インフィニット・ストラトス ~力穢れなく、道険し~   作:鳳慧罵亜

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どうも、一時期スランプ状態で小説に手がつきませんでした。
いや、どうもR系のやつを書くのは辛い。初めて故にどう書けばいいのかも分からず、本編もいつの間にかスランプしてしまって……

Rのほうは後日投稿できればいいかなと思います。


再び学園、そして……

RAVANS ARKの航空機から降りた蘇摩達はARKの手配した送迎の車に乗って、IS学園に向かっていた。

 

「2週間ぶりか……意外に長かったな。学園を離れるのも」

 

「全くね……出席日数が結構危ないかもしれないわよ?」

 

まあ、そんなことを言っている刀奈だが、そこについてはどうとでもなるだろう。現にこいつの表情はあっけらかんとしている。

俺としては、ここ最近の情勢が気になる。ジャックの予想通りになれば、1ヶ月もすれば世界中を巻き込んだ戦争に発展しかねない。

 

ことによっては、国家が解体されるほどの戦争に……。

それに、セラス。あいつのことも気がかりだ。あいつなら戦争が始まったら、どう動くんだろうか。

 

それに、おそらくARKのメンツもバラバラになる。特にAランカーは全員知った中だし、敵対しても勝てる自信はあるが、それでも気が引けることに変わりはない。だが、仕方のないことなのかもしれない。

 

どだい戦争なんだ。単体では決して成立しない概念故に。味方がいて、敵がいる。その敵が知り合いだったとしても何一つおかしいことなどないのだから。

 

「……ねぇ」

 

「どうした?」

 

「どうするの?戦争になったら」

 

楯無の質問に蘇摩は答えずに、車窓に視線を写した。

答えづらい。言葉は無かったがそんなことくらいは彼の行動を見ればすぐにわかる。

 

数十秒。時間にしてそれくらいの沈黙。その間、誰も言葉を発さず、道路を走る車の音のみが聞こえていた。

 

「……そう、だな」

 

沈黙を破ったのは蘇摩。その言葉に続くのは、楯無も予想していた。

 

「……お前次第、かな?」

 

「私次第?」

 

その言葉の意味なんて、既に分かってるはずなのに聞いてしまう。分かっていても、その声で聞きたいから。

 

「お前が『更織』として、日本につくか……」

 

「『ロシア代表』として、ロシアにつくか?」

 

「そういうことだ……笑えよ。とんだ無責任だ」

 

自重するように言った蘇摩。つまるところ、蘇摩は楯無、刀奈とは何があっても戦いたくはないのだ。

その起因するところは、一度自分にとって大切な人物、セラス・ヴィル・ランドグリーズを亡くしたが故。失うことの意味を知っている彼は、だからこそ2度目は絶対に避けようとする。

 

無責任とは、とどのつまりそういうことだ。どこにつくか、自分で決めなければならないことを他人の意思に合わせるという。

だが、本来傭兵とは無責任なものだろう。依頼を自分で選び、気に入ったものに行く。

 

まあ、それとこれとは少しばかり事情が違うのも事実ではあるが。

 

それにどうやら、無責任なのはお互い様なようで。

 

「じゃあ私は……」

 

彼女の口から出たセリフに、蘇摩は一瞬息が止まった。

 

「『RAVENS ARKランクB-10』として、私を求めるところにつくわ」

 

「……は?」

 

頓狂な声が上がり、それまで窓側に向いていた蘇摩の顔がこちらに向いた。

なんとも間の抜けた顔をしており、内心してやったりと、思いつついたずらっぽく笑ってみせる。

 

「驚いた?」

 

「……あたりまえだ」

 

ったく。と、ため息を吐きながらかぶりを振った。

 

「怒らないのね?」

 

「普通なら、なんで入ったんだーとか、言うべきなんだろうが……」

 

蘇摩は、また窓際に顔を向けた。窓から蘇摩の顔が反射して、まるで鏡のように楯無に表情を映し出す。

呆れて言葉も出ない。そんな顔だった。

 

「RAVENS ARKのBランク。それも30以内の頂点だ。相応の能力はあるだろ」

 

蘇摩の声は呆れたようで、どこか期待をしているような色だった。

 

――――

 

「―――さて、ついたか」

 

送迎の車から降りた蘇摩と刀奈は、正門から入らずに、裏門へ回る。

時間はAM10:16。平日なので言うまでもなく授業中だ。

 

とは言っても、刀奈は午後から出れば特に問題はないし、蘇摩は授業に出る気がない。

だから正門ではなく裏門から入って、教師に見つからないように寮に行くことにした。

 

「……ねえ、蘇摩」

 

「あん?」

 

校舎内に入り、見つからないように進んでいき渡り廊下を通っている途中、刀奈が蘇摩に声をかける。

 

「そういえばだけどさ。私たちって、まだ一回も戦ってないよね?」

 

「まて」

 

瞬時に言いたいことを理解して、声を上げる蘇摩。だが、その時には既に腕を掴まれていた。

 

「せっかくだからさ、ヤッちゃいましょうよ。この時間なら、2年生のIS授業よ」

 

「それに混ざるってのか……はいはい」

 

言っても無駄だと分かっているのか、「まて」以上の抗議や抵抗は特にせず、手を引かれるまま刀奈についていった。

 

そうして、2年生が授業で使っている第4アリーナ到着したのは10:33分。うち着替えに5分。

2年生の授業に普通に混ざることになった現在1年生の俺。ちなみに俺の年齢は17。つまり刀奈、ここは楯無か。

あいつと同年齢。つまり、実は2年生と同じ年齢なのだが、こうして見ると俺だけ留年してるみたいで嫌だな。

 

「遠藤先生!実はですね……」

 

楯無が教師と話し始めた。さて、俺はというと……。

 

「へぇ……君が少し前に入った1年生?」

 

「なんか一夏君と違って落ち着いてるっていうかー」

 

「うわー、すごい筋肉付いてる……でもお腹はそうでもない?」

 

「あ、聞いたことあるー。たしか腹筋ってつけすぎると呼吸しづらくなるんだよねー?」

 

「でもその分両腕両足の筋肉すごーい」

 

絶賛好奇の的です。

 

予想していたことではあるのでそこまで慌てはしないが、落ち着くものでもない。

早く交渉済ませてくれ。視線を集めるのは慣れてるけどここまで近くでとなるとやっぱ落ち着かない。その理由の一つが

俺以外が全員女性であるというのもあるけど……。

 

「ねえ、蘇摩君ってさ、誰かと付き当ってたりする?」

 

「それはご想像におまかせします」

 

「じゃあさ。好みのタイプとか教えてよ」

 

「タイプか………外見で言ったら君の後ろにいる金髪の子……見たところイギリスとかその辺だよね?あの子かな」

 

「ねえねえ、蘇摩君はどこに住んでるの?」

 

「実家……というより所属の宿舎ならアメリカ資本の施設だからアメリカになるのか?」

 

「すごーい。じゃあさ、英語とか喋れるの?しゃべれるなら何か言ってみて?」

 

「あー、そっすね……You are so beautiful、直訳であなたはとても綺麗ですね。です。他にも4、5カ国後はしゃべれますよ」

 

「うわー。こういう時にちゃんと女の子を褒めるなんて、わかってる~」

 

ほんと、女子の質問の8割って色恋ものが多いんだな。内のランカーに見せてやりたいな。

絶対枯れるだろ。とくにロスとか。

 

「全員、集合!」

 

教師の声がアリーナにとおり、多少名残惜しそうに生徒が教師の前に集合する。その中で楯無がピットを指差してこちらに手招きをしている。

どうやら、ピットで準備をしろということらしい。俺は了解と手を振って、楯無の指したピットへと走る。

 

「ええ、今回は楯無さんの要望もあり、専用機持ちによる実戦に近いISの戦闘を見てもらいます。間近で国家代表の戦闘を見れるのは、運がいいので、ぜひ皆さんも動きを見て参考にしてください」

 

教師が手を挙げて合図を送る。それをピットから確認した蘇摩と楯無はISを展開。ピットより出撃する。

 

楯無はまるで芸術のようになめらかに、かつ踊っているかのように空中を飛ぶ。

 

蘇摩は直線的に、かつ無駄なく地面すれすれを滑るように疾走する。

 

そして、互いに配置につく。

 

10……9……8……

 

カウントが始まり、楯無はランス『蒼流旋』を、蘇摩は大剣を展開する。

 

真剣勝負(セメント)よ……」

 

「当然」

 

互いの口角がつり上がり、笑みを作る。

 

3……2……1……

 

 

 

『Fight』

 

 

 

ブザーが鳴るやいなや、蘇摩は瞬時加速で楯無の『ミステリアス・レディ』に突撃する。

第4世代に匹敵しうる突進能力での突撃、振り下ろした斬撃は楯無が上に瞬時加速することで空振りに終わる。

 

だが、

 

「甘え!!」

 

蘇摩が左手に展開した重機関銃『03-MOTORCOBRA』を小さく空振りした勢いでそのまま体を回転させ、左腕を楯無に向け掃射する。

散蒔かれるように、しかし的確にターゲットを狙った掃射は、全て楯無に触れる前に停止した。

 

「おいおい。レーゲンタイプじゃねえんだしよ」

 

「うふふ。水の応用力はすごいわよ?」

 

楯無は『ミステリアス・レディ』の第3世代兵装『アクア・クリスタル』から展開される水のヴェールを防壁のように展開。さらに数100kg単位で圧力をかけ、鉄壁の防壁を作り出していた。

小口径弾程度では何発撃とうとも貫通することはない。

 

「そして、これもちょっとした応用よ?」

 

防壁だった水が崩れ、同時に雨となって降り注ぐ。だが、これはただの雨ではない。

 

「ふざけんな!!」

 

大剣を投げ捨て、大盾を展開し防御する。盾の表面からはとても雨に打たれているとは思えない鋭く、重い音が鳴り続けている。

雨は地面にも降り注ぐが、その雨により地面がえぐれ、モノの数秒で蜂の巣になった。

 

「さすがね」

 

まるでガトリング砲の掃射のような雨を防御しきると、今度は側面から楯無の声が聞こえて、舌打ちとともに左手の銃を向ける。

が、その銃はまるで剣のような、鞭のような武器に絡め取られてしまった。

 

「ちぃ―――」

 

楯無の右手には『蒼流旋』そして左手に蘇摩のライフルを絡め取った蛇腹剣『ラスティー・ネイル』が握られていた。

伸縮自在のワイヤーにつながっている多数の節をもつ刃の刀剣。

 

ワイヤーを伸ばし、鞭として、固定して刀剣としてと、かなりの応用が効く武器だ。

刀剣武器として破格のリーチと特殊な攻撃能力を持つ一方で、欠点として刀剣としての耐久性は低い。

 

だが、そこを狙わせるような間の抜けた女ではないことは俺が知っている。そも、そんな間抜けでは俺の隣りにはいられまい。

 

「判断能力は流石だけど……いいの?剣捨てちゃって」

 

「あー……不味いわな」

 

だが、蘇摩の顔から笑は消えない。現在、蘇摩は盾を楯無に向けて、半身を隠しているような状態だ。かろうじて顔は出しているが、そこから下は

完全に隠れている。そして、蘇摩はその状態で左手に大型グレネード『糠平』を展開した。だが、砲身に弾は装填しない。楯無も何かをするだろうとは思う。

だが、これは想像できまい。

 

「それじゃ……」

 

「ああ、喰らえ」

 

楯無がランスを構えて、突進する。その瞬間、蘇摩は砲弾のない『糠平』を大盾で支える形で構える。

直後、楯無は突進を止め急停止し『蒼流旋』の4問存在するガトリングを展開する。

 

その表情は笑顔だった。

 

「ウフ♪そのくらい……」

 

「かかったなあ!!」

 

その瞬間、蘇摩も瞬時加速を使用。大盾を構えて突撃する。その表情は楯無よりも、悪役の様な笑みだった。

 

「!?」

 

「もらったあ!」

 

大盾を手放し、腕を伸ばす。楯無もとっさの判断で後ろに瞬時加速をするが、加速力で蘇摩の『アビス・ウォーカー』に勝るものは

現状では、箒の第4世代機『紅椿』しか存在しない。

 

右手で肩をつかみ、そのままアリーナ壁面へ目掛け瞬時加速の勢いを乗せ、『糠平』の砲身を掴み(・・・・・)その薬室部分で殴り飛ばした。

 

「っっはあぁ!!」

 

いわば、巨大なハンマーに殴られた状態だ。

吹き飛ばされるが、壁面に激突するぎりぎりで踏んばり、停止する。

 

直後、下から接近警告のアラームが鳴り、咄嗟にランスを両手で構える。その直後に鈍く、大きな音が響き目の前に大剣の刃が停止した。

 

「まったく……容赦ないわね」

 

真剣勝負(セメント)……なんだろ?」

 

「ウフフ……そうよ、ね!」

 

アクア・クリスタルから、多量の水蒸気を噴出する。その意味にいち早く気づいた蘇摩は楯無を弾き、一気に10m近くを後退する。

 

今のは、楯無のISの攻撃方法の一つ。『清き情熱(クリア・パッション)』を行うための水蒸気を大げさに放出して、蘇摩の追撃を回避したのだ。

 

「ったく……すげえなお前のIS」

 

「もちろん♪私の自信作よ」

 

放った水蒸気をアクア・クリスタルの内部に吸収し、ランスを構えなおす。蘇摩も大剣を担ぎ、姿勢を低くする。

 

「じゃあ―――」

 

「―――いこうかぁ!!」

 

お互いに測ったようなタイミングで、2人は互いに突撃する。

 

まだ、2人の戦いは始まったばかりだ。




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