インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~   作:鳳慧罵亜

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久しぶりの投稿になりますね。
就活の合間に書いていたので遅れてしまいました。

では、どうぞ


『砲』『超越』

とある場所―――

 

「亡国企業は壊滅状態」

 

「残存戦力はオータムにスコールの2名。そして最高戦力の3人」

 

「彼女達は強いよね。今までは」

 

「だが・・・・・・お前の『砲』と、私の『超越』の前には敵などいないさ。」

 

「調整は既に住んでるよ。あとは君の『超越』の調整を終わらせればすぐにでも行ける」

 

そう話し合うのは2人。

 

マドカとレイ。二人は眼前にみえる施設を前に2人は並んで立っている。一見工場に見えるその施設は、壊滅した亡国企業

がより集まっている。残存勢力は、最高幹部の8名。そしてさきほど彼女らが言っていた戦力の5名。

 

そんな場所を前にした2人の狙いは唯一つ。

 

亡国企業(ファントム・タスク)に―――」

 

「―――引導をくれてやる」

 

そう言った2人は同時に手を掲げた。

 

「「Yetzirah―(形成)」」

 

同時に展開したIS。一機は黒、もう一機は蒼に深紅のエネルギーラインが輝く。

黒は流線型、青は鋭角なフォルムで兄弟機のように見えた。

 

「極大火砲・狩猟の王《デア・フライシュッツェ・ザミエル》」

 

「超越せし人の理《ツァラトゥストラ・ユーヴァーメンシュ》」

 

世界最高、至高の第4世代型IS。その究極系とも言えるだろう機体がここに顕現した。

ツァラトゥストラは何処か以前のIS、『サイレント・ゼフィルス』に似ており、背部に2基の非固定《アンロック》ユニットがある。

ザミエルは『ランブリング・メガセリオン』に似た機体で、ISの背部にツァラトゥストラと同じようなユニットが1基ある。

 

「いこう、マドカ」

 

「ああ」

 

2人は翔ぶ。彼らの目的の邪魔になるのなら、たとえかつての仲間でさえ排除する。

それが彼女らの道だった。

 

――――

 

「せああああ!!」

 

「甘いな」

 

一夏のなぎ払いは蘇摩のバックステップで躱される直後に蘇摩はバックしたところから一瞬で距離を詰めて木刀を振り下ろす。

一夏はそれをギリギリで防御するが、木刀ははじかれて体勢も崩された。

 

「しまっ―――」

 

「もらったぞ!」

 

そして強烈な蹴りが胸部を直撃する。肺に衝撃が直撃し息を強制的に吐き出させられさらに2m程飛ばされた。

 

「っぐう・・・・・・」

 

地面に倒れ、すぐに立ち上がるが呼吸が乱れ足元がフラフラする。が、そんなことはお構いなしに蘇摩の追撃が迫る。

 

「そらよ!!」

 

「ぐあああ!!」

 

切り上げをなんとか防御できたはいいものの、足元がふらついていたために、すぐに飛ばされた。

だが、飛ばされたのが幸いして着地する頃には呼吸が整い、さらなる追撃として放たれた突きはなんとか躱しきることができた。

 

「まだまだ!」

 

躱しざまに木刀を薙ぎ払うが、それは上体を逸して躱されその反動を利用した切り上げをもろにくらって、畳になぎ倒される。

だが、すぐに起き上がって構えを取る。直後に振り下ろされた木刀を受け止めた。だが、受け止めたものの徐々に木刀が押され。額に

付くかつかないかのギリギリで耐える状態になる。俺は両手なのに対して蘇摩は片手でだ。

 

これはもはや剣の技術だとか、体術とかの問題ではなくもっと基本的な筋力やスタミナ、バネといった体のポテンシャルの問題だろう。

 

「ぐぅう・・・・・・」

 

「反応速度は上がってきてるな。だが―――」

 

「な―――」

 

そのまま力技で木刀を弾き飛ばされ、無防備になった胴体に蹴りが入る。ただ、蹴り自体の威力は尻餅を付く程度の軽いもので、立ち上がることはすぐにできた。

 

「あつつ・・・・・・」

 

「動きはだいぶよくなってきたけど、基礎が少し足りんか?」

 

蘇摩は軽く木刀をすぶりしながら、言った。俺はすぐに木刀を取りに行く。

木刀は俺たちのいた場所から6m程離れた場所に落ちていた。

 

ちなみにこの木刀。重量900gでございます。通常の素振り用のとも比べても若干重い。

 

それを6mも弾き飛ばすのはかなりの力がいるはず。

 

「一夏。ちょっとこれつけてみろ」

 

唐突に蘇摩がリストバンドのようなものを4つほど投げてよこしてきた。だが、それがただのリストバンドでないことは俺の近くに落ちた時に分かった。

なにせ音が明らかに重いのだ。リストバンドが落ちた時に普通ドズン。なんて音はしない。絶対しない。

 

「これってなんキロ?」

 

「一つ5キロ。両手首と足首に1つずつだ」

 

「うへぇ」

 

「慣れりゃ楽だ。それがあまり重荷と感じなくなれば、だいぶ違うはずだぜ?その状態で俺から一本取れるとこまで行けば候補生レベルなら敵なしだろ」

 

まあ、そうなんだろうけどさ・・・・・・。そこまで行くのにいったいどれくらいの時間がいるんだよ。とも思ってしまう。

 

「なに、そう時間はかからんさ。大事なのは習慣性だ。日常的にそれをつけてりゃすぐにとはいかんかもしれないが、慣れてくるのは早い」

 

蘇摩はそういうと、木刀を構えた。俺も重い両腕で木刀を構えなおす。

 

「なに、最初は速度も圧も落とす。心配するな」

 

「ああ・・・・・・」

 

そして、再び蘇摩が畳を蹴る。今の俺がギリギリで防ぎきれる程度の速度と威力の斬撃。それを一瞬で、こうも簡単に調整する蘇摩の技量はもはや言うまでもない。

 

「っぐ・・・・・・」

 

「そら!」

 

木刀を一瞬持ち上げ、その直後に上から下に回して切り上げる。それもギリギリで防御が間に合う程度の速度でだ。それを防ぐと、今度は少し距離をとっての刺突。

それを重い足をなんとかうまく使ってかわそうとするが、頬に掠った。

 

「っくそ」

 

「そうだ。体が動かないなら、よく相手の動きを見ろ。構え、振りかぶり、事前動作。それらをよく見て相手が繰り出す攻撃を予測して、最小の動きで躱すようにする。そして、反撃する。

今のお前なら、否応でもそれをしなきゃ俺にフルボッコだからな!」

 

蘇摩はそう言いつつ今までやってこなかった徒手空拳での攻撃を繰り出してきた。左手の抜き手。それを反射でギリギリ躱したものの、狙われた首に掠り、僅かな切り傷を作る。

直後には右足の回し蹴りが遅ってきて、それを木刀で防御しようとした。

 

「甘え!」

 

が、ハイキックのように首元を狙って放たれた回し蹴りは、突如として下段。つまり膝を狙った蹴りへと変化する。

一瞬何が起きたかわからなかったが、一度蘇摩がEOSの時にラウラに使っていたのを思い出した。

 

「がっ・・・・・・っ!」

 

膝に直撃を受けたもののなんとか耐えて、横薙ぎを放つ。徒手空拳を使い始めた蘇摩は今までよりも一歩踏み込んだ間合いだ。蘇摩の一撃は加減されててもかなり重いが、耐えれば

反撃のチャンスにつながる。だが、蘇摩はそれを簡単に状態をそらして避けた。まるでイナバウアーをするかのように状態を畳に近づけ、そのまま左手を畳について横薙ぎを躱し様に

左足での蹴り上げを放つ。

 

「がふっ!」

 

蘇摩の変則的な蹴り上げは俺の脇腹に直撃し、俺は尻餅を付いた。蘇摩はというと、蹴り上げた足の反動を利用してアクロバットのように跳ね起きた。

 

「横薙までは良かったが、そのあとの反撃は気が回らなかったか?」

 

「はは。普通あんな攻撃する奴はいねえって」

 

「確かに」

 

蘇摩は笑って俺の言葉を肯定した。そして、尻餅を付いている俺に手を差し出す。

俺が手を取ると、かなりの強さで引っ張り上げられた。

 

「これを一週間ほど続ける。そうすりゃ、うん。だいぶ違うだろうな」

 

「そんなすぐに変わるものか?」

 

「意外と、すぐ変わるものだ。まあ、さっきも言ったけど習慣してやることが一番大事だがな」

 

蘇摩はそう言うと、僕等を肩に担ぎ、道場に備え付けてある時計に目をやった。時間は5時50分。

 

「そろそろ表も終わるだろ。っし、銭湯行くぞ」

 

「銭湯?」

 

「俺がいた時から変わってなけりゃ6時に練習終わって全員で近くの銭湯に行くはずだ。そこに混ざる」

 

蘇摩はそう言って木刀を適当な隅に放り投げた。扱い雑だなおい。

 

そう思いながら、ふと、疑問がひとつ浮かび上がった。

 

(なぜ蘇摩はこうも俺にアドバイスや特訓をしてくれるのだろうか―――)

 

ふと出てきた疑問を投げかけようとしたが、既に蘇摩は道場から出ており、俺はそのあとを追いかけた。

 

――――

 

「っぐう!貴様ら―――」

 

「我々に対して、これは明確な反逆だぞ!?」

 

「―――それがなんだ?」

 

2機からの射撃。。片方は大口径の機関砲で、もう1機は高出力のエネルギー砲での攻撃に、蒼色のISは背部の非固定ユニットの一部を展開。シールドビットを構成、射出し防ぐ。

そして、今度は左手に握られたライフルで片方を撃つ。

 

「甘いな」

 

だが、その射撃は躱され、逆に機関砲を持っていたISに接近戦を仕掛けられる。

 

「もらった」

 

「ふん」

 

だが、それを瞬時に展開したナイフで防ぐ。そしてもう1機からの射撃を展開したシールドビットで防いだ。

さきほどから、こうした一進一退の攻防が続く。2対1のこの状況はどちらに傾こことなく停滞していた。

 

「貴様・・・・・・たった1人で我々を倒せると思い上がっているのか?」

 

「織斑マドカ・・・・・・やはり首輪をつけておくべきだったか!」

 

「・・・・・・」

 

2対1の中、2人のISと敵対しているマドカは無言のまま2人の言葉を聞いていた。

 

「やはり貴様は―――」

 

「くだらん」

 

「何!?」

 

「くだらんといった。黙っていればぺちゃくちゃと。しゃべりに集中してろくな攻撃もできんのか?」

 

マドカは格闘戦を仕掛けてきたIS。アルドラから強奪されたIS『ヒルベルト』を駆る人物のレーザーブレードをナイフで受け止めつつ、ライフルの銃口を突きつけた。

 

「しま―――」

 

「失せろ」

 

マズルフラッシュと同時に響く轟音。そしてその大きさのライフルからは考えつかないような出力のレーザーが重量級のヒルベルトを軽々と吹き飛ばす。

 

「ミスト!」

 

「私から目をそらすとはな」

 

瞬間、彼女の背後から無数のレーザーを襲った。

 

「ああああああ!!」

 

そして都合7本のレーザーの直撃を受けた彼女は、ミストと呼んだ女性とは反対の方向へ吹き飛ばされる。

 

「っぐ・・・・・・」

 

「ヒルベルトに047AN。流石に高級品だが、貴様等では宝の持ち腐れじゃないか?」

 

「言ってくれるわね。裏切り者が」

 

その裏切り者1人、2人係で仕留められないのはどこのどいつらだ。全く。むこうの3人のほうがまだ優勢じゃないか?

そう言うもんじゃないよマドカ。彼女らのISとぼくらのとでは性能の桁が一つ違うんだから。

 

まあ、そうなんだがな。

 

――――

 

「ちぃいい!」

 

「いつの間にここまで・・・・・・R、貴方は!」

 

オータムのIS『アラクネ』の8本のアームから放たれる射撃は全て展開されたシールドに防がれる。

その間を縫って放たれたスコールの業火の砲弾は彼のISに届く直前に爆発して消える。

 

「男風情が、調子づくなよ!」

 

「貴方はあまり僕を舐めないほうがいいと思いますよ?」

 

彼女のIS『ランスタン』は右手に装備しているコジマライフル『AXIS』を発射する。

ある日本人博士が考案した方式を利用したこのライフルは、空気中の電子を巻き込み飛距離が長ければ長いほどに攻撃力が上昇するというエネルギー兵器としては破格の

特性を持つ。そして、素の威力も非常に強力で直撃を受ければISだろうと戦闘不能にしかねないほどだ。

 

「甘いよ」

 

だが、その威力を誇るライフルすらも、彼のISに当たる直前で爆発した。

 

「なぜだ・・・・・・?なぜ粒子ライフルすらも爆発する!?」

 

「彼のISの武装です・・・・・・!彼のISの武装は―――」

 

スコールが言葉を発そうとしたとき、突然彼女の背後が爆発した。そして、直後には同じく背後から多数の機銃掃射が襲いかかる。

 

「あああああ!」

 

「スコール!!ってめえええ!!」

 

オータムが激昂し、レイへ突撃する。だが、それは側面から降り注ぐ砲弾の餌食となった。

 

「ぐあああああ!!」

 

「馬鹿な・・・・・・なんだ今のは」

 

2人の受けた攻撃を見て彼女は唖然とした。なぜなら、今の攻撃は全てある種の武器だったのだ。

砲撃や爆発はパンツァーファウストによるもの。そして機銃はシュマイザーのモノだった。

 

武器としては旧式のものだが、それだけでは対した事はない。

異常なのは、全て反応がISの武装(・・・・・・・・)だということだ。

 

視認出来た数は、既に30を超えている。ISで展開できる武装の数ではない。しかも、それぞれの武装はあのISからかなりの距離がある。

武装の手から離れたところからの展開は実際問題可能だが、あまりにも実用的ではない。

 

展開自体かなりの難易度を誇り、しかも普通に展開するに比べて速度も遅れるし意味もない。

 

それを、こうも簡単にこの数をこなすなど、ありえることではない。

 

Einsatz Von Legion(部隊投入)

 

レイが唐突に口を開いた。

 

「部隊投入。だと?」

 

「僕のIS、極大火砲・狩猟の王の単一仕様能力だよ。このISの武装を遠隔で、かつ多数展開することが可能になる。参考までに僕の持つ武装数はおよそ1000」

 

こともなしげに言うレイの言葉。だが、それは詰まるところ最悪の表現へと連なる。

 

「そんな・・・・・・馬鹿な。それではこれは」

 

「そう。僕と戦うということは、一個大隊と戦闘をするということ。ああ、とは言っても通常の大隊と違って戦力の増減はほぼないけどね」

 

そう言いつつ、彼の前には20を超えるシュマイザーの群れが形成されていた。

 

「くぅ―――」

 

「Feuer」

 

間髪いれずに斉射されるシュマイザー。それを間一髪躱す彼女は『ランスタン』の装備であるプラズマ砲を起動させ、発射する。

だが、それは彼のISから展開されたシールドによって防がれてしまう。

 

そればかりか、直後に背後から出現したシュマイザーを再び躱すことになる。

 

「どうしたんだい?君はそんな程度なのかい?」

 

「舐めるな!!」

 

四方から出現するシュマイザーの群れをかわしつつ、本体である彼に接近する。出現するシュマイザーをプラズマ砲で可能な限り撃ち落としていく。

 

「流石にやるか。だが―――」

 

「私たちを―――」

 

「―――忘れるんじゃねえ!!」

 

レイの背後と側面から巨大な火球とレーザーの雨が襲いかかる。レイはそれの火球を躱し、レーザーをシールドで受けきった。

だが、その瞬間彼の意識はスコールとオータムに向いてしまい接近する彼女への対応が遅れる。

 

「その程度で!」

 

「甘いのは貴様の方だったな!」

 

プラズマ砲をギリギリで防ぐが、今度は機体の肢体をスコールのISに絡め取られてしまう。彼女のISの武装は黄金の糸。だが、ISのセンサーにかからない特殊な加工が施され、

かつ細く、目にも移りづらい故に、対応ができなかったのだ。といっても、今までは使えるくらいの隙がかれになかったが。

 

「こんなもの―――」

 

「あたしを忘れんなああ!!!」

 

そこへオータムのアラクネが8本のアームを唸らせて突撃する。8本のレーザーを吐き出しながらレイのシールドをアームのブレードで強引にこじ開ける。

 

「やれ!スケグル!!」

 

「今よ!」

 

「―――しまっ」

 

「もう遅い!!!」

 

自分の前に大量のシュマイザーを展開して弾幕を張るレイ。それはスコールの糸を削り、アラクネに大きなダメージを与えるが、

どちらもそれだけでは退かず、ついにゼロ距離にまでスケグルとランスタンの接近を許した。

 

「吹き飛べえええ!!!」

 

たとえ第4世代機といえどコジマライフルの直撃を受ければただでは済まない。そして、彼には致命的な弱点が存在する。

胸部へのダメージ。それを受けると極端に能力が落ちる彼の欠点。それを付く。そうすれば少なくとも彼は行動不能にできる。

 

引かれるトリガー。青緑色の粒子弾が吐き出される。針のような銃口からは想像もつかないような大きさの弾丸はほとんどゼロ距離で放たれ、レイを飲み込もうとする。

現状彼は身動きが取れず、防ぎようのない攻撃。3人は勝利を確信する。

 

「「「終わりだ!!」」」

 

抗いようのないその瞬間、彼は―――

 

「―――」

 

ごめん。使うよ、あれを。

ああ。勝利を確信したやつらに絶望をくれてやれ。

 

―――哂っていた




感想、意見、評価、お待ちしています

次回、「これはねーだろ」なISの正体が・・・・・・。
ぶっちゃけ、一夏達が勝てる気がしねえ。つかマドカ一人ならまだしも、相方がいるために弱点が補強されているため、かなり強いですたい。



※後半はレイ達が主人公サイドです。決してスコールとオータム達ではありません。

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