インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~ 作:鳳慧罵亜
何を言ってるのかわからねえと思うが俺も何が起きたのかわからなかった。
多忙だとか時間不足だとかそういうちゃちなもんじゃねえ。
もっとお揃い鋳物の片鱗を味わったぜ・・・・・・
「はあああ!!」
「よっ、と」
一夏の振り下ろしを蘇摩は紙一重で避け、木刀を振り上げる。それを体をひねりながら振り下ろした木刀を翻して、切り上げる。
「お」
「まだまだ!」
蘇摩の木刀を弾きあげ、すかさず弧を描くように振り下ろす。それを蘇摩が躱し、木刀を振り上げ、一夏の首筋を狙う一撃を放つ。
一夏がそれを防ぐと、それを狙ったかの如くに、防御の上から振り下ろし、そして振り上げを繰り出す。
「ぐぁ・・・・・・っ」
連続して放たれる攻撃に一夏はついに防御をはじかれ、木刀が手から離れる。
だが、そこで蘇摩の攻撃は止まらなかった。
「―――っ!」
両腕をクロスさせて、蹴りを防ぐ。が、右足で放たれた蹴りの威力は凄まじく、防御自体は崩れなかったが、体が一瞬浮かんだ。
「しまっ―――」
「もらいだ」
蹴り抜いた右足を反転させて、右の後ろ回し蹴りを繰り出す。それはクロスさせた腕越しに胸部にあたり、2m程吹き飛ばされた。
だが、その程度で蘇摩の攻めはやむ事はない。
「はぁっ」
「っぐぅ」
重い手足を無理やり筋力で引っ張り上げ、振り下ろしを躱しながら、立ち上がる。そして、一瞬後ろを向いて、バックジャンプをする。直後に、一夏のいた場所を木刀が貫いた。
バックジャンプをした先には、一夏が飛ばされた木刀があり、拾い上げると同時に振り上げて蘇摩の攻撃を弾き返す。
が、逆に一夏の木刀が大きくはじかれ、蘇摩の木刀は僅かに軌道を逸らされるに留まった。
だが、僅かに軌道がそれたことで木刀が畳に突き刺さる。それを引き抜こうとした蘇摩が一瞬力んだ隙に、一夏が反撃を試みる。
「はあああああ!!!」
「っと!」
弾かれた木刀を構え直しつつ振り下ろす。それを引き抜いた木刀で防ぐ蘇摩。一夏は直ぐに木刀を引き、蘇摩の側面に回り込み脇腹に薙ぐ。蘇摩はそれを後ろに飛んで避ける。
一夏はそれを追いかけるようにして突きを放つ。
(やはり・・・・・・順応が早い。どんどん早くなる)
蘇摩は突きを躱しざまに木刀で首筋を狙った横薙ぎを放つが、一夏は突きを引き戻し防いだ。
「ふんっ」
「はああああ!!」
蘇摩の振り下ろしと、一夏の振り上げがぶつかり、互の得物が停止する。
ギリギリ、と互いの木刀が揺れ動くなか、一夏は肩で息をしており、蘇摩は至って涼しい顔をしている。
だが、蘇摩はその顔の裏で思考を張り巡らせていた。
(・・・・・・この成長速度に順応速度・・・・・・一種の才能だな。俺の動きを無意識にトレースしているのか。そしてそれを自分で出来る範囲でアレンジをして動く。
体の重しにも既に順応して的確に動けている。これが、こいつの才能ならば・・・・・・)
「はぁあ!」
「ぐあ!!」
蘇摩が力任せに木刀を振り下ろし、一夏の防御を崩す。その崩れ方は、先ほどと似通っていた。一夏は衝撃で木刀を手放してしまう。木刀は一夏の背後に飛んでいってしまう。
そして、蘇摩は蹴りを放つ。一夏はそれを防御と同時に後ろに飛んで、蘇摩の蹴りの威力を利用して、一気に後ろに飛んでいった木刀に近寄った。
(やはり・・・・・・)
蘇摩はそれを見たあとで、一気に畳を蹴り抜き、一夏に近寄る。一夏はそれを見て今度は手を地面について、蘇摩の腹にめがけてケリを放つ。
蘇摩はそれを紙一重で避け、カウンターとして突きを放つが、一夏が蹴りの反動を利用したのか体を捻って交わし、畳についた手はいつの間にか木刀を握っていた。
体をひねったことで、そのまま足で地面を蹴って、飛び起きる。同時に木刀を振り下ろす。
蘇摩はそれを躱して木刀で切り上げる。だが、一夏はそれを振り下ろした木刀を引き上げて防いだ。
「はあ・・・・・・はあ・・・・・・」
「やるじゃないか」
激しく息を切らす一夏に蘇摩はそう言うと、左手で貫手を放つ。首筋にめがけて放たれたそれを、一夏はギリギリで躱す。だが、掠ったのか首に切り傷を作った。
そして、今の貫手を躱したことで、一瞬バランスが崩れたのを蘇摩は自分の木刀の峰を蹴り上げる。
「ぐぅう!!」
一夏は凄まじい衝撃を今度はなんとか耐え、今度は振り下ろしを防御する。だが、その振り下ろしが防御されるのに合わせて峯を掌低突きを合わせた攻撃で、
自分の木刀が肩に直撃した。
「ぐはっ!!」
「そこだ!」
蘇摩は背を低くして、一夏を足払いして体勢を崩させ、底から跳ねるように体を上にあげその勢いを利用した切り上げをもろに喰らってしまい、畳に倒れた。
「っ―――はあ!!!」
衝撃と痛みで息を吐き出してしまい、同時に激しい頭痛に襲われる。
「ふぅ―――」
蘇摩は相変わらず涼しい顔で、少し大きめに息を吐いた。
「やるようになったな。わずか3日でこの出来とは恐れ入ったよ」
そう言いつつ蘇摩は手を差し出す。一夏は蘇摩の手を取って助け起こされた。未だに痛みが走る頭を押さえて、一夏は言った。
「そう言われるのは嬉しいけどよ。正直強くなってる気がしねえよ」
「そりゃそうだ。いくら強くなったとは言ってもまだお前と俺の間にはかなり差が開いてんだからな」
蘇摩はそう言って、木刀を軽く振り回す。
「だが、確実に強くなっている。というよりこの成長速度ははっきり言って尋常じゃない。もう3日すれば、世界が変わってるかもな」
「そ、そうか?」
蘇摩はそう言うが、正直実感がわかない。確かに、両手足につけてる重りには慣れてきたけれどそれだけだ。それに、いつの間にか蘇摩も何か同じように重りを付けてるし。
でも、それだけで動きが衰えないのはすごい。
「そうだ。俺が言うんだからそこまで間違えはない」
蘇摩はそう言って、構えを取る。
「そら、続きだ」
「おう」
こうして、時は流れていく。一夏にとっては自らが強くなる切欠と特訓。蘇摩にとっては―――
――――
RAVENS ARK
地下に存在する施設に、それは存在している。
『AC、メインシステム、通常モード起動成功。続いて、戦闘モード機動準備』
『ジェネレータ。出力安全域を維持』
『各ブースタ。正常に稼働中』
『PPM通電開始、反応は規定値をクリア』
『PPM、正常に稼働しています』
『AMS、稼働率80以上を維持』
『各種センサー、オールグリーンを提示』
『戦闘モード、機動成功。これより、実戦トライアルを開始します』
広い施設の手前のゲートが開き、光が差し込む。その光に照らされ、姿を現したのは装甲を纏った心臓。
機体ボディの四方に搭載されたブースタが青白い炎を噴出し、金属の床を滑走し東京ドーム一個分はありそうな施設に入る。
その躯体の動きはその金属の躰からは想像もできないほど滑らかで、まさに人間の動きそのものである。
大きさは約2m半。人間よりも一回り大きい程度の機体である。
その右手にはマシンガン。左手には何もないが、腕にレーザーブレードが装着されている。そして、両背にハンガーユニットが存在し、
その右側にはミサイルポッド。左側には大型のキャノン砲である。
『第一ターゲット。投入』
放送が入ると、部屋下部にある5個のシャッターから戦車と装甲車が投入される。
砲身がACを向き、直後に砲弾を吐く。
その動きに合わせるようにACは地面を滑走する。その動きは速く、砲弾が壁に着弾した時には既にACが戦車に距離を詰めていた。
左腕のレーザーブレードが起動し、緑色のブレードが戦車を切り裂く。
爆散する戦車を通り抜け、他の戦車が砲身をこちらに向ける前に右手のマシンガンを向ける。
引き金を2秒引く。
その瞬間から吐き出された銃弾は12発。弾丸は全て戦車に撃ち込まれ、戦車は車体から火を噴いて沈黙した。
3機目は2機目がやられるのと同時に主砲から砲弾を吐き出す。それはボディ部に直撃する。爆発と爆煙に包まれたACはその直後にその煙からグレネード弾が飛び出し、戦車を直撃し、
爆発とともに粉砕した。
煙幕が晴れると、そこには左手でグレネードの方針を掴んで構えているACの姿があった。戦車の砲弾の直撃を受けたはずのボディは、煤で汚れ、直撃部と砲弾の破片がぶつかったらしい箇所に
小さい傷があるのみで、大きい破損は見受けられない。
4機目の装甲車は機関砲を発射するが、最初の数発が直撃するが、表面に傷が付くのみで直ぐにブーストでACは床を滑走し、射線から外れる。
床を滑走するACの脚部からは火花が散り、滑走した跡が焦げて残る。
装甲車2機はACの射線に入らないように床を走る。
それを確認したACは右側背に搭載しているミサイルポッドを起動、2発発射する。ミサイルは僅かに山なりの軌道を描き、装甲車にめがけて襲いかかる。
装甲車の速度ではミサイルから逃げ切ることはできずに、直撃を受けた。
爆発とともに装甲車は吹き飛び、2機とも横転し爆発、沈黙する。
ACは地面を滑走する速度を急速に落とし、施設の中央で停止した。
『実戦トライアル終了、お疲れ様でした』
ブザーとともに流れたアナウンス。そのアナウンスを聞いたACは先ほど入ってきたゲートから、再びこの部屋から消える。
――――
「ふぅー・・・・・・」
彼女はシャワー室から出てきた。先ほどの実戦トライアルでは、頼まれた通りのメニューをこなしたため、かなりヒヤヒヤした場面もあったので、冷や汗も一緒に
流したかったのだ。
バスタオルで体を拭き、服を着てドライヤーで髪を乾かす。濡れた茶髪が乾き、軽いウェーブが掛かる。
扉を開けて廊下に出ると、スーツ姿の男が椅子に座り、タブレット端末を見ていた。
「はあいジャック。待ってたの?」
「あがったか、イツァム」
椅子から立ち上がったジャック・O・ブライエンはイツァム・ナーを見て、懐から折りたたまれた紙を取り出した。
「トライアルの結果だ。よくやったな」
「ほんとよ、全武装の使用に、砲弾の直撃を受けるとか普通考えるかしら?」
軽口を叩きながら紙を受け取るイツァム。それを目を通したあと、ジャックに目を向ける。
身長の高いジャックを見上げる形になるイツァムは軽く肩をすくめて見せる。
「でも、これはソーマの方が適任でしょう?私のAMS適正はAランク。ソーマはSランクなのに」
「彼は現在行方がわからん。ニホンの何処かにいることは確実なのだが」
「アハハ。よくあることね。きっと女の子でも引っ掛けてるんじゃないかしら?」
「奴に限って言えばありえん話ではないがおそらく違うだろうな」
ジャックはそう返し、もう一枚の書類を取り出した。その紙には、地図のような物が書かれているが、どこもバラバラで確たる場所は見ただけでは判別しづらい。
「『ネスト』の所在についてだが」
「何かわかったの?」
「いや、それらしき施設は幾つか見つかったが、肝心の本命には当たらなかった」
「そう・・・・・・ふりだしかしら?」
「いや」
イツァムの言葉をジャックは否定し、言葉を続けた。
「2時間前、海底調査チームとの連絡が途絶えた。この近海の調査をしていたチームだった」
「それって・・・・・・」
「ああ」
ジャックは懐からタブレット端末を取り出し、画面を表示させた。そこには、えいろんな国の言葉でなにやら書いてある。イツァムは一通り目を通すと、目を細めた。
「1ヶ月後、開戦になるだろう」
「そう、なら私はどこに付けばいいのかしらね?」
「国についていればいい。おそらくGA、オーメル陣営になるだろう」
「わかったわ。全部貴方のシナリオ通りになるといいわね」
あくどく微笑むイツァムに対しジャックは表情を崩すことなく言い切った。
「無論だ。全ては私のシナリオ通りにことは進む。誰が残るかはわからんがな」
そして、ジャックの言ったとおり、この1ヶ月後に戦争は始まったのだ。
ここで久しぶりの質問コーナー
Q:何これチート。何アレ?なんとか・オブ・バビロン?(106話参照)
A:これぞ大火力の極み。ただ高威力の武器をぶっパすることだけが火力ではないのだよ。あと金ピカは関係ナッシングですよ。
Q:ACキタ━(゚∀゚)━!とは言っても試験クリアしただけだけどwつかこれの下はAC以外にもあんだろw
A:そのとおり、元ネタはロケットに捕まってちょっと宇宙まで行ってくるアメリカ合衆国大統領が登場した機体も含まれているんです
※わからない人は「メタルウルフカオス」で検索
Q:やべぇよ地味だけどマドカも怖えよ。IS消滅させて施設一個クレーターにするとかおかしいだろ。
A:そう。マドカはちょっと陰に隠れたけど充分おかしすぎるISですよねwだが反省はしない。
Q:戦争になったら生き残るヤツが把握できるw
A:まあそうですよね。元ネタがリンクス戦争だもんね。
Q:ジャック・・・・・・一体何王なんだ・・・・・・?
A:興<遅かったじゃないか・・・・・・
Q:一夏どうなんの?これから戦争に巻き込まれんの?
A:まあ巻き込まれるよね(ゲス顔)だって蘇摩があんだけ鍛えてあげてるんだよ?
見せ場もなしにフェードアウトはかわいそうだよ。そこんトコロはきっちりしてるよ?
「ICHIKA(でいいんだっけ?)」とかにならないように強くするつもりだよ?
Q:80cm列車砲ってドーラじゃないの?
A:ドーラは80cm砲の2号機なんですよ。こっちは1号機というわけです。
Q:マドカとレイ。この二人ならセラスに勝てんじゃね?
A:・・・・・・どうなんでしょう?多分2人なら互角くらいかも。
Q:マドカたちの裏もオナシャース
A:え・・・・・・?何、この空気・・・・・・。もしかして、書かないとダメ・・・・・・?