、ちょっとした衝撃でドカンの代物だ。
「簡単ね……。そうだ、ねえ蘇摩」
「あん」
「せっかくだから、どっちが早く処理できるか、勝負しない?もちろん信管直抜きは禁止の正攻法で」
ちなみに彼女が提案している時もずっとタイムは流れている。残り約2分40秒。蘇摩は、少し考える素振りを見せたが、やがて頷いた。
「OK。じゃあ、タイマーが2分を切ったらスタートだ。いいな」
「フフッ。じゃああと、3、2、1、スタート!」
イツァムの掛け声で火蓋を切った爆弾処理対決。二人共手順にやや差はあるが、それでもほとんど同じペースで爆弾を解体していく。傍から見れば、
ただ適当にバラバラにしているように見えるだろう。実際半分ほど適当である。
それも、爆弾の本質。センサーに反応させなければ、火気がそばにない限り爆発しないようになっていることを理解しているからだ。
そして、2分が切った時にスタートし、まだ1分の表示が出るまでに5秒ほど残した段階で最終フェイズに移行した。
「なに、これ……」
イツァムは絶句してしまった。最後に残ったコードが赤と青の2本のみとなったからだ。
(ちょ、こんなの運だのみじゃない。全くとんでもない爆弾もあったものね)
蘇摩も手が止まるが、イツァムと違って驚いたわけではなく「やっぱ運ゲーか」と呆れている様子だった。そして、あまりな爆弾を前に思考がフリーズしかけているイツァムの方へ顔を向けた。
「どうする。お前はどっち切る?」
「……どっち、て言われても。どっちも外れなんてことはないよね」
「はい。流石にそれはありませんよ。ていうかすごいですね。わずか一分足らずでここまで行けたのって、蘇摩とラウラ位だって思ってたのに」
だが、イツァムにはそんなことはどうでもいいらしく、ずっと悩んでいる。ちなみに俺は青い方を切りました。結果は見事不発。大成功で終わったのだった。
「こ、こんなことなら日本のアニメやドラマとか映画とかもっとよく見ておくんだった……」
イツァムがなんかすごいところで後悔しているんだが……サスペンスドラマとかって簪のやつ、持ってたかな。ヒーローものとかは大量にあったのは覚えているけど、つかまだ直接会ってないな。
今度時間空いたら会いにいくか。
ビー!ドワォ!!
おい、その爆発音はダメだろ!ゲッ○ー的に。つかどこからその効果音持ってきた。
イツァムも青い方のコードを切り、結果として爆発させてしまったのであった。
ドンマイ。イツァム。
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