インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~   作:鳳慧罵亜

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うっは。また2週間過ぎてる。
就活が忙しいんですごめんなさい。
ボツボツ頑張って更新します。



大剣VS水槍

激突するランスと大剣。だが、それは一瞬ですぐに2機は交差するように距離を取る。そして、同時に振り返り再び再度の激突。

蘇摩の放った斬撃をランスで受け流す。

そして再びすれ違うように距離を取り、振り返る。再び激突し、楯無のランスを紙一重で躱して、横薙ぎに大剣を振るうが、楯無は突進の勢いのままに距離を取る。

 

そして、互いに振り返り、激突する。

 

その繰り返しが先程からの攻防になっている。その激しさは楯無の装備しているランス『蒼流旋』がまとっている高周波を発する水が大剣にぶつかるたびに四散している事からも窺い知れる。

 

「っつぅ……!」

 

「ちぃ……っ」

 

激突を繰り返し続けそして、都合16度目の激突。楯無の突きを蘇摩が紙一重で躱し、カウンターに大剣を切上げる。楯無はそれを縦に体を回転させて躱した。

そして、その回避によってランスを手前に引き寄せて、至近距離でのガトリングでの機銃掃射を浴びせる。

 

ここで、激突の応酬に終止符が打たれた。

 

蘇摩は大剣を高速で回転させて防ぐ。防ぎながら距離を取り、ブースターを吹かして急上昇。ガトリングの射線から脱出する。

楯無は蘇摩が射線から外れた時点で、撃つのをやめて左手を掲げる。すると、『ミステリアス・レディ』の頭上に粒子のようなものが集まっていき、それは水の槍を形成する。

 

合計で6本の槍を形成した楯無。

 

「おいおい……なんでもありかそのIS」

 

「ウフフ……なんでもじゃないわ。できることだけよ」

 

そう言って、掲げた左手を蘇摩に向けて振り下ろした。

 

「いってらっしゃい」

 

その瞬間に、放たれた6本の槍。連続して放たれ、蘇摩に襲いかかる。

 

「ちぃ!」

 

蘇摩は一本目を大剣を振り上げて砕く。だが、槍自体もかなりの圧力をかけて形成されているようで、槍を砕くことはできたものの、その反動で腕が痺れかける。

 

「っぐ……」

 

だが、安心していられない。砕いたのはまだ1本目だけ。残りはあと5本あり、蘇摩の寸前にまで飛来している。

 

(2本!3本!)

 

続けて2本目3本目と連続して砕くが、4本目を砕くことはせずに紙一重で躱す。そして、5本目を砕いて6本目を躱し、直後に響いた轟音に振り向いた。

振り向いた彼の視線の先はアリーナの壁面。丁度直径2m程の大穴が2本空いていた。

 

「はっ……」

 

あまりの威力に思わず笑ってしまった。そして、ターゲットの接近を知らせるアラームがなると同時に振り向き、飛来した蛇腹剣『ラスティー・ネイル』を弾く。

 

「甘え!」

 

蘇摩は右手にアサルトライフル『04-MARVE』を展開。発泡する。だが、それは毎度のごとくに全て楯無の眼前で停止していく。

 

「甘いのは、蘇摩よ」

 

そして、楯無はまたしても、左手を掲げ、頭上に槍を形成する。またしても6本の槍。そして、腕を振り下ろして発射する。

 

「ちぃっ!」

 

今度は6本が微妙に違うタイミングで、しかしほぼ同時にすべてが蘇摩に降りかかる。蘇摩はそれを見て剣で砕くのは無理と判断した。

 

瞬時加速で右側に飛ぶ。こちらから見て右端の槍に左腕の装甲の一部を持って行かれたが、回避は成功した。正直MARVEw思っていかれなかったのは幸運だと思う。

あれは2丁しかないため壊されるとめんどくさい。

 

シールドで防御したいところだが、あんなものをそう何度も受けきれる自信はない。

 

そして、反撃のために楯無に向き直ったところで、今度は6本の槍を全て合体させたような巨大な槍を楯無は用意していた。腕を振り下ろして、蘇摩へ放つ。蘇摩はそれを左に飛んで回避する。そして、蘇摩は瞬時加速を行使。一気に楯無に突進する。

 

だが、楯無は回避行動は愚か、ランスさえ構えようとはしない。

 

「フフ」

 

そして、楯無は振り下ろした腕をそのままに、指の形を変えた。

無造作に伸ばされた指が特有の形状を取る。

 

「―――!?」

 

蘇摩はその指の形状を見た瞬間、何かに気付いたように視線を右端に持っていく。そこにはこのアリーナの環境がリアルタイムで表示されており、

その一部分、『humidity』と表示された部分の数値が模擬戦開始時に比べて異常に上昇していることに気づいた。

 

「―――ちぃいい!!」

 

大きく舌打ちをして体が悲鳴を上げるのも気にせず瞬時加速中に、再び瞬時加速を行い急上昇する。

だが、楯無はそれを見て、口元に大きくえみを作った。

 

「ざーんねん♪」

 

そして、そのままパチンと指を鳴らした。

 

ドォオオオオオオオオオオオ

 

凄まじい爆炎と爆風が蘇摩を中心に発生する。その爆風は楯無をも巻き込んでいるが、当然彼女は自分のISを水で作り上げたベールで身を守っている。

 

清き情熱(クリア・パッション)

 

空気中の水分を利用した水蒸気爆発。本来は『アクア・クリスタル』より、噴出した水蒸気を用いて使用するがあまりにもバレバレになるため、蘇摩に対して普通に使うのはただナノマシンの浪費になる。

 

だからこそ気づかれない様にアリーナを水分で満たす必要がある。その付箋は一度『清き情熱』を使うふりをして水蒸気をばら撒いた時からだった。

あの時、蘇摩がすぐに距離をとったため水蒸気を回収したが、回収したのは噴出量の半分ほどだった。半分とは言ってもそれだけでもしようには十分な量が噴出されたままとなっている。そして、その直後の突撃の応酬の時、ランスと大剣がぶつかるたびに、ランス『蒼流旋』に纏わせてある水を少しづつ空気中に散布していた。ランスがまとっている水が四散するのは、普通はないが、蘇摩との激突の時には簡単に散っていたために可能だった。

 

最後に、水の槍を放ったとき。

 

あの時撃ち込んだ槍は全て四散し、空気中に霧散してアリーナの湿度を上昇させていた。

それらの付箋をもってしての、この一手。

 

蘇摩に対して、強烈なダメージを与えられたことには違いないはず。

だが、楯無はランスを両手に構え、警戒を解かない。まだ試合終了のアラームがなっていない。つまり、蘇摩のISはまだエネルギー切れを起こしてはいない。

たとえ残りが1だとしても、その1をもってして逆転することは不可能に近いが可能だ。

 

そして、そんな彼女の予想通りに、爆煙を突き破って暗銀の騎士がその得物を持って突進してくる。

 

鈍い金属音が響き、ランスで蘇摩の振り下ろしを防ぐ。蘇摩の機体は、あちこちに破損の様子があり、藍色のマントは半分以上が黒くこげている。

装甲はいたるところにヒビが入っており、中には肌が露出している部分もあった。

 

「ったく。容赦ねえな」

 

真剣勝負(セメント)……なんでしょ?」

 

「そうだったな」

 

先程とは逆のやり取りをした蘇摩と楯無。

 

「それで、どうやって爆発から逃げたの?」

 

「剣を思いっきりぶん回したのさ」

 

なるほど。と楯無はおもった。

つまり、大剣を振り回すことによって、爆発と自分のあいだに空気の層を作り出したのだ。

おそらく、かなりの速度で振られたことで、剣の軌道上の空気は一瞬真空に近い状態になる。それで爆発から身を守ったというわけだ。無論並大抵の筋力や技術でできる真似ではない。

 

理屈は簡単でも実際に行うのはかなり無理がある。いくら半真空の壁を作ったとはいえ爆風を完全に遮断するのは不可能だ。それに、壁の範囲も蘇摩の前方180度から多く見ても220度前後が限界のはず。現に蘇摩のISはかなりのダメージを受けている。おそらくギリギリCに行かないレベルの損傷は負っているはずだ。

蘇摩自身はISのシールドに守られているから安心だが、肝心のエネルギーは危険域に入っているはず。

 

「でも、もうエネルギーがやばいんじゃない?」

 

「ああ。だからよ……っと!」

 

「っああ!!」

 

剣でランスを上に弾き、がら空きになった腹部に前蹴り叩き込む。シールドにヒビを入れたケリの威力は楯無を吹き飛ばして、5mほどの距離をいって楯無は踏みとどまった。

体勢を立て直し顔を蘇摩に向けるが、その時には蘇摩の準備は終わっていた。

 

蘇摩は楯無を吹き飛ばすと同時に、左手にタリスマンを呼び出す。そして、蹴った流れをそのままにそれを大剣に宛てがい、一気に刀身に滑らせる。

鈍い粒子の音と共に、大剣の刀身が青白い光に覆われていく。

 

そして、楯無が体制を整えた時には、すでに大剣への効果付与(エンチャント)は完了していた。

 

暗月の光の剣(ダークムーン・ジ・ブレード)』月明かりのような光は同時に破壊の恐怖を覗かせる。エネルギーそのものを無効化する『零落白夜』とは違い単純なエネルギーの密度の力技で破壊する。その時間は67秒。それは、蘇摩が楯無に一撃入れるにはお釣りがくるほどだ。そして、その一撃はISを破壊するのに十分な威力を持つ。

 

「……!」

 

「―――さて」

 

そして、蘇摩は大剣を構え、突撃の体制を取る。楯無も、同じように構え、迎撃の体制を取った。

 

「コイツの威力は知ってるか?下手なISは一瞬で屑鉄にできるぜ?」

 

「あら、だったらその前にあなたを貫くだけよ」

 

そして、お互いを牽制するように膠着する―――

 

「はぁあああ!!」

 

「せぇえええええええええええ!!」

 

その膠着は一瞬。蘇摩が瞬時加速で一気に距離を詰め、光を纏うその大剣を振り抜いた。

楯無もランスを蘇摩が大剣を振ると同時に刺突を放つ。

 

ランスと大剣がぶつかり合う。それは一瞬で火花を上げてすれ違い、超密度のエネルギーによって半壊したランスは『アビス・ウォーカー』の胸部装甲に、大剣は『ミステリアス・レディ』の胴体に。

 

ランスはシールドに阻まれ、大剣は絶対防御を突き破る。

 

そして、決着は―――。

 

『試合終了―――引き分け』

 

そのアナウンスとともに、幕を閉じたのだった。

 

――――

 

昼過ぎ、蘇摩は生徒会室で、メンバーたちと昼食を食べていた。

 

「お嬢様。今回は無事だったから良かったものの、今後勝手に変な場所に行かないようにしてください」

 

「あら、変って失礼ね。私にとっては家みたいなものなのに」

 

「つかやっぱ勝手についてきたのかよお前」

 

現在楯無は、布仏虚に説教をくらっている最中である。最も、本人は全く意に介しているようには見えないが。いつものようにのらりくらりと虚の言葉を巧みに躱している。

 

「……お姉ちゃん」

 

「お嬢様~心配は要りませんよ~。だってそうり~がついてたんだし~」

 

「確かに蘇摩さんの能力は信頼に足るものと判断しておりますが、現在の情勢をお考え下さい」

 

そう、現状はまさに戦争になってもおかしくはない状態になってしまっている。ヘタをすれば世界大戦レベルに発展しかねないほどに。

そして、そうなればこのメンツの誰かが死んでもおかしくない状況になりうるのだ。楯無だって、そんなことは百も承知なのだ。

 

だからこそ、虚も大して強くは言っておらず、簪も心配こそしているが、攻めたいる気配は全くない。

 

「そこまでにしてやってくれ虚さん。コイツだって相応の覚悟があって動いてるんだからさ」

 

下の購買で買ってきたパンを食いながら虚をなだめる。虚は不承不承といった様子でため息を吐く。

いや、こっちもため息吐きたいよ。ヘタをすればランカー同士で殺し合いをしなければならないのだ。

 

何が悲しくてあいつらと銃を向けあわなくちゃならないんだよ。

 

「……おい楯無」

 

「あん蘇摩。ここでは名前で読んでよ」

 

「わぁ~。そうり~とたっちゃんもう~そんなとこまでいったんですか~?」

 

「ええそうよ本音ちゃん?蘇摩ったらほんと激しくて……」

 

「……しばき回すぞ刀奈」

 

なんかコイツのせいで俺が妙な目で見られてんじゃねえかおいこら収集つけろよ。

 

「あん♪私をMに調教しようっていうの?蘇摩ってそんな趣味あるのかしらん♪」

 

「本当にてめぇマゾにしてやろうか?」

 

「……多分、そのほうがいいかも」

 

と、いうふうにアホみたいな会話としていられるのもあと何日になるかなと、よよよと泣き崩れている刀奈を尻目に蘇摩はあの日のことを思い出していた。

いつかまた、全員で酒を飲み交わせることを祈って。自分から言い出した誓いだ。違えることはない。

 

「ああ、簪ちゃんが……蘇摩の思考に毒されていく……」

 

もし、全員じゃなかったときは、いないやつの分を笑って飲んでやろうと思う。

 

「お言葉ですがお嬢様。その一因は確実にあなたにあると思いますが」

 

「お嬢様は~もう少し~。淑女の嗜みを~身につけるべきかと~」

 

でも、こいつだけは、何があってもなくさない。

 

なあ、俺はまたなくすのは嫌なんだよ。だからさ―――

 

「全くだな刀奈。お前はもう少し落ち着いた行動をとったらどうなんだ?」

 

「うふふ。心配無用よ。公衆ではきちんとしてるから♪」

 

死なないでくれ。頼む。




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