骨舞う旅路   作:ウキヨライフ

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第2話:階層守護者

 リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを起動すると、モモンガとやまいこの視界が刹那に切り替わる。そこは今までいた玉座の間ではなく、第六階層の円形闘技場だった。

「無事に転移できましたね」

「うん。この様子なら他のアイテムも大丈夫かな」

 

 問題がひとつ解決したと安堵していると、どこからともなく「モモンガ様ー!」と元気な声が闘技場内にこだまする。貴賓室を見ると、白と赤を基調とした服装の闇妖精(ダークエルフ)の少女、第六階層守護者アウラ・ベラ・フィオーラが手を振っていた。

 彼女は貴賓室から「とう!」と掛け声と共に飛び降りると、驚くべき身体能力で着地し、モモンガとやまいこの下へ全速力で駆ける。

「いらっしゃいませ、モモンガ様。第六階層へようこ――っ! やまいこ様!? お久しぶりです! いつお戻りに?」

 

《やまいこさん。〈敵感知〉(センス・エネミー)に反応はありません》

《分かった》

 モモンガは素早く〈伝言〉(メッセージ)で情報を共有すると、やまいこも素知らぬ顔でアウラに挨拶する。

 

「久しぶりね、アウラ。元気にしてた?」

「はい! やまいこ様!」

《か、かわいいー》

 やまいこがニコニコ顔のアウラを撫でると、アウラもまんざらでもないご様子だ。

 ギルドがまだ賑わっていた頃、女性のギルドメンバーたちは第六階層に集い、NPCたちを交えてお茶会を開いていたと聞く。アウラにはその記憶があって懐いているのだろうか。

 

《モモンガ様、ナーベラルです。第九階層の調査が終わりました》

《ご苦労。……居たか?》

《いいえ。御方々のお姿はありませんでした》

《そうか。では、そのまま第九階層で警戒を続けてくれ》

《畏まりました》

 

「やまいこさん。ナーベラルから連絡がありました。やはり我々だけのようです」

「……そう」

 モモンガとやまいこのやり取りをアウラが不思議そうな表情で見ている。ふと、モモンガは先ほどアウラがやまいこの存在に驚いていたことを思い出す。

 

「アウラ。エントマからの伝言は届いているか?」

「はい、モモンガ様。『非常事態に付き担当階層を調査、後に警戒レベルを引き上げて待機』ですよね? 調査を終えたので、今はペットたちに森を巡回するよう命じて、あたし達は待機中です」

 えっへん!とアウラは胸を張る。

 

「そうかそうか。確かにやまいこさんの事を伝えろとは言ってなかったな。驚かせてすまない。で、第六階層は問題は無かったのだな?」

「はい、問題はありませんでした。あ、マーレは巨大樹で待機しています。……ところで非常事態との事ですが、何かあったんですか? やまいこ様がいらっしゃることと何か関係が?」

「非常事態に関しては後で説明する。その為に全階層守護者をここに呼んでいる。一時間後には集まるだろう。このことをマーレにも伝えくれ」

 

 はい!と返事をすると、アウラは首から下げたドングリの首飾りを握りしめ目を瞑る。

 

(確か茶釜さんが持たせた通信用のアイテムだったか)

 

「伝えました。マーレは直ぐ来るそうです」

「そうか」

「皆が集まるまでまだ時間がありますが、お二人はどうなさいますか? 一旦お戻りに?」

「いや、やまいこさんと一緒に色々と実験をしようと思ってな。そうだ。折角だからアウラたちにも手伝ってもらおう。いいですよね、やまいこさん」

 

 やまいこに確認すると「グッド!」と親指を立てている。

 

 

* * *

 

 

 諸々の実験が終わり、召喚した根源の火精霊(プライマル・ファイアーエレメンタル)を双子の闇妖精(ダークエルフ)が倒すころ、ちょうど一時間経ったのか各階層守護者たちが円形闘技場(アンフィテアトルム)に姿を現す。

 

 第一、第二、第三階層守護者の吸血鬼の真祖(トゥルーヴァンパイア)、シャルティア・ブラッドフォールン。

 第五階層守護者の蟲王(ヴァーミンロード)、コキュートス。

 第六階層守護者の双子の闇妖精(ダークエルフ)、アウラ・ベラ・フィオーラとマーレ・ベロ・フィオーレ。

 第七階層守護者の最上位悪魔(アーチデヴィル)、デミウルゴス。

 階層守護者統括の夢魔(サキュバス)、アルベド。

 

 いずれの階層守護者もレベル100という、ナザリック内でも屈指のNPCたちである。故にモモンガもやまいこも警戒していたが、守護者たちの()()()()()()()()()()()()()()()を聞かされ別の意味で戦慄し身悶えていた。

 

 曰く「美の結晶」「絶対なる支配者」「慈悲深いお方」「配慮に優れたお方」「端倪すべからざるお方」「最高の主人」などなど。

 そのあまりの高評価にモモンガとやまいこは気圧される。

 

《こ、これは……、すごいですね》

《うん。こんなにベタ褒めされたの初めて》

《ですね。まずは現状の説明と各階層の報告を聞きましょう》

 

「――お前たちの忠誠を受け取ろう。では、面を上げよ」

 ザッと守護者たちが一斉に顔を上げる。

 その真剣な眼差しを受け、モモンガは続ける。

「現在、ナザリック地下大墳墓は原因不明の不測の事態に巻き込まれていると思われる。先ほど実験したところ、一部の魔法やスキルが変質していることが窺えた。そして今、セバスとソリュシャンが地上を捜査中だ」

 

 守護者たちの顔に隠し切れない緊張が一瞬見て取れた。

 ナザリック内で搦め手なしの真っ向勝負において無類の強さを誇るセバスを、偵察という簡単な任務に出したことに、モモンガの警戒心と危機感の強さを理解したのだろう。

 

「では守護者たちよ。担当している階層で何か異変を発見した者はいるか?」

 

「第一、第二、第三階層に異常はありんせんでありんした」

「第五階層モ同様デス」

「第六階層も異常ありませんでした」

「同じく第七階層に異常はございません」

「ガルガンチュアの起動実験の際、第四階層を調査致しましたが異常はありませんでした。

なおガルガンチュアの起動は無事に行えました」

 

「ふむ。報告ご苦労」

 

 これでナザリック内には緊急に対処しなければならない問題は無いと考えていいだろう。

 次はナザリックの外がどうなっているかだ。サービス最終日とは言え、結構な数のプレイヤーが接続していたはずだ。非常事態だからプレイヤー同士協力したいところだが――。

 

「PKギルドとしての知名度がここまで重荷に感じるとは……」

 

 何を隠そう、アインズ・ウール・ゴウンはユグドラシル内では名が知れたPKギルドなのだ。初めは異形種狩り(PK)に対する意趣返し(PKK)だった筈だが、ギルドメンバーたちのノリの良い「悪のロールプレイ」も相まりその名は良い意味でも悪い意味でも轟いていた。

 問題は異形種は少数派であり、圧倒的に人間種の方が多いことだった。そしてギルドランクがそれなりに上位だったことで恨みや嫉妬を覚えるプレイヤーも比例して多かったのだ。

 

「話の通じるプレイヤーに会えればなぁ」

《モモンガ様、セバスです》

「やまいこさん。外のセバスから〈伝言〉(メッセージ)が来ました」

 モモンガがユグドラシルでの立場を憂いていると、ナザリック周辺を調査していたセバスから〈伝言〉(メッセージ)が届く。やまいこに断りを入れてセバスに応対する。

 

《周辺の様子はどうだ?》

《はい。ナザリック周辺は()()になっております。さらに()()()()()()()が森林を囲むように広がっております。ご指示頂いたプレイヤーとはまだ接触できていません》

 

(っ!? 待て待て待て! 森? ナザリックは毒の沼に囲まれていた筈だぞ!? いや、それよりも都市だと? 異形種のPKKギルドの拠点が人間種の都市に転移とかありえないだろ!)

 

 〈伝言〉(メッセージ)を受けたモモンガが激しく動揺していると気づいたやまいこが心配そうに声をかける。

「ど、どうしたの? 大丈夫?」

「どうしよう……、やまいこさん」

 

 

* * *

 

 

 スレイン法国はかつて降臨した“六大神”を信仰する宗教国家である。人類こそが神に選ばれた民であるという選民主義めいた宗教的概念により、国民は一致団結し繁栄を維持していた。

 人類は弱い。一つにまとまらなければ簡単に滅ぼされるほどに弱かったのである。個体単位で見ても人より強い亜人や獣人などが(ひし)めく大陸で、人類が生存圏を維持するのは容易ではないのだ。

 

 そんな夕暮れ間もないスレイン法国の森林区を、特殊部隊「漆黒聖典」の隊員3名が駆けていた。彼らは「破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)復活」の予言を受けて出発準備を整えていたところ、さらに「恐ろしい何かが神都の西側に現れた。遺跡が見える。森の中」という追加の予言に急遽、すぐに動ける3人で神都西側のそれらしい場所を先行して調査していたのだ。

 

「隊長、森林区に遺跡があるなんて聞いた事が無いですよ。やっぱりここよりもっと西の闇妖精(ダークエルフ)国の辺りじゃないですか?」

 

 隊長と呼ばれた若者は首を振る。

 

「私も遺跡があるなんて聞いたことが無い。だからと言って調査しない訳にもいくまい。神都内で万が一があってはいけないだろう。――どう思う、“一人師団(ひとりしだん)”」

「“破滅の竜王”と“恐ろしい何か”が同一の存在とは限りません。“占星千里(せんせいせんり)”の予知は曖昧ですからね。しかし彼女が予知した以上、西側に何かあるのは確かです。解釈次第でどうとでも取れますが、方角を間違えたことはまだ一度もありませんから」

 

 女は「確かに」と呟き、再び周囲を警戒しようとして、気が付いた。

 

「止まって! 隊長、……ヤバいのが来る!」

「どっちだ」

「1時の方向。……隊長より強い! やっぱり破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)では!?」

「いや、破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)はもっと北、トブの大森林辺りのはずだ」

「で、でも。っ……速い! もうす――」

 

 ()()は異様な速さで木々の隙間を縫い、忽然と目の前に現れた。広大な森林区の内部までは神都の明かりは届かない。木々の隙間から差し込む月光が、森の中には似つかわしくない非現実的な光景を照らし出す。

 執事を思わせる初老の男とメイド服を着た金髪縦ロールの美しい女がそこに立っていた。

 

「た、隊長。その人、難度300前後だ。濃厚過ぎて正確に判断できない。あと、信じられないけど、後ろのメイドも難度170ある……」

 

 その言葉に一人師団と呼ばれた隊員も息を呑む。当然だろう。一般的な冒険者で難度30、腕の立つ奴で難度45、難度50に届けば一流だ。人類の守護を旨とする漆黒聖典の隊員でようやく難度90代だ。神の血を覚醒させた漆黒聖典隊長こそ難度250を誇るが、これは例外に等しい。

 

 隊長は思案する。眼前の執事に敵意は感じられない。しかし、ただならぬ雰囲気を纏っている。武装をしているようには見えないが隙が無い。もう一方のメイドも、執事を挟み、視線は通るものの攻撃し難い絶妙な位置に待機している。美しい顔立ちだがその瞳に一切の感情が読み取れないのが不気味だ。

 神の血を覚醒させた自分より強いもの。その正体は限られている。(ぷれいやー)と従属神、そして竜王(ドラゴンロード)である。だが、神も竜も()()いる。

 

(どっちだ? 人類の味方か、敵か……)

 

 対応を迷っていると、執事が静かな声で話しかけてきた。

「今晩は、皆さん。私はセバスと申します。少々お時間を頂いても宜しいでしょうか」

「……大丈夫だ」

「感謝いたします。早速ですが、対話を希望する我が主にプレイヤー様をご招待するよう申し付けられております。失礼ですが、貴方様はプレイヤーでしょうか?」

 

 それを聞くや否や、漆黒聖典の3人は弾かれるように膝を突き頭を下げた。もはや条件反射ともいえよう。人類の護り手たる日頃の責務と、信仰心の高さがそうさせたのだ。困惑気味に見る執事に隊長は切り出す。

 

「大変失礼致しました。我々はスレイン法国の特殊部隊、漆黒聖典と申します。まず、我々はぷれいやーではございません。そしてお尋ねします。セバス様はぷれいやーなのでしょうか?」

「いいえ、プレイヤーではありません」

「では、対話をご希望されているセバス様の主様がぷれいやーでしょうか」

「……その通りです」

 僅かな間を置き返ってきた言葉に隊長は瞠目する。

「っ! であれば、日を改めてお伺いしても宜しいでしょうか。国を治める神官長たちを伴いお伺いできれば、対話も有意義なものになるかと」

「……その神官長たちがプレイヤーなのでしょうか?」

「いいえ。現在、スレイン法国にはぷれいやーは居りません」

「……わかりました。では明後日、もう一度ここへいらして下さい。ナザリックまでご案内いたします」

「畏まりました。では、報告と準備の為に戻ります。失礼いたします」

 

 別れの挨拶を軽く交わし、隊長は視線で隊員を促し本部に帰還するために踵を返す。これからの事を考えると気が重い。恐らく上層部は蜂の巣を突くどころの混乱では済まないだろう……。

 しかし、時間が無い。人間は意思をまとめるのに時間がかかるのだ。それが一国を左右するほどの、いや、人類の存続を左右するほどの案件ならなおさらだ。神官長たちを信頼はしているが暴走しないように助言はするべきだろう。

 隊長は溜息をつく。

 

(「今直ぐにでも」と言われなくて本当に良かった……)

 

 

* * *

 

 

 セバスの報告をモモンガから聞いたやまいこもまた、同じように狼狽えた。過去の記憶、ナザリック地下大墳墓が1500人のプレイヤーに攻め込まれた記憶が蘇ったのだ。

 あの時は第七階層を抜かれ、何とか第八階層で食い止めることができた。だが、今のナザリックの戦力では無理だ。今、ここにはモモンガとやまいこしかいない。100レベルの守護者といえど、複数の高レベルプレイヤーには時間稼ぎが関の山だろう。

 

 そして考えたくなくても無視できない一つの可能性。ナザリックが転移した場所がどこにせよ、この状況で死んだとしたらどうなるのだろうか。

 恐ろしい。目の前に控える守護者(NPC)たちが()()()()()事実が恐ろしい。生きているという事は、死ぬ可能性があるということだ。

 

「やまいこさん。セバスが何者かと接触したそうです。俺はこのまま〈伝言〉(メッセージ)越しにセバスに指示をだします」

「うん。わかった」

 

 守護者たちを見ると皆険しい顔をしている。いつ指示を受けても良いよう静かに佇んでいるように見えるが、今にも爆発しそうな雰囲気を発している。彼らの忠誠心の高さを顧みると、たとえどんなに劣勢でも、ナザリック地下大墳墓を守るためならば命を懸けて戦うだろう。

 だけど、たぶんそれはモモンガが許さない。この子たちが死ぬような事は絶対に許さないだろう。

 

 張り詰めた空気が守護者たちを覆っている。このままただ待機させるのは毒だ。こういう時は何か一つ、集中できる作業を与えるべきだ。()()()()()()さんや()()()()()()さんが居てくれれば……。彼らにはリーダーの素質があったのに。

 やまいこは指示を出すべく意を決する。

 

「守護者諸君、聞いての通りだ。先ほどモモンガさんが言った不測の事態だけど、状況は想像以上に不味いかもしれない。ナザリックが見知らぬ土地に転移した。そして森を挟み四方を人間種の都市が囲んでいる。ここが都市である以上、必ずプレイヤーが居るはずだ。――そこで聞きたい、お前達は敵対プレイヤー1500人による大侵攻を覚えているか?」

 その質問に守護者たちは心痛な表情で頷く。殺された事を覚えているようだ。

 

「ならば話は早い。今の我々では再びあの規模の侵攻を受けたら確実に負ける。なので最悪の場合、このナザリック地下大墳墓を放棄する」

 

「っ! お、お待ちください! やまいこ様! ナザリックを放棄するだなどと、おっしゃらないで下さい!」

「そうです! 不甲斐ない私達ではありますが、今度こそ敵を撃ち滅ぼしてみせます! 汚名を返上する機会を下さい!」

 アルベドとデミウルゴスに続き、守護者たちから上がった決死の声は悲鳴に近かったが、やまいこは遮る。

 

「己惚れるな。そしてお前たちは思い違いをしている」

 シンと静まり返った守護者を代表して、アルベドが恐る恐る疑問を投げかける。

 

「……思い違いとは。どういう意味でしょうか」

「簡単な事だ。確かにアインズ・ウール・ゴウンにとってナザリック地下大墳墓は重要な拠点だ。だが守らなければならないものは他にもある」

「それは……?」

 

「お前たちに決まっているだろう?」

 その言葉に守護者たちは雷に打たれたかのように身を震わせる。

「お前たち守護者は元より、このナザリックに所属する全てのNPCは我が子も同然。ユグドラシルではNPCたちは(ナザリック)の外に出る事が叶わなかった。けれど世界の理が変わった今は違う。お前たちは外へ出れる。ならばもしもの時は逃げれば良い。生きていれば再興できる。お前たちが居れば、アインズ・ウール・ゴウンは不滅だ。だから、お前たちに命ずる。死ぬな」

 

 それを聞いた守護者たちの目に涙が滲む。

 ナザリックを離れ、我が子(ユリ)をモモンガさんに託したボクにこんな事を言う資格があるとは思えないけど……。これで先走って暴走しなければ上々。

 

 ふと横を見るとモモンガがじっとこちらを見つめていた。骸骨の顔からは感情を読み取れない。穏やかなように見えるが真意は掴めない。

「モモンガさん。セバスの方はもういいんですか?」

「はい。明後日、この国のお偉いさんをナザリックへ招きました。でも、何か変なんです。都市規模のギルドなら上位ランカーのはず。それなのにスレイン法国なんてギルド名は聞いたことが無い」

「確かに、ボクも記憶にないな」

「まずは可能な限り情報収集をしましょう。それと、相談があるので後でいいですか?」

「うん。ボクの方からも相談があるから。取りあえずここはモモンガさんに引き継ぐよ。指示を出そうとしたけどタイミングを逃しちゃった」

「分かりました」

 

 モモンガは守護者たちに向き直る。

「明後日、スレイン法国と名乗る者たちとの間に話し合いの場を設けた。まぁ、話し合いと言ったがセバスの報告では相手側がかなり下手にでてきたのでこのまま友好的に接する。だが交渉材料となる情報が足りない。デミウルゴス」

「はっ! 何なりとご命令を」

「ニグレドと協力して情報収集をしろ。隠密能力に長けた配下を放て。目撃されるな」

「畏まりました、モモンガ様」

 

「シャルティアもニグレドの下で待機。必要があれば〈転移門〉(ゲート)を使え」

「畏まりんした、モモンガ様」

 

「あ、モモンガさん。一つ良いかな」

「どうしました。やまいこさん」

「情報源にする相手だけど、ゴロツキ、一般市民、神殿関係者でお願い」

「理由を聞いても?」

「身分によって教育内容が違うかもしれない。知識に偏りがある可能性がある」

 そう指摘するやまいこの声は硬い。

 

「……ふむ。そういう事だ、デミウルゴス」

「仰せのままに」

 

「アルベドはギルド戦を想定して消費アイテム類の確認をしてくれ」

「畏まりました。モモンガ様」

 

「アウラとマーレはペットを何体か連れて森林を巡回してくれ。怪しい奴が居たら殺さずに連れてこい。戦闘は極力避けろ」

『畏まりました、モモンガ様』

 

「では各守護者たちよ。行動を開始せよ」

『はっ!』

 

 こうしてこの日、スレイン法国の神都から数名の市民が消え、不幸な狩人が1名捕まった。

 

 




独自設定と補足
・原作でナザリック地下大墳墓は傭兵NPC含む1500人の討伐隊による襲撃を受けますが、執筆にあたり「傭兵NPC含む」を失念していたため、当二次小説ではプレイヤー1500人の討伐隊とさせていただきます。(説明不十分だったため文章を修正 2022/04/12)

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